第50話 5年1組には先生不在です・・・
「なに・・・これ?」
「こんなこと書くために、わざわざ休みの日に学校に?」
黒板に書かれた相合傘の落書きを見て、唖然とする二人・・・
まあ、アッコちゃんも木下も言いたい事はわかるけど。
そもそも、イジメとかしちゃう粘着タイプの人間だもん。
それぐらいするだろうな・・・
ああいうのが・・・将来ネットで大暴れするんだろうな・・・
「とりあえず、リコーダー回収しようか? あと藤さんは、ピアニカも?」
「うん・・・そうだね・・・」
さてと、ICレコーダーと、ビデオカメラはちゃんと収録できてるかな?
「ん? アキラくん? 撮れてる?」
えっと・・・ うん、ちゃんと撮れてるよ。
「うん、バッチリだよ。リコーダーの所までバッチリ写ってるよ」
「・・・・・・」
アッコちゃん・・・
ごめん、ショック大きいよね?
「ねえ? 佐久間? この落書きは?」
「えっ? それは、そのままにして、明日小西に直接見て貰う。 それで小西が真剣にイジメと向き合って対応するなら良しだし。もし無視して、イジメなんて無いとか言い出したら、俺が小西を制裁する・・・」
「なるほど・・・ わかった・・・ なんかイヤだけど」
ごめん・・・
明日これが明るみにならないと、イジメ無くせないから。
「アッコちゃん、色々ゴメンね。イヤな思いばっかりさせちゃって・・・」
「ううん、アキラくんのせいじゃないモン。 もしアキラくんが今日、こうやって調べに来てくれなかったら、わたし知らずに過ごすところだったんだから・・・ アキラくんには、ありがとうしかないよ・・・」
アッコちゃん・・・
ごめんね、傷つけちゃて。
「リコーダー・・・本当にごめん・・・ まさかあんな事されると思ってなかったから・・・」
「ううん、アキラくんのせいじゃないモン」
「音楽の時間、俺のリコーダーつかう? それもキモいか? ハハハ」
「アキラくんはなに使うの?」
「美姫のリコーダー借りるとか?」
・・・俺も十分キモイこと言ってんな。
「そうだね・・・ アキラくんとは、キスもしちゃっているし。 アキラくんの笛なら・・・ でも、アキラくんはイヤじゃ無いの?」
「イヤじゃ無いよ」
アッコちゃん、俺なら良いのか~♪
ハハ・・・俺は、なんて最低な方法で愛を確かめてんだ・・・
「えっ? アキラ? いま・・・キスしたって言った? アッコちゃんと?」
ウワッ・・・ ここに面倒くさいヤツがいたかも。
「えっ? あの・・・え~ ごめん・・・土曜日に・・・しました」
「そっか・・・ そうなんだ・・・」
ごめん・・・藤さん・・・
笛にピアニカでダメージ喰らってる所に、さらに塩を塗り込むような事しちゃってごめん。
「てかさ~ この映像あるから、アイツらに弁償させるっていうのもアリだけどね。 明日以降、親呼びつけて貰って交渉してみようか」
「えっ? そんなことできるのかな?」
「まっ、こんなの大人なら犯罪レベルなんだから、言うだけ言ってみるよ。 駄々こねたら、マスコミにでも送ってヤルとか脅してみる?」
「アキラ・・・ お前って結構・・・あれだよね?」
「なに? 藤さん?」
「イヤ・・・怒った時の行動とか考えが過激っていうか・・・ 対応厳しめだよね?」
「だって、俺にとって世界で一番大事な人をキズつけられたんだぞ・・・ あたりまえだろ? そんなの」
「そうだよね・・・うん。 てか、アキラ・・・目が怖いって・・・マジ感出しすぎ・・・」
だって・・・本気でいま怒りが・・・
さっきから、怒りで手が震えてるの、必死で抑えてるんだから。
俺の腕の中で、肩震わせて泣いてるアッコちゃんの姿が忘れられない。
俺は、結局なにひとつアッコちゃんを救い出せてないじゃん。
はぁ~ 守るとか言って置きながら、このありまさだ・・・
なんとも情けない・・・
「でも、佐久間? これでイジメなくなるかな?」
「とりあえず、あいつら全員変態のレッテル張られて、教室内では肩身狭い思いするだろうな? それに、小沼も敵に回すから、小沼、片瀬の1軍女子を敵に回すってことになるよね」
「なるほど・・・ さおりん達まで敵に回すと、かなり勢力図がガラッと変わるね」
小沼も・・・別に好きで1軍してるわけじゃないのにな~
見た目、ちょっと綺麗目で、派手だから、なんか自然とそうなちゃってるけど。
あいつ元々は、あんまり目立つのが好きな性格じゃないから。
今のポジション・・・辛そうだよな。
まっ、川上派閥と小沼派閥で拮抗してたから。
これで、小沼のグループが優勢って感じかな。
まあ、あの子達が中心になるんだったら、少しは空気よくなるかな?
「俺は今日家に帰って、この映像と音声のコピーデータを作って、明日学校に持ってくるよ」
あっ、いまの黒板・・・これもデジカメでも写真撮っておかないとな。
明日は、小西と話す前に、ICレコーダセットして、アイツの発言全部録音してやる。
小西がまた同じ態度とったら、そのまま職員室へ行って、学年主任の尾崎とっ捕まえて直談判してヤル。 それでも学校が何もしないなら、マスコミ、教育委員会へ今日と、小西の音声データ送りまくってヤル。
「じゃあ、今日は解散ってことで」
「佐久間~ なんか、ありがとう・・・」
「そうだね、アキラありがとう」
「イヤ、なんかこっちこそ、ゴメンだね。 リコーダーとピアニカ・・・」
「それはアキラのせいじゃないから・・・」
「じゃあ、明日朝みんな学校来たら、冷静に・・・ 大人しく席に座って待ってて」
「うん」
「わかった」
「アッコちゃん・・・」
「ん?」
「俺が絶対守ってあげるから」
「うん・・・ありがとう・・・信じてる」
◇◇◇
さて・・・ 教室の前に人だかり・・・
スーーーハーーー
よし! 戦闘開始だ!
「あ~ ちょっと・・・通して、通して~」
『あっ旦那が来た~』
まったく同じセリフ。
ん? 木下にアッコちゃん。
席に座ってろって言ったのに・・・
「おはよう」
「ん? 佐久間・・・ おはよう」
「アキラくん・・・ ぐすっ」
木下は冷静だけど・・・
アッコちゃん・・・やっぱり、泣いちゃうのね?
まあ、何か色々言われたんだろうな。
うん、黒板の落書きも昨日のままだな。
「おはよ~」
「藤澤君・・・ おはよう・・・」
「おはよう、木下・・・ だいじょうぶ?」
「うん・・・」
『ヒュー ヒュー 熱いね~』
『旦那登場!!!!』
『希美よかったね~ ラブラブじゃ~ん』
「アッコちゃん、席に座わろうよ」
「えっ? うん・・・」
「藤さんも木下も、席に座ろうよ」
『うん・・・』
『オーイ佐久間~ 嫁が泣いてるぞ~ 可哀そ~う』
『いつ結婚するんだよ~ キャハハハ』
『オ~イ! もっと反応しろよ!! 面白くね~な~』
『キンコンカンコ~ン キンコンカンコ~ン♪』
「朝からなに騒いでんだ~!! もうチャイムなってるぞ!! 早く座れ!!」
「・・・・・・なんだ? ・・・これ!?」
『・・・・・・ シ~ン~ ・・・・・・』
「誰だ? こんなの書いたの!?」
『・・・・・・ シ~ン~ ・・・・・・』
「誰が書いたんだ!?」
『・・・・・・ シ~ン~ ・・・・・・』
「佐久間!! 誰が書いたんだ!?」
まったく一緒か・・・
少しは変わるの期待したけど。
無駄だったか・・・
「イヤ、俺が知るワケ無いじゃないですか! 朝来たら、もう書かれてました!」
「朝から、こんなくだらない落書きを・・・ ほら! 早く、授業始めるぞ~!」
なるほど、ここまでは一切変化無しか・・・
「オイ! 待てよ小西!」
「何だ! 佐久間!? 先生に向かって、なんだその口のきき方は!?」
「今のそれって、いじめの証拠だろ!? この間、お前が証拠が無ければ何も手が打てないって言ってたよな? 今、目の前にイジメの証拠あったじゃん! なんで無視すんの!?」
「別に、こんなのただの落書き、イジメっていうほどでもないだろ!」
「なあ、小西・・・ お前にとってイジメのラインってどこからだよ?」
これは慈悲だ・・・
お前が、最後の最後で自分の良心にしたがって動くなら、許してヤル。
「イジメ? こんな、子供のいたずらで、落書きなんてイジメじゃ無い!」
「小西・・・ イヤな事をされて、精神的に苦痛を感じる生徒が発生した時点で、それはもうイジメなんだよ。 なあ、小西・・・」
「佐久間! 授業中だぞ! 座れ!」
俺は、無視して、ゆっくり歩いて小西の元に進む。
「なあ、小西。この間、お前言ったな? 証拠があれば対応するって。さっきの落書き、あれは完全なイジメの証拠だ。 それをお前は、消して無かった事にしようとした。 それってどういう事か、納得がいく説明してくれるか?」
「・・・・・・」
なさけない・・・なんか話せよ・・・
「お前はただ、面倒事を抱え込みたく無いダケだろ?」
「そんなことは・・・」
「じゃあ、なんで消した? 消せば証拠が無くなるとでも思ったか?」
「・・・・・・」
なんだよ、こんな追及でもうギブアップかよ?
「なあ、黙んなよ! 何か言えや!」
「お前! 教師に向かって、さっきから何て口を・・・」
「はぁ? お前・・・今日で教師辞めるんだから・・・関係ないだろ?」
俺はわざと不敵な笑みを浮かべて、そう言ってやった。
「どっ・・・どいういう意味だ・・・」
教える義理は無いよね・・・
「このメモリカード・・・何入ってると思う?」
「なんだ? そんなもの学校に持って来て、没収だ!」
「バカが! 触るなや! ここに、お前が消したイジメの証拠も、もっとひどいエゲツナイ行動が写ってるんだよね。 あと、今お前と俺の会話・・・ このICレコーダーで絶賛録音中だ。 これがどういう意味かお前、分かるか?」
「なっ・・・」
最後は力ずくってか?
終わってんなコイツ。
「お前じゃ話にならない。 俺は大人を見つけて、話をしてくるから、お前はそこで処分が決まるまで自習しとけ」
「オイ! 佐久間!! どこに行く!! 授業中だぞ!!」
さてと・・・ 職員室行って、学年主任の尾崎先生とお話でもしてこうようか。
まあ、尾崎がまともな対応してくれることを願うのみだな・・・
待ってて、アッコちゃん・・・
俺がアッコちゃんに取って過ごしやすい学校にしてあげる。
「待て!! 佐久間!!」
うるせ~な~ 自習って指示しただろう・・・
バカかあいつ・・・ いまさら焦っても無駄だ。
『ガラガラガラ』
「「失礼します!!!! 尾崎先生はいらっしゃいますか!?」」
「なんだ、佐久間か・・・授業中だぞ! どうした!?」
「イエ、5年1組に先生が不在なので、ご相談に伺いました。 お時間よろしいでしょうか?」
「先生不在? さっき、小西先生が行ったろ?」
「小西? ああ、ただの小西なら来ましたけど。 先生は来ませんでした」
一瞬、尾崎先生の顔が険しくなったが、なにか悟ったような顔つきで・・・
「・・・・・・分かった。 話を聞く、こっちに来い」
雰囲気が変わったな・・・ちょっとは話せそうだ。
さすが、厳格な尾崎先生・・・
まだ、この学校にもまともな先生が居たみたいだな。
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