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第72話 お姉ちゃん、今日はもう無理だよ・・・


 『チャプン・・・ピチョン』


「どうしたの?」

「なんでもない・・・」

「今日は、あっこちゃんの所に行かなかったの?」


美姫、うるさい・・・放っておいてよ。


「学校から帰ってくるの遅かったから、行けなかったの・・・」

「ふ~ん・・・なんか、また元気ないね?」

「べつに・・・ふつう」

「でも、そうやってお風呂の淵に顔を乗せて、ボケ~ってしてる時っていっつも悩んでる時だよね?」


もう美姫は、俺のこと、事細かに観察しすぎなんだよ。

今日は、もう放っておいてよ・・・


はぁ~ アッコちゃん。


「ふふふっ、おかしい」


はぁ?


「なに笑ってるの?」

「イヤ・・・べっつに~♪」 


何だコイツ・・・何1人で浮かれてんだよ?


「普通に日課になっちゃったね~?」

「なにが?」

「お・ふ・ろ♪ ふふふっ」


ん? たしかに・・・もう最近なにも疑問も持たずに、美姫からおいでとも言われずに、普通に入ってるかも。


恐るべし、年上の女の謀略。


俺いつのまにか、完全に毒されてたのか?


「ねえ? なんでお風呂一緒に入ってるのか忘れたの?」

「なんだっけ? あれ・・・おかしいな・・・とっても重要な事を忘れてる気がする・・・」


なんか弱みを・・・

夜中、エッチした夢みて出しちゃったの見られたからだっけ?


ちがうな・・・


なんだっけ?


「今週末、アッコちゃんの誕生日よね?」

「あっ!?」


そうだった! なんで俺はすっかりと忘れてたんだ?

最近ゴタゴタに巻き込まれすぎて、スコーンって忘れてた・・・


そもそも、お風呂だって、アッコちゃんが何を欲しいか聞きだすタメだったじゃないか!

はぁ・・・でも、アッコちゃんいつ退院できるんだろう?


動物園デートは無理だよな・・・

とりあえず、欲しいものでも聞いとくか。


「でっ? 姉ちゃん、もうそろそろ教えてよ。 アッコちゃんの欲しいもの?」

「え~ どうしようかな~」


デタ!


「オイ! ズルいぞ!」

「え~ じゃ~あ~ アキラが~ 中学卒業するまでお風呂に一緒に入ってくれるって約束したら教えてあ・げ・る♪」


なっ!? 中学生・・・だと!?

イヤ! 無理!無理!無理!

えっ!? 中学生って・・・えっ!?


姉ちゃん・・・本気か?

もうその頃になったら、姉ちゃんだって、完全な大人の女に・・・


「無理! さすがに中学生までは無理!」

「え~ ヤダ!! まだずっと一緒にお風呂入るの!」


ヤダじゃないって・・・

さすがに中学生までは、マッズイって。


「無理! 絶対無理!」

「私だって無理! 絶対譲れない!」


「うぅぅ、中2まで! それが限界!」

「イヤよ! 中3まで!」


イヤ、美姫・・・無理だって。

中坊に、大人の女と一緒にお風呂に入れだなんて、絶対に無理!


もう、いまだって、ギリギリだって言うのに・・・


「やっぱり、せめて中1まで!」

「イヤよ! じゃあ、高1まで!」

「オイ!!」

「エヘヘヘ~ だって~! イヤなものはイヤ! そんなことされたら、私寂しくて死んじゃう!」


そんなんで死ぬかよ。

アホが・・・


ん? てか・・・

何言ってんだコイツ。


「てか、姉ちゃんさ? そもそも、樽商入ったら家出てっちゃうだろ?」

「はっ? なんで、あんたが私の志望校しってるのよ?」


えっ? ヤベ・・・また先走った。


「えっと、イヤ、あれ? あっ、そうだ! この間、美姫の部屋を掃除した時に、何かそんなの見たような気がするから」

「部屋掃除? あぁ、してもらったみたいだけど。 え~? そんな、進路相談の髪なんて部屋に置いてあったっけ?」


「置いてあったもん! てか、床に散乱してたのは、全部ひとまとめにしておいたから、いまはどこにあるのかよくわかんないけど」

「まあ、別に、進路相談の髪なら、この間出したから別に良いけどさ。 でも、わたし、別に受かっても、家なんて出てかないわよ」


イ~ヤ! お前は絶対に家を出て行きます。

学校に通うのが大変だからって言って、受かったすぐ愚痴を言いだして。

夏前に引越ししました!


前の人生で、俺は知ってるもん・・・


「そっ、それに! 姉ちゃんなんて、どうせ大学入ったら、速攻彼氏とか作っちゃうだろ!」

「はぁ? そんな予定も未来の希望もありません! わたしは~ず~っとアキラと恋人でいるんだもん」


「そんなの、無理だよ・・・」

「どうして、そんなこと言うのよ? 無理とか言わないでよ?」


無理なんだよ!


大学に入った途端に、小樽に引っ越して・・・

俺のことなんて忘れたかの様に放っておいたクセに。


ずっと僕の恋人?


はぁ・・・まただ・・・

また、あの時の記憶が・・・


昔は・・・仲が良かったはずなんだ。

お姉ちゃん達が中学生頃までは、皆僕の周りで笑ってくれてたはずなのに。


そうだ・・・

なんか、少し思い出したよ。


小さい頃は、仲良かったはずなんだ。

一緒にお風呂に入って、毎晩一緒に寝て。


お姉ちゃんの膝の上に座ってテレビを一緒に見て。

どこに行くにもお姉ちゃんと手を繋いで・・・

仲が良かったはずなのに・・・


僕のせいなの?


思春期拗らせて、お姉ちゃんと一緒にいるのが恥ずかしくなって。

まるで、好きな子をイジメてしまうクソガキみたいな態度を取りまくった僕が悪いの?


お姉ちゃんから優しく、買い物に行こうって言われても。

姉ちゃんとなんて行きたくないって言ったから?


家族でお出かけした時、急に手を繋がれて。

もう、子供じゃないんだからヤメてって言ったから?


お風呂なんて一緒に入らない。

一緒に寝るのなんてイヤって・・・言ったから?


気づいたら、お姉ちゃんは僕の事なんて見てくれなくなっていた。

高校生になったお姉ちゃんは、僕の事なんて相手にもしてくれなくて。


親と喧嘩しては、アキラばっかりズルいとか。

アキラには甘いのにとか、僕を目の敵にするようになっていった。


僕はお姉ちゃんに何もしてないのに。

帰りが遅くなる事が多くなってお姉ちゃんは、よく親と喧嘩するようになった。


自分の部屋で勉強している時・・・

リビングから親とお姉ちゃんの言い合いの声が聞こえてきて。

アキラには・・・とお姉ちゃんに言われては胸を痛めていた。


浪人をして、ようやく大学に受かったお姉ちゃんだったけど。

大学生になったら、なったですぐ小樽に引っ越しちゃった。


たまに帰って来ても、僕には優しくなんてしてくれなくて。

お姉ちゃんの傍に居たくて、ピアノの下に潜りこんで本を読むふりをしてただけなのに。

ただ、傍に居たかっただけなのに・・・


目障りだからどっか行けって。

あの時の、僕を睨みつけるお姉ちゃんの顔はいまでも忘れられない。

本当に憎しみがこもったような目・・・


お姉ちゃんを近くに感じていたかっただけなのに。

それなのに、目障りとか言って、蹴ってきた・・・


テーブルに置いてあった、リモコンを落としてチャンネルが変わってしまった時も。

ワザとじゃ無いのに、急に僕の方を睨みつけたと思ったら、凄い勢いで棚に置いてあった置時計が飛んできた。


中学生の多感な時期に・・・

あんな、怖い顔されて、酷い事をされて。

本当に嫌われたんだと思ってた。


子供の頃のような優しいお姉ちゃんはココにはいないんだ。

そう、思ってた・・・


なのに。


中3の終り頃だっけ。


お姉ちゃんから、メールが来たんだ。


―――先週帰った時に、部屋に忘れ物したから、探して持って来てきて。



最初、間違いなんじゃないかと思った。

メアドなんてお姉ちゃんに教えて無いのに・・・


母親に聞いたら、昨日電話番号とメアドを聞かれて、教えたって。


本当に美姫からのメールなのか不安だったけど。

ドキドキしながら返信を返した・・・


すると、すぐに返事が帰って来て。

でも、探しているモノが見つからなくて。

メールで電話番号を教えてもらい、電話をしたら。


今まで何年も無視されて来た相手とは思ないくらい。

「どした~? みつからない?」


っと、あっけらかんとした声で、普通に話をはじめて来て。

何年ぶりかに聞く、普通のトーンのお姉ちゃんに声に、僕だけがドキドキしていた。


もう、夕方だったのに。

僕は、お姉ちゃんにそれを届けるために、西区役所の前から高速バスに乗って小樽を目指した。


小樽まで40分・・・


僕はずっとドキドキしながら車窓からの景色を眺めていた。


―――お姉ちゃんに会える。


いつぶりかもわからない。

お姉ちゃんが僕を必要としてくれた。

それが嬉しかった。


小樽の駅についてから、小樽商大行きのバスに乗り換えた。

お姉ちゃんに言われたバス停を目指して、バスのアナウンスを聞き逃さないようにと緊張しながら車窓を眺めていた。


―――ぴんぽ~ん、次は緑3丁目でございます。お降りの方はお知らせ願います。


僕はすぐに降車ボタンを押して、ドキドキしながら車窓を見ていた。

すると、歩道の柵に寄りかかっている、可愛らしい女の子が目に留まった。


その子を通り過ぎて、すぐバスが止まった。

一旦、その子から目を離して、僕は急いでバスを降りた。

そして、気になっていた女の子の方に視線を移した時―――


「アキラ~」


可愛らしい女の子がニッコリしながら、胸の前で小さく僕へ手を振ってくれていた。


いつぶりだっただろう・・・

あんなにも優しいお姉ちゃんの顔を見たのは。


お姉ちゃんなのに。

久しぶりにあった緊張から、少し人見知りをはっきしていると。

お姉ちゃんがススっと僕の傍まで歩いてきて、僕の手をキュッと握って。

コッチっと言われて、僕はドキドキしながら、お姉ちゃんと手を繋いで歩きだした。


緊張しながら、お姉ちゃんのアパートに行って。

相変わらずのお姉ちゃんの部屋の惨状に若干引いたものの。

なんとなく、それが妙に落ち着いてたのを覚えている。


お姉ちゃんが、ゴミ袋を持って来て、テーブルの上にあるゴミを雑にザザザッと袋に入れ。

綺麗になったテーブルの上に、飲み物を持ってきてくれたお姉ちゃんに。

ソファーに座ってと言われたけど。


当然、ソファーの上は、お姉ちゃんの下着やら服でぐちゃっとなっていて。

どこに座ったらと思ってたら、美姫に手を引っ張られて倒れるようにソファーに触らされてしまい。

すると、倒れた勢いでお姉ちゃんに覆いかぶさるようになってしまい。


また、怒られると思った瞬間。

キュッと抱きしめられて、首元にキスをされてしまった。


本当にあの時は心臓が止まるかと思った。

そして、お姉ちゃんの唇の柔らかい感触に、僕は固まってしまった。


完全にフリーズしてしまった僕の頭をお姉ちゃんは優しく抱きかかえてくれて。

お姉ちゃんの首元に抱きかかえられたまま身動きが取れなくなった僕は、お姉ちゃんの懐かしい香りと、抱き心地の良いお姉ちゃんの肌から伝わる温もりと、おっぱいのふわっふわの感触に心臓はもう止まりそうな勢いでバクバクと激しく行動をしていた。


いきなりどうしてって思ったけど。

懐かしいお姉ちゃんのその温もりと感触を僕は手放すことが出来なくて。

ポーっとしながら、お姉ちゃんの顔を見つめていると・・・


本当に愛おしそうな表情でお姉ちゃんが僕にキスをしてくれたんだ。

多感な時期の男の子が、可愛いお姉ちゃんにそんな事をされてしまって。

そのまま、大人しくしてることなんて出来なくて。


人見知りしてたのも忘れて、僕はお姉ちゃんを・・・


そうか、そうだった・・・


―――前の人生でもお姉ちゃんが好きだった。


思い出した。

お姉ちゃんと昔ずっと一緒に寝てた事。

アッコちゃんが転校してからずっと・・・

お姉ちゃんは恋人みたいに僕に・・・


でも、いつからか・・・

だから、酷いことされた記憶が印象強くて。


てか、なんで、いま・・・あの時のことなんて思い出しちゃうんだ?

ずっと、忘れてたはずなのに・・・


そうだ、美姫がアキラとずっと恋人でいるなんて能天気なこと言うから・・・


あの日・・・

僕が美姫に裏切られた日・・・


どうして、忘れてたの?


ヤダ! 思い出したくない!

あんな光景・・・


「ね~え~ アキラ~ なにボ~っとしてるのよ? お姉ちゃんとず~っと一緒にお風呂入ろうね~」

「・・・えっ? はぁ、はぁ、はぁ・・・」


お姉ちゃん・・・

いま、胸がギュッって。


「もう、どうしたの? 急にボーっとしだして・・・お姉ちゃんの話聞いてた? これからもずっと一緒にお風呂入ろうねって。 それで、それで、毎日一緒に寝て~ なんなら、もうお姉ちゃんフリーだから、アキラと付き合ってあげも良いわよ。 アキラの彼女になってあげる」

「―――彼女に? なってくれるの?」


もうヤダ・・・

あんな風に、他の男の人と寝てる姿なんて見たくない・・・


「えっ? アキラ? どうしたの、具合悪いの? そんな、胸抑えてどうしたの? えっ? なんで泣いてるの?」


今の記憶って・・・

なんで、いきなり?

ずっと、忘れてたはずなのに。


「アキラ? どうした、具合悪い? 息使いも変よ? ねぇ、大丈夫?」

「お姉ちゃん?」


「どうしたのよ? なにかあったの? 学校から帰って来てからずっと変よ? お風呂あがる?」

「ううん・・・嫌、まぁ・・・うん。 色々あり過ぎて、ちょっと疲れたかも・・・」


なんか、こっちに戻って来てから何か変・・・

忘れた事を無理やりこじ開けられてるような感覚っていうか。

なんだろ、まだこうモヤモヤ霧がかかったみたいに・・・


◇◇◇


「アキラ・・・だいじょうぶ?」

「うん・・・」


「もう、いきなり気を失っちゃうからびっくりしちゃったじゃない」

「そんな、泣かないでよ・・・たぶん、ちょっとのぼせただけだよ」


「なんで、お父さんもおかあさんもアキラもそんな平気でいられるの? 目の前でアキラがふっと意識失う瞬間、私・・・もうアキラが死んじゃったかと思っちゃじゃない」

「イヤ・・・僕、そんな簡単に死なないし・・・」


はぁ・・・どうやら、美姫のおっぱいにもたれかかって、急にお風呂場で気を失ったらしい。

気づいたらベッドで寝かされてて・・・


ベッド脇では、ワンワン美姫が死んじゃ嫌とか言って泣いてるし・・・

母親曰く、気を失っていた時間は、数分だって言ってたけど。


なんか遠くで声がずっと聞こえてて・・・

のぼせるまでお風呂に無理やり疲らせたんでしょっと、美姫の事を怒ってて。


イヤ、どうなんだろう。

昔の事を急に思い出して、頭の中がグルグルしだして。

急に胸が苦しくなって・・・


それにしても、どうして今・・・

僕は、裸でベッドに寝ているのでしょうか?

そして、美姫に添い寝されてます・・・


「もう、イヤよ・・・アキラがいなくなったらどうしたら良いのよ?」

「だから、そんな・・・お姉ちゃんがお前なんて消えろって言わない限りいなくなったりしないよ」


あの日みたいに・・・

僕の顔を見た瞬間・・・


「言うわけないでしょバカ」

「バカだもん僕・・・好きな人も守れないし、誰も救えない・・・」


「アキラのせいじゃないでしょ。 アッコちゃんのことは、アキラは頑張ったよ。 お姉ちゃんはアキラは頑張ったって思うもん。 なんで、そんな悲しい事いうのよ? アッコちゃんは無事だったでしょ? アキラが救ったのよ。 それに、来週はアッコちゃんの誕生日祝いするんでしょ?」

「えっ? あぁ・・・そっか、そうだったね・・・」


「どうしたの? 学校で何があったの? 帰ってからずっと元気なかったけど」

「アイツ等・・・何の罪にも問えないって」


「アイツ等って、アッコちゃんにケガさせた連中?」

「うん・・・」


「誰が言ってたの?」

「放課後、先生に呼び出されて。 それで、聞かされた」

「そう、それで・・・」

「憤りの気持ちをどこにぶつけて良いかもわからなくて。 お風呂入ってても色んな事が頭のなかをグルグルしてって・・・」


そしたら、余計なことまで蘇って来て・・・


「だいじょうぶよ、お姉ちゃんがずっと傍に居てあげるから。 どうして良いかわからない気持ちもお姉ちゃんが受け止めてあげる」

「受け止めるって・・・」


「男の子は、イライラしている時は、女の子を抱けばスッキリするって言うし」

「はぁ? どこで仕入れたくるんだよ、そんな意味不明な偏った知識をさ」

「え~ だって、私の友達が彼氏がイライラしてる時は、少し乱暴に抱いてくるけど。 エッチした後は、ごめんねって優しくしてくるから、そのギャップが好きって言ってたよ」


美姫の友達って・・・

てか、女子高生!

何て会話してんだよ。


「ねぇ、どこにもぶつけられないなら、お姉ちゃんのカラダで受け止めてあげるよ? する? もう、ずっとしてないでしょ? お姉ちゃんに甘えても良いのよ」

「そんな・・・お姉ちゃん? ダメだよ。 それに、僕まだ・・・そんなお姉ちゃんと、そういうことする気分じゃないし・・・」


アッコちゃんは退院したけど。

それでも、まだ・・・そんな・・・


「わたしは、もうずっとそうしたい気分なのに?」

「えっ? イヤ・・・それこそどうしたの?」


「だって・・・」

「だって?」


「アイツと別れた」

「―――別れた?」


別れたって、アイツとって。

えっ? 雄太と!?


「えっ!? いつ!? 別れたって雄太とってこと!?」

「うん。 金曜日に学校帰りに呼び止められて、そのままファミレス連れてかれて、それで・・・」


「それで?」

「なんか、会うなり、ごちゃごちゃ言われて。 アキラとのことも、何か色々言われてたら、どんどん腹が立って来て。 コイツ何が言いたいんだろうって思ってイラっとして帰ろうとしたら」

「したら?」


「急に大声で、なんで嘘なんて付いたんだって」

「大声って・・・お店のなかで?」

「お店の中で」


「周りからめっちゃ注目浴びたんじゃ・・・」

「めっちゃ見られたわよ! しかも、同級生もいたし」

「・・・なんか、お姉ちゃんも大変だったんだね。 なんか、色々ごめん」


「なんでアキラが謝るの?」

「イヤ、なんか、アイツのこと焚きつけたの、結果的に俺なのかもって思って」

「あぁ~ 時計買うの邪魔したって話?」

「あぁ・・・まあ・・・」


「確かにアキラのせいかも」

「ごめんなさい・・・」

「アキラが余計な事岩なったから時計貰えてたかもしれないのに」

「えっ? はっ? そこ?」


「だって、アイツの気持ちでしょ? 受け取るくらいはするよ」

「そんな、別れそうな相手からのプレゼント嬉しいの? 貰っても迷惑なんじゃ・・・」


「だって、ティファニーの時計よ?」

「えっ? あぁ・・・ねっ」


イヤ、そうだよね。

相手の気持ちは大事にしたいって、可愛い所もあるんだなって思ったけど。

ブランドモノだから・・・


「でも、姉ちゃん。 アイツ、君無しでは生きられないって、時計に刻印入れようとしてたけど。 そんな時計貰っても受け取れるの?」

「えっ? なにそれ、てか、そんな刻印あるヤツって売れるのかな?」


「はっ? 売れる? イヤ、売るつもりだったの?」

「えっ? だって、くれるってんだったら貰うわよ」

「イヤ、まぁ・・・そうだよね・・・」


「なによ? だって、私嫌だって言ってたのに、アイツにおっぱい揉まられたのよ!? それに、もうイヤって言ってるのに、しつこく何度も何度もキスされて。 太腿触られながら、おっぱい揉まれて、キスされたのよ!? 慰謝料くらい貰っても良いでしょ!?」

「えっと・・・あ~ ねっ。 うん、そうだよね・・・それは、うん、そうかも・・・」


えっと、それって、この間の。

車の外からは情熱的に愛しあってる様に見えてたんだけどなぁ・・・


「てか、そもそも、アイツが買おうとしてたのペアウォッチだけど。 ペアウォッチって売れるの?」

「そんなの知らない。 売れるでしょ、ティファニーよ」

「まぁ・・・僕は良く分からないけど。 てか、お姉ちゃん・・・キスとかおっぱい触られたって。 ひょっとして、ルスツ行く前からもう別れるとか考えてたの?」

「別にあの時はまだそんな事思って無かったけど。 でも、カラダには触れないって約束だったのに、最近ああやって触って来ることが増えて来てたから、何か嫌だなってずっと思ってたはいたかも」


カラダに触れない約束って、そんなに触れられたくないのか。

でも、それならなんで・・・


「ねえ、お姉ちゃん?」

「なに?」


「そんなに、カラダに触れられるのが嫌なら。 どうして、僕がお姉ちゃんのカラダを触った時は怒ったりしないの? 本当は嫌だった? 正直に言って、僕・・・お姉ちゃんが嫌なら、もうあんな事しないから」

「何言ってるのよ。 アキラは良いに決まってるでしょ」


「そうなの? 本当? 僕のこと傷つけるからとか、気をつかってるんじゃ?」

「はぁ~ もう、なんでアンタそうやって。 はぁ~」


「そんな深いため息をつかなくても。 ごめんね、そんな嫌がってるなんて思わなかったから」

「だから~! 違うって! なんで、アンタは昔からそうやって、すぐ遠慮するっていうか。 もっと素直に甘えて来なさいよバカ。 おっぱいあげるって言っても、モジモジして中々吸ってこないし。 お姉ちゃんのカラダに興味ありそうな顔してチラチラ見て来るから、一緒にお風呂入ってる時に、好きに触って良いよって言ってるのに、モジモジして触ってこないし! もう、昔っからず~っとそう!」


昔からって・・・

イヤ、なんか薄っすら記憶にあるというか。


だって、あの頃の美姫ってもう今そうたいして変わらないっていうか。

中学生の時にもうアナタ、女の子として完成されてたじゃないですか!


「ねぇ、だから。 お姉ちゃん、とっても傷ついてのよ。 アキラにあんな事があったからずっと我慢してたの。 アキラに傷ついた心を癒して貰いたいって思ってたのにさ。 あれから、アキラ全然甘えてくれないし。 今日だって久しぶりに一緒にお風呂入ってくれたから、嬉しかったのに、なんかずっと面白くなさそうにしてるしさ。 そして、急に気を失っちゃうから、お姉ちゃん・・・本当にどうして良いかわかんなかったんだから! 彼氏と別れて。 アキラまで失ったら、私何を支えに生きて行けば良いの~ バカ」

「イヤ・・・えっ? なんで?」


いきなり泣き出すとか、情緒不安定が過ぎるだろこの人。

そんな無理してるなら、別れなきゃよかったって・・・

違うか、もうキモくて、我慢が限界だったのか。


でも、そこまで嫌悪感抱えながら、アイツと一緒にいたとか。

俺、全然気づかなかったけどな・・・


嘘つき呼ばわりされて、我慢してたものがはじけたって感じか。

そう考えると、雄太のヤツ、同情は出来ないなやっぱり。


「ねぇ? この間、一緒に雄太に呼び出された時も、帰って来てから優しくしてくれたじゃない。 あの時みたいに、慰めてよ」

「えっ? 慰めてよって・・・この間? 一緒に呼び出されたっていつさ?」

「先々週の土曜日に、一緒にドンキーに呼び出されたじゃない!」

「えっ? あぁ・・・ドンキーね」


一緒って・・・俺はどこに行くかも知らされないで、美姫に無理やり付き合わされただけなんだが?

てか、あの日か・・・


帰って来てからって。

美姫が死んだようにソファーに倒れ込んで。

心配だから、頭ヨシヨシしてたら。


まぁ、倒れ込むようにソファーに俯きに寝てたから、スカートが全部めくれて、またパンツが丸出しになってて、それがどうしても目に入っちゃって・・・


それで、美姫が全然動かないし、反応も無いから。

なんていうか、また出来心というか。

誘惑に勝てなかったというか・・・


あの時みたいに慰めてって、アレはまた、違うじゃない・・・

それに、いまはあんなことする気分じゃないのに。


もう、可哀そうって思うけど。

本当に今日は無理、呑気にあんな事するような気分じゃないんだもん。


「ねえ?」

「なに、アキラ?」


「キスしてあげるから、それで元気だしてお姉ちゃん」

「キス・・・だけ?」


「だって、今日は本当にそう言う事する気分じゃないんだもん。わかってよ」

「もう、う~ん・・・じゃあ、穴埋めで今週末私とデートしてくれる?」

「今週末はアッコちゃんの誕生日だし・・・」


「土曜日か日曜日に少しくらい時間あるでしょ!? お姉ちゃんとデートして!」

「も~う、わかったよ・・・時間があったら考えてとくよ・・・」

「ふふっ、絶対よ! もう、嘘ついたら許さないんだから」

「嘘ついたら?」


「そんなの、このカラダで払って貰うんだから、覚悟しておいてよね」

「ゴクリ・・・このカラダって・・・」

「ふふふっ、少し寒くなちゃった? お姉ちゃんが抱きしめてあっためてあげるね」

「イヤ・・・ちょっと・・・」


俺のパジャマは?

どうして、母さんも俺のこと裸のまま放置したの?

てか、このまま朝まで?


「ふふっ、好きよアキラ。 チュッ、チュッ、チュッ」


そんな気分じゃないのに・・・

こんなことされてたら。


もう、違うのに、勘違いされちゃうよ・・・


「ふふっ、その気になっちゃったの?」

「これは違うから! お姉ちゃんが、そんな、恋人みたいにキスするから・・・バカ」


「だって、アキラの事が好きなんだもん。 だからさ、アキラ?」

「なに?」


「お姉ちゃんと付き合って? 私の彼氏になって。 お姉ちゃんもうフリーだから、全然心配いらないから、ねっ? 良いでしょ?」

「別にお姉ちゃんとは、わざわざそんな関係にならなくても。 その・・・もっと深い絆いたいなのがあるじゃんか・・・」


「もっと深い絆?」

「僕達、弟妹でしょ? 付きあうとか、そんなの無くてもずっと一緒じゃん・・・」

「まぁ、確かに・・・でも、私は彼氏って存在が欲しいの!」


「はぁ・・・周りに彼氏が出来たとか言い降らさなければ、別にそう思って貰う分には俺は良いけど・・・」

「言い降らさなければ、彼氏になってくれるの!?」

「まぁ・・・お姉ちゃんの心の中でそう思ってもらう分には別に僕は良いっていうか」

「本当に? それって、アキラもお姉ちゃんの事が好きってこと?」


「はぁ!? ・・・イヤ。 その・・・なんていうか、まあ、好きは好きかも」

「もう、またそうやって素直じゃないな~ このこの~」

「もう! 鼻ツンツンってしないでよ! 揶揄わないで、もう僕だって子供じゃないんだから」

「ふふっ、そうよね。 もう、子供じゃないもんね。 このこの~」


「ちょっと! どこツンツンしてるのさ!」

「怒らないでよ。 お姉ちゃんのキスでこうなっちゃったクセに~ ふふっ、こんなになっちゃうくらい、お姉ちゃんのことが好きなのね・・・ふふふっ、わかったよ。 お姉ちゃんと二人だけの秘密ね。 ふふっ、今日はアキラと付き合った記念日だね? これからは、毎月お祝いしようね~」


「イヤ・・・記念日とか無理」

「なんでよ~!?」

「はぁ・・・じゃあ、せめて年単位での契約ということで・・・」

「なによ契約って!」


「だって、毎月はきついって。 それに重すぎるし。 忘れた時の恐怖がとんでも無いからイヤ、無理!」

「も~う、重いって酷くない!? それに恐怖ってなによ!? まるで、私がめちゃくちゃ心狭いみたいな言い方しないでよ!」


イヤ、めちゃくちゃ心狭いじゃん・・・

それに気分屋だし。

いつ心変わりするか分かんないし。


どうせ、今はそうやって僕のこと溺愛してくれてても。

雄太みたいに、いつかは簡単に捨てられちゃうんだから・・・

もう、わかってるから。


だから、今回はもう、僕は深入りしない。

もう裏切られた時の苦しみに耐えられ気がしないし。

あんなのは、もう二度と経験したくないんだもん・・・


もし気に入っていただけたり、少しでもおもしろいなと思っていただけたら。

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