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第四章 クール宅急便

第四章 クール宅急便


 よやく、桜田真一は、何とか「三軒茶屋」の一番奥深くに、一軒のラーメン屋を、借りて開店する事が出来た。



 調理器具や、業務用冷蔵庫、あと、仕入れ用に、今まで使っていた屋台型のライトバンを、普通の中古のライトバンに買い換えた。



 ともかく、再び、統合失調症が再発すれば、営業は難しくなるので、それまでが勝負だと覚悟した。



「何とか、既存の薬で、症状を抑え込んで行こう……。

 しかし、それにしても、この前、夢の中で聞いた言葉「人肉ラーメン」を作れとは、一体、何と言う事だ。

 大体が、そんな人肉をどこから手に入れるのだ。



 やはり、単なる夢か、あるいは、幻聴か?」



 しかし、ここで、当の桜田真一を、激変、させる事が起きたのだ。



 何と、「クール宅急便」で荷物が届いたのだが、差出人も一応書いてあったものの、多分、聞いた事も無い差出人だった。どうせ偽名だろう。で、おそるおそる宅急便の蓋を開けてみて、腰を抜かした。



 この時、何とか、正常さを保っていた桜田真一の頭の中のヒューズが、プチッと一本切れたのだ。



 何と、そこに入っていたのは、切断された人間の太もも2本であった。しかも、一枚のワープロで打った文章が一枚入っていおた。



 文面には、

「これで、人肉ラーメンを作れ!」と言う命令調の文言だった。



 これは、明らかに異常だ!



 しかし、どこの誰が、この太もも2本の人肉を送って来たのだ?



 まさか、あの人羅景子都議会議員か?



 しかし、彼女は、次回の都知事選挙に出る、と言っていた。こんな犯罪じみた事は、選挙前には、敢えてしないであろう……。



 だが、この前からの、夢の中で聞いた言葉とも不思議に一致する。



 誰かが、この自分を利用しようとしている事は、明らかだ。



 一体、誰が何の目的で、この俺に、「人肉ラーメン」を作らせるのだ。その理由は何だ。

 で、一体、結局、何の目的があると言うのか?



 それよりも、ともかく困ったのは、この切断され、冷凍された、人間の太ももの処理であった。このまま、ゴミ箱に捨てれば、即、自分に殺人の疑いがかかってしまう。

 それぐらいの判断能力は、まだ残っていた。



「仕方が無い。証拠隠滅のためにも、この太もも2本を、チャーシューにして、お客に食べてもらうしかあるまい……」



 だが、既に、この発想自体が、桜田真一が、既に狂い始めている事を、当の本人には、理解できなくなっていたのだ。

 先ほどの、「クール宅急便」開封の時点で、桜田真一の大脳内のヒューズが一本、飛んでしまっていたのだ。



 これが、運命の分かれ道となるのを、桜田真一は、まだ気が付いていない。



 これが、後に、「人肉ラーメン屋の独り言」と言う、得体の知れない物語に、化ける事になるのである。



 ここで、最大の問題は、一体、何処の誰が、人間の死体の太もも2本を送ってきたかである。しかし、東京でも、そこそこ有名な私大を卒業し、東京都庁職員だった桜田真一には、全く、思い当たる事が無い。



 唯一、疑えるのは、今後、都知事に出ると行っている人羅景子都議会議員なのだが、何度も言うようだが、さすがに、選挙前に、そんな馬鹿げた行動は取る筈が無いであろう。



 仕方が無いので、再び、主治医の元を訪ねた。



 主治医は、「人肉」が送られて来た事に、懐疑的で、

「ホントに、そんな馬鹿げた事があったのですか?桜田さん、貴方の妄想では無いでしょうか?」



「いや、妄想や幻覚では絶対にありません。確かに、以前の、入院前の時の幻覚は今でも、ハッキリ覚えていますが、巨大なナメクジを見たり、私の周りには無数のハエが飛んだりとの、虫に関する幻覚が異常に多かったのです。それが、何故、「人肉」に置き換わったのでしょうか?どう考えてもおかしいでしょう……」



「と、言われてもねえ……。私も、精神科の医者ですから、ちょっと、桜田さんの話をそのまま信じる事は、出来ないのですよ」



 さっきから、話は、堂々巡りである。



 ふと、桜田真一は、「クール宅急便」に同封されていた、A4の文書を思い出した。

 上手い具合に、折りたたんで、この病院に持って来ている。



「では、その時に、同封されていたこの文書は、一体、何です。

 私は、スマホは持ってますが、パソコンとプリンタは持っていません。

 この、ゴシック体で書かれた文面を見てくださいよ」と、反撃に出た。



 確かに、濃く堅い、ゴシック体の文章で、

「これで、人肉ラーメンを作れ!」と、書いてあった。



「これでも、私の、幻覚や妄想と言うのですか?」



 この文書の提示に、主治医の目付きが変わった。

 確かに、かような文書が存在したとすれば、目の前の患者、桜田真一の話は、幻覚や妄想ではありえ無い事になる。



「では、桜田さんは、その送られてきた人肉を、どう、処理されたのです?」



「まともにゴミ箱に捨てれば、この私が、殺人を疑われます。細かく砕いて、水洗トイレに流して処分しましたが……」



 さすがに、「人肉ラーメン」にして、お客に出したとは言えない。当然、言える筈も無い。



「そうですか?では、この文書は、研究のために、主治医の私に預からせて下さい。あと、これ以上、症状が悪化しないように、もうあと一種類の薬処方しておきますよ」



「そうですか?しかし、先生は、この事実を思われます?」



「不思議な話ですね。誰かが、何らかの意図を持って動いているのでしょうが、私は、刑事でも探偵でもありませんので、いやはや、何とも言いようがありません……」



 結局、これ以上、主治医に話しても、意味は無いだろう。



 今日は、ここまでとしておこうか?


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