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第4話 ずっと後悔していた夢の場面が・・・

ふぅ、ようやく給食の時間だ。

懐かしいな~ 給食~


う~ん、でもこの伸びきったラーメン・・・

美味しく無いけど、まあこれはこれで懐かしいけど。

東京出身の嫁に聞いたら、給食でラーメン出るのって北海道だけらしいな。

ソフト麺以外食べた事ないって言ってたっけ。


でも、給食ってこんな感じだっけか?

きな粉の付いた揚げパンが食べたかったな~


「佐久間君、どうしたの? 考え事?」


不思議そうな顔でアッコちゃんがこっちを覗いてる。


「あっ? えっと、相変わらずラーメンは伸びてるな~って」

「アハハ、確かに」


あは~ その笑顔がめっちゃ可愛い・・・

ダメだ、まだ数時間しか一緒にいないのい、なんでこんなにも幸せな気持ちになるんだろう?


「アキラ、早く食べろって」

「えっ?」

「昼休み、体育館に行くんだろ!」

「えっ、あっそうだっけ?」


えっと、こいつの名前・・・何だっけ?


「アキラ、行くぞ!」

「えっ? ちょっ、待って・・・」


小学生・・・元気良すぎかよ?

食ってすぐ体育館に全力疾走って・・・

お前らマジ!?


とりあえず、馴れ馴れしく話しかけられたヤツに続いて、体育へついて行くと。


『助け鬼しよう~ぜ~』


あぁ~ そういえば、昼休みは良く体育館で鬼ごっこしてったっけ。


『鬼決め♪ 鬼決め♪ じゃんけんしょ!』

『わ~ 石川と岡部が鬼だ~!!』


石川・・・って剛か!

小学校1年からずっと同じクラスでそう言えば仲良かったっけな~

サッカー少年団もこいつと一緒に入ったんだっけ。

ごめん・・・すっかり名前忘れてたよ・・・


あとは岡部か~

こいつも思い出したけど・・・

イジメられて泣きだすと急に大暴れ始める危険なヤツ。

なんか、ちょっとずつ思い出すな~

でも、この体育館も懐かしいな~


「アキラく~ん~待って~」


でた! 剛のあの意味不明なお姉モード。

なんで開始早々俺を追いかけてくるんだコイツは。

お前、俺のこと好き過ぎだろ・・・


はぁ~ こいつ・・・妙に体をスリスリしてきたり、女子みたいに腕に抱き着いてきたっけな~

中学入っても同じクラスで、べたべたしてくるもんだから。

コイツのせいで、同じクラスの女子に、お前らホ〇だろって、不名誉極まりない悪口を言われたっけ・・・


まあ、コイツの場合、べたべたするなら誰でも良いみたいで、サッカー少年団の時なんかは、秀樹にも同じようなことしてたっけ。

それで、秀樹にキモイから引っ付くなって、怒られてたっけな・・・


まあ、こんなヤツだけど剛その毛は無く、中身は純度100%の男子で、女の子の事が普通に大好きないたって普通の子なんだけど・・・

なぜかナヨナヨ、ふにゃふにゃしてたんだよな~


それにしても、昼食後のダッシュはキツイって・・・

走るの面倒クセ~ 捕まるか?


昔の俺なら必死に逃げ回ってたんだろうけど。

いまの俺の感覚は、小学の子供相手に遊んであげてる感覚になってしまい。

どうしたって本気で走るモチベなんて沸いてくるわけもなく。

あっさりと剛に捕まって、鬼の陣地で絶賛休憩中だったところに・・・


『ねえ、ねえ、ねえ、い~れて!』


突然現れた、アッコちゃんと数人の女子が揃って俺と剛に話しかけて来た。


アッコちゃんと、その隣ににいるのは・・・今でもお前の事は忘れてないぞ・・・

前の人生で、アッコちゃんが転校までの間、俺が何度もアッコちゃんへ思いを綴った手紙を渡そうとしたのに。

毎度、毎度、コバンザメのようにアッコちゃんの隣に居て、こいつに告白する所をどうしても見られたく無くて。

こいつが居ない時にと思って、機会を伺っていたのに・・・

転校する最後の日まで、こいつはアッコちゃんの横に居続けて、俺の告白と手紙を渡すという機会を、無意識で邪魔しやがった女!!


木下希美(きのしたのぞみ)


テメー自身に恨みはないけど、お前さえいなければ・・・

前の人生でもひょっとしたら、俺はアッコちゃんと~

無駄に体が丈夫で学校を休んでる所なんて見たことが無い、この皆勤賞女がよ。


あとは・・・木下の隣にいるのは、あゆみちゃんだっけ。

まっ、あゆみちゃんは人畜無害というか、常に中立で亜由美ちゃんの悪口を聞いたことなんてほとんど無いような子だ。


3人がワラワラ現れて、鬼ごっこに入れてくれと言うので。

すでに捕まっていた僕と他数人と、剛とで話をしていると。

女の子が来たっと、テンションがあがった奴らが、鬼ごっこを中断してワラワラと集まって来て。

3人を入れて、新たに鬼決めのジャンケンをしよということのなり・・・


『イイよ~ じゃあ、鬼決めなおそ~ぜ~』

『鬼決め♪ 鬼決め♪ じゃんけんしょ!』

『わ~ 石川と岡部が鬼だ~!!』


・・・こいつら、めっちゃジャンケン弱くね?


そういえば、思い出したかも・・・

この頃は、本当にアッコちゃん達と仲が良くって、毎日のように昼休みは一緒に鬼ごっこしてたんだっけ。

放課後も、このメンツで公園で鬼ごっこして遊んでたっけ。

今考えたら、俺らどんなけ鬼ごっこ好きだったんだってくらい、バカの一つ覚えみたいに鬼ごっこしてたっけな・・・

毎日毎日よくもまあ飽きずに・・・


「キャ~ 来ないで~! イヤ~! 来ないで~ ・・・・・・あ~あ、捕まっちゃった」


ん? アッコちゃんが捕まった。

ていうことは、今捕まればアッコちゃんと手を繋げるのか?


全国的には知らないが。

助け鬼というのは捕まると、鬼が守る近くの壁に手を着いて。

次に捕まったヤツが、最初に捕まった人の手を握ってどんどん数珠繋ぎになって助けをくるのを待つって感じの遊びで。


だから、好きな子と手を繋ぎたければ、その子が捕まった直後に捕まれば、彼女と手がつなげるってワケなんだが・・・

捕まるか? いまなら、誰よりもアッコちゃんの近くに行けるチャンスなんだけど・・・


イヤ・・・でも待てよ。


小学生のモテポイントなんて、勉強が出来るとか、足が速いとか、スポーツが出来るとか、ある程度の容姿なら後は一芸に長けたヤツがモテるワケで・・・

ここで、簡単に捕まってしまっては、どんくさいヤツとかアッコちゃんに思われるかもしれない。


ウヌヌヌヌ・・・どうしたら良いんだ・・・


アッコちゃんと手は繋ぎたいが、でも・・・どんくさいヤツとも思われたくないし・・・

どっちかというと、鬼の包囲網を掻い潜って、華麗にアッコちゃん達を救出した方がモテポイントが高い気がするんだが・・・


そんなバカみたいなことで葛藤しているうちに、どんどん鬼によって捕まって行くヤツが増えて来て。

もう、残すは華麗にアッコちゃんを救出することしか、選択しが無くなり機会を伺っていると・・・


まあ、なんていうか・・・女子と一緒に鬼ごっこをしている男子の考える事なんて浅ましいと言うか・・・

捕まっている仲間を救出するために、鬼の陣地に飛び込んで助けるふりをして、ワザと女の子に抱き着いたりするヤツが当然出てくるわけで。

まぁ、いまの時代でいう、立派なセクハラ行為を、鬼ごっこと言う大義面分の下で、堂々をやるヤツが出てくるのだ。

もうすでに、アッコちゃんが2回、木下が1回その被害を受けている。


ちなみに、あゆみちゃん・・・どんんまい・・・


それにしても、アッコちゃんにちょっかい出すふざけた連中が数名いることに、体育館で1人サイヤ人の様に怒りを燃やしていると・・・


「アキラ捕まえた~!」


・・・えっ? ・・・剛?


くわっ! 怒り心頭で、あの連中どうやって血祭に上げてやろうかなんて考えていたら、剛に捕まってしまった!!


ガッデム!!


はぁ・・・終わった俺の鬼ごっこ・・・

トボトボと、捕まっている仲間の元へと歩いて合流すると。


「も~う、佐久間君なにボーっとしてるの?」


そういって、アッコちゃんがほっぺをぷくっとしながら怒られてしまい。

はぅ~ 怒った顔も、めっちゃ可愛いけど・・・もう、モテポイント稼ぐどころか、初日からマイナスかよ・・・

鬼に捕まって、トボトボと皆が捕まっている鬼の陣地まで歩いて行き。


「ごめん・・・ちょっと考え事してて・・・」っと言うと。


「佐久間君、今日朝からずっと変だよ、どうしたの?」

「えっ? う~んアッコちゃんの事をずっと考えてたら・・・」

「私のこと? なんで?」

「イヤ・・・その・・・」


そんな会話をアッコちゃんとしながら、最後に捕まったヤツと手を繋ごうとしていたら。

急にアッコちゃんの顔から笑顔が消えて、機嫌そうな表情に変わって、何だろうっと思っていると。


『オイ!オイ!オイ!お前らさ~なんなん!?』


声をする方を振り向くと、また数名の女子達が、俺らの方へ何やら悪態を付きながらズンズンっと寄って来てるところだった。

はぁ? またこいつらかよ! 溝口に川上とその取り巻き連中・・・

なんなだこいつ等は、そんなに気に食わないならかまってこなければよいのに、害悪アンチ丸出しかよ。

こんな粘着して嫌がらせしたところで、お前らの評判自体が男子の間でどんどん下がって言ってるのがわかんないのかこいつ等?


イヤ、男子に嫌われようがこいつ等は表向きは強がって、平気なフリをするんだっけ・・・

どうせ、アッコちゃん達と仲良くしている、この中に気になる男子がいるから面白くなくってちょっかい出してるんだろうけどさ。

こいつらの性格の悪さに比べたら、ウチの美姫なんて性格の悪さなんて可愛いもんだにょな・・・


『本当にアッコちゃんって男好きだよね~ マジビッチ!』

『お前らもさ~ こんなビッチと遊んで恥ずかしくないのかよ~』


俺の背中に隠れているアッコちゃんが、こいつ等が来てからずっと無言になってしまった。

繋いでいた手も、いつの間に申し訳なさそうに引っ込めて。

下を向いて、この醜い言葉の暴力に、抗う事も無く、ただ荒れた空気が元に戻るのを必死に耐えているようだった。


この心無いアンチ共に対して、本来アッコちゃん達擁護派であるはずの男子連中が、それに反論するべくレスバを開始するも・・・


『はあ? 別に俺らは・・・遊びたくて遊んでるわけじゃ~』


『じゃあ、お前ら全員アッコちゃんの事好きなのかよ~』

『え~ マジ~ こいつら皆アッコちゃんの事好きなんだ~』


『ちっ! チゲ~し。入れてっていうから、一緒に遊んでただけだけし』


残念すぎるぞ、男子共、口プ弱すぎか・・・


でも、なんだろう、この光景に妙な既視感というか。

イヤ、違う! これは・・・確実に過去に経験したことがある・・・


嘘だろ、タイムリープした初日だぞ!

そんな、いきなり・・・こんなクライマックスの様な日に戻って来るなんて。


『じゃあ、アッコちゃんと遊ぶなよお前ら!』


『別に・・・遊びたいわけじゃないし、入れてって言われたから・・・』


それにしても、弱い、弱すぎるぞお前ら・・・

まあ、でも小学生の男子と女子の言い合いなんて、こんなもんか。


一通りの言葉の応酬がひと段落して、男子連中が無条件降伏状態で、意気消沈し。

一帯の空気はまるでお葬式のようになってしまい、すると・・・


「あっ・・・ごめん。 わたしが抜けるから・・・だいじょうぶ。 ごめんね・・・」


僕の後ろに隠れていたハズなのに、アッコちゃんがスタスタスタっと前に出来て。

本当はめちゃくちゃ傷ついて、今にも泣きだしたいはずなのに。

それを必死にこらえて、精一杯の笑顔を浮かべて、皆に向かってそう言うと。


そのまま、皆の輪から抜けるように、スタスタスタっと体育館の中央へ向かって歩いて言ってしまった。

そして、アッコちゃんが抜けると言って、もうこの勝者のいない醜い争いが終わったというのに。


『別にうちらアッコちゃんを仲間外れにしようとしたワケじゃ無いのに~』

『ねぇ~!!』


アッコちゃんの背中に向かって、わざと聞こえるように、最後の嫌味を投げかける。

こいつらは、どうして、あんな可愛い女の子1人に対して、ここまで陰湿で冷酷なことが出来るんだろう。

ゲスの女集団に対して、激しい殺意を感じながらも、アッコちゃんが歩いて行く先をずっと目で追っていると。


『よ~し、じゃあ途中から始めようぜ~』


何故か、溝口や川上のゲス集団が混じって、鬼ごっこが再会されていたので。

僕は、あまりの殺意に、マジで全員ボコボコにして大けがを負わせてしまいそうな心境だったため、皆の輪から外れて。

1人、気持ちを整理するために、体育館の壁際を1人で歩いていた・・・


アッコちゃん?


まさか、今日があの日だったなんて・・・


この後、大人になってアッコちゃんと再会するまで、10年以上も後悔し続けることになった、きっかけになった日だ・・・


僕は体育館の壁際を歩きながら、反対側の壁際を1人でトボトボ寂しそうに歩いているアッコちゃんをずっと視界に捉え居ていた。

そして、壁に寄りかかったり、バスケのゴールに向かてジャンプしてみたり一人遊びを繰り替えすアッコちゃん。

最後は、その場に体育座りして、体育館の様子を寂しそうにボーっと眺めるアッコちゃん・・・


なんて残酷な光景なんだよ。


前の人生、あの時・・・今と同じ瞬間に、俺は、アッコちゃんのあんな姿をずっと体育館の中央で見ていたのに、なにも出来なかった。

アッコちゃんに声を掛けて慰めることも、少しでも彼女の救いになるようなことは何一つ出来なかったんだ・・・


そして、何も出来なかった不甲斐ない自分に失望して。

なんの答えも出ないのに、後悔ばかりを続けてイジイジと何十年も同じような夢を見続けて、その度に後悔を繰り返すようなクソ野郎でしかなかったんだ。


クソっ!!


アッコちゃんがいったい何をしたって言うんだ!!


彼女はただ単純に、クラスの皆と楽しく遊びたかっただけなのに。

ただただ、仲の良い友達が欲しかっただけなのに。

ただでさえ、転校ばかりで、心細くて、少しでも友達を増やしたかったはずなのに。

なんで、お前らは、こんな健気な少女を傷つけることが出来るんだよ!



――― 大丈夫、待ってて、いま君の所へ行くから。



俺はもう逃げない!


俺が君を守る、そう決めたんだ。


そのために、俺はこの時代にタイムリープしてきたんだ。


もう、絶対に君を泣かせない。


僕は、体育館の壁際にポツンと1人寂しそうに座るアッコちゃんを真っすぐ見ながら、体育館を斜めに横断するように歩いていった。

そして、体育座りでポケーっとしているアッコちゃんの目の前まで行くと。


「アッコちゃん」


びっくりして、座ったままで僕を見上げるアッコちゃん。

少し目には涙をためているのが見えて、一瞬胸にズキっと痛みが走る。


「えっ? 佐久間君? どうしたの?」


恐る恐る、そして元気の無い声で話すアッコちゃんに対して、僕は・・・


「アッコちゃん、行こう」


そう言って、体育座りしているアッコちゃんへ向かって、手を差し伸べると。


「えっ? ちょっ、佐久間君? ダメだよ。 佐久間君まで仲間外れに・・・」


僕の事を気遣って、手を取らずに、体育座りのまま俯いてしまうアッコちゃん・・・


でも、もう僕は逃げないと決めたんだ。


この痛い気な少女を、今度こそ僕の手で救ってみせるんだ。

僕は勇気を出して、体育座りして俯いてしまっているアッコちゃんに対し、少し強引い手を伸ばすと。

座っているアッコちゃんの手を取り、グイッと引き寄せるように彼女を強引にその場に立たせる。

そして、その場から彼女を連れ去るように、手を繋いで引っ張るように体育館の出口へ受かって二人で歩き始めた・・・


「言ったでしょ、俺がアッコちゃんの事守ってあげるって」

「佐久間君・・・ダメだよ、佐久間君が今度は・・・ぐすっ・・・」

「もう、アッコちゃんを泣かせたりしないから。 絶対一人になんかしないから」

「佐久間君・・・」


こんなにも純粋で、優しいアッコちゃんを・・・

あいつら・・・絶対許さない。


今回こそはアッコちゃんを救って見せると勇んでアッコちゃんを体育館の外へと連れ出したものの。

いきなりの強制イベント襲来に、まったくのノープランだ。


ただただ、頭に血が上って、勢いだけで彼女を連れ出してしまい。

どうしよう・・・この後どうしたら良いんだ?

でも、とりあえず、皆からの悪意の目を遮断できる場所を必死に考えながら、廊下に出て正面玄関前の廊下まで歩いて来たところで。


「アッコちゃん? 外に行こう?」

「えっ? うん・・・」


アッコちゃんと手を繋いで、廊下を歩いている一部始終を見ていた連中が、好機の目で僕等を見ていたが。

そんなことは構わず、俺はアッコちゃんの手を握って、校舎の脇にある植物園の温室の裏に彼女を連れて行った。


「ここなら校舎からも見えないし、泣いてても大丈夫だよ」

「うん・・・ありがとう・・・」

「これ、ちょっとヨレヨレだけど使ってよ」

「ん?・・・ありがとう。ぐすっ」


俺はいっつも母さんがポッケに突っ込んで来る、ハンカチを彼女に手渡す。


「ねえ? なんで? グスっ・・・」

「言ったじゃん、アッコちゃんの事は僕が守るって」

「なんで、守ってくれるの?」

「そんなの・・・俺が、その・・・アッコちゃんの事が・・・その、好きだから」

「・・・・・・」


うぅぅぅ、さすがに面等向かって好きって言うのは少し勇気が居ったけど、でも、好きって言えたぞ。

苦節22年、少しは成長したってことなのか?


うぅぅぅ、当時の俺に、今のコミュ力と思いっきりの良さが10分の1でもあったなら。

あんな後悔せずに済んだのに・・・


でも、何もしなければ後悔すると分かってるんだ。

もう、ダメ元でガンガン行くしか無いって分かってるんだから、ある意味今の俺は無適な人だ。

だから、この先友達が居なくなろうが、そんなのどうだって良い。

友達が100人いなくなるよりも、僕はアッコちゃん1人の信頼を勝ち取りたいんだ。


でも、言葉があまりにストレートすぎだっただろうか、語彙力無さ過ぎかオレ?

こんなんじゃアッコちゃんに胸キュンして貰えないよ~


でも、しょうがないよな~ 別に長く生きたところで、恋愛経験豊富ってわけでも無かったし。

ドラマや映画みたいな、カッコい良いことなんて言えないし、そもそも思いつきもしない・・・

アッコちゃんを連れ出して来て、さらっと告白したまでは良かったけど。


自分ばっかり前のめりになって、アッコちゃんの気持ちなんて完全に置き去りにしたせいで、彼女はもうずっと黙りこんでしまっている。

もう少し、色々会話してから、徐々に距離を詰めるべきだったんじゃないかと後悔していると・・・


「佐久間君・・・」

「ハイ!?」


やばい、急に話しかけられてびっくりして、語尾が上がって変な声になっちゃったよ・・・


「あのね、その・・・えっと、好きってね? その・・・あの好きってこと?」

「俺はアッコちゃんを女性として好き。愛している方の好き。ずっと君の事が好きだった」

「・・・・・・」


イヤ、動揺してまた変な事を・・・

何だよ女性として好きとか、愛している方とか、終わってる・・・

もう少し、雰囲気のあること言えないのかオレ!?

うぅぅぅ、またアッコちゃんが黙り込んじゃったじゃないかよ~


イヤ、でも・・・顔真っ赤にしているし、何か俯いてモジモジしてるし・・・

てか、意外に伝わるには伝ってる?

意外と、シンプルに好きが良かった感じ?


えっ? わかんない。 アレ? やっぱりダメ? どっちだよ!?

って・・・そりゃ、まあ・・・そうだよね・・・基本は俺だし・・・


なんか、アッコちゃん助け出して、勝手にテンション上がってたけど。

冷製に考えたら、皆が見てる中、いきなり手を引っ張られて、そのまま手を繋いで皆の前歩かされて。

それって、よく考えたら、ただの羞恥プレイみたいなもんだよな・・・


アッコちゃん視点・・・


えっ? 急になにコイツ? えっ? 手、握られたんですけど!? えっ? キモすぎ!?

何? えっ、手繋ぐとかマジ無理なんだけど! なんなの、1人テンション上がってるけど、マジ怖いんですけどこの人!


・・・とか思ってそ~


いまだって、謎に人目につかない所に連れて来られて、怖いとか思われるかもだし・・・

うぅぅぅ、何か冷静に考えたら、俺・・・ただのヤバイヤツになってるんじゃ・・・


「佐久間君・・・」

「ハイ!?」


やばい、また1人でグルグル変な想像してたら、変な声になっちゃったって!


「あのね、えへへへ、いきなりだったからちょっとびっくりして・・・」

「えっ? あっ、ああ、そう、だよね・・・いきなり、体育館から連れ出されて。 しかも手とか握られてキモかったよね・・・何か、その・・・ごめん・・・」

「えっ? そんな! キモイとか思ってないよ!」

「えっ? そうなの?」


「――― うん」


なんだ、いまの一瞬の間・・・

なんか、さっきから恥ずかしそうっていうか、何かずっと決まづそうに下向いてるし。

やっぱり、アレかな・・・好きって言われて、どうやって断ろうか考えてる感じなのかコレ?


そりゃまあ、アッコちゃんは優しいからな・・・

たぶん、俺を傷つけない様にするにはどうしたら良いのかとか、色々頭の中で考えてるんだろうな・・・


はぁ・・・辛いな・・・


タイムリープしてきた初日に、何十年も片思いしてた子にフラれるんだよ。

あっ、どうしよう・・・

なんか、フラれるって思ったら、涙が・・・


「――― 嬉しかったんだ。 急に、目の前に現れて・・・絶対1人に何てしないからって言われた時、本当に嬉しくて・・・」

「・・・うん?」


あれ? 嬉しかった・・・の?


「えへへ、皆の前を、手つないで歩いたのは少し恥ずかしかったけどね・・・」


あぁぁ、やっぱり、そうだよね・・・

一瞬、期待したけど、そういうことだよね。

言葉選んで、俺を傷つけないように・・・


「助けてくれてありがとね。 でも、心配だよ・・・私のせいで、佐久間君までいじめられちゃうかもだよ?」

「えっ? イヤ、そんなの全然平気だよ俺。 むしろ、俺は戦うよそいつらと。 アッコちゃんをイジメる連中とは徹底的に戦うつもりで、アッコちゃんに手を伸ばしたんだから」


「・・・本当?」


「うん、もう俺はアッコちゃんを絶対に1人にしないって決めたから。 たとえ友達が一人もいなくなっても、俺はアッコちゃんの信頼できる友達でいたいって思ってるから」

「・・・・・・・ぐすっ、うぅぅぅ、さくまくぅ~ん」


えっ? あれ、また泣きだしちゃったよ。


「ごめん、アッコちゃん、やっぱりキモかったよねオレ。 ごめん、無理やりなんか連れ出して来ちゃって。 勝手に手とか繋いでごめん・・・嫌だったよね・・・その、ごめんね」

「ぐすっ、うっ・・・うぅぅぅ、ちがう・・・よ。 いや・・・じゃないよ。 うくっ、くぅ・・・嬉しくて・・・本当に嬉しくて」


嬉しい? マジ? 嬉しかったの? 本当?

アレ? じゃあ、これって・・・まだチャンスあるってこと?


「うぐっ、でもね・・・さくま、くんが・・・ぐすっ、わたしのせいで・・・うぐっ、いじめられるのは、イヤ・・・だから・・・ぐすっ、うぐっ、くぅん」

「アッコちゃんはそんな心配しなくて良いよ。 これから、さっきみたいに怖かったり、決まずい時は、俺の背中の後ろに隠れてて良いから。 アッコちゃんをイジメるヤツは全部俺が追い帰してヤルから安心してよ」


「うぅっ、んくぅ・・・ほんとう?」


「うん、俺を信じて? もう決めたんだ、俺は人生掛けてアッコちゃんを守るって」

「ぐすっ、うくっ・・・じんせいかけてって・・・うくっ、くぅん・・・おおげさだよ」

「大袈裟じゃないよ。 それだけは、俺は本気でアッコちゃんのことが好きから。 こんなにも可愛い女の子を泣かす奴らは絶対に許さない」


「・・・・・・わたし、可愛くないよ。 ぐすっ・・・ねぇ? 好きって・・・いつから?」


「5年生になって、初めて君を見た瞬間から。 その・・・一目惚れだったんだよ。 アッコちゃんがあまりに可愛すぎて。 一目見た瞬間に、ギュって胸を鷲掴みにされたような感覚だったんだよ」


「・・・ひとめ、ぼれ? そんな・・・わたし、かわいいかな?」


「可愛いよ! めちゃくちゃ可愛いもん。 髪はサラサラでツヤツヤして綺麗だし、大きな瞳はくりっとして、いっつもなんかキラキラしてて、目が合うだけでドキっとしちゃうし。 目鼻のバランスも完璧で、正真正銘に美少女なんだもん」


「びしょうじょって・・・えっ? やだ・・・そんな、可愛くなよ。 目だって、ギョロッとして気持ち悪いし。 見た目も、男の子見たいでキモいって・・・」


「誰がそんなこと言ったんだよ? アッコちゃんは正真正銘の美少女だよ! アッコちゃんがあまりに可愛すぎて、妬んだ連中の嫌がらせだよそんなの! もっと自身をもって良いんだよ。 アッコちゃんはマジで最高に可愛いんだから。 だって、僕の好みの女の子なんだから!」


「ふふふっ、そっか・・・佐久間君の好みのなんだ。 アハハハ、それじゃしょうがないか・・・そっか、ふふふっ。 そんなこと言われた初めてだよ。 ありがとう・・・なんか、嬉しい」


・・・また言った。 嬉しいって。

しかも、さっきよりも表情がだいぶ柔らかくなったっていうか。

てか・・・目にまだ涙が残ってるのに、その笑顔はなんなん?

マジで美しすぎて、天使を見てるみたいんなんだけど・・・


「ごめんね、泣いたりして・・・」

「ううん、もう大丈夫?」


「うん、もう平気。 佐久間君?」

「なに?」


「あのね、わたし・・・今まで、こんな風に男子に好きって言われたの初めてなんだ。 それに、こんなに優しくされたのも初めてで、最初佐久間君が言ってることも何か嘘なんじゃないかって思ったの」


「えっ? 違うよ!」


「――― わかってる! わかってる。 ごめんね。 でも、本当にこんな風に男の子に好きなんて言われたの初めてで。 でも、佐久間君が可愛いとか・・・その、美少女とか、目がクリクリで可愛いとか、何か恥ずかしいこといっぱい言うから。 本気なんだなって思ったんだけど・・・でも、なんか、言われたことないから、すっごい恥ずかしくて」


「ごめん、いまアッコちゃんに気持ち伝え無いと、一生後悔すると思って。 勝手に1人で興奮して、一方的に気持ち押し付けちゃった。 迷惑だったよね・・・ごめんね」


「迷惑なんかじゃないよ。 ただ、ちょっと恥ずかしかっただけだよ。 だって・・・好きって・・・言われたことないんだもん。 どんな顔して良いか分かんなくなって・・・」


えっ?


「アレ? じゃあ、その・・・俺が好きって言ったこと。 嫌じゃなかったってこと?」

「嫌なわけないよ・・・好きって言ってくれたのは嬉しかったもん。 それに、信頼できる友達で居たいって、言ってくれたのがすっごい嬉しくて」


「だって・・・俺はこれからも、ずっとアッコちゃんの傍に居たいんだもん。 大好きだから、アッコちゃんとずっと一緒にいたいんだもん」


「わあぁぁ! ちょっと・・・だから、そのね・・・好きって言うのちょっと待って。 言われ慣れてないから、なんかすっごい恥ずかしいから・・・」


「ごめん、つい・・・俺の気持ちをどうしてもアッコちゃんに分かってもらいたくて・・・」

「佐久間君の気持ちはすっごい伝わったから・・・ちゃんと伝わってるから。 その・・・好きとか言うのちょっと待って、慣れないとダメ。 恥ずかしいもん・・・」


・・・伝わった? 伝わったの?

それって・・・えっ?


「アレ? じゃあさ・・・これから、ずっと僕とその・・・一緒に居てくれるってこと? 嫌いとか、キモイとか思わないってこと?」


「もう、佐久間君のことキモイなんて思わないよ。 こんなに嬉しいのに、嫌いになんてならないよ・・・」


「えっ? じゃあ、これからずっと、今日みたいに何かあったら皆の前で、アッコちゃんのこと堂々と守って良い? 皆から恋人なんじゃないかって噂とかされちゃかもだけで、僕のこと頼ってくれる?」

「――― 恋人!?」


「うん。 だって、絶対そうやって噂するヤツらは出てくるでしょ? そうなったら、またアッコちゃんが嫌な気持ちになるかもしれないから。 俺どこまでやって良いのかなって。 アッコちゃんの気持ち、無視できないから」


「そっか・・・そうだよね。 でも、さっきみたいに、川上さん達に絡まれるのは嫌。 出来ることなら、アキラくんに守って欲しい。 でも、私と・・・その、恋人? そんなふうに思われたら、佐久間君が迷惑なんじゃない?」


「えっ? 俺は全然かまわないけど。 むしろ、本当に恋人同士になりたいって思ってるし。 アッコちゃんのこと彼女にしたいって思ってるから!」


「ちょっ! ちょっと待って・・・うん、そうだよね。 でも、そっか・・・うん。 でも、彼女って・・・どうしたらよいのかよくわかんないし。 それに、まだそんなに佐久間君のこともわたし・・・」


アレ? なにこの雰囲気?

ひょっとして、フラれる流になってないか!?

どうして? なんでこうなった? どこからよ?


「なんか、今日の佐久間君・・・別人みたい・・・」

「どうして?」


「だって、朝からあんな風に守ってくれて。 谷口君達のこと泣かしてたり。 なんか、すっごい男の子らしくて。 さっきだって、急に現れてさ。 カッコ良いんだもん今日」


「・・・・・・えっ? カッコ・・・良かったオレ?」


「カッコ良かったよ。 なんか朝からびっくりしてたのに。 急に私のこと好きとか言うし・・・なんて返事してよいかわかんないよ・・・」


「あっ、そっか。 そうだよね。 いきなりすぎたよね? でも、アッコちゃん、返事とかそんな急がなくて良いから! 別にいますぐ返事欲しいとかじゃないから。 ただ、俺はアッコちゃんの味方だからって伝えたくて。 それで、これからもずっとアッコちゃんと遊びたいって思っただけど。 これから一緒に遊んだりして、僕のこと沢山しって貰って。 返事とか、そういったのはそれからで良いから・・・」


「そっか・・・うん、ありがとう。 じゃあ、遊びたい時は佐久間君のこと誘っても良い?」


「誘って! めちゃくちゃ誘って!」

「ふふっ、うん。 じゃあ、めちゃくちゃ誘うね?」


うぅぅ、なんだそのニコッて・・・

毎度毎度、なんだその弾けるような可愛さ全開の笑顔は。

もう、その笑顔をみる度に、僕の胸はキュンキュンしちゃうのに~


「でも、誘うのってどうしたら良いんだろ?」

「えっ? あぁ、そうだよね。 ――――――あっ! そうだ、今日みたいに手紙ちょうだい?」


「手紙? あぁ、なるほど。 そうだね、お隣さんだし。 わかった、手紙渡すね?」


「あっ、それで・・・アッコちゃん? 俺・・・その、手紙返事書きたかったのに、その・・・手紙の折り方分からなくて、その・・・良かったら手紙の折り方教えてくれない?」

「うん、良いよ。 でも、いま紙無いから、教室に戻ってからでよい?」


紙か・・・紙・・・

アッコちゃんに言われて、手探りでポッケのなかをガサゴソとまさぐっていると。

ぢょうど良い感じに四つ折りに畳まれて紙が入ってるのに気づいて、それを取り出してアッコちゃんの目の前に出すと。


「こんな紙で良いかな?」

「えっ? うん・・・たぶん、折れると思うけど。 貸して」

「うん」


そう言って、手に持っていた紙切れをアッコちゃんに手渡すと。

それを受け取って、折り方を教えてくれようと、アッコちゃんが畳まれた紙を開いた瞬間、彼女の表情が変わって無言になってしまう・・・


なんだろうっと思ってずっと見ていると、見る間に彼女の顔が真っ赤になってしまい。

どうしたんだろうっと思っていると・・・


「――― 佐久間君?」


紙を両手でしっかり持って、顔を真っ赤にしながら俯いて、僕の名前を呼ばれたものだから。

どうかしちゃったのか、心配になり・・・


「アッコちゃん、どうしたの?」

「これ・・・なに? もう、ズルイよ・・・」

「なに? どうしたの?」

「どうしたのじゃないよ! なんでいきなり、こんな・・・ラブレターじゃん・・・」


えっ? ラブレター? えっ? なんで?

!? はっ!? そうだ!! さっき、授業中に返事書こうとして、折りたためなくて諦めたヤツ・・・

さっきの紙って、アレかよ!?


---------


アッコちゃんへ


僕は君が好きです!

初めて見た時、君の太陽のような笑顔を見て一目惚れしちゃったんだ。


君のそのクリっとしたキラキラした瞳は、いつも見ても見とれてしまうくらい美しいし。

そして、君のその透き通るような白肌に、さらさらのそのブラウンの髪・・・

初めて見た時は、まるで天上の天使が舞い降りたかのような衝撃だったんだ。


アッコちゃん・・・僕は君のことを愛しています。

世界中の誰よりも君の事を愛しています。

だから、俺がずっと君の事を守ってあげたい。


アッコちゃんの笑顔は、俺が絶対守ってあげるから。

嫌な学校も俺が好きにしてみせるから。

だから、ずっと俺のソバに居て、アッコちゃん。


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「・・・わたしって、天使なの?」

「えっと、ハイ・・・」


「そんなに瞳キラキラしてる?」

「綺麗過ぎて、目が合うといっつも吸い込まれそうになるっていうか・・・」


「そんなに私って肌・・・白い?」

「それはそう、本当に透き通るような白さだもん」


「そんなに好きなの? 愛してますって・・・どれくらいなの?」

「世界中の誰よりもアッコちゃんのことが好きな自信があるし。 一生を君に捧げても良いと思うくらい愛してる」


「もう・・・なんだよ、ズルイよこんな不意打ち」

「・・・ごめん」


「もう、本当に私のこと大好きなんだね? どこがそんなに良いんのかな? 皆からこんなにもイジメられてるのに・・・」


「そこに書いてある通りだよ。 アッコちゃんは僕の天使だから。 イジメられるのは、アッコちゃんが美少女で、可愛すぎるから。 コンプレックス持った連中が嫉妬してるだけだよ」


「だから~ ヤメて~ 天使とか美少女とか・・・恥ずかしいから~」


「だって・・・それ以外に、アッコちゃんを表現する言葉が思いつかないから。 僕には本当に、アッコちゃんがそう見えるから・・・」


「もう、男の子からラブレターなんて貰ったの初めてなのに~ 内容が、恥ずかしすぎるよ~」


「ごめん・・・アッコちゃんに手紙貰って。 めちゃくちゃ嬉しくて、テンション上がり過ぎて、その勢いで書いたヤツだから・・・その、ごめん」


「うぅ~ もう、佐久間君・・・ズルイよ・・・」

「ごめん・・・」


なんか、もうさっきからやらかしてばっかりというか。

アッコちゃん側からしたら、これまで何とも思ってなかった男子で、どういった人かもよく知らない男子から急に熱烈な告白をされて。

返答に困ってしまっているのに、さらに手紙で追い打ちとか・・・


さっきから、好きとか、可愛いという言葉を聞いただけで恥ずかしがっている純粋で初心なアッコちゃんに。

しかも、もう止めって言われていたのに・・・その度に、困ったような表情で顔を真っ赤にして俯いて戸惑わせていたのに。

さらに、追い打ちにのような、こんな手紙を渡しちゃうなんて・・・


何が経験豊富な大人な俺だよ。


小学生の女の子相手に気持ちや立場も考えないで、さっきから自分の気持ちばっかり一方的に押し付けて。

何十年も片思いしていたとか、彼女には全然関係無いのに、バカみたいにテンション上がって、次から次へと・・・


アッコちゃんが受け止めきれないようなことをして、困らせてさ。

何なんだ俺は・・・いつまでたっても、恋愛能力ゼロかよ・・・


はぁ~ ダメだ・・・


もう、あんなに顔真っ赤にさせて、目にいっぱい涙まで浮かべて。

確実に嫌われたかも・・・


めちゃくちゃキモイヤツって思われてよ絶対・・・


はぁ~ 最悪だ・・・もう死にたい・・・

なんのために、この時代にタイムリープしてきたんだよ。

結局は、ダメダメな俺が、何度やり直した所で、過去なんて買えられ無いんだよ。

でも、まっ、アレだな・・・


何もしないよりも、玉砕した方がよっぽどスッキリするのかも。

徹底的に嫌われて、希望もなにも無くなった方が・・・


――― チュッ。


・・・・・・えっ?


・・・なに?


アッコちゃん?


「あっ、えっと・・・ごめんね。 佐久間君が何か悲しい顔してたから、その・・・」


「えっ? なんで?」


「あっ! ごめん! やっぱり、嫌だったよ!? 私みたいなキモイ女の子からそんな嫌だったよね」

「イヤ、えっ? なんでキス?」


「だって・・・嬉しかったから。 さっき体育館でめちゃくちゃ寂しくて泣きそうになってたところに、あんな風に現れて優しくされたのがすごく嬉しかったから」

「・・・あっ、うん」


「さらに、こんな告白してくれて。 私みたいな子を好きとか言ってくれて。 めちゃくちゃ嬉しくて、何かお礼がしたくて、でもわたし返せるもの、何もないから・・・」


「えっ? キスしてくれたってことは、僕のこと嫌いじゃないってこと? いきなり告白して、ラブレターまで渡して気持ち悪いって思ってないってこと?」


「えっ? 思わないよ・・・めちゃくちゃ恥ずかしかったけど。 でも、告白も手紙も嬉しかったから」


ヤバイ、照れて後ろに手を結んでモジモジする姿、最高に可愛い過ぎる・・・


「えっと・・・アッコちゃん?」

「・・・なに?」


「あの・・・今いきなりすぎて全然覚えてないから。 その・・・もう一回キスしてくれない?」

「えっ!? ヤダよ! さっきのだって精一杯頑張ってしたのに!」

「・・・そっか、そうだよね。 ごめん・・・なんか、またキモイこと言ってるよね。 ごめん」


はぁ~ 俺はつくづくダメだ。

小学生の女の子相手にキモイことばっかり・・・

イヤ冷静になれ、もう一回とか確かにキモすぎるだから・・・


はぁ、ダメだ・・・今度こそ終わった。

もう、こんなヤツキモすぎて、もう口も利きたくないとか思ってるって・・・


「・・・もう、だからなんでそうやってすぐ落ち込むかな」

「えっ? イヤ、だって・・・アッコちゃんに嫌な思いさせちゃって。 その自己嫌悪というか・・・」

「もう、さっきはすっごい男らしくてめちゃくちゃカッコよかったのに!」

「・・・ごめん。 俺、自分に自信が無いから」


どうしよう、まだ午後授業あるのに・・・

ずっとアッコちゃんの隣に座ってるの無理。

もう、帰りたい・・・


「――― もう、これで最後だからね」


えっ? アッコちゃん?


――― アッコちゃんが僕の方に手を伸ばして・・・


えっ? 嘘・・・本当?


――― アッコちゃんの顔がどんどん近くなってきて・・・


これって・・・どういう・・・

ただただ、戸惑って固まっていると・・・


――― チュッ。


頬に彼女の柔らかい唇の感触が・・・


「・・・ありがとう。・・・佐久間君」


彼女が僕の肩に、顔をうずめてそう言うと。

そのままスッと僕から離れ、瞳をウルウルさせて精一杯の笑顔を僕に向けてニコッと微笑み掛けてくれ。

そのまま、顔を真っ赤にしたまま急に踵を返すと、正面玄関に向かって走りさっていってしまった・・・


1人その場に取り残されて、ただただボーっとしてしまい・・・


アッコちゃんにキスをされた頬を抑えながら、キスの意味を1人で考えていたが、そんなこと俺が1人で考えたところで一生答えなんて出ないのはわかりきっているんだが。


それでも、僕を安心させようと、笑顔でありがとうって言ってくれた彼女に僕は逆に救われた気持ちでいた。

アッコちゃんに嬉しかったと言われて、お礼と言ってキスをしてもらえただけでも。

それだけでも、この時代にタイムリープしてきた意味があったような気がするし。

まだ、何も始まっていないけど、この先、彼女との関係を深めていくには十分な希望を僕に与えてくれたのだ・・・

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[一言] ニコッとかビクッを台詞に入れちゃってるのはちょっとまずいと思う。 2ちゃんねるでネタになるレベル
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