第77話 俺ひょっとしてモテ期来ちゃうんじゃね?
「もう! 佐久間! どうするのよ! ピアノ!」
「どうするのって、どういうこと?」
「この曲のリスト見た? しかもピアノの担当全部じゃん! こんなの1ヵ月ちょっとの練習じゃ無理だよ!」
「まあ、初見の人にはそうかもね・・・」
俺は、前世で弾いた事あるからな~
この間、ハルちゃん先生の前では、初見でとか嘘ぶっこいてたけど。
「ちょっと! 先生のところに抗議しにいくから付き合って!」
「え~ 面倒くさい・・・」
「アキラくん? さおりんが何か可愛そうだよ。 付き合ってあげたら?」
え~ もう、アッコちゃんに言われたら断れないんじゃん。
「わかったよ・・・もう・・・」
そう言って、小沼に連れられて職員室へ。
そして、ハルちゃん先生の所へ抗議にやって来たわけだけど・・・
『ガラガラガラ』
「先生、学習発表会のピアノの事で、話たい事があるんですけど」
「どうしたの? 小沼さん? それに、佐久間君まで・・・」
イヤ、俺はただの付き添いっていうか。
「なんか、8曲も初見の曲を1ヵ月ちょっとの練習期間じゃ無理って言いたいそうです」
「う~ん、そっか~ でも曲は減らせないしな~ どうしようかな~」
もう、だからオペレッタという名の、ほぼガチバレエ劇なんて小学生には無理なんだって。
「先生さ~ ピアノってそれぞれのクラスから2人ずつ候補が出てるんだよね?」
「うん、いまの所、佐久間君含めて6人いるよ」
「そいつら、候補じゃなくて、全員参加させて。 俺もう全曲弾けるからさ~ 俺がファーストピアノやるから、セカンドピアノをその子達に1曲ずつやらせたら?」
「1曲ずつだと、5人だから人数たりないよ?」
「誰か2曲できるか相談して、それでも無理なら、俺が残りの曲ソロ版の楽譜で弾けば良いんじゃないの? たとえば花のワルツとか、長いじゃんあれ」
「そっか~ それならなんとかなりそうかもね? じゃあ、ちょっと他のクラスの女の子にも聞いてみるね」
他のクラスのピアノ候補は、全員女の子だけなんだ・・・
これで他の女子と練習とかしてたら、また木下に浮気したとか言われるのか俺は。
なんかそれはそれで、憂鬱だな~
「ていうかさ~ ハルちゃん先生?」
「なに?」
「なんで、今回こんな本気のバレエ劇みたいな出し物になったの? 何か、3組の先生が演奏会みたいなことするって言ってたらしいけど」
「えっ? 女の子中心に、バレエ劇がやってみたいってアンケートが沢山あったのに~ 男の先生達がみんな無理っていうから、私がやりますって言ったら、どうぞどうぞって、劇に決まっちゃんたんだよね~♪」
イヤ、犯人お前かよ。
どうぞどうぞって・・・男の先生達もどうなのそれ?
どうりで、前世でこんなガチバレエ劇みたいな、オペレッタなんてやった記憶ないもん。
小西を追放したことで、また歴史が大きく変わっちまったのかよ。
「そうだ! 佐久間君?」
「なんですか?」
「午後からのオーディションの時、ピアノは佐久間君が弾いてよ!」
「はぁ~ なんで俺?」
「だって、もう弾けるんでしょ? 先生、ダンスに歌にちゃんと見て審査したいから・・・ダメ?」
また・・・そうやって、あざと女子全開の・・・ダメ? って可愛く言ってんじゃね~
生徒を誘惑してんのか? この先生は・・・
「もう、良いけど。 俺にはピアノ弾くメリットが無いんだけど?」
「この間、病院からお家に送ってあげたでしょ?」
ええ!? うそやろ? マジかよ・・・ずるくないそれ?
「だってあれは・・・ ちょとずるくないそれ?」
「なによ! こんな可愛い女の子の運転する助手席でドライブ出来たのよ! ちょっとした彼氏気分だったでしょ♪」
はっ? なにそれ? 自分で言っちゃう?
ダメだ、こいつ・・・
てか、可愛らしい顔して、やることエグないか? この人・・・
「もういいです・・・」
「キャハ~ ありがとう♪ 私~佐久間君のピアノちゃんと聞いてみたかったし~」
この人、天然ぶってるけど・・・
絶対、これワザとなヤツ。
完璧に、あざと女子だなコイツ・・・
わかってやってますよね?
「ふん、ざまあみろ!」
「はぁ? 小沼! てか、お前2曲くらいなら出来るんじゃないのかよ! たいした難しくないじゃん」
「無理なものは無理! フンだ! 私より先に、生意気にショパンなんて弾いちゃってさ~」
はぁ? なんだ? お前それ嫉妬か?
「佐久間君、もうショパンとかやってるの? 凄い!」
うわっ・・・ 面倒くさい人に聞かれた・・・
「こいつ、ピアノの先生の超お気に入りなんだよ先生」
「はぁ? なんだそれ?」
「だって、私のレッスンの時に、佐久間君の音が凄い綺麗なのとか。 あなた佐久間君と同じクラスなんだって? あなたも頑張ってね~とか・・・うるさいのよ!」
美姫姉には、色々話してたみたいだけど。
まさか、小沼にまで、俺の話しているとは思わなかった・・・
もう、勘弁してよ~ おばあちゃん先生さ~
「じゃあ、今日のオーディションは~ このピアノソロ版の楽譜で弾いてよ~」
「はっ? てかさ~ 弾けるよとはいったけど、なんていうの? わかるでしょ? あなた音楽の教師でピアノ弾く人なら?」
「えっ? 別に今日は音符通りにメロディラインを弾けるだけで十分だも~ん」
だも~ん・・・って。
少女か? あんたは・・・
「音楽性の追求は・・・ 本番までに、楽譜全部さらって完璧にしてくれれば、それでい・い・か・ら♪ ふふっ♪」
やっぱり、この人鬼だ・・・小学生にこんなこと言う人おる?
しかも、笑顔が怖すぎる・・・目が笑ってない・・・
絶対、この人、中学の先生になって吹奏楽とか合唱部の顧問とかなっちゃダメな人・・・
ガチすぎて、エンジョイ勢の部員が次々やめちゃうタイプの先生や・・・
「イヤ~ 佐久間君みたいな子がうちのクラスに居て良かった~♪」
ダメだ、俺この人のせいで、めっちゃ目立ちがりやな人みたいになっちゃう・・・
ううう、小沼なんかについてくるんじゃなかった。
◇◇◇
『はい皆~ 静かにして~ これから、学習発表会のオーディションを始めます。じゃあ、最初はクララ役の人達前に出て来て1人ずつ出て来て、歌とダンスを披露してもらいます』
クララ役ね・・・
ウワ! 何あの二人・・・ マジかよ?
ガチもんのバレエシューズ履いてるじゃん。
うわ~ もうクララ役に立候補した子ら可哀そう。
もうこんなの出来レースやん。
あの二人以外無理だって。
『じゃあ、伴奏は1組の佐久間君が担当しま~す♪』
もう! 言わんで良いって・・・
俺は目立ちたくないのに!
ピアノの位置だって、皆から譜面台で俺の姿見えないような位置にしてもらったのに!
うわ~ なんか・・・ザワザワしてるって~
そうだよ、男子がピアノ弾くんですよ!
悪いかよ・・・ はぁ~ なんか萎える・・・
ん? なんだ? 小菅?
「ちょっと」
「なんだよ?」
「ミスしないでよね! あんたのせいで落ちたらただじゃすまないから!」
「・・・別に、俺がミスったって、お前でもう決まりだろ!」
「分からないじゃん!」
「はぁ? お前と、あの坂下って子の本気のガチ装備見たら、もうお前ら二人で決まりだろ!」
「まあ、それもそうね。 でも、私・・・本気なの。 だからミスしないでよね」
はぁ~ あいかわらず性格ワッル!
てか、わざわざ、それ言うためにこっちくるか普通・・・
小菅見て目をトロンとしちゃってる男子どもよ~
コイツのこういう性格わかってんのか?
『うわ~ 小菅可愛い・・・』
『本当綺麗・・・』
こんなのチートがすぎるだろ?
もう、他の普通の女子じゃ相手にもならないって。
他の子達のダンスなんて、見てらんないよね・・・
てか、数人もう戦意喪失しちゃってるじゃん。
小菅のあのドヤ顔、もう完全に雑魚乙って感じだもんな~
残念・・・他の女の子・・・楽器担当へいらっしゃい。
僕らと一緒に、裏方やろうぜ・・・
あ~あ、俺もオーディションちゃんと見たかったな~
ピアノ弾いてたら全然見れないじゃん。
いくら過去に弾いた事あるって言ってもな~
もうかなり忘れてるから、楽譜ガン見しないと弾けないから、全然オーディション見れないし。
あ~ ピアノを弾く代わりに、投票権10人分とか貰わないとなんかわりに合わないんだけどな~
ん? そうか・・・ イヤ良いこと考えた♪
ムフフフ・・・
そうだ、藤さんとアッコちゃんのオーディションの時、他の立候補した奴らの時、ワザとルバートして踊りずらくテンポ揺らしてみたら~
俺って天才じゃね? 微妙にテンポずらしただけじゃ、他の連中には気づかれないし~
ピアノ押し付けられたんだから、これくらいしたって許されるよね。
まあ、なんつ~の? グレーゾーンってヤツ?
俺がたまたま、演奏に酔っちゃって、ルバートしちゃっただけだもん。
誰にも俺を責められない・・・
はぅ~ これで、可愛いアッコちゃんの妖精姿と、くるみ割り藤さんが見れるじゃないか♪
くくく、完璧な作戦だぜ。
◇◇◇
「アキラくん! やった~♪ オーディション受かっちゃった♪」
「よかったね~ アッコちゃん」
ふふふっ、作戦大成功やね~
ちょっと、数人テンポ揺らしてるのに気づいて、こっち睨んでたけど・・・
そんなの関係ね~!
俺がマスターオブゴット、すべては俺の手の内なのさ!
「ついでに~ 藤さんもオメ~♪ よかったね~ ハマり役で~」
「本当によかったのかな・・・ なんで俺受かったんだろう?」
そりゃ~ 他の生徒がテンポをちゃんと取れなかっただけだよ~
あと、事前に秀樹と他のサッカー少年団の連中に頼んだ組織票のお陰やろ。
俺と剛に感謝したまえ。
「んで? 木下? お前なにやんの?」
「ん? 私はあゆみちゃんと一緒にリコーダー」
「あ~ 楽器担当ね・・・」
「てか、あんたって本当にピアノ凄かったんだね?」
「はぁ? 何をいまさら・・・」
「だって、初めてちゃんと聞いたもん! てか、会場に居た女子みんな、あんたに釘付けだったんだけど」
会場に居た女子が俺に釘付け? なんだそれ?
そんなレア現象、経験したことないが?
「はぁ? なにそれ?」
「私、他の組の女の子に、めっちゃあんたの名前聞かれたもん」
「へ~ あっそう・・・」
え~ 俺ひょっとしてモテ期来ちゃうんじゃね?
「ちょと! 何デレデレしてるのよ! あんたにはアッコちゃんが居るでしょ!」
「まあそうだけど、モテる分には悪い気はしないし~ ね? アッコちゃんも、自分の彼氏は少しくらいモテた方が嬉しいでしょ?」
「えっ!? そんなの、イヤ!」
えっ? イヤ・・・なの?
「イヤ、モテ無いダサい男子よりは~」
「イヤ! ヤダ!」
あれ? ちょっと怒ってる? なんで?
「えっと・・・なんで怒ってるの?」
「もう! 顔がデレデレしてたもん! なによ浮気もの!」
「イヤ、だって・・・浮気って。 まだ何にもしてないんだけど・・・」
「何にもしてないって何!? これから浮気でもするの!?」
えっ? うそ・・・なんでそうなるの?
てか・・・やっぱり、アッコちゃんって、ちょっと独占欲強めなのかな?
「土曜日は、何回もキスしてあんなに愛を確かめあったのに? なんで浮気者? 落差あり過ぎて、耳がキーンってするんだけど!」
「えっ!? なんて? なにそれ? アハっ!? キーンって何?」
ん? ヤバ・・・思わず・・・
またパクっちまった・・・
「イヤ、だって土曜日はあんなに・・・」
「てか、みんなの前でキス、何回もしたとか言わないで! バカ!」
だって・・・浮気者とか言うから・・・
そんな顔真っ赤にして恥ずかしがらなくてもな~
もし気に入っていただけたり、少しでもおもしろいなと思ったら
ブックマークや目次下の☆☆☆☆☆を★★★★★へ評価していただけると励みになります。




