第76話 えっ? 秀樹王子様役に立候補するの?
『はいじゃあ、先週お話した、12月の学習発表会の劇だけど。 先生が考えて来た、舞台進行とそれぞれの登場人物と、配役を簡単にまとめた資料を配りま~す♪』
そう言って、おそらく週末通して一生懸命考えて来たであろう資料を配り始める。
それにしても、ハルちゃん先生ご機嫌だな。
えっと・・・
第一幕のクリスマスパーティのシーンで・・・登場人物が?
主人公のクララと友達、クララのドロッセルマイヤーと意地悪な兄貴。
それと、悪いネズミ達と、おもちゃの兵隊が戦うシーンか。
で? 1幕の終りに、くるみ割り人形が王子様に変身っと。
で第二幕がお菓子の国を冒険に出かけて~
もう第二幕はほとんど内容がバレエなんだが?
最後に、花のワルツで舞踏会みたいになって~
クララが夢の世界から目をさます~みたいな?
意地悪な兄貴と、悪いネズミ達って・・・
川上とか高橋がいたら、ぴったりの配役だったな~
ふっと、横を見ると、日曜日に退院して、今日から学校に来ているアッコちゃんが真剣な顔で先生の資料に目を通している。 はぁ~ やっぱり、隣の席に、アッコちゃんが居るって、なんて幸せなんだろうっと、デレデレしながら、ず~っとアッコちゃんが眺めていると・・・
「ん? 何さっきから、ニヤニヤして見てるの?」
「えっ? だって~ アッコちゃんが学校に居るのが嬉しくって」
「もう、バカ・・・ じっと見ないで、恥ずかしいから~ てか、アキラくんは資料見なくて良いの?」
「俺は、どうせピアノの奴隷らしいから・・・」
「ハハハ、そっか・・・そうだってね?」
「アッコちゃんは、少女クララやりたいって言ってたよね?」
「え~ 少女クララは無理だよ・・・」
「なんで? アッコちゃん、手足はすらっと綺麗で、白いドレス着たらスッゴイ似合いそうなのにな~」
「ダメだよ・・・ 少女クララはどうせ、ルナがヤルから・・・」
ん? 小菅瑠奈?
「なんで、るなっちがやるとダメなの?」
「だって、あの子、小っちゃい頃からバレエやってたみたいだから、ルナが来たらクララはあの子に決定だもん・・・」
あいつバレエやってたんだ・・・ 普段から姿勢良くって、体育座りしている時も、常に背筋ピーンっとしてたのって、優等生ぶってるだけかと思ってたのに違ったのか?
「へ~ あいつバレエやってるんだね・・・ じゃあ、アッコちゃんどれに立候補するの?」
「え~ じゃあ、金平糖の精か、序盤の子供達か~ 最後の、花のワルツのダンサーかな?」
「金平糖の精良いね、ソロだし目立つね?」
「えっ? ソロ?」
「そうだよ、ソロって書いてあるし」
ん? 藤さんも難しい顔してんな~
「藤さんは何するの?」
「え~ おもちゃの兵隊かな?」
「王子様やんないの?」
「王子様!? そんなの無理だって!」
「でも、藤さんほら、顔四角いし、くるみ割り人形似合いそうだけど?」
「アハハハ、アキラくん。 それ酷いよ~」
イヤ、アッコちゃん・・・めっちゃ笑ってるし。
想像したんでしょ?
藤さんにそのままくるみ割り人形のメイクしたマヌケな姿。
「はぁ? 俺って、顔四角い?」
「うん、四角いよ。 めっちゃ人形映えしそう」
「お前、バカにしてんだろ!」
「イヤ、そんな事はないんだけどな~」
アッコちゃんが学校にいるだけで、なんか空気が和むな~
先週までなら、こんな冗談、藤さんとも話せなかったし。
「で? 人形やらないの?」
「だって、人形って、王子様になるんだろ?」
「えっ? でも、第一幕と、第二幕だと王子様役別だから、一幕の人形は藤さんがやれば良いのに? たぶんカクカク動くだけじゃね?」
「えっ? 本当に? それじゃやってみようかな・・・」
ぷっ、やるのかよ!
でも、第一幕のお人形さん役って。
たしか、クララに抱きしめられたり、するんじゃなかったっけ?
バレエガチ少女に、舞台上で抱きしめられる人形役って・・・絵ずらシュールすぎるだろ。
『は~い、じゃあ皆~ 希望の役割を記入して、それぞれ列の前まで送って~ それじゃ~ 明日から役のオーディションをやるので、一度参考の映像見てもらいま~す』
参考の映像? まさかとは思うけど・・・
うわ!? やっぱり、ガチのバレエの映像やん。
こんなの、小学生の劇でやらせんのかよ~?
そういえば・・・曲って? 8曲!?
1カ月ちょっとの練習期間で8曲!?
イヤ、ハルちゃん先生正気か!?
ん? なんだよ小沼のヤツ。
なんか、アイコンタクトで苦情らしきこと言ってるな。
イヤ、だって、こんなガチって思わないし・・・
それにしてもな~
俺なんで前世の小学5年生の劇の内容覚えてないんだろう?
こんな、大掛かりな劇なら少しくらい記憶に残ってても良いのにな~
そんなに面白くなかったのかな?
う~ん・・・謎すぎる・・・
◇◇◇
「アキラ~ サッカー行くぞ!」
「えっ? ああ・・・」
剛、あいかわらずテンション高いな~
「剛は、役は何にしたの?」
「えっ? 俺は、おもちゃの兵隊~」
まあ、おもちゃの兵隊は人気だよな?
そこそこ目立って、正義側だし・・・
「オッス!」
ん? 秀樹?
「秀樹~ 今日3組って、学習発表会の役とか決めた?」
「うん、希望だしたよ」
「何にしたの?」
「えっ? 俺は第二幕の王子様」
えっ!? マジ?
「えっ? 王子様役って、バリバリバレエみたいな事するよね?」
「だって、るなっちの隣に立つのは俺しかいないだろ!」
「ウハ~♪ 秀樹君~ カッコイイ~♪ るなっちの為だって~♪」
「はぁ? うっせ~ぞ剛!」
剛・・・目がバカにしすぎ・・・
ということは、るなっちは、やっぱりクララ役に立候補したんだな。
アッコちゃんの読み通りだな。
「へ~ てか、あいつバレエガチ勢って知ってた?」
「ガチ勢?」
えっ? ガチ勢が通じないのか?
「えっと、子供頃から真剣にバレエやってたらしいよ? 本物ってこと」
「知ってるよ。 まあ、今日知ったんだけど・・・」
「へ~ でも、アイツ第二幕なんだ?」
「うん、第一幕のクララは、坂下がやることになったから」
坂下? 坂下って、坂下美樹か・・・
たしか、前世で秀樹が6年生頃に、好き好き騒ぎしてた子だよな?
「二人共バレエ経験者で、ジャンケンで第一幕と、第二幕を3組で別々に希望だすことにしたから。でジャンケンに負けたるなっちが第二幕だったの」
あ~ それで、第二幕の王子に秀樹が立候補したのか~
でもさ~ 秀樹・・・
王子様役って・・・格好ヤバくないか?
もしガチのバレエ服だったらどうするんだよ・・・
もろ・・・もっこりさんなんけど~
絶対、これ・・・黒歴史化すると思うんだけど・・・
まっ、本人気づいてないみたいだしイイか。
「へ~ じゃあ、オーディションの時、秀樹に票入れてあげるよ~」
「本当!?」
「剛もいれるよね?」
「えっ? うん、入れる入れる~」
「えっ? じゃあさ~ 秀樹~ 第一幕のくるみ割り人形役と~ 金平糖の精の役はさ~ 1組の候補に票いれてよ~ 俺秀樹に票入れるように、1組の連中に声かけておくからさ~」
「えっ? マジ!? じゃあ、俺も1組の票協力するよ!」
よし! これでオモロイ、くるみ割り人形藤さんと、可愛いアッコちゃんが見れるかもしれん!
「ていうかさ~ なんでオペレッタなんだろうね?」
「えっ? 女子達が芸術鑑賞で見て、くるみ割り人形のバレエが良いって言ったからだろ?」
「ん~ でも前うち先生がなんか、全クラスで演奏みたいな事言ってたような気がするんだけどな?」
全クラスで演奏? ん? 3組の先生そんなこと言ってたんだ?
なんで、急に劇になったんだろう?
「えっ? そういえば、アキラは? 何するの?」
「あっ? どうせ、俺はピアノの奴隷だよ・・・」
「あ~ ねぇ・・・相変わらずだね?」
「そうだね・・・毎度ながら・・・ ピアノやってるってだけで、いっつも俺は楽器だよ」
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