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第63話 えっ? 剛・・・ハルちゃん先生にマジ惚れしてる?


「アキラくん? なに? その大量の荷物は?」

「これ? これは、いざという時のための装備っていうか・・・」

「いざというとき?」


 小沼から、高橋達が公園で集まって、何やらひそひそと相談してたと教えてもらってから1週間・・・

 ずっと警戒はしていたが、特に1週間の間、これといったことは起こらなかった。


 そして、今日からは『国営滝野すずらん丘陵公園』にある青少年の家に泊まる、1泊2日の宿泊学習。


 国営滝野すずらん丘陵公園は北海道で唯一の国営公園。

 敷地400ヘクタールと、東京ドーム85個分、たくさんの花畑に、大型遊具、3つの滝を散策できる森林コースなどがある。 札幌市内の学校は、だいたいココで宿泊学習をする学校が多い。


 公園内は遊歩道も整備されているし、特に危険な場所も無いし、クマの防護柵なんかもあって園内はクマの心配なども基本的には無いはずだ。 色々整備されているから、遭難の心配もほとんどないような場所だから、ここで何かしようとしても大した事は出来ないはず。



 『皆さんおはようございます』



 『おはようございま~す!』



 『今日これからの予定です。この後すぐ野外炊事を各班ごとに手分けをして進めてもらいます。昼食は自分達で作ったカレーライスを食べます。 その後は、ハイキングに行く予定です』



 うちの班の区分けは、調理は『木下、あゆみちゃん、藤さん』の3人、用具係は『剛、溝口』の2人。

 そして、火起こし担当は、俺とアッコちゃんの2人で行う予定だ。


「アッコちゃん、何かあった時ように、これ持っててよ」


 そういって、救助を呼ぶとき用のフォイッスル、何かあっと時用の災害シートに、小型の懐中電灯をアッコちゃんへ手渡す。


「こんなの、何に使うの?」

「まあ、使わないで済むならそれが一番良いんだけどさ。 笛は山の中で誰か助けを呼ぶときに。こっちの銀色のシートは、寒さを防ぐように使って」

「うん・・・なんか、こんな装備を持たされるとちょっと怖いかも・・・」

「基本的には、俺がソバに居るから大丈夫だと思うけど。万が一だよ」

「うん・・・ わかった・・・」


 何も起こらなければそれで良いんだ・・・

 ただの杞憂ですめばそれが一番良いんだから。


 先生の説明と、青少年山の家の係員さんからの諸々の説明を聞き終わり。

 それぞれの担当する係ごとにちらばって作業しはじめる。


「剛と溝口は使用用具を持って来て」

「OK~ 溝口~ 行くぞ~」

「うん・・・」


 溝口・・・不満たらたらって感じだな。

 でも、お前を藤さん達と一緒に行動させるわけにはいかないだろう?


「アキラ達は火起こしだろ? さっさとカマドの準備に行けよ!」

「う~ん、カマドの火付けはすぐだから、こっち手伝うけど・・・」

「イヤ、こんな野菜の皮むきなんて余裕だから」


 自信満々に皮向き器でジャガイモの皮をむき始める藤さんだったが・・・

 使った事がないのか、めちゃくちゃ力を入れて削ぐように皮をむいてるせいで、親指の爪程度の皮がポロッ、ポロっと向けるだけで、全然皮が剥けていない・・・


「ねえ、藤さんさ~ そんなに力入れないで、もっと軽く芋に沿うようにしたら簡単に剥けるよ」

「えっ!? うるさいな~ やってるじゃん!」


 めっちゃイライラしとる・・・


「イテっ!」


 えっ!? どうした?


「藤さん?」

「イッテ~ 爪切った・・・」


 爪切った? はぁ?


「ねえ~え~ 皮向き器でケガする人初めて見たんだけど~」

「うるさいな! イッテ~ 血が出て来た~!」


 うわ~ 痛そう・・・

 てか、こいつどんなけ不器用なんだよ。


「藤澤君連れて先生の所行くから、アッコちゃん? その間、ちょっと皮むき手伝って」


 そう言って、あゆみちゃんが、藤さんを連れて、先生のところへ行ってしまう。


「なあ? 木下~ ああいうのを、お前がやるんじゃないの?」

「私だって言おうとしたけど、あゆみちゃんの方が早く声かけちゃったから・・・」


 本当かな? どう考えても芋の皮むきに夢中になってて、藤さんの事なんて見て無かったじゃんこいつ・・・ 負け惜しみがすぎますよ~ 木下さ~ん。


「なによ!? その人を疑うような目は!」

「だって・・・ ねえ? アッコちゃん?」

「アハハ・・・ あゆみちゃん、女子力高いから~」

「なに! アコまで! じゃあ私は女子力低いって言うの!?」


 まあ・・・そのたどたどしい手つきを見てるとな~

 それに、母性の塊のような、あゆみちゃんと比べれば・・・

 無理よ・・・木下・・・


「じゃあ、アッコちゃんは人参の皮むきお願い」

「アキラくんは何するの?」

「俺は、玉ねぎの皮向いておくよ」


 そう言って、包丁を使って、玉ねぎの皮を剥いて行く。

 前世で、ネット動画でプロの料理人の玉ねぎの剥き方を見たことがあるので、それを真似て剥いていく。


 俺の手元を見て、木下が目を丸くして・・・


「何そのワザ!?」

「えっ? こうすると簡単に剥けるし、無駄も少なく済むだろ?」

「・・・なんなのあんた! 超イラつくんだけど!」


 ん~ やっぱり、この皮の剥き方はどの時代でもヘイトを買うんだろうか?

 俺が見た動画の料理人も、リスナーから『手で剥けば良いのに、包丁で剥いてカッコつけてる笑』って言われて。 動画の中でキレてたしな・・・


 木下が隣でイライラするのを横目に、材料分の玉ねぎを全て剥き終わる。

 アッコちゃんも、にんじんの皮むきを全て終わらしたみたいだ。


「じゃあさ~ 木下。 俺ら、もうそろそろ、火を起こしてくるから、あとよろしくね」

「ああっ!? さっさと行きなさいよ! ふん」


 まあ・・・女の子のプライドを傷つけて悪かったよ・・・

 はぁ~ カレーの中にあいつらの、爪とか、血とかが入らないことだけを願うよ。


「ねえ? アキラくんって料理も出来ちゃうの?」

「えっ? イヤ、あれは・・・その~ テレビだよテレビ! ひとりでできるもんで昔やってたの見たって感じ?」

「え~? ひとりでできるもんって、あんな高度な技やってた?」


 まあ、小学生低学年向けのテレビだから、やってないかもしれないけど?

 まっ、いまはそんなこと確認する術がないし、バレはしないだろ・・・


「やってたよ・・・やってたの俺みた記憶あるし」

「ふ~ん・・・」


「そんなことより、さっさと火を起こしちゃおうよ」

「うん、そうだね!」


 まっ、大人になってまだ覚えてたら、あの時のって思われるかもしれないけど。

 10年もたったらそんな事、覚えてなんかいないはずだし~

 だいじょうぶ、だいじょうぶ。


 かまどに行って見ると、まだ他の班が火をつけるのに苦戦している様子だった・・・

 あ~ あれじゃ~ 火はつかないんだけな~ っと思いつつ。

 自分達の班のカマドで、火を起こしていく。


「なんど見ても手際良いよね? この間のバーベキューの時もあっという間に火をつけてたし~」

「まあね。 どうだい? こんなアウトドアで、簡単に火を付けちゃう俺。 ワイルドだろ~?」

「アハハハ! なにそれ! カッコ悪い!」


 ごめん・・・すぎ〇ゃん。

 思わず、パクッてしまった・・・


 でも、これも12年後にはもう忘れてるから。

 問題ない・・・たぶん・・・


「ねえ? 佐久間~ なんでそんな簡単に火が付くの?」

「ん? 小沼か? ん~ じゃあ、そっちのその火のついてない炭2個持って来てよ」

「えっ? これ? どうするの?」

「ん? うちのカマドで、もう火が付いた炭と交換してヤルよ」


 そう言って、小沼のカマドに火のついた炭を、分けてやる。 それを傍から見ていた、他の班の連中からも炭を交換してくれと言われ、1組だけ異常に早く火起こしが終わってしまった。 同じく、用具準備係の連中もやることが無くて、手持ち無沙汰でウロウロしている。


 時間があまった小学生がやることなんて、鬼ごっこしかないわけで・・・

 普段は、鬼ごっこなんて参加しない、小沼とかも参加するっていうので、他の男子の興奮度が高い。


 お前ら・・・どさくさまぎれて、小沼の体触る気満々じゃね~か。


 あ~ でも、久しぶりにアッコちゃんと、こうやって鬼ごっこで遊ぶな~

 本当にあんな風に笑うアッコちゃん見るのも久しぶりだな・・・

 はぁ~ 平和ってすばらしい~


 『なに~ 鬼ごっこしてるの? 先生もまぜて~』


 えっ? ハルちゃん先生?

 オイ・・・先生が鬼ごっこなんて混ざって良いのかよ?


 そんな事を思っていたら、周りの男子どもから、ただならぬ殺気というか。

 ハルちゃん先生を狙う、イヤらしい目線がぷんぷんと・・・


 剛まで、顔付きが変わっとる。


 イヤ・・・ハルちゃん先生、ヤバいって。

 しかも、今日のその恰好・・・


 Tシャツで・・・めっちゃ胸が強調されているし。

 ブラとかも、めっちゃ透けまくってますけど?

 そんな・・・おっぱい揺らして走ったら・・・



 あ~ もう言わんこっちゃないよ。

 男子から完全にヘイト買ってんじゃん。


 憐れ小沼よ・・・大人の女の前じゃ、お前の魅力もチリ以下だな・・・

 もう、逃げようが、捕まろうが、100%ハルちゃん先生に男子共が群がっとる。


 しかも、ハルちゃん先生の凄いところが、あんなに男子人気を一手に集めてるのに。

 全然女子からの反感を買ってないっていうのが・・・


 なんなんだ? あの男女とも両方から好かれる感じ?


 ハルちゃん先生、大人気じゃん。


 憐れ・・・小西よ・・・

 たった1週間で、もう誰もお前の事なんて覚えて無いぞ・・・



 『コラ~!! 鬼ごっこなんてしてる暇があったら、他の準備を手伝え!!』


 『え~!!!!』


 『え~ じゃない!! 早く、地下調理室の方に行って手伝ってこい! 小泉先生!! あなたまで一緒に遊んでどうするんですか!!』


 『はい・・・ごめんなさい・・・』


 うわ~ 可哀そう・・・ めっちゃ尾崎に怒られてるじゃん・・・



 ん? 剛? なにやって・・・




 『尾崎先生! 遥先生は悪く無いんです! 僕らが無理やり誘ったんです!』



 おっ・・・ 剛がハルちゃん先生庇ってる。 やるヤン!



 『はあ?』

 『遥先生は悪いくないんです!!』


 イヤ・・・語彙力・・・

 ごり押しかよ?


 『はぁ~ 小泉先生・・・ 人気だけはあるようですけど・・・ くれぐれも教師だってこと忘れないでくださいよ?』


 『ハイ・・・すいません・・・』


 オオ・・・ 尾崎が剛に押されて、引き下がった・・・


 『ありがとうね~ 石川君♪』


 オオ・・・ ハルちゃん先生に頭なでなでされて、幸せそうだ~

 イヤ、さすがこの間、ハルちゃん先生におっぱいパワー注入してもらっただけあるじゃん。

 てか、アイツ・・・マジでハルちゃん先生に10年後、告白する気なんじゃないだろうな?


 イヤ、だとしたら・・・

 これも俺のせいか?

 なんか、俺どんどん歴史変えちゃってるけど良いのか?


 前世で紹介された、剛の高校の同級生だった嫁はどうなるんだ?

 えっ? マジ、これでハルちゃん先生と、剛が結婚なんかしちゃったらマジでうけるんだけど。

 イヤ、この世界・・・今後の展開めっちゃ気になって来たんだが・・・


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