娘が砦を統治する
俺が化け物だった。
好きに呼んでくれ。内部偵察が必要ないなら、閉ざされた関所を解放するのみ。
俺に向かって飛んでくる石礫。痛くもない。そして避ける必要もない。扉の前で俺は何がしたいのか考える。
お前は道を閉ざすのが好きなのだろう。
だが俺は自由に走りたいんだ。だからお前は俺の敵だ。
悪く思うなよ。遅かれ早かれお前とは戦う宿命だったのさ。
少し離れた所で気絶明けのスル・メはメアリーに質問していた。
「メアリーさん。カイロ様は門の前で何を話しているのでしょうか?」
様?。メアリーは、スル・メがカイロに酔狂していく様子に呆れている。類は友を呼ぶ。しかし出逢うのが早すぎて私は頭が痛い。
「あいつ。たぶん門と話しているのよ。バカよね。」
「門と?。万物の頂きが見えているのですか。」
やっぱり出逢うのが早すぎる。この2人は、別々の星に住んでもらいたい。
「どうか安らかに…」
俺は魔喰らいのマグレシアンを抜刀した。塞ぐ目的がある門は、ようやく解放された。左右の木製の扉と裏側の杭。出逢ったときには纏めて門と呼ばれた者達は、各自が進みたかった道へと…飛散した。
そして衝撃波は止まらない。デラーズ領側に配置された門は兄弟に何があったかも知らぬまま飛散した。彼らはバラバラになり二度と出逢うことはなかった。
俺の衝撃波は人々に人的損害を与えたわけではないが、兵士達も飛散した。
「あんな化け物。割に合わない。」
それが兵士達の最期の言葉だった。門が飛散し俺の前には清々しい程の道が現れた。
これなら皆、気持ち良く、街道を行き来できるだろう。
「本当に、めちゃくちゃよ。」
俺と合流したメアリーさん達。吹き飛んだ関所跡に呆れながら驚いていた。現場を目撃した通行人は俺を怯えながら見ていた。しかし、時間が過ぎ事情を知らない人達は関所の破壊状況は驚いていたが犯人を知らぬ為、俺を見てもなぜ半裸?。くらいにしか思っていない。
塁壁内は思っていたより拓けていた。農村集落より小さいが宿舎に井戸。そして小さな泉もある。そして露店があった形跡もある。商品等の売り物はなかったから、定期的に市を開いていたか。もしくは闇市を開いていたか
兵士達は全て逃げ出したから確認はとれないが生活環境は整っている。
「提案があるんだけど!」
「まあ」メアリーさんが話しだすと、一番早く驚いたのは王女様だった。理由は、この砦を乗っ取りなさいと言われたからだ。国王の娘が砦を統治して何が悪いとまで言われた。
王女様は自身の今現在の立場では危うい事ではないかとメアリーさんに話す。しかし、メアリーさんは何をするにも善し悪しはあるのだから細かい事は気にするなと、話しを続ける。
善し悪しの善しは、この場所の立地条件。デラーズ領、と私達のゴザス辺境地域の国境地帯にあるという事。王国まで徒歩なら3ヶ月は必要とする。馬を利用しても最速でも1ヶ月はかかる。ゴザス辺境からの通行人は、王女様の現状の立場を把握しているとは思えない。
善し悪しの悪しは、王国と距離が遠すぎる為、状況の把握が難しい事。内情を探れない。時間が過ぎれば過ぎる程、王女様の立場が苦しくなる。
デデさんは王女様の護衛を引き続き行ってもらう。デラーズ側の王国に関わる者がいれば顔が効く、騎士団剣術指南役の立場は利用価値が高いと思う。
メアリーの説明に味方オーク面さんは腕組みをしながら何度も頷いている。
メは、算術を活かして往来する商人達や仕事探しの人達を上手く斡旋して…闇市でもしてみたらどうかしら。幸い露店の最低限の設備は整っている。砦の運営関係は、私はメに任せたいとメアリーさんは話している。
「商業関係でメは見習いではない。」この言葉でメのやる気が一気に高まる。
「私にお任せ下さい。」
提案だと、話しているのにメは最後まで話を聞かず通行人達をつかまえ、話し始めた。
「なに?」
「俺は?」
「だから何よ?」
「砦での俺の役割りは?」
あんまりだ。いくら先輩冒険者のメアリーさんだとしても、これは、ひどい。
「邪魔、外で魔石集め。」
邪魔発言は別に良かった。魔石集め。これは納得いかない。魔物を倒す事はわりと得意だ、しかし、魔石集めは
あの詐欺女神と同じじゃないか。俺はやっと冒険者になったのに、13年間の苦痛を継続しないと駄目なのか…
「何よ。その目。」
俺は、メアリーさんを睨みつけながら外に向かった。目指す目標でもあるAランク冒険者のメアリーさん。
でも、今は少し嫌いだ。




