聖剣とはなんですか?10
「さっきから、何なんだよお前。」
ドーガンさんだったかな。見てもらったら、わかるとおもうが、これは…
「個人レッスンだ。」
俺は農具の取り扱いが、不慣れな少年にマンツーマンで指導している。身体に不釣り合いな石うすをどうやって運んできたのか。まずはそこからだ。
「お前等、女どもが死んでもいいのか!」
個人レッスンを邪魔するドーガンさん。女性を無碍に扱う振る舞い方…
「まるでオークだな。お前等。」
空気がまた、変わった。変えたのは俺だが、こいつ等を見ていると、先日壊滅したオークの集落を思い出す。
「メアリーさん。これ俺、個人への詐欺じゃないですよね?」
メアリーさんはどこに詐欺る箇所があると言い返してきた。
「王女詐欺とか?」
王女様は俺の言葉に「まあ」と驚き、メアリーさんは、
詐欺られたのは王女様だと叫んでいる。
良かった。俺あんまり関係ない件だ。
俺は魔喰らいのマグレシアンの抜き、ドーガン達に剣先を向けた。
「はっ。こっちは6人だぞ。礼儀正しくタイマンするとおもうか。」
この人は何を言っているのだろうか。
「う〜ん。オークっていつも数十体で彷徨っているぞ。」
「誰がオークだ!」
不思議だ。こいつ等は戦いながら会話をする。
鉄壁で攻撃を止めろ。
飛行で空から射抜けだの。
でも、隙だらけだ。
「ぐはぁ…なぜ剛腕の俺を吹き飛ばせる。」
剛腕?良くわからないが、もう少しご飯を食べないと軽すぎる。
ごめんなさい。誰かの家を破壊してしまいました。
四軒ほど。
飛ぶ斬撃は使わなかった。民家が密集しているし。広場には村人達が集まっている。だから剣技を制限したが、あのひと達が軽すぎて吹き飛ぶ癖があるのを知りませんでした。
「メアリーさん…あの裸の方はもしや。蛮族の勇者様でございますか?」
メアリーさんは王女様を見ながら首をふる。
「残念ながら彼は…ただの詐欺被害者です。」
王女様は「まあ」と言いながら口を手で隠している。
良くわからないが、とりあえず村人達が皆で抱き合っているから、これで良かったのだろう。
「指南役。聞きたいのですが、あの裸の方は…幻影脚の他に幻影空拳も使用していませんでしたか?あり得ないです。幻影脚に使う筋力を維持しながら剣を囮につかい残像が残る程の手刀を入れるなんて…これではドーガンの恩恵剛腕も手刀で力を発揮できないじゃないですか!」
味方オーク面はスル・メの観察力を褒めながら…
「概ね、スル・メの読み通りだが、お前も今、裸だぞ。」
と優しく教えていた。
これが、世界の習わしなんだな。俺が詐欺女神の機嫌しか気にしていなかったから。俺が無知なだけだ。
村人達はドーガン達の身ぐるみを剥がし、縄で幾重にも縛り上げ、人が入る程の樽に無理矢理詰め込み、そして森の入口に置いて戻ってきた。味方オーク面さんとスル・メが護衛するなかで村人達は清々しい表情をしている。
(悪人になれば魔物の餌になるのか…)
悪人の最期。さすがに、こんな終わりかたなら、楽しい冒険にはならないな。
「面倒かも…」
メアリーさんは王女様の横で顎に手をあてながら、悩んでいる。王女様は村人達の行動をみて少し寂しそうにうつむく。
「確かに難しい状況だ。気がついているか。ダイブ・ルの姿が見当たらない。」
御者のダイブ・ル…先程まで荷台の裏に隠れ潜んでいたが今は姿が見えない。
「おそらく、連絡役だ。」
ドーガン達の裏切りは誰かの指示のもとで実行された。その結果を知らせるのがダイブ・ルだ。
王女様は半世紀もお城務めをしている。そんな人が裏切るなんて信じられない。と王女様はダイブ・ルを庇う様な話し方をした。味方オーク面さんは、王女様の純粋さを咎める。
「王女…ダイブ・ルは半世紀以上。国に尽くした御人だ。しかし決して貴女様だけに尽くして来たわけではない。誰しもが他人を想うわけではない。だから、貴女様も人を疑う気持ちを持ってください。少しだけでいい。貴女のためにも、ずる賢さを身につけなさい。」
王女様は地面に崩れ落ち泣き始めた。
「じゃあ…デデもメも私を裏切るの?そういう気持ちでいれば良いの?」
泣き崩れ落ちた王女様の手をとる味方オーク面は膝をつき首をふる。
「貴女様は娘を姉妹のように接してくれた。男でひとりで育てた娘だ。王女様と一緒に過ごした時のあいつの笑顔は忘れられない。だから俺は貴女様を裏切らない。」
「でも…でも。でも。でも。彼女はもういないのよ。私を庇って…」
「立派だったのだろ?なら親は娘の名誉を守らないとな。」
王女様は、味方オーク面に抱きつき、何度も何度も、大粒の涙を流して、ごめんなさいと謝っていた。




