聖剣とはなんですか?6
「何だあいつは…ちっ。野党か!」
土埃が舞う中、俺の走り込みは新たな風を巻き起こし全ての土埃を撒き散らした。
こんな、短距離を全力で走る事はないからな。
「俺は今。新たな目的ができたんだ。悪いが彼女を苦しめるなら、俺はお前達を…斬る。」
俺は魔喰らいのマグレシアンを抜いた。あの悪人面が長か。まるで、この前のオークみたいな面だな。でも、おかげで斬る罪悪感が減る。
俺は魔喰らいのマグレシアンを突き出し前に飛んだ。普通の突きなのだが普段の飛ぶ斬撃だと他の方を巻き込みそうだと判断した。
攻撃範囲を最小にしての一点突破。魔喰らいのマグレシアンがどれ程、威力加算してくれるかわからないが、仕留める自信はある。
「俺かよ!」
驚いた。やはり魔物とは違う。初めてかも知れない。あのオーク面は俺の突きに自身の剣の刀身を合わせ、威力を相殺した。あの目つき。反撃されると思った。魔物の観察は得意だけど、対人戦の経験はやはり足りない。
マイク教官は演技で吹き飛ぶし。メアリーさんは怒るくせに軽く叩くだけだ。工房にくる冒険者や騎士は昔ほど素振りや試し斬りをしなくなった。
だから、あのオーク面が悪人じゃなければ、もしかしたら仲良くなれたかもしれない。
でも悪人なんだろう。悪いが受け止めても衝撃波はとまらないから。
俺の突きに対抗したオーク面は遥か遠くまで吹き飛んだ。おそらく生きているだろう。しかし、お前が戻るまでに、こちら側は体制を整え移動ができる。
「さらばだ。オーク面。」
「ちょっと。この薬草殺しの28歳泣き虫!」
メアリーさん。皆さんがいる前で、俺の二つ名を混ぜるのを辞めてほしいのだが。
「あの人…味方よ!」
味方?味方とはなんだ。こちら側に属する者であっているのだろうか。おそらく味方オーク面さんは、結構な距離吹き飛びましたが…
荷台で可愛らしい鎧を纏う巻髪の女性は自身の口元に手をおきながら
「味方。」
と、言った。
荷台の車輪付近で脇腹から出血が見られる。俺より若そうな男はメアリーさんの神聖術を受けながら
「味方。」
と、苦しそうな中…言った。
荷台の反対側にいて良く見ていなかったが、黒い帽子が似合う老人。おそらく御者だろう。彼はチョビ髭をこすりながら
「味方」
と、言って再び身を潜めた。
どうやら俺は初めから過ちを犯していたらしい。
思い込みと経験の無さが生んだ過ち。
先程のメアリーさんの耳元での呟きが身に沁みてわかる。
こんな事をしていたら、また詐欺られる鴨だ。
俺は魔喰らいのマグレシアンを空に翳した。紅く輝く刀身の先には眩しさの中に暖かさを見せる太陽が笑っていた。
「空見てニヤけんなよ。この新人ゴブリン勇者の呪われた聖剣持ちの28歳。はやく助けに行けよ!」
「了解です。」
やはりこの味方オーク面さんは強いと思う。走り出して数秒の平原で頭を押さえていた。俺を見るなり直ぐに身構えたが剣は折れていた。しかし味方オーク面さんは構えを解かない。
だから俺は謝った。
そして味方オーク面さんの手を掴み再び走りだした。
「あ、相変わらず。早いわね…あんた。」
味方オーク面さんは状況がいまいちわかっていなかった。
だから同じ現象が起きた。
皆さんが俺を指差し。「たぶん味方。」と言ってくれた。説明の手間が省けて助かった。
「味方オーク面さん。すみません。これは誤オークです。」
「あ、ああ」
誤解が解けたら後は本当の悪党を倒すだけだ。もし、悪党達が全員、味方オーク面さんくらいの実力があれば、さすがに苦しいかもしれないが、先程の非礼の責任はとるつもりだ。
「さあ待たせたな。悪党ども。俺が相手だ。」
…………
「逃げたわよ。」




