第60話 夕日に染まる紅葉は寂しい気持ちにさせるみたい
「イイ子だったわね?」
「そうだね・・・」
「顔も可愛らしくて」
「そうだね・・・」
「なによ? 気にくわないの?」
「だって、挨拶もちゃんとしているしさ、お土産なんて持って来て。もっとガキかと思ったら、なんか話し方もちゃんとしているし・・・ ちょっと、ひょろとして顔つきも女の子っぽいから、なよってしてるのかと思ったら、アコの事を守る約束したとか、泣かせたのは僕の責任とか、めちゃくちゃ男らしいじゃないかアイツ。 アコの事めちゃくちゃ大事に思ってくれてるのが、すっごい伝わって来てさ・・・ それに、バーベキューの準備とかも、気が利くし、あんな火付けも手際よくてさ、めちゃくちゃ頼りになるじゃないか!」
「良いところばっかりじゃない」
「そうなんだよ! もっと、ダメなヤツならって思ったのに・・・ アコがあんな、大好き大好きって言うのが、アイツ見てたら理解出来ちゃってさ・・・ でもさ~ あいつ俺のことお父さんとか言うだぞ! 絶対あれわざと、お父さんって呼んでるぞ・・・ 腹黒小僧かもしれないよ」
「そんなことばっかり言ってると、アコに嫌われるわよ」
「もう嫌われてるよ・・・」
「なんでよ?」
「だって、もう一緒にお風呂入ってくれないじゃないか・・・」
「そうね~ アキラくんと付き合い始めてから急に嫌がり始めたわね? それで余計にヤキモチ焼いてるの?」
「アコはまだ小学生だぞ? それなのに、いきなりあんなガキに取られて・・・」
「でも、彼のおかげじゃない、アコがあんな普通に学校に行くようになるなんて」
「はぁ~ 娘に好きな人が出来るって、こんなに辛いんだな・・・ 嫁に行くまで、そんな辛い思いなんてしないと思ってたのに・・・ わずか10年でこんな・・・」
「でも、アキラ君・・・ 転勤のこと気にしてたわね?」
「ん? そうだね・・・うちの事情知ってる感じだったな。 彼・・・子供なんだけど、話をしているとなんか大人っぽいっていうか・・・ なんかこの間のイジメ問題で学校に潜入したり、潜入時の話とか、先生達とのやり取りを聞いたりしてたら、すっごい大人っていうか・・・不思議な子だよね?」
「出来るだけ、長く一緒にいさせてあげたいな・・・」
「どうだろう・・・ 来年の春は、また分からないな」
「そうなの? 今回は3年はここに居られるんじゃなかったの?」
「なんか、どうなるかわからないんだよね・・・」
「せっかく、あんな素敵な彼氏が出来たのに・・・ アコ・・・また塞ぎ込んじゃうわね・・・」
「あいつなら、何か転勤先まで追いかけてきそうだけどな?」
「まだ小学5年生よ、そんなこと出来るわけないじゃない・・・ なんか、あんな二人を引き離すのって、辛いわね・・・ せめて6年生まで、小学校の卒業まで一緒にいられたら良いのに・・・」
「まあ、俺は別に離れたら離れたで良いけどな~ 彼氏なんてまだまだ早いんだよ! 何がマックのポテトとシェイクが美味しかっただ。 俺なんかチキンナゲットだって、アップルパイだって食べさせてあげるっていうんだよ!」
「なにに、対抗してるのよ? 大人げない・・・」
「でも、アイツは良いヤツかもしれんけど。 アコを嫁に出すなんてダメ! あんなひょろひょろで、小っちゃくて、食も細い。 あんなんじゃ将来アコを守れるような強い男になりそうにないもん」
「もう・・・いいかげんしなさいよ。 本当にアコに嫌われるわよ?」
◇◇◇
「美味しかったね~ バーベキュー」
「うん・・・そうだね・・・」
「どうしたの?」
「イヤ・・・なんか緊張しちゃってさ、あんまりこう・・・」
イヤ、俺基本的に人見知りだし。
完全なアウエー感・・・
周りの皆はめっちゃ親しい仲で、俺だけぽっつーんって感じで。
アッコちゃんが、隣で色々話しかけてくれたけど。
アッコちゃんパパの目線が、やたらと怖くて・・・
それどころじゃなかったっていうか。
アッコちゃんがお皿に取ってくれるもの以外、萎縮しちゃって全然食べれなかったもん。
「アッコちゃんパパって、やっぱり、俺がアッコちゃんの彼氏なのイヤだったりするのかな?」
「なんだろうね? なんか、あんな風にアキラくんに、意地悪言うパパキライ!」
でも、話した感じじゃ、転勤の話は、なんか話ずらそうだったな・・・
やっぱり、遠かれ早かれ転勤はあるんだろうな。
でも、アッコちゃん・・・
パパの前で、そんな嫌いとか言ったら、たぶんそのヘイト俺に向いちゃうよ~
「アッコちゃんパパも寂しいのかな?」
「寂しいね・・・ なんか夕日見てると寂しくなるね?」
ん? どうした? いきなり・・・
「紅葉も始まって来たしね、夕日のオレンジ色に染まると、より綺麗だよね?」
「アキラくん・・・ 札幌って良いよね。 私この町好き」
「そう?」
なんだろう・・・アッコちゃんが妙に感傷的だな?
「うん、適度に都会で~ お買い物とかちゃんと出来るけど、なんかこうやってすぐ近くに遊べる場所があって。 それにアキラくんもソバにいて・・・」
「うん、俺もアッコちゃんが居る、この町が好きだよ。 アッコちゃんが居る場所が、俺のいる場所だから」
「うん・・・そうだね」
さっき、俺がアッコちゃんパパに、転勤の話なんて聞いちゃったからかな?
なんか、感じ取っちゃったのかな・・・?
「ねえ、アッコちゃん? 28日の誕生日、一緒に動物園行かない? デートしよう? 二人っきりで」
「動物園? うん行く! 二人で!」
「じゃあ、約束ね?」
「うん、約束! 指切りしよ!」
「うん・・・」
そう言って、アッコちゃんが僕の胸の中に顔をうずめてくる。
そのまま、アッコちゃんをギュッと抱きしめ、しばらく無言で過ごす二人。
ああ・・・もう本当にこのまま時間が止まれば良いのに。
アッコちゃんとの、甘い時間がずっと続けば良いのに・・・
10月に入って、紅葉が始まった木々に、夕方のオレンジ色の光が射して、より鮮やかになった木々をを眺めながら。 なにも言わずに、ただ抱き合ってすごしていると・・・
『オ~イ! もう帰るって~!』
遠くから、ハジメ君が皆を大声で呼びに来る。
なんとなく、名残惜しそうに、アッコちゃんと手を繋ぎながら、ハジメ君のいる方へ歩き出す。
「ていうか・・・お前ら普段からあんな抱き合ってんの?」
「なに? ハジメ君 うらやましいの?」
「別に~ てか、ハジメ君ってさ~ 女の子に興味あるの? なんか、パソコンばっかいじってて、そういうの興味ないように見えるんだけど」
「そんなことないし・・・俺だって・・・女の子に興味ぐらいあるし」
「へ~ 誰? うちのクラス?」
「はぁ? うちのクラスなんかブスしかいないじゃん」
「オイ! よくも俺の前で、堂々とそんなこと言えるな?」
「はぁ? 岩崎なんて好みじゃないもん」
あっそう・・・ じゃあ誰なんだよ?
他のクラス?
「で? 誰なんだよ?」
「えっ? あそこにいるじゃん」
えっ? 他のクラスで・・・
あそこにいる?
ん?
「ハジメ君? ひょっとしてさ~ 間接キスでもしちゃった?」
「えっ!? なんで? 知ってるの!?」
やってんな~ あの女・・・
手当たり次第かよ。
なんなんだ?
頭脳明晰、真面目委員長。
サッカー少年団のエースの秀樹。
なんか、それっぽい連中に手当たり次第か、あの女・・・
「恐るべしだな・・・ 小菅瑠奈・・・」
「ねえ? アキラくん?」
「えっ? なに? アッコちゃん?」
「徳ちゃんも、ルナのこと・・・」
「なんかそうみたい。 どうしようかな?」
「すごいな~ ルナってそんなにモテるんだね?」
「えっ? アッコちゃんも、相当モテてるけどね」
「えっ? そうなの?」
「そうだけど・・・教えない・・・ アッコちゃんは俺だけ見てれば良いんだから」
「ふふふっ、バーカ。 そんなの当たり前じゃん」
◇◇◇
はぁ~ なんか・・・疲れた・・・
てか、おなかすいたな~
全然、食べれなかったもんな~
確かここに・・・ 焼きそば弁当が・・・
あった♪
フンフン♪
お湯は捨てずに、カップにイン♪
はぁ~ やっぱり、焼きそば弁当うめ~
このスープ付きっていうのが最高。
「あれ? アキラ帰ってたの?」
「えっ? うん」
こいつ今日1日家にいたのか?
本当に友達いないんじゃ・・・
「バーベキューだったんでしょ? なんでカップ麺なんて食べてるのよ?」
「えっ? ちょっと・・・アッコちゃんパパが怖くて・・・ あまり食べれなかったから・・・」
「あ~ なるほど」
ん? なんか、これだと俺がアッコちゃんパパの悪口言ってたみたいになるかも。
「イヤ、基本的にすっごい良い人だったんだけど・・・ まあ・・・まあまあ・・・そういうことだよ」
「ん? イヤ、いいよ、なんとなく伝わったから。 それよりさ~ 部屋掃除してくれたのアキラ?」
「えっ? いまさら・・・?」
「だって、昨日は帰ってから一緒にお風呂入って、一緒にテレビ見て、アキラの部屋で一緒に寝たから、全然気づかなかったんだモン」
まあ・・・そうかもしれんけど。
下着と着替え取に行った時に気づくだろ?
「あっそう。 酷い惨状だったよ。 カビの履いた菓子パンとか、いつ履いたのかわからん下着とか」
「そうよ! ちょっと文句言おうと思ってたんだけど!」
「なに?」
なんだよ・・・ 別にゴミっぽいヤツは部屋の一角にまとめておいたし。
なんも捨ててないから、そんな文句言われる筋合いないんだけどな~
「その下着さ~ なんで、ゴミをまとめただろう、一画に一緒に置いといたワケ? なんなの? 私の下着はゴミだって言いたいの?」
「えっ? だって・・・汚いじゃん・・・そんなの・・・ てかさ~ ご飯食べてる時に、汚い話するのヤメテくれん?」
「なによ! 私のパンツは汚いって言うの!?」
「イヤ・・・ 綺麗ではないでしょ」
「もう失礼しちゃう! バカアキラ! 今日の夕飯作ってあげないよ!」
「はぁ? 別にいいです~ 自分で作るもん。 冷蔵庫に確かひき肉あったの見たし、ミートソースパスタでも作って食べるから~」
「はっ!? あんたいつの間にそんな料理作れるようになったのよ? 包丁も握ったことないでしょ?」
ヤッバイ・・・
奥さんがあんまり料理作ってくれないから、youtu〇eとか見て、自分で作れるようになったとか。
言えないそんな事・・・
「えっと・・・あっ! テレビ! テレビで観たから! 作れる!」
「何で観たのよ?」
追及厳しくないっすか?
「えっ? ひとりでできるもん? かな?」
「はぁ!? あんた、あんなの観る歳じゃないじゃん」
「えっと・・・あれれれ~? 去年やってた、料理の達人だったっけかな? とにかく、どっかで見て知ってんの!」
「ふ~ん・・・ じゃあ、私もミートソースパスタ食べる」
はぁ? お前は自分で何か作るんじゃないのかよ?
「えっ? 美姫は美姫で作るんでしょ?」
「だって、ひき肉あるからハンバーグでも作ろうかと思ったんだモン。 でも、ミートソース作るんでしょ?」
ああ・・・ここでひき肉争奪戦ってわけか。
「じゃあ、美姫がハンバーグ作ってよ~」
「なんでよ! 面倒くさい!」
えっ? なにこの人?
「じゃあ良いです。 シーフードミックス冷凍庫にあるの見たから、俺ピラフ作るから・・・ 姉ちゃんはひき肉で何か作って食べれば」
「シーフードピラフ? あんた、そんなものまで作れるの?」
「はあ? 炊飯器さえあれば余裕で出来るじゃん!」
「ねえ・・・」
「なに?」
「ハンバーグ作ってあげるから・・・ その、ピラフ作りなさいよ!」
「なんで命令されないといけないんだよ!」
「わたしもピラフ食べたい!」
でた・・・我儘のごり押し。
もう、なんでこの人ってこんなに面倒くさいかな。
お母さん・・・早く帰って来ないかな・・・
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