第67話 守れなくてごめん・・・君を傷つけてしまってごめんね
谷口君? えっ? なに? 怖い・・・
えっ、えっ? 高橋君に・・・川上さん?
えっ? 何これ?
溝口さんは? あれ? なに? 触らないで!
「ちょっと!! 痛い!! 離して!!」
「お前、ムカつくんだよ・・・」
「そうだよ、お前のせいでウチラがどんな目にあってるかわかってんのかよ!」
えっ? どういうこと? なんなのこの人達?
「痛い! ヤダ!! 離して!! ちょっと! どこに連れてくの!! ヤメて!!」
「ふん、お前なんかこうしてヤルよ!!」
えっ!? ウソ!! ちょっ!! 危ない!! 落ちる!!!
「イタイ! イヤ! 落ちる!! 痛い!! ・・・・・・」
ダメ・・・ 私・・・死ぬの? ヤダよ・・・
怖い・・・ アキラくん・・・
・・・・・・・・・
・・・・・・
・・・
・・
・
ンンッ・・・ ここは?
ああ、そうだ・・・ 谷口君と高橋君に掴まれて、藪の中に落とされて・・・
立たなッツ!? イタイ! 足? ヤバイ、足折れたの? イタイ・・・
それに凄い寒い! 手が震える、体全体が震えちゃう。 ダメだ、動け無い。
そうだ! アキラくんに貰った、あの銀色のシート。
あれに包れば・・・ 確か・・・バックに・・・
イツッ! 腕も、痛い・・・ 色んな所をぶつけたみたい。
よし、これに包って。
助け・・・呼ばなきゃ。 誰か助けて。
ダメだ・・・震えて声が出ないよ。
笛!? そうだ・・・笛・・・ポッケに。
これを吹いて・・・助け・・・呼ばなきゃ。
『ヒュルルル・・・・』
ダメだ・・・全然掠れて音がならないよ。
寒いよ。 イタイよ。
アキラくん・・・助けて。
ママ、パパ、痛いよ。
私、死んじゃうの?
寒い・・・暗い・・・怖いよ。
アキラくん・・・会いたいよ。
アキラ・・・
・・・・・ゃん・・・
??? なに? なにか聞こえた?
「アッコちゃ~ん!」
アキラくん・・・アキラくん?
返事しないと・・・
「ぁ・・っ・・・」 ダメ・・・声が出ない。
どうしよう、助けて・・・アキラくん
アキラくん・・・
「アッコちゃ~ん!」
アキラくん・・・ここにいるよ。
助けて・・・
ん? そうだ・・・笛・・・
『ヒュルルル・・・・』
「アッコちゃ~ん 聞こえたら笛を鳴らして」
『ヒュルルル・・・・』
お願い・・・気づいて・・・お願い・・・
「アッコちゃ~ん 聞こえたら笛を鳴らして」
『ヒュルルル・・・・』
さっきより、声が近い
アキラくん・・・わたし・・・ここにいる。
ここにいるの・・・助けて。
「アッコちゃん! わかる!? 俺だよ! アキラ! 聞こえる!」
「・・・アッ・・・アッ・・・」
アキラくん・・・アキラくん・・・アキラくんだ。
助けに来てくれた。
わたしのこと見つけてくれた。
「アッコちゃん? 俺が分かる? わかったら、俺の手を強く握って」
あっ・・・アキラくんの手・・・暖かい。
アキラくん・・・手・・・離さないで・・・お願い。
助かったの? アキラくん・・・
なんだろう・・・何してるの?
「アッコちゃん!? 待ってて、いま助けを呼んでくるから、もう少しの辛抱だから! がんばるんだよ!」
えっ? いっちゃイヤだ!
ここに居て・・・アキラくん。
アキラ・・・
ん? なんか・・・じんわり体が暖かい・・・
アキラくんが何かしてくれたの?
アキラくん・・・戻って来て。
お願い・・・1人は怖いよ。
アキラくん・・・
笛の音? アキラくんの声?
助けを呼んでくれてる。
アキラくん・・・
ごめんね、迷惑ばっかり。
アキラくん・・・
ん? だれ? この人達・・・
「岩崎亜希子ちゃんだね? もうだいじょうぶ! 助けに来たよ! よくがんばったね~ もうだいじょうぶだからね」
えっ? 助かったの?
アキラくんは?
アキラくん・・・
「オイ、これ・・・」
「カイロが入ってるな」
「よし、じゃあ、このままシートに包んだまま運ぶぞ」
助かるの? アキラくんどこ?
ママ・・・パパ・・・
なんかに揺られてる?
赤い光・・・
右手が暖かい・・・アキラくん?
アキラくんが・・・
・・・・・・
・・・
・・
・
◇◇◇
俺のせいだ・・・
俺がちゃんと一緒にいなかったから。
なんで、アッコちゃんを置いていったんだよ。
くそっ! くそっ! くそっ!
アッコちゃん・・・
「佐久間君?」
「ハルちゃん先生? アッコちゃんは!? アッコちゃんはだいじょうぶなの!?」
「だいじょうぶだって。 低体温症になってたけど、問題無いって。 でも、右足と左腕は捻挫してるって」
アッコちゃん・・・ごめん。
「佐久間君はがんばったよ・・・ 無茶してって怒りたい気持ちだけど・・・ 良く頑張ったね・・・偉いよ」
「俺のせいだ・・・ 俺が目を離したから・・・」
「君は悪くないよ・・・悪く無い・・・ ケガはだいじょうぶ?」
俺のケガなんて・・かすり傷だよ。
アッコちゃんに比べたら。
こんなの・・・
ん? 遠くから誰か走ってくる音がする。
この声・・・
アッコちゃんの・・・パパとママ。
くそっ・・・二人に合わせる顔が無い。
守るって言ったのに・・・
俺は・・・なんのためにタイムリープしてきたんだよ。
前世ではこんなイベントなかったのに。
俺がやったことってなんだったんだ?
全部意味がなかったのかよ?
ただ事を荒げて、イジメを大きくしただけ?
前世でのイジメは、陰湿だったけど、ただただ陰湿でその域を出ることは無かった。
こんな外的危害を加えるようなことはなかったんだ・・・
アッコちゃんは精神的に、ずっと辛かったかもしれない。
でも、今回みたいに体を傷つけられるようなことなんて無かったんだ。
俺がこの世に来たせいで・・・
なんでこうなった?
なんで・・・
「佐久間君?」
アッコちゃんパパ・・・
謝らないと・・・謝らないと・・・
「お父さん・・・すいません! 僕が不甲斐ないせいで・・・すいません、すいません、すいません・・・すいません・・・」
「止めてくれ。 そんな土下座なんてするんじゃない。 ダメだよ、君のせいじゃないだろ!」
「でも・・・守るってお約束したのに・・・ すいません・・・ごめんなさい・・・」
「だいじょうぶ、だいじょうぶだ。 君のお陰で助かった。 もう少し発見が遅れたら危険だったかもしれないって言われたよ。 アコが助かったのは君のお陰だ! 防災シートに包んで、カイロでお腹の周りを暖めてくれたんだろ? 適切な処置だったって・・・だから、君があやまることなんてない。 君はアコの命の恩人なんだから!」
そんなことない。
俺がこの世にこなければ。
過去の未練に引っ張られて、この時代に来なければ、こんな事にならなかったんだ。
全部、俺のせいんなんだよ・・・
俺が悪いんだよ。
俺が・・・
「幸い、ケガもそれほどひどくないって、1週間も入院したら元通りに元気になるって」
違う・・・そうじゃ無い・・・
俺が悪いんだ・・・
俺がタイムリープなんかしなければ。
彼女にこんな苦痛を与えることなんてなかったんだ。
「アッコちゃんの・・・心の傷は消えない・・・」
「・・・・・・君も今日は疲れてるだろ? アコはもう大丈夫だ。 安心して今日は休め、いいね? 先生?」
「ハイ・・・すいませんでした・・・」
また、ハルちゃん先生に抱きかかえられて、情けなくシクシクと泣き続けてしまった。
◇◇◇
「落ち着いた?」
どれだけ泣いてたんだろう?
ハルちゃん先生が心配そうに声を掛けてくれる。
「お姉さんと、お母さんが迎えに来てくれたわよ」
「アキラ!? だいじょうぶ!?」
美姫・・・
「アッコちゃんに会いたい・・・」
「えっ? 病室に行きたいってこと? 先生?」
「う~ん・・・ちょっと待ってください。 聞いてきます・・・」
そう言って、ハルちゃん先生がその場からいなくなる。
「もう! アキラ! あんた、相当無茶したって聞いたわよ! もう、あんまり心配させないでよ!」
「無茶だってするよ・・・」
姉貴とそんな会話をしていると。
ハルちゃん先生が戻って来た。
「ちょっとだけなら、病室に入っても良いって。でも、寝てるから起こさないようにね」
そう言われて、恐る恐るアッコちゃんの病室へ入る。
病院の外の街頭の光が、病室に差し込んで薄暗い病室を、ゆっくりアッコちゃんの枕元へ。
さっきは、気が動転していたのと、焦っていたせいで、ちゃんと顔を見ていなかった。
額に、白い傷パッドが張られていた・・・
左腕は包帯を巻かれていて、それを見て胸がギュッとしてしまう。
ごめんね・・・アッコちゃん。
守れなくてごめん・・・ 君を傷つけてしまってごめんね・・・
彼女の、右手を軽く握る。
さっき救急車の中で握った手はすごい冷たく冷え切っていたのが、いまは少し暖かくなっているのを感じた。
彼女の手の温もりを感じて、やっと気持ちが落ち着き始める。
本当に助かったんだと、実感できたから・・・
「また、明日くるね。バイバイ・・・」
そう言い残して、1人病室を出る。
心配そうにこちらを見ていた美姫が近寄って来て、手を繋いでくれた。
アッコちゃんと同じ暖かさを感じ、また泣きだしてしまう。
「帰るよ、アキラ・・・」
そう言われて、母さんの運転する車で、その日は家に帰った。
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