第26話 お姉ちゃん離れが小学生って早すぎだよ・・・
もう! 雄太! 何するのよ~ 離して!!!
「もぐう!! ボガシテ!」
「はい? なんて?」
「もう! はなして!!!」
「はぁ~ 美姫さ~ ダメだって言ったんじゃん」
「だって! あんな所でまたキスなんてしてるんだモン!!」
「したいお年頃なんだよ~」
「小学5年でしたいお年頃も何もないわよ~ あのマセガキ~ しかも、何かすっごいエッチなキスだったし・・・」
「まあ・・・ちょっと、長かったし。 可愛いらしいキスって感じではなかったけど。 あれはもう大人な感じだったね」
「許せない!!!」
「でも、さっきのはどう考えても、アキラ君がアッコちゃんの唇奪ったようにしか見えなかったけど。アッコちゃんが被害者っていったらおかしいけど・・・」
「もう! アキラの浮気者!!!」
「浮気も何も・・・ 美姫とアキラ君は付き合ってないだろ?」
「ううう・・・ そんな事無いモン」
「そんな事無くないでしょ?」
「アキラ君が可愛かったのはわかるけどさ~ 姉弟でしょ?」
「だって・・・ずっと一緒だったもん。 オムツも私が変えてあげたし、ミルクも飲ませてあげたし、遊んであげたし、お出かけの時はいっつも一緒だったし。アキラを育てたのは私だもん」
「イヤ・・・お母さんだっていたでしょ?」
「ううん、私の方がアキラを可愛がってたもん」
「・・・・そう?」
「そうだよ! お母さんとお風呂入らなくなっても、私とは一緒にずっと入ってたもん!」
「基準はお風呂なの?」
「そうよ・・・あのクソガキのせいで・・・」
「?」
クソ・・・ 溝口とか言うあのブス!
幼稚園の時にアキラの周りをウロチョロしてたあのガキ!
あいつがアキラの事をからかったりしなければ、今頃まだ一緒にお風呂入ってくれてたはずなのに・・・
街で見かけたら、どうしてくれようか・・・
カツアゲでもしてやろうかしら。
あ~でも・・・制服着てるとバレるわね。
どうしよう・・・
「美姫・・・何かすっごい悪い顔してるけど・・・どうしたの?」
「えっ? なんでも無いわよ・・・ ちょっと成り行きで、嫌な事思い出してただけ」
「もう、美姫さ~ アキラくんとどうしたいワケ?」
「また一緒にお風呂入りたい。 一緒に手繋いで、買い物とか行きたい・・・」
「だって、アキラ君が嫌って言うんでしょ?」
「恥ずかしがってるだけだモン」
「もうアキラくんも大人になったって事だよ。 お姉ちゃん離れだってするって」
「違う、明らかな原因がある・・・」
「学校でアキラ君がからかわれたってヤツ?」
「そうよ・・・あのブス・・・絶対に許さない」
「なんか、色々違う方向へ思いが飛んだね~ 美姫?」
「アイツさえいなければ・・・ 今頃まだ一緒にお風呂入ってたモン!」
「なんでそんなに一緒にいたいのさ?」
「だって、可愛いんだもん。 あの子抱きしめてると、なんか落ち着くんだモン。 甘えられてると、幸せな気持ちになるの!」
「お母さんかよ・・・」
「だって・・・わたしが育てたんだモン」
「イヤ、お母さん・・・ もう良いや・・・」
私が育てたもん・・・
ピアノだって私が教えたし。
一緒にお歌うたって遊んでたし。
公園行く時だっていっつも一緒だったし。
お買い物行く時だって、いっつも一緒だったモン。
「美姫~ とりあえず、今日はさ~ アッコちゃんとアキラ君の邪魔はもうダメだって。 ちょっと衝撃的な映像で俺もびっくりしたけどさ~」
「さっきのあれ何!? あんなキスどこで覚えたワケ!!? おかしくない? 私にだって、チュって可愛いキスしかしてくれた事ないのに!!」
「イヤ・・・ 逆に美姫と濃厚なキスされてても怖いって。 姉弟でしょう? たぶん、映画とかで見たんだよきっと」
「やっぱり、あの子の部屋にテレビを置いたのが悪いのよ・・・」
「イヤ、あんまり関係ないと思うけどな~ だって、部屋にいる時は、いっつも一緒にいたんでしょ?」
たしかに・・・アッコちゃんが来るまでは、毎日一緒にゲームしてた。
どこであんなキス・・・?
私は教えて無いし、変なDVDも持って無いし。
秀樹君から借りたのか?
あいつなら持ってそうだな、お兄ちゃんいるし・・・
「美姫の初恋ってさ~ ひょっとしてアキラ君のこと言ってるの?」
「ん? そうよ」
「はぁ~ まさかとは思ったけど・・・ 本当に?」
「あの子より可愛い子なんていなかったもん」
「可愛いって・・・ 異性としての可愛いじゃないじゃんそれ~ どっちかと言ったら母性だろ?」
「母性? 知らないわよ、私子供産んだこともないモン」
「イヤ・・・ そうだけど・・・ はぁ~ ダメだこれ・・・」
「ちなみに、中学校で好きだった子は初恋じゃ無いの?」
「違うと思うけど・・・ 2番目?」
「俺は?」
「3番目」
「あっ・・そう・・」
なんでそんなにあきれた顔するの?
「ねえ・・・俺にも姉貴いるけどさ~ そこまで愛された事ないよ? お風呂だって、小学校の低学年くらいまでしか一緒に入った記憶無いし。 キスなんてした記憶ないけど?」
「でも、彼氏できた時に、なんか取られた気分になったって言ってたじゃん」
「まあ・・・それはちょっとあったけど・・・」
「それと一緒よ・・・ なんでわからないかな~ 好きに理屈なんて無いじゃない」
「イヤ・・・まあそうなんだけど・・・ なんか、微妙に違うんだよな~」
「ねえ、美姫~ アッコちゃんの事は嫌いじゃないんでしょ? あんな純粋で可愛らしくて、良い子なのに泣かせて良いの?」
「それは・・・イヤ・・・」
「さっき、ちょっと泣かせてたけど?」
「・・・・ごめんなさい」
「謝るの、俺にじゃないよね?」
「ハイ・・・」
もう、今日の相手があの溝口だったら、ボッコボコにしてめっちゃ泣かせまくって、そのへんの森に捨てて来るのに・・・
って、そもそも交際なんて許さないわよ。
家にノコノコ上がって来た瞬間に、顔面ぐっちゃぐちゃにしてやるのに・・・
なんで、アッコちゃんなのよ~
私が、意地悪ババーみたいじゃ無い・・・
なんなのよ、あの子のあのシンデレラ感は~
声もめちゃくちゃ可愛いし・・・
今日の服だって、白のスカートに白のブラウスで、足も手もスラっと伸びちゃってさ。
もうめちゃくちゃ可愛いんだもん。
あんな妹と、姉妹で買い物なんて行ったらってめっちゃ想像しちゃうじゃん。
「アッコちゃんのこと妹にしたいんじゃ無いの?」
「したい・・・」
「じゃあ、あんまり意地悪したら嫌われちゃうよ?」
「それはイヤ!」
「このまま、二人に意地悪してたら、アキラ君からもアッコちゃんからも二人から嫌われちゃうよ? それでも良いの?」
「それはもっとイヤ!!」
「じゃあさ~ 暖かい目で見守ってあげなきゃ。 お母さんなんでしょ?」
「なんで? 私がお母さんなのよ? はぁ?」
「ミスった・・・ えっと、元彼女?」
「そんな彼女、彼氏なんて陳腐な関係じゃないモン」
「あ~ とにかく・・・ 二人に嫌われたくなかったら、とりあえずさっき見たいのはダメ。 まったく、さっき何言おうとしてたんだよ・・・」
私にだってキスしてくれた事あるんだからって言おうとしてたわよ・・・
「あのさ~ 美姫? 俺と俺の姉ちゃんがキスしたことあるなんて言ったらどう思う?」
「あるの!?」
「イヤ・・・無いけど・・・ その反応は?」
「私とのキスがファーストキスって言ったじゃん!!」
「だから~ アッコちゃんだって、そんな事聞いたら、今の美姫と同じ感情になるでしょ?」
「・・・・はい」
「じゃあ、もうわかるよね?」
「もう! なに! 雄太! 説教ばっかり! お父さんみたい!!」
「えっ・・・ ここに来て逆ギレかよ~」
「キレてないモン・・・」
「今日はダブルデートだけど、それぞれ別行動って約束したんでしょ? じゃあ、もうあんまり邪魔しちゃダメ」
「うん・・・」
「それに、俺だって可哀そうだよ・・・ もっと美姫と一緒に楽しみたいのにさ」
「それもゴメン・・・」
「じゃあ、もっと俺に甘えてよ・・・」
「うん・・・ごめん・・・」
雄太のバカ・・・
さっきから説教ばっかり。
私の気持ちなんて、誰も理解してくれないんだ。
ううう・・・
「なんで? 泣くの?」
「だって・・・ 花嫁送り出すお父さんってこんな気持ちなのかなって・・・」
「こんどはお父さんになっちゃったの?」
「え~ん・・・ ぐすっ・・・」
「もう・・・困った子だな~ よしよし・・・辛いね~ 俺がいるからさ~ 泣きやんでよ~」
「雄太も欲しいけど・・・アキラもいないとイヤだ~」
「我儘だな~」
「だって、私のだもん・・・ え~ん」
「ハイハイ・・・ 悲しいね~ 困ったね~」
ううう・・・まだお姉ちゃん離れなんて早いわよ・・・
まだ小学生じゃない・・・
せめて、あとまだ2~3年は一緒にいさせてよ~
アキラのこと取らないでよ~ ぐすっ・・・
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