第49話 少年探偵団気分かよ?
「アッコちゃん?」
「なに?」
「ごめん、俺ちょっと午後から予定あるの忘れてて。 誘ったの俺なのに・・・ごめん」
「予定? なに? サッカー?」
「イヤ、サッカーじゃないんだけど・・・」
う~ん、なんて言いワケしようかな?
傷つけないように、かつ納得する理由・・・
う~ん・・・ムズイな~
もうここは本当の事言った方が気が楽だし。
嘘もつかなくて済むし・・・
正直に言うしかないか。
「ちょっとね・・・ 先週気になる話を聞いちゃって」
まあ、本当は未来でだけど。
「なに?」
「高橋と川上達が、なんかアッコちゃんに嫌がらせをするって噂を聞いて、それを調べるのに学校へ行かないとダメなんだよ」
「私に嫌がらせ? また・・・」
「そう、だから・・・ ごめん、俺学校に行かないとダメなんだ」
「私のために?」
「うん・・・ もし何も無ければ良いんだけど、でもこれ以上アッコちゃんを傷つけられるの黙って見てられないから、噂とはいえ不安なことは全て調べおきたいから」
「・・・」
「だから、俺はいったん家に帰って、必要な機材を揃えて学校に行くから。今日はごめん・・・」
「うん・・・わかった・・・」
ごめん・・・アッコちゃん。
この埋め合わせは絶対に今度するから・・・
◇◇◇
で・・・? なんでこうなってるんだ・・・?
「ねえ・・・アコ? 何か休みの学校ってワクワクするね?」
「うん・・・そうだね・・・」
「アキラ? で? どうするんだよ?」
なんで、こいつら・・・
学校の前で、俺を待ち伏せしてるんだよ?
家に帰って、ICレコーダに、ビデオカメラ、デジカメと色々記録媒体揃えて。
学校に来てみたら、学校の前にいるし・・・
まったく・・・
高橋に川上とかあいつらに見られたらどうするんだよ。
完全に、冒険気分っていうか、探偵気分でノリノリじゃんコイツら・・・
まあ、イイや・・・
とりあえず、現状の教室がどうなっているのかを確かめないと。
「良いか? 3人とも? とりあえず、現状の教室に異常が無いのかをまずチェックする必要がある!」
『うん』
「あのママさんバレーの軍団に紛れて正面玄関から入ったら、まず急いで東玄関側へ1階の廊下を通って移動する。途中4年生の教室にいったん退避して、安全確認が済んだら、階段を上がって3階の廊下手前まで行くよ!」
『わかった』
「よし、じゃあ・・・俺の後に付いて歩いて来て」
『わかった』
なるほどね、2000年10月9日 体育の日か・・・
まさか、ママさんバレーの大会がうちの学校の体育館でやってるなんて思わなかったよ。
木下の話じゃ、高橋の母さんがママさんバレーのチームに入ってるらしいじゃん。
てことは、高橋がそれを聞いて、今日の計画を考えたって不思議じゃないよな。
「よし、じゃあ行くぞ!」
『うん』
まずは、正面玄関から入って・・・
1階廊下・・・ 先生らしき人は・・・いないな?
アソコの、ママさんバレーの集団がいなくなったら、移動だ。
東玄関側にある階段で3階まであがれば、職員室も校長室もスルー出来る。
見つかるリスクは低いはずだ。
よし、体育館の方へ行ったな・・・
「今だ、行くぞ!」
『うん』
スサササササササ・・・・
いったん4年生の教室に隠れよう。
「いったん、4年の教室に隠れぞ」
『うん』
「うわ~ なんかスパイになった気分だな~ アキラ?」
「うるさいな、変にテンションを上げるなよ。 イイか? 常に冷静に、騒いだりするのは厳禁だ。敵にみつかったら、ゲームオーバーだからな?」
「わかった・・・ごめん・・・」
「アッコちゃんも木下もOK?」
『イエッサー』
だいじょうぶかな~ こいつら、完全に名探偵コ〇ンの少年探偵団気分になってやがる・・・
「ここで、待て。 俺はもう1回、1階の廊下のクリアリングをする」
「アキラくん? クリアリングって何?」
「えっ? えっと・・・ 誰もいないかどうか、安全を確認するための行為だ。 クリアリングして、問題無ければ俺が『クリアー』って言うから、そしたらこの教室を出て、いっきに3階の廊下手前まで進むよOK?」
「わかった」
「俺らもわかったよ・・・」
「ヤバイ・・・佐久間・・・私緊張してきた」
「えっ? じゃあ、木下はココに残るか?」
「イヤだよ~ 私も行く」
「よし、じゃあ・・・ 確認してくる」
まずは音を聞いて・・・ 足音は・・・
『シーーーーン』
うん、いないな。 1階の廊下は? 誰もいない・・・
「クリアー」
教室を出て、一気に東玄関側の階段まで、進むとそのまま3階まで一気に階段を駆け上がる。
「ここでストップ」
『うん』
「3階の廊下をクリアリングするよ」
『うん』
まずは・・・足音に、誰か声は・・・ 『シーーーーン』 いないな。
「よし、クリア。一気に隣の、5年2組の教室まで走るぞ!」
『わかった』
自分達の隣の教室まで、忍び足で素早く4人で移動する。
「よし、いったんここで待って」
「はぁ~ダメ・・・緊張でドキドキが止まらない・・・」
「希美・・・大丈夫?」
「アキラ? これからどうする?」
「まずは、俺が1組の教室の後ろの扉から、教室の中を探ってみる。それで異常が無ければ、いったん教室にこのICレコーダとビデオカメラをセットする」
「ICレコーダーとビデオカメラ? 何に使うんだよ? そんなもの」
「もし、教室で悪さをするヤツだ現れたら、音声と映像で証拠を押さえるんだ」
「なるほど・・・」
「アキラくん? それって、そんなに長い間動くの?」
「ICレコーダーは10時間、ビデオカメラは3時間は連続で記録できる。とりあえず、今から行って仕掛けて来るから」
そういって3人を5-2組の教室に残して、1人で1組の後ろの扉のガラス窓から中の様子を伺う・・・
まだ、黒板には何も書かれて無いな。
よし、窓際の用具入れの棚に・・・
ICレコーダーと、ビデオカメラをセットして・・・
ビデオは・・・アングルはこれでOK。
バッチリ黒板と教室全体が入る。
よし・・・OKだ。
機材の設置を終えて、急いで5-2組の教室へ戻る・・・
「アキラ? どうだった?」
「まだ、異変は起こってなかったよ」
「ていうかさ~ 佐久間、噂って何なの?」
「えっ? なんか、高橋、谷口、川上、溝口のいつものあのメンバーが、黒板に嫌がらせの落書きを書きに学校に忍ぶ込む相談をしてたって噂を聞いたんだよ」
「誰に?」
「えっと・・・サッカー少年団の他のクラスのヤツから」
まあ、こいつらには、サッカー少年団て言っとけば問題ないやろ。
「へ~ それで、アキラくん、今日ここに来たんだ」
「うん、だってもうアッコちゃんにイヤな思いさせたく無いから」
「でもさ~アキラ? それだったら、そんな記録なんてしないで、誰か来たら出てって注意して辞めさせれば良いじゃん」
「それじゃ、その場しのぎにしかならないじゃん。 悪事を働いて、その証拠を押さえる。 そして、先生達も巻き込んで誰が悪い事をしているかって皆に分からせないと。そうしないと、ずっとアッコちゃんがイジメられちゃう」
「なるほど・・・アキラ、頭良いな・・・」
「えっ? じゃあ、佐久間? これからウチラ、ここでずっと待つの?」
「そうだ、犯人らしき奴らが来るのをじっとここで待つ。2組の教室ならトイレも近いし、待つにはうってつけだろ?」
「なるほど・・・」
「アキラくん? その人達って今日くるの?」
「それは、まだ分からない。でも、可能性は高いと思ってる」
「なんで?」
「だって、黒板に落書きするのに、誰も見られずに、短時間で済ますっていっても限界があるじゃん。だから、朝学校に早く来てやる可能性は低いのかなって」
「う~ん・・・ そこまで、考えるのかな?」
「わからないけど、俺はこれで、アッコちゃんへのイジメを何とかしたいんだよ。 俺は本気なんだ!」
「アキラくん・・・ 私のためにそこまで?」
「うん・・・ だって、もうアッコちゃんの泣いてる顔なんて見たく無いから」
「ちょっと、佐久間のこと見直したかもしれない」
木下・・・
お前は俺にアッコちゃんを取られた恨み高過ぎね・・・
「ん? ちょと皆 シー」
「なに? 藤さん?」
「なんか、声・・・聞こえない?」
声? ほんとうだ・・・ 誰か、階段の方から上がって来る・・・
『なんかさ~ 休みの学校ってちょっとドキドキするね~』
『本当~ めっちゃドキドキする~ キャ!!』
『女子! ちょとうるさいぞ! 声を出すな!』
この声・・・ 溝口に川上・・・高橋か・・・
『なあ、こんな事して先生にバレないのかよ?』
『バレるわけないじゃん、今日ママさんバレーで学校に入れるなんて知ってるの、うちの母さんと木下の母さんぐらいだからな』
谷口もいる・・・
『てかさ~ 何なの希美? アイツもメッチャムカつくんだけど、何で藤澤君と一緒に歩いてたワケ? しかも、何かめっちゃ可愛い恰好しちゃってさ~』
『絶対あれデートでしょ?』
なるほど・・・ 藤さんと木下が一緒に居るところ目撃されてたのか。
だから、二人もターゲットに・・・
『ガラガラガラ』
『ワァ~ 誰もいな~い!!』
『だから! お前らうるさいって!!』
『うるせ~な~ 高橋。 なんだお前?』
『ちょっと、仲間割れはやめようぜ~』
『うるせ~谷口。 このヘタレデブがよ~』
『よし、じゃあさっそく始めるぞ!』
『あいつら・・・明日これ見たら、どんな顔するかな~?』
『めっちゃ楽しみ~』
『ん? オイ、谷口おまえ! なにやってんだよ?』
『えっ? だって・・・今誰もいないし・・・』
『ウワ! キモっ! 谷口、何アッコちゃんの座席にほおずりしてんだよ? 変態か? お前?』
アッコちゃんの席にほおずりだと?
待て、待て・・・落ち着け俺・・・
ん? アッコちゃん、そんな泣きそうな顔しないで・・・
隣で泣きそうな顔になっている、アッコちゃんをとりあえず抱きしめる。
また静かに、ヤツラの会話に耳を傾ける・・・
『オイ! 谷口! いい加減しろって』
『えっ・・・だって・・・』
『ウワッ! マジお前キモイって~』
『それだれの?』
『えっ? アッコちゃんのリコーダー』
アッ・・・終わった・・・
ライン越えダゾ・・・それ・・・
アッコちゃん? もうちょっとだから、泣くのこらえてね・・・
後でリコーダーも綺麗にするし、慰めてあげるから。
いまは、こらえて・・・ アッコちゃんを抱きしめる力が自然と強くなってしまう。
ああ、もうちょっと泣いちゃってるし・・・
ごめんねアッコちゃん、こんな会話聞かせちゃって。ゴメン・・・
『ちょっと奈々!? 藤澤君のリコーダーに何やってるの?』
『えっ? ちょっと・・・キス・・・』
ぷぷぷっ・・・マジか川上・・・
お前も藤さんの事好きだったのかよ。
え~ じゃあ川上も溝口も二人して、藤さんが好きだったってこと?
てか、女がリコーダーに悪さするって、初めて聞いたけど・・・
川上・・・マジ引くわ~ てか、溝口はそれ見て喧嘩にならないのか?
『お前ら、さっきから余計な事ばっかり・・・』
『そういう、高橋だって、さおりんのリコーダーに口づけしたいんじゃないの? ホラ、ホラホラ』
さおりん? 高橋のヤツ、小沼のこと好きだったのか・・・
『止めろって!』
『ホラ~ ホラホラ! ハハハハ、なんだよ高橋! お前だって、やってんじゃん! 変態!』
『うるせ~ぞ!!』
高橋が・・・小沼をね・・・
なるほど・・・だから俺にやたら突っかかって来てたのかよ。
ようやく、高橋のヘイトを買ってた原因がわかったよ。
小沼と俺が同じピアノ教室に通ってて、たまに教室でも話をしてたから。
なんなん? こいつら・・・マジ全員キモキモ変態軍団じゃね~かよ。
『ちょっと、雫! 藤澤君のピアニカじゃんそれ!』
『だって、奈々がリコーダーにキスするから・・・』
うわ~ もうコノ会話耐えられない・・・キモすぎる。
藤さん・・・ 顔真っ赤ヤン。
てか、犯人は4人だけか? ちょっと、廊下見て見るか?
この鏡で・・・ ん? なんか、見張り? 誰だ? あれ?
長澤と小林?
見張り役まで立てるとか・・・どんなけ計画的なんだよ。
『よし、これで良いだろ!!』
『イイじゃん、イイじゃん!』
『明日楽しみだな~!!』
『早く、帰ろう~ぜ! 見つかるよ!!』
『そうだな・・・よし行くぞ!』
・・・・・・行ったか? 鏡で・・・うん、誰もいないな。
はぁ~ 黒板に落書きだけかと思ってたら・・・
マジか・・・あんな事までしてたなんて・・
はぁ~ なんだろう・・・このモヤモヤする気持ち。
「行ったみたい・・・」
「アキラくん!! え~ん・・・えん、えん・・・」
「アッコちゃん、辛かったね・・・ごめんね・・・辛い思いさせちゃって」
くそ、谷口め・・・アイツマジ殺す・・・・
「俺も・・・気分悪いんだけど・・・ もう笛もピアニカも捨てる」
「イヤ、待て待て待て、水で洗って、アルコール消毒したら大丈夫だから!」
「イヤ・・・ それでも、なんか気持ち悪い・・・」
「私もヤダ~ 気持ち悪い・・・ 谷口君が舐めた笛なんて、もう使えない! え~ん、えんえん・・・」
「そうだよな・・・ うん・・・ごめん・・・笛を守れなくて・・・」
「もう・・・ヤダ・・・」
はぁ~ やっぱり、1人で来ればよかったな?
こんなグロいことまで、やられるとは思わなかったよ。
予想を遥か超えてた・・・
なんか、証拠は押さえたし、試合には勝ったけど。
なんか、ゲームには負けたって感じだよな・・・
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