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第六章 都知事選

第六章 都知事選


 さて、それから、あっという間に年は過ぎた。



 いよいよ、後、数ヶ月後に、新しい都知事選が迫って来た。



 人羅景子都議会議員は、いち早く、立候補表明をした。



 将来の国政進出に向けて結党された「日本民主主義国家統一党」は、某、宗教団体と極秘の密約を結び、無償ボランティアの確保に成功した。

 この宗教団体は、以前からあるとは言え、宗教界の中では、非常に評判の悪い団体であったが、背に腹は代えられないらしい。



 更に、かってのナチスの突撃隊に似た、「行動青年隊」を作り、自分の応援と、ライバル候補らへの目に見えないような妨害行為を命令。「行動青年隊」は、東京にある多くの大学生らを中心として、結成されたものである。



 特に、選挙活動に備え、メジャーデビューしていない無名のロック・バンドを買収、演説会の前に、極、短い演奏で、会場を盛り上げる役を負わせ、また、「レーザー光」や「プロジェクションマッピング」を使っての、派手な演出のシナリオをも作成。

 これも、ナチスのニュールンベルグでの党大会を、実は、参考にしているのだ。



 更に、自身の経歴や、政治的信条を綴った『ガラスの天井を破れ』と言う、本を出版。ここでは、耳障りの良い言葉を連発。



 しかし、不思議な記述もあった。



 それは、路上生活者をゼロにすると言う箇所で、表向きは快適な収容施設を作り、路上生活者を助ける、と言うのだが、それ以外にも、解決法があると言う。たったこの一言が、妙に、気になったのだ。

 桜田真一には、この一言が、何故か、心に残ってしまったのだ。



 そこで、駄目元で、同期で東京都庁に入社した、岡村敦に電話をかけて見る事にしてみた。風の便りで聞いているのでは、総務課長になっている筈だ。



 そこで、自らの名前を名乗って、岡村総務課長に電話してみた。多分、覚えていてくれないだろうが……。



「岡村総務課長ですか?

 私は、貴方と同期入庁で、かって仲の良かった、桜田真一です。覚えておられますか?」



「えっ、あの桜田さん?

 確か、精神病院に入院したと聞いていますが、退院できたのですか?」



「それが、アメリカ製の治験薬を飲んだところ、いわゆる「劇的寛解」が起こり、医者も不思議がる程、症状が好転。もう退院してから、結構、年月が経っています」



「で、今は、何をされているのです」



「世田谷区の飲食街の一番奥に、ようやくラーメン屋を開店できました。「2代目モリモリ軒」と言う名前です」



「不思議な事もあるもんですね。

 桜田さんの入院した病院は、別名、「死の館」と呼ばれており、一旦、入院したら、死ぬまで出られないと、実に評判の悪い病院なのですが……。

 そうですか?でも、奇跡的に治って良かったですね。

 ところで、この私に、電話とは、どのような要件で?」



「風の便りで聞いたのですが、以前は、都庁の都議会事務局におられたそうですね?

 で、少し、聞いてみたいのですが、今度の都知事選に出馬表明をしている、人羅景子都議会議員とは、一体、どう言う人だったのですか?」



「そ、それは、答えられません!」



 と、即、バスンと電話を切られてしまったのだ。



 あの温厚で、坊ちゃん育ちの岡村総務課長が、突如、態度が激変したのだ。

 そこで、なおの事、不信感が出て来たのだ。



 岡村総務課長は、何かを知っている。しかし、一介のラーメン屋のおやじでしか無い自分には、絶対に、会ってはくれないだろう。



 では、この自分には、どのような打開策があると言うのだろうか?



 いや、こうなったら、自分から、飛び込んで行くしか無いのであろう。



そう腹を決めて、これから起こるであろう事態に対処していくのだ。



 残された時間は、少ないのだ。モタモタしていられない。



 桜田真一が目を付けたのは、自分が入院していたあの病院とその主治医であった。何度も言うようだが、医者には守秘義務がある。

 それなのに、自分の情報は、いくら親戚とは言え、人羅景子都議会議員に、いや、都会議員になる以前の、政府系の金融機関時代から全て漏らしていたに違いが無い。



 何故、この俺の情報を漏らす必要があったのか?



 人羅景子都議会議員には、一体、どう言う思惑があったのか?




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