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第九章 ワルキューレ作戦

第九章 ワルキューレ作戦


 今、自分が連れて来た、桜田真一は、都知事室から出てきた時、既に、どこかが、いかれているのを直感した。



 帰りの桜田真一の目付きが異常になっていたのもヒシヒシと感じた。ホントは、桜田真一を、例のラーメン屋に送り届ける時に、聞く事が最後のチャンスだったろうが、あの様子では、話の中身を聞き出す事は、不可能であろう。



 だが、駄目元で、一言のみ聞いてみた。

「都知事室で、何を、話していたのですか?」



「いやあ、ラーメンの話だけです」



「ホントですか?」



「本当です!私も「大家さん」です」と、かって流行ったテレビCMの真似をして言った。



 こんなだじゃれを平気で言う以上、もう、これ以上何を聞いても無駄だろう。



 しかし、不思議に疑問に思った事もあった。例え、「ラーメン」の話が真実にしても、一体、何故、わざわざ東京都庁にまで呼び出して、「ラーメン」の話をする必要があったのだろうか?



 この時、岡村課長は、まだ「人肉ラーメン」の話は、全く、聞いてもいないし、知ってもいない。しかし、都知事室にあったT4作戦の本が、妙に気にかかるのだ。



 ここで、T4作戦について、極、簡単に説明すると、いわゆる障害者や遺伝病の患者に対する、強制的安楽死実施計画の事で、ヒトラー総統の命令で、ドイツ人等を対象に実施されたと聞いている。被害者数約20万人。……、元々、岡村課長のW大学の卒論にも採用している程だから、十分過ぎる程の知識はあるのだが、今は、ここで辞めておこう。



 ただ、これに関する本が、何故、都知事室にあったのか?



 人羅景子都知事の公約に、路上生活者ゼロがあるが、それと、何か関係があるのであろうか?



 実は、今から、結構前の映画になるが、2018年作の、ドイツ映画に『ある画家の数奇な運命』と言う名作があった。岡村課長も見た事があるのだ。何故なら、「T4作戦」そのものの話だったからである。岡村課長は、人羅景子都知事に、大変な、危機感を抱いていたのだ。



 ホントは、「ラーメン屋の店主」桜田真一の、ハッキリした「証言」や、「独り言」があれば一番良いのだが、既に、現在の状況では、全く、不可能であろう。



 ここは、自分が、人羅景子都知事の懐に飛び込んで、最後は、完全なる証拠を持って、叩き潰すしかないのだ。



 しかし相手は、既に、東京都知事になっているし、自分は、単なる都庁の一課長である。一体、どうやって、自分も助かり、キチガイ都知事の正体をバラせば良いのか?



 ここは、一歩、間違えると、全てがパーになる。



 絶対に、失敗出来ないのだ!!!



 ここで、岡村課長は、かって見た映画、トム・クルーズ出演の『ワルキューレ作戦』を思い起こした。自分一人では、何もできないが、映画のように一つの団体(映画では旧ドイツ正規軍の一部)さえ組織化できれば、不可能でも無いであろう。岡田課長は、早速動き出したのだ。



 直ぐに、W大学1年先輩の、秘書課長と連絡を取って、高級料亭で会う手配をした。この秘書課長はとは、同じ政経学部であり、学生時代には、よく近代政治研究会のサークルで激論を、戦わした仲なのである。……口も堅いし、一番、信頼できる人物でもある。



 高級料亭で会うと同時に、最初に、切り出したのは、岡村総務課長で、正に、単刀直入の質問であった。



「田村先輩、都知事の人格を、どう思います!」



「うっ」と、秘書課長は、返答に窮した。



「では、田村先輩も、異常に感じているのですね。あの人羅景子都知事を」



「それなんだが、これは、人に聞かれると、二人ともこの世から、消える事になるかもしれないのだ……」



「そんな話まであるのですか?」



「ああ、私は、あくまで又聞きなんだがね、何でも、都知事就任時に、警視庁に新たに創立された「路上生活対策課」が結構、危ないらしいのだよ。まるで、かっての特高のようになっていると聞いている」



「どう言う事です?」



「まあ、あくまで噂話なのだがね、一応は、奥多摩に路上生活者の収容施設を作ったのは事実だが、そこでも、さばききれない人間を、世田谷区の「三軒茶屋」のどこかにあるラーメン屋に、人肉を卸しているそうな。『人肉モリモリラーメン』として、結構、人気があると聞いているが……お客さんらは、ニンニクラーメンだと勘違いしているらしがねえ」



 ここで、岡村課長は、全てが、理解出来た気がした。



 正に、「人肉ラーメン屋」を作るために、あの桜田真一を、都庁に呼んだのであろう。



「く、く、狂っています!」



「分かってはいるが、どうにも、証拠が無いのだ」




 ここで、岡村課長は、議会事務局時代に、人羅景子議員に服従した経緯を、嘘も隠し事も無く、話したのだ。



「田村先輩、これは、秋葉原で買ってきた、超高性能の盗聴器で、無線通知も、デジタル変換しており、普通の盗聴器発見器では簡単には見付けられないのです。これを、何とか、都知事室に取り付けられ無いものでしょうか……」



「そ、それは、非常に危険な行為だなあ。正に、命がけの作戦だな。

 映画の、『ワルキューレ作戦』と同じ結末になるかもしれんぞ……」



「しかし、バラすなら今の内です。それに、この都庁には、W大学の卒業生も数多くいます。これらの内、信用できる人間らを集めて、秘密結社を作りましょうよ」



「何度も言うが、岡村課長が、クラウス・フォン・シュタウフェンベルク大佐になるかもしれないぞ。それだけの覚悟はあるのか?」



「その極秘情報さえ手に入れば、後は、マスコミにも知人は多数います。

 そこまで行けば、後は、何とかなるでしょう。

 かって、「期待の党」を立ち上げたものの「排斥」発言で大失速した、元女性都知事の例もありますのからねえ……」



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