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第74話 ピアノ担当の押し付け合いがいつも苦痛すぎる


『は~い、皆聞いて~ 12月の学習発表会なんだけど、前に皆から希望を取った結果、くるみ割り人形のオペレッタをすることに決まりました』


学習発表会?


そっか、そんなのあったな~

俺、小学5年生の時、そんなオペレッタなんてやったっけ?


あんまり記憶ないな~

ていうことは、あんまり楽しく無かったんだろうな。


てか、なんでくるみ割り人形?

しかもオペレッタって?


希望を取ったっていつだろう?

俺がタイムリープしてくる前に話し合いしたってことなのかな?


「ねえ? 藤さん、なんでくるみわり人形なんだっけ?」

「えっ? 9月の芸術鑑賞で、くるみ割り人形のバレエ観に行って、それで女子どもがやりたいって騒いでたからでしょ?」


なるほど、それでか。

 にしても、バレエのくるみ割り人形ってハードル高そうだな~


『来週、役割を決めるので~ やりたいパートを皆考えてきてね~』


『先生!』

『なに? 早川さん?』

『これピアノ2台って、こんなのピアノやってる人しか出来ないですよね?』


出た! このパターン・・・


合唱コンクールしかり、学習発表会しかり、ピアノやってる人=強制的にピアノみたいな。


またかと思い。

いつものメンツで、またしょうも無い押し付け合いが始まるな・・・


『まあそうね。 誰がピアノ弾けるの?』

『え~ 佐久間に、梨沙と、さおりんと、あとカオタン?』


ハイハイ・・・


『先生!』

『何? 小沼さん?』

『ピアノは佐久間で良いと思いま~す』

『どうして?』

『えっ? アイツが一番、レッスン進んでるから』


はじまった・・・

同じ教室、同門同士で、逆マウントでの押し付け合い・・・


『じゃあ、ピアノの1枠は佐久間君で良いかしら?』



「アキラ? 聞かれてるよ」

「えっ? うぜ~な・・・」



『てか、山森と、千葉とかやりたいんじゃないんですか?』

『そうね、立候補はいる?』


シーーーンーーー


まっ、そうなるよな。

あいつら目立つの超嫌いだから。


『誰もいないみたいだから、やっぱり佐久間君で良い?』

『もう一人の候補は、俺が指名して良いなら、ヤッテやっても良いけど~』


そう言って、小沼と目があったので、ニヤリと意味深な表情をしてやる。

それを見て、露骨に嫌そうな顔をする小沼。


ふん! お前、俺を売っておいて逃げれると思うなよ!


『じゃあ、佐久間君で、残りの枠は佐久間君のご指名ということだけど?』

『先生、もう一人は小沼さんでお願いしま~す』


『小沼さん良い?』

『え~ ヤダ~!』

『でも、佐久間君のこと推薦したの小沼さんだし・・・』

  

いつもの、お決まりの押し付け合いという不毛な争いが終って・・・


俺的には、ハメられた小沼への意趣返しで、ご指名権を獲得して、逆指名してやっただけなんだが。

あのヤロ~ 話し合いが終わった途端に、シクシク泣きだして、悲劇のヒロインに・・・


で・・・こうなると・・・


「佐久間~! さおたん泣いてんじゃん! あんたのせいよ!」

「さおたんが可哀そうでしょ!」


小沼の取り巻きの女子が集団で、ワラワラと抗議にやって来る。

女子が集団で、男子一人を責めだすと・・・


「はぁ~ 元はと言えば、小沼がアキラに押し付けるようなマネするから悪いんだろ!?」


頼んでもいないのに、何故か俺の加勢にワラワラあつまる男子共。


それとは別の第三勢力・・・


「佐久間~ 小沼のこと好きなの~?」

「アッコちゃんが居るのにまずくな~い?」


ただただ、誰が好きだの、そういったゴシップが大好きな連中が、ニヤニヤしてやって来る。

その中に、何故かこのバカも・・・


「アキラく~ん♪ 小沼のこと好きだったの~? え~?」

「うるせ~な剛! お前はなんなんだ!」

「え~ だって~ 二人っきりでピアノ弾くなんてさ~ エロくない?」


本当に剛はこの手の話になると・・・

噂好きの、近所のおばさんかってくらいしつこい。


そして、遥か遠くの席から、1人だけ俺を睨みつける女子が・・・


イヤ、お前の言いたい事はわかるけど。

別に、好きとかそんなんじゃないじゃん。


アッコちゃんが居ながら、小沼なんかに手を出してと言わんばかりに、木下のアホが、凄い顔して睨んでくるし・・・


小学生って、面倒くさい・・・


「ていうかさ~ 他のクラスでピアノ弾きたいってやつらが居たら、そっちに決まるかもしれないだろ? 1組の候補ってだけでしょう?」

「そんなの、わかんないじゃん!」


そもそも、小沼が余計なこと言いださなかったら、1組はピアノ候補無しで、他のクラスの連中に決まってたかもしれないのに。 まったく、勇み足なんだよ小沼のヤツ。


はぁ~ あの頭のおかしい4人が居なくなって、これで少しは静かに暮らせると思ったのに。

どうして、こうも俺の周りはいつも騒がしくなるんだ?



『ガラガラガラ』 



休み時間に、不意に先生が入って来て、いままで俺の周りでワイワイやってた連中も含めて一瞬静かになると。 急に入って来たと思ったら、ハルちゃん先生がモジモジしながら・・・


『佐久間君、小沼さん、ちょっと話があるんだけど~ 職員室でお話出来ない?』


その、男を誘惑するような物言いで、職員室に生徒を呼ぶのやめて欲しいんだけどな~ 

そう思いながら、渋々と先生の後をついて職員室へ。


まだ、ちょっとスンスンと涙を拭きながら、小沼もついてくる。


職員室へ入ると、なんか妙に浮かれてるハルちゃん先生・・・


「ねえねえ、こっち来て~♪」


お前は俺の彼女か? ってくらい可愛らしい声で誘ってくる・・・

もう、この人絶対男の人に勘違いさせちゃうタイプだよな。


そんな事を考えながら、先生に呼ばれるまま、職員室端のソファーの席に向かうと。


「ねえ? 小学5年生で、これってもう弾けるのかな?」


そういって、目の前にくるみ割り人形のピアノの楽譜を広げる先生。


「ん~ まあ、これくらいなら、初見でもただ弾くだけならできますけど・・・」

「はぁ!? こんなの、初見で弾けるわけないでしょ!」


なぜか小沼がちょっとお怒りモードで反論してくる。


「うちらまだ小学生だよ! こんなの無理だよ!」


そうかな~っと思いつつ・・・


「う~ん・・・やっぱり難しいか~」


そう言って、眉間にしわを寄せて何やら悩み込み先生を見て。


「これピアノソロの楽譜でしょ? 2台ピアノ用の4ハンド用なら、弾けるんじゃないの?」


まあ、その分二人で、合わせるの面倒くさくなるけどと思いつつ提案してみる。

なるほど、なるほどっと言いながら、何やら色々一人で考え出す先生。


なんでこの人、こんな張り切ってんだろう?


「先生さ~ なんでそんな張り切ってるの?」

「えっ? 先生が、舞台演出全般担当になったからなの~♪」


なるほど、そういことか。


「でも、この間来たばっかりの先生がなんで?」

「私、音楽の先生の免許も持ってるからね~」


そういことか、経歴見て、他の先生に押し付けられたって感じか。

それにしても、やる気満々だな・・・


「ねえ、これさ~ ピアノを弾く子が指揮もやったら超かっこよくない?」


弾き振り!?

そんなこと小学生に出来るわけないじゃん!


「あと、オケ部の構成はどうしようかしら?」


オケって・・・


「えっと、先生? リコーダーに、ピアニカ、トライアングルに、大太鼓、それにアコーディオン、あと木琴、鉄琴くらしか楽器ないっすよ?」

「そうだよね・・・楽譜どうしようか?」


先生がなんの楽譜を見ているのか、手元を覗き込むと・・・

こいつ・・・マジか・・・?


ガチのオケ譜・・・オーケストラ用の楽譜見てんじゃん!

 

「えっと・・・先生? あの、オケ譜はいったんやめない?」

「どうして?」

「無理があるって・・・」

「そうかな~?」


イヤ・・・この人は・・・


「せめて、吹奏楽版の楽譜をベースで、うちにある楽器ごとのパート譜作った方が良いとおもうけど・・・」

「そうか~ そうだよね・・・」


この人、ガチのバレエ劇でもヤル気だったんか?

役者担当っていったいどんなことやらされるんだ?


「てか、あっちゃん?」

「なんだよ? てか、学校でそれヤメロ」

「さっきから、何話してるのかさっぱり意味わかんないんだけど・・・」

「イイよ、分からなくて。 ハルちゃん先生が音楽オタク過ぎて、小学生には絶対出来ないような事をやらせようとしてたから、無理よって説明してただけだから」


「ひっど~い! 音楽オタクとか言っちゃって~」


また、そうやって、プンプンスタイルしちゃうしさ・・・


「でも、何か二人ってすっごい仲良しなのね? なんで?」

「えっ? だって、こいつとはめっちゃ小さい頃から、ピアノの先生が一緒で・・・なあ?」

「なあ、とか気安く話しかけないでよ!」

「ふ~ん、佐久間君って一途だと思ってたのに・・・なんか先生がっかり・・・」


はぁ? なに言ってんだこの先生は?


「先生! やめてよ、佐久間とはそんなんじゃないから!」

「ハハハ・・・ごめん・・・」


はぁ~ この先生の頭の中って、そりゃもう綺麗なお花が沢山咲いてるんだろうな~

そんな事を考えながら、いったいこの人が、どんな演出プランを考えてくるのか、一抹の不安を感じながら職員室をあとにした。


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