聖剣とはなんですか?2
「ちょっと…あんた…やめて。バカじゃないの」
俺達は農村に1日泊まる事にした。農村の人に話しをしたら無料で晩ごはんをご馳走してくれた。
普通に、美味かった。
そして小川の隅で身体を拭いた。あいにく、泊まれる場所は馬屋の見張り場くらいしかないと言われたが、外で寝るよりだいぶ助かるから、全然気にしなかった。
メアリーさんは精霊術のつかい過ぎと言いながら早めに横になった。
だから俺は悔しかった気持ちをメアリーさんにぶつけているんだ。
「動くなよ。俺は悔しかったんだ。」
俺は嫌がる彼女の両腕を自分の右手で掴んだ。
「痛い!バカ。離してよ。」
「股を開いたくせに、痛いとは何事か!」
「意味わかんない。離してよ。離せよ薬草殺し。」
メアリーさんは瞳に涙を見せながら身体をくねらせる。
「小娘よ。俺は悔しかったんだ。」
「わかった。わかったから。一回…一回手を離してよ。折れちゃうから。」
それは良くない。俺は怪我はお金がかかると思いメアリーさんの手を離した。
手を離した瞬間、メアリーさんは部屋の片隅に逃げ、身体を庇うように俺を睨みつけてくる。
「意味がわかんないから…やめてよ。」
身体を縮めながら肩をふるわせ泣き出すメアリーさん。
俺は詐欺女神の時と違うと思った。そして、この場の進め方がわからなくなっていた。
詐欺女神はいつも俺をリードしてくれたのに…
どれだけ強くしても、あの詐欺女神は俺の身体を気持ち良くしてくれたのに。
こんな気持ちになるなんて…
「俺が詐欺女神を求めているだけじゃないか!」
俺は外に出た。真っ暗な農村の広場中央に残る。焚き火跡の灯火が紅く輝いている。
この灯りは…あの詐欺女神の瞳と同じ色だな。
また思い出してしまった。
こんな時は小川のせせらぎに癒やしてもらおう。
駄目だ。あの詐欺女神の声がする。
俺は冒険者になれたんだ。追放されたが冒険者にかわりはない。夢が叶った。あいつには騙されていたが、今は、解放されている。
「でも、どうしようもなく彼女を求めてしまうんだ!」
俺は、何をしたら良いのか分からなくなっていた。詐欺女神から解放され、冒険者にもなれた。魔石も金も自分で好きにしていいのに。
どうして、詐欺女神の手を思いだすんだ。あいつが手を俺に差し出す時は催促の時だけだったのに。
広場の切り株に腰を降ろし夜空を眺める。
あの詐欺女神も、この星空を見ているのだろう。
「貴方…洗脳されているのよ。」
俺が座る切り株の空いているスペースに腰を掛けて背中を合わせてくる誰か。
メアリーさんだろう。
謝るべきなのに、俺は彼女を見れなかった。
「13年間、彼女の為に頑張ってきたんでしょ。」
「自分の為にだ。」
少し彼女の背中からの圧が強くなった。
「私を彼女のかわりにしようとしたんでしょ」
「違う。全然、似ていない。」
少し彼女の背中からの圧が弱くなった。
「私を抱けば忘れられるの?」
「悔しかっただけだ。」
メアリーは立ち上がり。俺の前で笑った。
前屈みになった彼女は垂れ下がる髪を耳にかけ直し、俺を見つめる。
「年下に支配されたい?」
俺は何も言わなかった。少し心臓の音が大きくなった気がしたが、悔しかったから…無視をした。
「楽しい冒険をしよう。私が、手伝ってあげるから。」
楽しみがあれば、あの詐欺女神を忘れる事が出来るのか。そんなものなのか。
俺は立ち上がり、メアリーの肩を優しく掴んだ。
「今日は、本当にすまなかった。」
メアリーは笑う。そして俺の胸に拳をあてながら、
本当に怖かった。初めてが、強引なんて悲しいよ。だから、これから仲良くなろうと言ってくれた。
俺は確かに自己中心的な人間だと思った。
彼女の想いを気にしていなかった。
「はい。おしまい。明日に備えて寝ますよ!」
彼女の優しさに俺は少し冷静になれた。さすが【A】ランク冒険者だ。新人の対処が上手い。
「ちなみに、カイロは私を押し倒して何をしようとしたのかな。」
意地悪な質問よとメアリーさんは言ったが俺には簡単な質問だった。
「それは聖剣を使うつもりだった。」
メアリーさんの身体が硬直した。
「聖剣とはなんですか?」
俺は、この人はそんな事もしらないのかと、皮の腰巻きを外した。
…………
………………
「くっ。」
全て避けた。間違い無く全て避けた。星の数ほどの斬撃を全て避けた。倒れた彼女を抱えあげてなぜ彼女が急に怒り出したのか考えた。
わからなかった。
でも詐欺女神の言葉を思い出した。
「あなたの聖剣をもっとちょうだい。」




