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第33話 亜希子ちゃんとの思い出②

小学5年の辛い初恋を経験してからは。

中学校でも好きな子は出来たけど、その子との事はまた別の機会に語ろうと思うけど。


高校生なって、大学生になり、そして社会人になるまでの間に、それなりに恋もしたし何人かの女の子とはお付き合いもしたんだけど。


それでも、亜希子ちゃんの事だけは忘れられられなくて、転校したあの日から何度も何度も同じような夢を見るようになっていた・・・


でも、見る夢の内容は、決まってあの残酷な体育館での仲間外れにされた時の夢で。


寂しそうに体育館の端にいた亜希子ちゃんを、ただただ遠くから眺めるっていうだけの夢で、その夢を見終わった後は、だいたい号泣した後で起きると涙で枕も濡れていて。


そんなことが、社会人になってmixiで彼女を見つけて、再会するまでずっと続いていった。


––––––札幌の山の手小学校 5年1組だった、佐久間晃です。 もし間違いだったら、ごめんなさい。 岩崎アッコちゃんですか?


社会人になって、ひょんなきっかけで亜希子ちゃんらしき人のアカウントを見つけてしまって。

基本いつもはROM専で、そんな書き込んだりメッセを送ったりするような人間じゃなかったのに。


その時だけは、衝動を抑えきれずに、もう脊髄反射的にメッセを書いてしまい。

めちゃくちゃ緊張して、手が震えてしまってなかなか押せなかったけど、勇気を出して送信ボタンを押した。


どうせ返事なんか来ないかなと、そんなに期待もせずに送ったメッセだったし。

メッセを送った相手も、亜希子ちゃんじゃない可能性は十分あったんだけど・・・

彼女からの返信は意外と早く返って来て・・・


––––––久しぶり! 覚えてるよ! 岩崎亜希子だよ。元気だった!?


そのメッセを見た瞬間、本当なのか信じられ無くて。

目から涙が溢れ出してしまい、涙で視界がぼやける中、一生懸命返事の文面を書いて、リプを送ったんだけど。


––––––やっぱり、アッコちゃんだったんだね。久しぶり、もう会え無いかと思ってたけど、こんな事ってあるんだね?


それから速攻、マイミク申請を送って受理された後は、彼女の書いた日記とかを半年以上さかのぼってROMってしまい。


自分も婚約を済ませて、その年の秋に結婚する予定があるのを棚に上げて。

亜希子ちゃんすでに結婚していることを知って、軽くショックを受けてしまったんだけど。


彼女が書き込む日記を読んでいると、子供が二人もいることもわかって。

子育てで悩んだり、色々大変そうにしている日記を見ては、彼女をに励ましたくて一生懸命メッセを送ったりしていた。


それが過去への贖罪のつもりだったのか、初恋の女の子とネット上で再会して、ただただ舞い上がっていただけなのか自分でもわからない。


でも、お互い関東住みだと知って、出来ることなら彼女が結婚する前に再会したかったなんて気持ちも出て来て。


心の中で、どこかアッコっちゃんへの片思いを引きずっとまま、アッコちゃんと頻繁にメッセを交換するようになっていった・・・


そんなある日、休日の午前中に何気なく、アッコちゃんの書き込んだ日記を読んでいると、急に彼女からメッセが来て・・・


––––––今日暇? 時間あったら、飲みに行かない?

 

急な飲みへのお誘いに、びっくりしたんだけど。

なんの迷いもなく、ドキドキしながら、返事を送った。


そして、電話番号の交換をして新宿の伊勢丹前で、17時に待ち合わせする約束をして。

結婚予定の彼女とは、まだ別々に暮らしていたので彼女に内緒でアッコちゃんへ会いに行った。


休日で歩行者天国になっていた新宿通りを、伊勢丹方向へ向けて歩いてると。

ちょうど道路の中央で、キョロキョロしている一人の女性が立っているのを見つけて。


ドキドキしながら、彼女へ少しずつ近寄って行くと。

弾けるような笑顔で、こっちに手を振って走って来る彼女を見た瞬間。


小学5年生の3月に別れて以来、約12年ぶりの再会だった。


「久しぶり~ 全然変わってないね~♪」


笑顔で話しかけてくれる彼女。


「イヤ、アッコちゃんこそ・・・」


正直めちゃくちゃ変わっていた。

あどけないアッコちゃんが、ちゃんと大人の女性になっていたのだ。


そんなことは当然だろと言われたらそうなんだけど、実際僕の中のアッコちゃんは12年前の記憶の中にある彼女のままず~っと止まっていたわけで。


それが、いきなり目の前にめちゃくちゃ大人の女性の姿で現れ、その見た目のギャップですぐには同一人物として認識出来なかったと言うか・・・


アッコちゃんには、「変わってないでしょ?」なんて聞かれて「・・・うん」なんて脊髄反射で返事をしちゃったんだけど。


その時の僕は、これが大人になったアッコちゃんなんだ~っと、ポーっと眺めてしまうだけで。

再会した感動とドキドキの中で、どうして僕はずっとこの人の隣に居られ無かったんだろうという後悔と寂しさみたいな気持ちが浮かんできて、泣きそうになるのを必死に堪えていたんだ。


それから、一緒に歩いて新宿の街を移動して、ちょっとおしゃれな居酒屋に彼女を連れて行くと。

ビールで軽く乾杯してから、お互い「本当に覚えてる?」とか他愛のない会話から初めて、次第に昔の話になり・・・


気になっていた、転校した後の話を聞いてびっくりしたというか・・・嘘だろっという話で・・・


札幌から名古屋に転勤した後、2年後に札幌のお隣の恵庭市へ転勤で戻って来たというのを聞かされて・・・

ただただ、嘘だろ? そんな、まさか・・・信じられ無いといった思いでいっぱいになってしまった。


遠くに行ってしまって、もう会えるはずも無いと考えていたのに、まさか、そんなすぐ北海道に戻って来て、そんなにも近くにいた何て思わなくて。


そんなことも知らずに、ず~っと片思いを続けて、あの夢を見ては後悔をして、12年もの間ず~っとそんなことを知らずに生きてきて、初めてそんなことを聞かされた時の後悔というか衝撃がどれほどのものかわかってもらえるだろうか。


その時、まっさきに思ったのは・・・

もし、あの時に手紙を渡していれば、お互い連絡をするような間柄になれていたら・・・


ひょっとしたら、中学2年生の時に札幌か恵庭で再会して、もしかしたら、もしかしたら・・・もしかしたかもしれないのにと思ってしまったんだけど。


でも、当時の中学2年の僕のキャラからして、もしかしたらなんて起きる確率はきっと限りなく低かったのかもしれないけど。


それでも、やっぱり、後悔してしまうし。

どうして、勇気を出して手紙を渡さなかったのか、彼女に気持ちを伝えて、ずっと繋がれる努力をしなかったのか・・・


本当に、僕はウジウジと情けないバカなんだ・・・


12年経って、彼女はもう結婚して、二児の母で・・・

僕も違う人と出会って、婚約をしている。


もしも、中学2年で再会して。

あの時の気持ちをちゃんとアッコちゃんへ伝えることが出来ていたら・・・


ひょっとしたら、僕のお嫁さんはアッコちゃんだったかもしれないのにとか、その話を聞いた瞬間に色んなことを考えてしまったんだ。


でも、アッコちゃんの話を聞いていたら、高校2年の時に東京へ転校して、そのまま東京の短大へ進学したらしいことを聞いて。


結局、再会してもまたすぐに離れ離れになっていたのかっと思ってしまうわけで・・・


そして、僕がまだ学生のうちに、社会人になって、会社で知り合った人と結婚して、あっというまに二児の母になっていたと聞いて。


運命の残酷さというか・・・どうがんばっても、あっこちゃんとはそうなれない人生だったんだって思ってしまった。


それから、妊婦中は、通勤電車に乗るのがすっごい怖かった~とか。

電車で、心無いオッサンに突き飛ばされて、マタニティキーホルダーをカバンからぶら下げてたのに信じられないと怒ったり。


妊娠中はアルコールが飲めなく辛かったとか。


「ノンアルのビールとか今あるじゃん」っと話したら。

「あんなの飲んだって全然だよ~」といって、美味しそうに生ビールをグビッと飲むアッコちゃんを見ながら、遣る瀬無い気持ちでいっぱいになってしまっていた。


それからは現実逃避のように、小学生の頃の話に話題を始めたんだけど。

小学4年生の頃にアッコちゃんが転校して来て、それからずっといじめられてたんだよねっと、衝撃的な話を聞かされてしまい。


学校ではあんなにも明るくキラキラしていた彼女が、ずっといじめで悩んでいたことを聞かされてしまい。

それも、僕が知らない小4の頃からずっとだったなんて、あまりに衝撃的な内容だった・


小学5年生になって、彼女と隣の席で過ごしていた時は、本当に可愛らして、僕と会話する時もいっつもニコニコして、彼女の笑顔は本当に天使みたいでキラキラ輝いていたし。


一緒に公園で遊んでる時も、すっごい明るくて、いっつもキャッキャっと嬉しそうに一緒に鬼ごっこをしてくれて、そんないじめられていたなんて微塵も感じたこと何てなかったわけで。


小4の頃のアッコちゃんのクラスメートのどいつがアッコちゃんをイジメていたのか、誰かわからないのにそいつらにめちゃくちゃ殺意を感じながら話を聞いて居た。


でも、いじめられていたっていう話を聞かされて、すぐに僕の中に浮かび上がって来た光景は、それまで何百回と見たあの夢の光景で・・・


「––––––ごめんね・・・」


っと、話を聞いていて、たまらなくなって謝ってしまう・・・

すると、アッコちゃんは、キョトンとした表情をして。


「どうして、佐久間君が謝るの? 私、いじめられた記憶ないけどな~」


なんて呑気な事を言う彼女に・・・・


「ねえ」

「なに?」


「小学5年生の時にさ~ 体育館で皆で良く鬼ごっこしてたの覚えてる?」

「うん、してたね~ 懐かしいね~」


「いつだったかさ、アッコちゃんと俺らが一緒に遊んでいる時に、溝口とか川上が割りこんで来て、アッコちゃんの悪口言ったり難癖付けて来て、仲間外れにした事あったの覚えて無い?」

「え~??? そんなことあったっけ?」


えっ? あれ? 覚えて無い?

そっか、俺だけか・・・でも、そうか・・・そんな辛い思い出はすぐに忘れたいよな・・・


アッコちゃんが独りぼっちになっちゃったあの光景を12年もの間、定期的に夢に見るまで後悔してたなんて俺だけでだよね・・・


「わたしさ~ 小学4年生の時に山の手に転校してから、ずっとイジメられててさ~ 毎日学校行きたくな~いってママに駄々こねてたんだ~」


「小学4年から?」

「うん、だから、いじめられすぎて、よく覚えて無いのかも・・・」


「そっか・・・」

「うん」


「俺さ・・・アッコちゃんが仲間外れにされた後、アッコちゃんが体育館の端にトボトボ歩いて行って、1人でバスケのバックボードにジャンプしたり、1人で端っ子で体育座りして寂しそうにしているのずっと見ててさ・・・」

「何それ~ 私めっちゃ可哀そうじゃん! え~! 私そんなことされてた?」


当時の事を覚えてないという彼女は、他人事のようにおどけた風に言うのだが。


本当にそうだ・・・可哀そうだし、あまりにも残酷で、陰湿だ・・・

あんな事をされて、学校に行きたくないと思うのも納得だ。


「そうなんだ、酷い事されてたんだよ・・・ 俺、あの時さ・・・アッコちゃんに話しかける勇気が無くて。 あの時、俺にちょっとでも勇気があれば、アッコちゃんをあんな寂しく1人にする事無かったのにって、ずっと後悔しててさ。 大人になるまで、何回も何回もあの時の光景が夢に出て来て、その度に後悔と自責の念で泣いちゃってさ。 俺、ずっとアッコちゃんに謝りたくて。 あの時、1人にしてごめんって。 守れなくてごめんって、ずっと言いたくて・・・」


「––––––そっか、そんなことあったんだね。 ふふっ、でも、ダメだよ~ 何そんなに私の事なんかで思いつめちゃってるのさ~ しかも大人になるまでって、もう・・・何年だよ・・・」


「俺、あの頃ずっとアッコちゃんの事・・・その、好きだったから。 だから、本当は守ってあげたかったんだ。 でも、当時の俺は勇気が無くて・・・大好きだったのに・・・・・・ごめん」


言っちゃった・・・こうもあっさりと好きだったって・・・


どうして今はこうも素直に自分の気持ちを伝えられるのに、どうしてあの時は・・・あんなにもアッコちゃんが好きで、愛してたのに・・・


あの時、ちゃんと勇気を出して彼女を守って、誠実に気持ちを伝えられていたら・・・


「––––––えっ・・・あっ、そっか・・・好きで居てくれたんだ。 でも、なんか嬉しいな~ ありがとう」


そう言って、ニッコリ僕に微笑みかけてくれる彼女の表情は、小学校の頃と変わらず天使のような可愛らしさで。


僕はどうしてこの人の事を守ってあげられ無かったんだろう、どうしてこの笑顔を全力で守ろうとしなかったんだろうっと、ただただ後悔しか無く。


その笑顔を見て、また遣る瀬無い気持ちになってしまい、胸の奥から口惜しさや色んな思いが込み上げて来てしまい、泣きそうになってしまったんだけど、必死で我慢して笑顔を作って誤魔化していた・・・


それでも・・・気持ちを伝えて、嬉しいっと言ってくれた彼女のその可愛い笑顔を見て、なんかどこか救われたような気持ちになったのも事実で。


当時、君を守れなかったヘタレの男に、そんな優しく笑顔でありがとうなんて・・・

この子は、どんなけ良い子なんだって、つくづく思わってしまうわけで。


もっと、早くにアッコちゃんと再会できていたら。

アッコちゃんともしお付き合いすることが出来ていたら、俺が絶対に幸せにしていたのにって・・・


それからは、また旦那さんの愚痴を沢山聞かされて。

妊娠中に他の女に浮気をされてしまったこととか・・・


それで離婚しようと考えてたけど、旦那のお母さんに頼み込まれて、今回だけはと許して結婚したとか。


結婚した後も、旦那は仕事で帰ってくるのが遅くて、勤務地も遠いせいで泊りになることもあるとかで、ひょっとしたら浮気でもしてるかもとか言うし・・・


子育ても大変で、この間もキッチンで料理をしていたら、息子が寄って来て、危ないからと手で遮ったら転んで頭を打ってしまったと。


自分は、母親失格なんだ~っと元気無く話している姿が、たまらなく俺の心を震わせてしまった。


それを聞いて、また僕は遣る瀬無い気持ちでいっぱいになってしまい。

どうして、アッコちゃんばっかりこんなに苦しまないといけないんだろう・・・


そんな事を考え始めると、またループするように同じような思考を繰り返してしまい、どうして転校する時に手紙を渡さなかったんだろうと、強く強く後悔してしまって。


もしも、もしもあの時・・・・・・本当に、本当に・・・ほんのちょっとの勇気さえ僕にあれば・・・っと女々しいこと考えてしまい。


もしも、そうだったら、こんな寂しそうな、辛そうな顔のアッコちゃんを見ることも無く。

僕が代わりに彼女を幸せにさせてあげられたかもしれないのにっと都合の良いことを考えてしまったのは言うまでも無いわけで・・・


––––––居酒屋で、2時間ほど過ごしてお店の外に出て、まだ時間は大丈夫というので。


どうしても、まだ彼女を別れたく無くて、彼女をタクシーに乗せると。

そのままタクシーを西新宿のホテルまで走らせはじめると、「ホテル?」っと聞いて戸惑う彼女に何も告げず。


そして、ホテルのエントランスについて、たぶんドキドキしているアッコちゃんをエスコートして、そのままエントランスに入り。


洋書が収納された図書棚が配置された書斎風の通路を抜けいくうちに、非現実の世界へとアッコちゃんを連れていくと。


「えっ? なになに? ここどこ? えっ? ホテル?」っとキョロキョロしながら、それでも僕の隣をちょこちょこっとついて来る彼女がとっても可愛くて。


そのまま、エレベータへ二人で乗り込むとあっという間に、高層階へと上がってエレベータを降りてラウンジへ進んだ瞬間・・・


「––––––え~なにココ? ホテル?」


目をキラキラさせて、エレベータの中で少女のようにキョロキョロする彼女がとても可愛くて。


「きっと喜ぶと思うよ」っと彼女にそっと伝えると。

「え~ なに~」っと、本当に昔のアッコちゃんのようにキラキラした天使のような笑顔を僕に向けてくれると。


あっと言う間に高層階について、エレベータの扉が空くと。

僕は彼女の腰に優しく手を添えてエスコートをすると、そのまま一緒にエレベータ降りて、ラウンジへ向かって彼女をエスコートして進むと。

41階の高層階にあり、都庁を眼下に望み、東京の夜景が一望できるラウンジに出る。


「––––––え~ なにココ?」


高級ホテルの雰囲気に遠慮してか、小さくはしゃぐ彼女の耳元で「夜景が綺麗なんだよココ」っと言って。

タクシーに乗りながら電話で予約した席に案内されて、彼女を夜景が見えると方の席へとエスコートして。

自分はテーブルの反対側へと座ると。


「え~ なに~ めちゃくちゃ夜景綺麗~」

「ふふふっ、よかった~ よろこんでくれて~」

「も~う ホテルとか言うから、ちょっとドキドキしちゃったよ~」


という彼女に、揶揄うように・・・


「変な事されると思った?」

「えへへへ・・・」


満更でも無いと言った感じに照れる彼女を見ていると、本当にこのまま奪い去りたいと思ってしまう。


「え~ 写真撮ってもイイ?」

「うん、良いよ」


夜景を写真に撮って、はしゃぐ彼女を見て、連れて来て良かったなと思う。


「ねえ、良く来るの?」

「う~ん、何回か来たかな~ クリスマスディーナーとか」

「へ~ 良いな~ 佐久間君の奥さんは~」

「まだ結婚してないけどね・・・」


「でもするんでしょ?」

「うん、秋にね、ハワイで・・・」

「良いな~ 羨まし~」

「アッコちゃんだって、結婚式したんでしょ?」

「だって、子供いたから、ちゃんとしてないモン・・・」


それは二人が出来婚だったことを暗に意味していて。

それを聞いて、また胸がギュッとしてしまう。


しかも、妊娠中に浮気って・・・新婚で浮気ってことじゃないか、それで結婚式もちゃんとしてあげてないなんて。


なんで、アッコちゃんみたいな良い子がこんな仕打ちを受けてないといけないんだと憤りを感じていると。


「え~ でもこんな所来たの初めて~」

「旦那さんとか、結婚前とか連れてってくれたりしなかったの?」


「全然、そんなことしてくれたことないよ~ しかも、さっきいきなり電話してすぐ予約しちゃうとか・・・そんなのしてくれたこと無いよ・・・」


どこか寂しそうにそんなこと言うアッコちゃんに。

もう半分本気というか、本音を隠しきれずに口説くようなことを言ってしまう。


「そうなんだ、俺だったら、なんぼでもしてあげるのに・・・」

「ふふふっ、そうかもね~ 惜しい事したな~」

「本当だよ・・・そんなに早く結婚なんかしちゃってさ・・・待ってて欲しかった」


もう、待ってほしかったというのは、100%本音だった・・・


「たまたまじゃん、会ったのなんて~」

「そうだけどさ~ でも・・・」


「ありがとう。なんか、今日はすっごい素敵な夜だよ。嬉しい。 ありがとうね~ 佐久間君」

「アッコちゃんのためなら・・・何でもしてあげたいもの・・・」


「ふふっ、そんなに、好きだったんだね~」

「ずっと・・・ずっと好きだったもん。 アッコちゃんの事は、忘れた事なんて無かったよ・・・」

「夢に見ちゃうくらいだもね~ ふふふっ、本当に嬉しいな~」


「転校が決まったって聞いてさ・・・俺、ずっとアッコちゃんに手紙を渡そうと思ってたんだけど・・・」

「なんでくれなかったの?」


「だって・・・木下がいつも、アッコちゃんの隣にいて。 その、木下に手紙渡す姿見られたく無かったっていうか。 アッコちゃんの事が好きな事を木下に知らるのが恥ずかしくて・・・それで・・・」

「あ~ 希美か~ そういえばいっつも一緒だったね~」


「だから、その手紙を渡そうと思ったんだけど、タイミングがアレで・・・渡せなくて・・・」

「もう! 渡せよ! 手紙~」

「ごめん・・・」


でも、本当にそうなんだ・・・

あの時に手紙を渡してさえいたら、今日は普通に恋人か、夫婦としてここにデートで来ていたかもしれないのに。


そんな事を思いながら、また小学生の頃の思い出をアッコちゃんと話をして。

そして、楽しい時間はあっという間に過ぎてしまった・・・


「もうそろそろ帰る?」

「うん、そうだね・・・ いつまでも夢見てられないからね・・・」


このまま、夢の世界に君を連れて行けたら、どんなけ幸せだろうか。

辛いことから全て解放して、僕が君を幸せに出来たらどんなけ幸せなんだろう・・・


いつまでも夢を見ていられないと言う彼女の寂しい表情を見ながら、ただただ自らの過ちに後悔を募らせていた。


ホテルを後にして、新宿駅まで帰りはゆっくりと二人で夜道を歩いて行った。

本当に、他愛のない会話をしながら・・・


そして、埼京線のホームで彼女が乗る電車が来るまで一緒に待っていると。


『––––––まもなく4番線に快速川越行きが参ります』


「電車、来ちゃったね」

「うん・・・」


「じゃあ、佐久間君、お互い頑張って行こう!」


そう言って、いきなりハイタッチをしようと右手をあげる彼女。


「うん、がんばろう!」


一歩、遅れて右手を挙げる俺・・・


『パチ~ン!!』


「ふふふっ、今日は本当に楽しかった! ありがとうね! 佐久間君、じゃあ、バイバイ!」

「うん、バイバイ・・・」


そう言って、目の間についた電車へ彼女が乗り込むと。

電車の窓が閉まり、彼女が僕に向かってバイバイっと手を振る姿をずっと見ながら彼女を見送り。

乗った電車が駅から出て見えなくなるまで、1人ホームに残って彼女を見送った・・・


会えて嬉しかった気持ちと、後悔と、彼女の旦那への怒りというか、憤りで、もう感情はグチャグチャで・・・

複雑な感情を抱えながら、帰路についた・・・


あの時、俺が・・・彼女声をかける勇気があったら。

最後、手紙を渡せてたら・・・


タラればばっかりの本当に情けない自分にも憤りを感じて、そして後悔して、またその晩は1人で泣いてしまい。


アッコちゃんへの思いだけを胸に抱きしめて、その日は泣きながら眠ってしまった・・・


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