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第十章 絶対絶命

第十章 絶対絶命


こうして、日本版『ワルキューレ作戦』は、徐々に、その外郭が固まりつつあった。



 岡村課長は、かって、迎えに行った記憶のあるラーメン屋に行って、確かめてみる事にした。



『人肉モリモリラーメン』の看板を、かって桜田真一を迎えに来た店の前で自分の目で見てみた。どうも、噂は、本当らしい。



 決心して中に入ってみた。



「じんにくモリモリラーメン、1丁、お願い」と、注文したが、「ラーメン屋のおやじ」

は、既に、自分の事もすっかり忘れていたようだ。



「じんにくじゃねえですよ、ニンニクモリモリラーメンですよ。よっしゃ、1丁ね」



 勿論、そんな物を食べる訳も毛頭、無い。



 大きなチャーシュの盛られた、気持ちの悪い「人肉ラーメン」そのものだったのだ。



 丁度、ラーメンが出来てくる時間帯に、岡村課長のスマホに電話が入った。これは、前もっての作戦だった。



「おやじさん。すまん、急用が出来た。料金はいくらだ?」



「税込み1,200円です。なら、又の来店をお待ちしてますよ」と、どこか、異常な雰囲気なやりとりだ。しかし、わずか数ヶ月前の事も覚えていないのには、驚いたのだ。もはや、桜田真一は、完全に狂ってしまっているらしい。もはや、どうしようも無いのだ。



 この様子では、仮に、桜田真一を問い詰めても何もならないであろう。



 後は、ともかく、仲間、つまり同士を集める事だ。



 W大学のみならず、ライバル校のK大学、また、日本一と言われているT大卒の、都庁職員で、秘密結社の拡大に邁進して行った。



 ここまで来ると、もはや、使命感のみで動いていた。



 何としても、あの狂気の人羅景子都知事の素顔を、世間の皆に、知らしめなければならない。



 岡村課長は、秘密結社員の連絡には、スマホやパソコンのメールやライン等は一切禁止した。水に溶ける紙を必ず使い、読み終わったら、水洗トイレに流す。その暇が無ければ、口の中で、噛んで飲み込むのだ。このような、デジタル社会に対し、あくまでアナログを活用して、相手側の目をそらすのだ。



 デジタル通信だと、サーバーからでも逆に調べられるからだ。しかし、水に溶ける紙なら、水洗トイレに流せば、復元は不可能なのだ。



 また、秘密結社員の確認のため、腕時計を、K社製の極普通の腕時計に指定した。一見、何の変化も無さそうだが、この腕時計まで、注目する人間はいない。何故なら、サラリーマンに、腕時計は必需品だ。スマホでの連絡は、どうでもいいような、飲み会とか、自宅への帰宅時間の連絡ぐらいにしか使わない。これでは、バレル心配は無い。



 着々と、組織は、広がりを作り始めた。……これは、何とかうまくいきそうだ。



 そこで、再び、秘書課長に連絡を取り、例の、料亭で、今後の作戦について計画を練る事にしたのだ。



「しかし、田村先輩、一つだけ、不思議な事があるのです」



 一杯、やりながら、田村秘書課長は、

「一体、何が、不思議なんだね?」



「それは、田村先輩に、無理を言って盗聴器をしかけてもらったものの、皆で手分けして、録音された連絡を聞いているのですが、都知事の連絡事項は、あくまで、財政調整基金残高を聞いたり、税収の歳入見込みを聞いたり、公債費の今後の動きなど、全て、まともな話ばかりで、例の「人肉ラーメン」の話など、只の一度も聞いた事が無いのですよ」



 すると、田村秘書課長は、ニヤリと笑ったのだ。



「何なんですか、その薄ら笑いは?」



 すると、田村秘書課長は、パチンと指を鳴らした。



 それと同時に、警官らしき人物が、3人も、この部屋になだれ込んで来たのだ。



「何だ、君らは?」と、岡村課長が、叫ぶ。



 すると、田村課長は、

「大体が、岡村君、私は秘書課長なんだよ。それが、都知事を裏切れる訳が無いだろうが?君は、根本的に人選を誤ったのだよ」



「じゃ、この私は、どうなるのです?」



 すると、入って来た警官の一人が、右腕の腕章を示して、

「これは、「警視庁:路上生活対策班」の腕章だ。テットリ早く言えば、戦前の特高と似たような組織になっている。

 貴殿の運命は、1 週間後には、『人肉モリモリラーメン』で、人肉ラーメンの具でお終いだな」



「馬鹿な、この私が、人肉ラーメンになってしまうとは、馬鹿も休み休み言え」



「まあまあ、岡村君。人間、諦めも大事だよ。君は、日本版『ワルキューレ作戦』を実行するつもりだった。その心意気は大いに認めてやるがな、この私を最初に、例の秘密結社の一員に向かい入れた事が、最大の間違いだったな」



「さあ、グズグズしていないで、岡村課長を、逮捕するのだ」



 岡村課長に、3人の屈強な警官が近づいて来る。



 もはや、絶対絶命だ!!!




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