第32話 亜希子ちゃんとの思い出①
–––––––––何気無くだった、本当に何気なく・・・
会社の同期の飲みの席で、mixiのゲームの話で盛り上がっているのを横で聞いていて。
mixiか~っと思い、隅っこの席でなんとなく手持無沙汰で、スマフォの画面を眺めて。
いつぶりなんだろうと思いながら、ログインしたのがきっかけだった・・・
なんとなく、昔入っていたコミュの内容など流し見しはじめて、帰りの電車の中でもずっと友達の日記なんかを見返して、高校時代、中学時代の友達なんかのそれを見ていたのだが。
家に帰ってから、ベッドに寝ながら、なんとなく自分の卒業した小学校のコミュを見つけたので、コミュ欄を見ていると自分の卒業年のコミュで1人だけ目にとまった子がいたんだ・・・
『ako』
その子のプロフィールや、書き込みを追っていくうちに記憶の中にある女の子が浮かんできた。
小学5年生で同じクラスになって、あまりの可愛さに一瞬で好きになってしまったあの子・・・
それからずっと・・・23歳になるまでずっと・・・なんどもなんども夢に見てしまうくらい好きで、ずっと片思いの相手だったあの子が浮かんで来たんだ。
『岩崎亜希子ちゃん』
初恋の相手で、13年間ずっと片思いで忘ずに思い続けてしまった女の子だ・・・
小学5年生の時に、クラス替えで初めて同じクラスになって、教室で始めて彼女を見た時。
––––––僕は生まれて初めて恋に落ちた。
出会った瞬間、周りの風景はモヤが掛かった中に彼女を見つけて、それからは、ずっと彼女にだけにピントが合っているよな光景だった。
彼女の笑顔はあまりに眩しくて、可愛くて、さらっさらのショートボブに、くりっくりの大きな目、ちょっとボーイッシュな感じなのに、めちゃくちゃ可愛くて、一瞬で彼女に釘付けになってしまったのだ。
でも、当時の俺は引っ込み思案で、大人しい性格だった。
幼稚園の頃から、外見は女の子と間違われてしまうような感じで、背も小さくヒョロヒョロだった。
小学3年生頃に秀樹や剛に誘われて、サッカー少年団に入るまでは、風邪をしょっちゅう引いては学校を休んじゃうような虚弱な子で、自分に自信も無く幼稚園も学校もあまり楽しいと思ったことが無かった。
でも、アッコちゃんに出会ってからは、それまでどんよりしていた風景に華やかな色が着いた見たいで、見える世界まで一変したんだ。
あの頃は、放課後に近くの公園で男友達が自然と集まっては、遊具で遊んだり、鬼ごっこをしたりして遊んでいたんだけど。
そんなある日、唐突に女の子2人が僕らが遊んでいる方へ寄ってくるのが見えて・・・
その内の1人は、学校で一目惚れしちゃった『岩崎亜希子』ちゃんで、もう一人は木下希美ちゃんだった。
一緒に遊んでいた男子に二人が何やら話しかけて来たのを、俺はずっと遠目で彼女達を眺めていると・・・
『なんか~ 仲間に混ぜてだって~』
話しかけられた友達が皆に聞こえるようにそう叫んだ。
他の男子は、女の子への興味か色めきだった雰囲気で、彼女らの所に走り寄ってく姿が見えて、自分も後を追うように彼女達のいる所まで走って行った。
いつもと違う、女の子二人を取り囲んだ皆の輪の一歩外で様子を見守っていたのだが。
前の男子共の隙間から見える亜希子ちゃんは、めちゃくちゃ可愛くて、可愛すぎて本当に直視が出来ないくらいで。
余りに可愛すぎて緊張はするし、恥ずかしいのと、皆に自分の亜希子ちゃんへの思いがバレるのが怖くて、一人複雑な感情でどうして良いのか分からなくなって、興味無さそうに下を向いて近づきたい気持ちを誤魔化していたのを覚えている。
それから、皆でワイワイしながら助け鬼をしようということになり、ジャンケンで鬼を決めようという話になったのだが。
そんな時にかぎって、亜希子ちゃんはジャンケンに負けて、最後僕と亜希子ちゃんともう一人の男子の三人で鬼を決めることになり。
亜希子ちゃんを鬼にしたく無かった僕は、もう一人残っていた男子に声を掛けて、二人で鬼をすることにしたのだが。
僕が男子二人で鬼をするなんて行ったから、ひょっとしたら亜希子ちゃん的には仲間外れにされてしまったと感じてしまっていたのかもしれない。
でも、当時子供だった僕は好きな子に鬼をさせたくなくて、亜希子ちゃんが鬼になるのを回避するムーブが彼女を守っているだという気になっていた。
でも、鬼ごっこが進むにつれて、最初は男友達ばっかり追いかけていたのだけれど、少し離れた所にいた亜希子ちゃんがどこか寂しそうな顔をしているのが見えてしまって。
それで、放っておけなくなって、亜希子ちゃんを追いかけはじめたのだが。
キャッキャ言いながら嬉しそうに逃げてる亜希子ちゃんを後ろから見てると、さっきまで寂しそうな表情をしていた彼女との余りのギャップに、最初から一緒に鬼になれていたらもっと喜んでくれたのかもしれないと少し後悔していたのだが。
子供の頃から足だけは妙に早くて、クラスでも1位2位くらいで、普通に走るだけで直ぐに亜希子ちゃんに追いついてしまい。
でも、捕まえるには亜希子ちゃんのカラダに触れないといけないけど、大好きな女の子のカラダに気安く触れることなんて出来るはずも無く・・・
微妙にスピードを抑えて、ギリギリ届くか届かないかの距離をキープして延々と亜希子ちゃんを追いかけまわしていたのだが。
これで捕まえなかったら、またさっきまで寂しい気持ちにさせてしまうかもとか、また悶々としたことを考えはじめてたのだが。
大好きな女の子のカラダに触れるっという罪悪感というか、恥ずかしさで中々捕まえれずにいると。
体力的に限界を迎えてしまった亜希子ちゃんが、もうダメっと言いながらその場でへたっと座りこんでしまい、もう捕まえないと明らかに不自然な状況に追い込まれてしまい。
追い込まれて、どうしよう、どうしようっと思いながら1人で軽くパニックになっていたのだが。
「えへへ~ 捕まっちゃった~」
っと可愛く笑う彼女の顔を見てキュンっとしてしまって、でも捕まえないとと思い、彼女の頭に申し訳なさそうに軽くポンと上から手を置くように優しくタッチすると。
また、可愛く、えへへっと僕に微笑みかけてくれた亜希子ちゃんに、その時さらに胸がキュンキュンとしてしまい。
もう、その日はその後、彼女から目を離すことが出来なくなって、遊んでいる間中ずっと彼女を目で追っていて。
家に帰っても彼女の顔が頭に浮かんできて、もう亜希子ちゃんが好きになりすぎてしまって。
そんな感情はそれまで初めてで、どうしたら良いのか分からなくなってしまって、亜希子ちゃんの姿を思い浮かべながら布団に抱き付いたりして、ずっと寝付けずにモゾモゾしていたの思い出してしまう。
その後も、そんな事が何回も続いて、いつものように亜希子ちゃんを思い浮かべながら布団を丸めて抱き付いていると。
そんな姿を、唐突に部屋に入って来た美姫に見られてしまい、めちゃくちゃ恥ずかしい気持ちになったのもはっきりと覚えてんだけど。
何しているのっと聞かれても、答えることが出来ずにモジモジしていると。
何故か美姫が僕のベッドに潜り込んで来て、そのまま抱っこされてしまって、最初は困惑していたのだけれど。
美姫に抱きしめられていると、不思議と気持ちが落ち着いて、あの時は美姫が普通に甘えさせてくれたことは単純に嬉しかったんだけど。
まぁ、その美姫の添い寝のせいで、女の子へのカラダへの興味を増してしまったり・・・急激に性に目覚めてしまったりと、それはそれで弊害はあったんだけど・・・
それからも、亜希子ちゃんとはしょっちゅう遊ぶようになって。
学校のお昼休みは、体育館で皆で大根抜きをしたり、鬼ごっこで遊んだりと本当に楽しく遊んでいて・・・
最初、亜希子ちゃんが大根抜きを知ら無いと言うから、皆で、壁際に横一列になって腕を繋いで座って、鬼になった人が足を引っ張り大根抜きのように引っこ抜くってゲームで。
皆で協力して引っこ抜かれないようにするゲームだということを教えたら、妙に彼女が気に入ったので皆ですることになったんだけど・・・
ただ、ここで男子にある問題が生じはじめるというか・・・
当時、僕等は、女の子と手を繋ぐことさえ躊躇するほど初心だったわけで。
皆嫌では無かったはずなのに、誰が亜希子ちゃんと木下の隣になるかで押し付け会うようにしてジャンケンを始めるようになって。
でも、俺だけは亜希子ちゃんの隣が良くて、亜希子ちゃんの隣でも良いけど・・・なんて皆に言ったら。
『はっ? 何? アキラ~亜希子ちゃんの事好きなの~』
とか、皆してへんな目つきで俺を揶揄うようにそんなことを騒ぎ初めて。
恥ずかしくて・・・それで亜希子ちゃんに気持ちがバレちゃうのが嫌で、すぐ誤魔化してしまって・・・
結局そのまま皆に混ざってジャンケンをしてしまい。
そんな時にかぎってジャンケンに勝ってしまって、亜希子ちゃんと他の男子が腕を組んでいるのが死ぬほど嫌だった。
最初は、亜希子ちゃんと木下と女の子は二人だけだったのが、日に日に参加する女の子が増えて言って。
そうなってくると、女の子の気を引きたいヤツだったり、女の子の前でふざけたりするヤツが出てくるわけで。
助け鬼の時も、捕まってる人達を助けようとして、亜希子ちゃんにワザと抱き付いたりするヤツが居て、マジで殺意を覚えたり。
もう、日に日に亜希子ちゃんを独占したいという思いでいっぱいになっていって・・・
でも、当時の僕は意気地もなければ、自分に自信も無いし、告白する勇気も無くて、あるのは人一倍高い羞恥心だけで・・・
そんな僕が、彼女に好きだなんて言えるはずも無く、ずるずると日々の時間だけがどんどん流れてしまい。
亜希子ちゃんへの片思いを内に秘めながら、運命に日が来てしまったというか・・・
あの日も、普通に休み時間に亜希子ちゃんグループと、僕が仲良くしていた男子グループの10人ぐらいで体育館で鬼ごっこをしようとして。
鬼を決めようとして、皆で輪になってジャンケンで決めようとしていた時に、クラスの意地の悪いアンチ亜希子ちゃんの女子軍団が近寄ってきて・・・
『オイ! オイ! オイ! お前らさ~なんなん!?』
『本当にアッコちゃんって男好きだよね~ マジビッチ!』
『お前らもさ~ こんなビッチと遊んで恥ずかしくないのかよ~』
女子5人くらいの集団にいきなり乱入されて、小学5年生の男子にとってはあまり言われたくないような言葉を投げつけられ。
当然、その発言に男子数人が売り言葉に買い言葉というよりは、もう最初から完全に逃げの発言を初めてしまい・・・
『はあ? 別に俺らは・・・遊びたくて遊んでるわけじゃ~』
そんな、弱気発言をされたら、意地の悪いアンチにはつけ入る隙でしか無く。
『じゃあ、お前ら全員アッコちゃんの事好きなのかよ~』
『え~ マジ~ こいつら皆アッコちゃんの事好きなんだ~』
そんな、思春期真っ只中の男子にとって一番言われたくない、恥ずかしさを煽る卑劣な言葉を投げつけてきて。
実際に亜希子ちゃんが好きなヤツに、木下が好きなヤツもいたわけで・・・
皆、内心は亜希子ちゃん達と遊びたいと思っていたし、皆自分の推しの女の子を心の内に秘めて隠していたのに、アンチ女子にそんなことを言われても、簡単に好きだなんて認められるわけも無く。
『ちっ! チゲ~し。 入れてっていうから、一緒に遊んでただけだけし』
まぁ、どんんどん男子共の反論に仕える語彙力は減って行ってしまうわけで。
そうなると、アンチ女子共の思うつぼで。
『じゃあ、アッコちゃんとなんて遊ぶなよお前ら!』
そんな強い言葉に、皆俯き加減になってしまい。
『別に・・・』っとブツブツ言うくらいしか出来なくなってしまい。
そして微妙な空気が、その空間に流れ始めてしまったのは言うまでもないんだけど。
そんな時・・・
「–––––––––あっ・・・ごめん。わたし・・・抜けるから・・・だいじょうぶ」
アッコちゃんが寂しそうな顔で、肩を落として俺らの輪から抜けて、1人体育館の端の方へ歩いて行ってしまったんだ。
そんな辛そうなアッコちゃんの背中へ容赦ない煽りの言葉が投げかけられた。
『別にうちらアッコちゃんを仲間外れにしようとかしたワケじゃ無いのに~』
アンチ女子によって、皆の輪から追放されてしまった亜希子ちゃんをよそに。
微妙な空気を少し残しつつも、何故かアンチ女子も含めて皆で鬼ごっこをやろうなんて話になり・・・
『よ~し、じゃあ途中から始めようぜ~』
当時、僕の亜希子ちゃんを視界の端に常にとらえながらも、その流れにながされて何となくその鬼ごっこに参加してしまったわけなんだけど。
その日、その後の鬼ごっこの内容なんて、まったく覚えていない・・・
鬼ごっこをしている最中、僕は体育館の中央でただただ立ち尽くして、体育館の端っ子で1人でバスケのゴール板にジャンプしたり、
1人で壁を背に体育座りする、悲し気な表情の亜希子ちゃんの姿をずっと目で追っていたわけで。
そのあまりに残酷で、可哀そうな光景を前に、大好きな人が辛そうにしているのに何も出来ない自分にジリジリしながら、ずっと1人体育館で立ち尽くしていた・・・
俺にその時、ほんのちょっぴりでも勇気があって、恥ずかしい気持ちを抑えて、大好きな亜希子ちゃんを守りたいという強い意思があれば。
きっと彼女を救う事が出来たのに・・・
それがトラウマのように後悔の気持ちだけが、俺の心の中に深く刻み込まれてしまったのだ。
その出来事がある少し前からアンチ女子共から、僕の顔を見るたびにアッコちゃ~んっとニヤニヤしながら冷やかしされるようになっていて。
僕が亜希子ちゃんが好きなことは、ほとんどバレていたというのに・・・
そこで開き直って亜希子ちゃんに全振りしたらよかったのに、恥ずかしい気持ちに打ち勝つ事が出来ずに後悔ばかりを残して時間が過ぎ去ってしまって。
夏の終り頃に起こったその事件以来、亜希子ちゃんの女子グループと一緒に遊ぶことも少なくなっていったわけで・・・
それでも、たまに公園で遊んでいると時に、亜希子ちゃんと木下ふらっと現れた時には、嬉しくて彼女たちの所に近づいて言って軽くおしゃべりをする程度の関係は続いていて。
本当は亜希子ちゃんと二人っきりでお話したいと思っていても。
当時の僕のまわりには、常に数人に男子がうじゃうじゃしていて、好きな女の子と二人っきりになるシチュエーションなんて出来るはずも無く。
でもある日、木下が急に冗談ぽく、亜希子ちゃんのこと本当に好きなのっと聞いて来て、周りには他に男子が居たけど、照れながらも好きだよって伝えたんだけど。
周りに雰囲気もどこか冗談ぽくなって、俺が亜希子ちゃんを好きだと言うと、周りにいた男子共もそれに乗っかって俺も好きなんて言い出して・・・
まあ、好きって言われた亜希子ちゃんは、え~うそ~とか言って、照れてくれはしたけど。
結局、本気で好きだなんて気持ちは伝わらず・・・
––––––––––半年後の3学期の終わりに、亜希子ちゃんが名古屋に転校することを聞かされてしまったのだ。
転校する事実を知ったその日から毎晩のように亜希子ちゃんを思って泣いていたわけで・・・
それでも、どうしても気持ちを伝えたくて手紙を書いたし、可愛い小さいネコのタマの人形キーホルダーを用意したんだけど・・・・・
学校帰りや、亜希子ちゃんが習い事で自分の家の近くを通る時に、何度も渡そうっと思ったんだけど。
何度も、何度も彼女を遠目で見ながら、隣にいつもいる木下を見つけては諦めてしまって・・・
もういい加減、僕が亜希子ちゃんを好きな事なんてバレているのに、それでも手紙を亜希子ちゃんに渡すのを木下に見られるのが恥ずかしくて。
木下だけは、僕に亜希子ちゃんの事を本気好きだと知られても、揶揄ったりしないと思っていたけど。
それでもまだ亜希子ちゃん本人に直接真剣に好きだと気持ちを伝えたことは無くて、ちゃんと告白もしていないのに木下に本当に好きだってことをバレたく無くて・・・
手紙を渡すってことは、もう告白しているのと同じなわけで・・・
でも、木下がいっつも亜希子ちゃんの隣にいるせいで、結局手紙を渡すことも出来ずにうだうだと時間だけが無情に過ぎ去って行って。
キーホルダーも手紙も渡せずに、彼女は転校してしまった・・・
転校先が名古屋だなんて、当時小学5年の自分からしたら海外並みに遠く感じるわけで。
小学生なんて、市内での転校でも、ほとんど会え無くなっちゃうような世界で・・・
当時の僕は、もう一生の別れだと思っていたのだ・・・
あれからの学校は毎日地獄というか、アンチ女子どもからは亜希子ちゃんがいなくなった後も、顔をみる度にアッコちゃん~なんて言われて冷やかしの様なことをされて、タダでさえ離れ離れになってグチャグチャになっていた俺の心はさらにえぐられていったわけで・・・
亜希子ちゃんが転校してからの毎日は生きる希望を失ってしまうようになってしまって、1人で家にいる時は、いつも亜希子ちゃんの事を思っては泣いていた。
そして、信じてた木下も亜希子ちゃんがいなくなってクラスの中でも立場が弱くなって、アンチ女子に引っ張られるような感じで、僕にあっこちゃ~んっと言うようになり。
最初に、木下それを僕に言った時の表情は、どこか申し訳無さそうで、辛そうにしていたけど。
それを言われた僕は、暗幕の了解というか・・・木下は僕の亜希子ちゃんへの本当の気持ちを知っていてくれ
たはずはのに、そんな事を言われても純粋に傷ついてしまったわけで。
もう、亜希子ちゃんが転校してしまった後の、小学6年生はそんな辛い気持ちばっかりで、楽しかった思い出なんてほとんと無くて。
ただただ、辛い記憶しか残ってないというか・・・
僕の部屋には、亜希子ちゃんと隣あって写った写真1枚を小さな額に入れて、ベッドの脇に立て掛けてあったんだけど。
彼女と別れてからは毎晩夢の中で亜希子ちゃんと会っていたのに、半年が経ち、次の冬が来る頃には少しずつ彼女の顔をすぐにイメージ出来なくなってしまい。
いつからか、一生懸命彼女の顔を思い出さないと夢の中でも会えなくなっていって。
それがとっても寂しくて、どうしてあんなに好きだったのに忘れていってしまうんだろうか・・・
忘れていく自分が悲しくて、それでも毎日毎日写真を見ては亜希子ちゃんの事を思い出しては頭の中でイメージしてそこから夢の世界に入るなんて抵抗をしていたんだけど・・・
もう、そんなことをしても、人の記憶が薄れて行ってしまう無常さに抗う事が出来ずに、亜希子ちゃんとの1年という短い時間の思い出だけを大事にしまい込んで、そのまま強い後悔とトラウマだけを心に残して初めての恋は終わってしまったのだ。
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