見習い騎士の激闘話し2
「臭い息」
スル・メの無刀流断罪の構えに対してゴブリンの初撃は臭い息だった。これにはスル・メの算術も計算しきれなかった。見えない状態異常攻撃。
そしてスル・メは予想外の攻撃に顔をしかめ、嗚咽を繰り返す。素手ゴブリンはそのまま私に向かって来た。
私は自覚していた。私の剣技は周りの方が気を使って教えてくれたお飾り剣術だという事は…
でも私は立ち止まるわけにはいかないのです。
「スターク」
デラーズ流剣術で最も基本的な突き技。
恥ずかしい話しですが、私の得意技。決して強くはない技。でも私にはこれしかありません。
鞘に納刀したままの突き技だった。しかし素手ゴブリンは吹き飛び、再び立ち上がった時は頭部からの出血が見られる。
その時、私は思いました。
私でも勝てるかも知れないと。
私は鞘から剣を抜き対峙するゴブリンに構えました。
デラーズ流剣術の基本になぞらえて。
「姫様。魔拳ゴブリンはまだ本気ではありません。お下がりを!」
スル・メは立ち上がった。自力で状態異常から復活し、私の構えを解かせました。自分の役割は把握していると言いながら、今度は、自らゴブリンに向かい走り出したのです。
剣を握っていないのに、まるで剣を握っているかのような仕草で。
「無刀流の真髄、オーラブレイド。相手には認識できない剣気から生み出される実態のない刃だ。」
(スル・メ凄いな。今度、教えてもらいたい。無刀流の真髄を。)
でも、彼のオーラブレイドはゴブリンに届きませんでした。私には何も見えず、ただただ空振りに見えたのですが、その直後にスル・メの声が聞こえました。
「足りない。」と。オーラブレイドは恐らく発動していたのですが見えない刃の長さが足りない。そういう意味での発言だったと思います。
そしてゴブリンも命がけです。空振りのスル・メを待ってくれません。ゴブリンは懸命に隙だらけのスル・メの
……………を蹴り上げたのです。
「え。どこ?」
「ここだ。」
俺の質問に味方オーク面さんが自身の下半身を指差した。
「聖剣を抜かれたのか!」
味方オーク面さんは俺の発言に小さく頷いた。
メアリーさんは寝ると言いながらも寝付けず、瞳を閉じながらも話しを聞いていた。
(本当に、バカばかりよ。もしかしたら私が変なのかしら…カイロと知り合ってから私の常識、全否定よ。)
私は白目で崩れ落ちる、スル・メを見て、無我夢中で抜いた剣で何度も何度もゴブリンにスタークを放ちました。
そしたら…ゴブリンは細切れになり、小さな魔石を残し消えました。
「レインスターク。基本突き技スタークを元にした発生系のひとつにあたる技だ。姫様は決してお飾り剣術なんかじゃありません。少なくとも俺は真剣に教えてやしたぜ。」
王女様は、味方オーク面さんの言葉に小さな魔石を見ながら少し嬉しそうな表情を見せていた。
結局、白目を見せていたスル・メは起き上がらず、味方オーク面さんに背負われながら移動を続けて少し前に意識を取り戻し、ゴブリンゴブリンと騒ぎたて、もう居ない事をしると安心して眠りについたそうだ。
「明日も早い。寝るぞ!」
…………
翌朝。スル・メも無事に回復し、関所をどうするか相談した。そのなかで俺の内部偵察が失敗した事を皆に報告した。メアリーさんは額に手をあて、なぜ要らない事をするのかと言う。
知らなかった。内部偵察は必要ないのか。ただ通過できれば良いだけだったのか。
これは俺の凡ミスだ。また皆に迷惑をかけてしまった。
迷惑で導きの光が弱まるなら再び自らの力で輝かせるのみ。
「あ、ちょっと、ちょっと待ちなさい!」
メアリーさんには悪いが凡ミスは自らの力で帳消しにする。あの詐欺女神も普段より魔石が多い時は喜んでいた。要は、成果を上げれば良いんだろ。
関所の入口は封鎖されている。昨日、野宿していた人達は関所開かない状況に困惑している。中には大声をだす者もいる。
「悪いが、化け物の対応が終わるまで入国審査はできん。デラーズ側の者も我慢している。すまないがわかってくれ。」
塁壁の上から声をはりあげる兵士。反対側も封鎖しているのだろう。そして化け物とは何だ。魔物なら魔物と呼べば良いし、悪人なら悪人で良い。
果たして、兵士がいう化け物とは……
え?俺。
「出やがったな。化け物。今日こそ捕まえる。」




