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第一章 人肉ラーメン屋

 東京の「三軒茶屋」の飲食街の奥深くに、一見、何の変哲も無い、古びた一軒のラーメン屋があると言う……。


店名は、『人肉モリモリラーメン』と言う気持ちの悪いもの。しかし、結構流行っているのだ。


 この店に入った3人の大学生の中に、自分の父が、地方で、心療内科や精神科の病院を経営していた学生がいた。


 この学生が、店主の異様さに感づいたのだ。


 この学生が、この店のラーメンには、本物の、人肉じんにくが入っているのではないかと疑問を持つ。


 ラーメン屋の店主は、じんにくでは無くて、ニンニクだと言う。


 果たして、このラーメンには、人肉が入っているのか?


 一体、どう言う理由なのだろう!!!



 この話は、この「人肉ラーメン屋」にまつわる一連の物語で、そのラーメン屋がどうやって作られたかを追求していくと言う、異常な物語である。



 悪名高いアルフレート・ローゼンベルクのナチス・ドイツを持ち上げた『二十世紀の神話』の、二十一世紀版だと、思って読んで頂ければ幸いである。


第一章 人肉ラーメン屋


 東京の「三軒茶屋」の飲食街の奥深くに、一見、何の変哲も無い、古びた一軒のラーメン屋があると言う……。



 日本での、コロナ渦が、収まって数年後。



 東京では、そう有名では無い私立大学の学生3人が酔っ払って、そこら当たりをうろついていた。



 何でも、古い木造の店だが、とても、旨いラーメン屋があると、噂を聞いていたからだ。



「あれが、その店なんじゃない、結構、賑わっているし」



 その内の一人が、そう言った。皆で、店に入ってみた。



「でも、『人肉モリモリラーメン』って言う店名は、ちょっと、気分が悪いなあ……」



「確かに、太ももの肉から血が滴り落ちる絵柄を、店の看板に使うとはねえ……全く、商売センスを、疑うよ」



「なあに、単なる、洒落だろうよ」

 そんな、雑談を交わしながら、3人は、店ののれんをくぐった。



 席は、十数人が座れるほどで、丁度、3席空いていた。



「じんにくモリモリラーメン、3丁、お願い」



 すると、50歳近いラーメン屋のおやじが、にやっと笑って、



「じんにくじゃねえですよ、ニンニクモリモリラーメンですよ。よっしゃ、3丁ね」



 確かに、ニンニクの香りがもの凄い。



 人肉じゃ無くて、ニンニクか?



「しかし、不思議な肉の味だなあ、親父さん、これ何の肉?」



「それは、奥多摩地方で取れた、天然のイノシシの肉を、煮込んだものなんですよ。

 俗にジビエ料理と言う奴で、今までに喰った事、無い味でしょうが?」、と、また、にやっと笑う。



「ちょっと酸っぱい味ですが、まあ、喰えない味じゃ無い。ニンニクの香りが凄いし、こりゃ、隠れた名店だと言うのも、良く、分かるなあ……」




 話は、これで終わる筈だった。




 しかし、大学生の一人の松本均は、ラーメン屋の店主の、「にやっと」笑った表情が、非常に気になったのだ。



 あの不気味な笑いは、一体、何だ!どこか、おかしいのだ。

 非常に不思議な疑問を感じた。



 松本均の父親は、地方で、個人病院の心療内科や精神科の医者をしている。しかし、かって患者に刺されそうになった事と、息子の成績も非常に悪かった事から、自分の息子には、敢えて医者を薦め無かったのだ。



 だが、小さい時から、精神を病んでいる患者を、山ほど見て来た松本均には、父親の病院で見て来た患者と同じ匂いを、そのラーメン屋の店主に感じていた。



 あれは、絶対に、おかしい!



 何かが変だ。大体、イノシシの肉など、それほど、奥多摩地方で取れるのか?



 自分は、奥多摩地方には行った事は無いが、それほど、イノシシが多数、生息しているとは、聞いた事も無い。ニュースでも聞いていないからだ。



 また、毎日、何十盃、何百盃の、ラーメンを提供するには、それ相当の、イノシシの肉が必要では無いか?



 これは、一度、調べてみる必要があるのでは無いのか?



 次の日、大学で、昨日ラーメン屋に行った、田中圭と、赤城一郎に、自分の考えを伝えてみた。



「何だって、じゃ、松本は、昨日、俺たちが食べた肉は、本物の人肉だと言うのか?」



「ゲエ、ゲエ……」と、田中圭が、急に吐く。

 急いで、ハンカチを出して押さえたものの、ハンカチ一枚は、戻したゲロでパーになった。



「それは、ここの新聞記事を見れば良く分かるんだ。読んでみろよ」と松本均は言った。



 新聞記事には、新しい知事が就任して2年目の成果として、路上生活者が753人減ったと、警視庁も認めている。



「確か、この前、東京都知事になった女性知事:人羅景子ひとら けいこの、公約は、路上生活者ゼロ、犬猫の殺処分ゼロもあったなあ……」 と、田中圭も頷く。



人羅景子ひとら けいことは、まるで、ヒトラー景子にも聞こえるが、不気味な感じがするなあ……。

 しかも、所属する政党は、「日本民主主義国家統一党」など、かってのナチスを彷彿とさせるしなあ」と、赤城一郎も同様である。



「まあ、それはそれとして、問題は、この753人と言う数字なんだよ。

 いいかい、人羅景子ひとら けいこは、都知事就任後、まず例の路上生活者の削減のために、奥多摩に収容施設500人の施設を建設したのだ。理由は、奥多摩地方は地価が驚くほど安いらしい。で、その後も、まだまだ建設予定らしい」



「で、その施設の収容率は?」と、田中圭も、おそるおそる聞く。



「その収容所のホームページを見ると現在入居者は9割だと書いてあった。

 では450人として、残りの300人近くは、何処へ行ったのだろう?

 ちなみに、身寄りの無い路上生活者が亡くなった時のために、死体焼却場も併設されているのだ」



「何だって、死体焼却場もあるのか?」と、赤城一郎も驚く。



「本気で路上生活者を救うつもりなのかなあ?」と、ようやく、気を取り直した田中圭も、同意する。



「だったら、あのラーメン屋の店主の行動を追う必要があるなあ。俺は、東京の世田谷区のマンションに住んでいて、車もあるし運転も出来る。よし、俺が、車を出そう」と、赤城一郎も賛同してくれた。



 そして、次の日の朝から、そのラーメン屋を見張っていた。



 午前8時の朝早くから、2人で、こっそりと、そのラーメン屋を見張っていた。



 午前8時30分に、フンフンと鼻歌を歌いながら、店を出て、近くの駐車場に歩いて行く。手には、もの凄く大きなクーラーボックスを二つ持って、軽のミニバンに乗った。



「今、出たぞ、赤城、車で追跡だ!」



「オーライ」



 やがて、約2時間半もかけて奥多摩に着いた。何と、そこは、都知事の公約通りに最初に作った、500人収容の、路上生活者の収容施設では無いか?



 一体、何なんだ、この施設は?



 路上生活者を救う施設では無かったのか?



 そう言う疑問も抱きながら、やがて、午後過ぎには、例の、ラーメン屋に戻ってきた。



「で、どうする?」と、田中圭が、心細く聞く。



「最後まで調べてみよう」と、松本均が言う。



「ここまで来たのだ、松本の言う通りだよ」と、赤城も賛同。



 で、おそるおそる、ラーメン屋の厨房に入って行く事にした。ドアの鍵が開いていたからだ。ここは、「三軒茶屋」でも、最も、奥深いところでもある。



 昼なお暗い、飲食街の街の外れだ。



 しかし、おお!そこで3人が見たものとは?



 何と、フンフンと、鼻歌を歌いながら、大きな鉈のようなもので、叩き切っていたのは、ああ、何と、人間の太ももでは無いか!!!



 ドバッと、鮮血が飛び散る。



 這うように、店から出た3人は、早速、警察に連絡する事にした。



 しかし、何処に連絡すれば良いのか?

 殺人事件なら、捜査一課なのだが、例の施設の関係もある。



 そう言えば、人羅景子ひとら けいこ都知事は、就任と同時に、警視庁に、「路上生活者対策課」を新設したと言われている。



 まずは、ここに、連絡すべきであろうと、皆の意見が一致した。



 代表して、松本均が、 三軒茶屋でのラーメン屋での、真実の姿を、警視庁に連絡した。



「分かりました。まずは、その店主に気づかれ無いように十分に気をつけて下さい。

 至急に、私服警官を普通車で行かせます。何処に、今、おられますか?」と、早速の対応を約束してくれた。



 やがて、約束の場所に、1台の車がやって来た。2人の男が降りてきた。



 そして、自ら警察手帳を見せた後、何と、3人に手錠をかけたでは無いか!!!



「一体、何をするんだ」と叫ぶ、松本均。



「残念ながら、3人とも、一週間後には、ラーメンの具でしょうね……」と、1人の警官が、冷たく、言い放ったのだ。



「貴方達は、見てはいけないものを見てしまったのですよ、運が悪かったね。じゃ、行こうか」と、もう一人の私服警官も言う。



「何を、馬鹿な事を言っているんだ。お前らは、本当に警視庁の刑事なのか?」と、松本均が、最後の抵抗を試見たが、警棒で、後頭部を殴られた。



 松本均が、再び、猛烈な痛さのあまり目が覚めた時、既に、彼の両足は、叩き切られた後だった……。




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― 新着の感想 ―
[良い点] 文章がしっかりしていて読みやすいです。 [気になる点] 特にありませんので一言の参照を願います。 [一言] すべての作品がほとんど完結しておりますが、長編は書かないのでしょうか?
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