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第24話 一緒にいるのに、独りみたいなのは辛すぎるよ


「あ~ 二人、逃げてくね~」

「え~!!」


「ねえ美姫?」

「なによ?」


「なんで、ジェットコースターの乗場まで来ちゃったの?」

「なんでって、アイツらが走って逃げるから!」

「乗らないで、下で待ってれば捕まえられたのに~」

「えっ・・・ ちょと!! なんで教えてくれなかったのよ!!!」


「だって、美姫・・・気づいたらもうダッシュして、アキラ君達追いかけて行っちゃったから」

「もう! ちゃんと止めてよ~!」

「追っかけて、次のに乗っても追いつかないのにな~って思って、後ろから付いて来ちゃった」

「もう! 雄太のそういうところ!! なんでそんなにのんびりなのよ!! もっとちゃんと私を止めてよ~」


 イヤ~ あのモードの美姫を止めるって無理じゃん・・・

 論理的な説明なんてしたら、あっという間に機嫌悪くなるクセにさ。


「あ~ もう見えなくなっちゃたね・・・」

「え~ そっちの席から見えたの?」

「うん。 てか・・・美姫? もうそろそろ、落ちるよ」

「えっ?」


『キャーーーーーーーーーーーーー!!!! 回る~!!!! 無理! 無理! 無理! 無理! 回る~!!!』



 カラッカラッカラッカラッカラッカラッカラッカラッ

 プシュッ!



『ハイ安全バーロック解除されております。お降りの際は足元お気をつけください』


「ハァッ、ハァッ、ハァッ・・・・」

「美姫・・・絶叫系苦手なの?」


「大丈夫よ・・・ちょっと心の準備する前に乗っちゃったから・・・それだけ・・・」

「ふ~ん・・・ だいじょうぶ?」

「うん・・・だいじょうぶ・・・」

「少しは落ち着いた?」

「えっ? あ~ うん・・・」

「それは良かった・・・」


 それにしても、美姫ってこんなにもブラコンだったとは・・・

 逆に、アキラ君があそこまで姉に対してはドライっておもろすぎる。


 でも美姫がこんな感じで、もしアキラ君が小さい頃のまま、お姉ちゃんの事が好きなまま育ってたら。

 この姉弟・・・けっこうヤバめな関係になってたんじゃ・・・


 でも、アキラ君の目には、もうアッコちゃんしか映ってない感じだったし。

 良いな~ あの年で、あんなに好きな女の子が居て、実際に彼女にしちゃうなんて。

 なんか羨ましいな~ 俺が小学生の時なんて、あんな風に好きな子と付き合うなんて無理だったし。


 にしても、アキラ君って・・・

 小学5年生であんなに彼女に尽くす子いるかな?

 クッションにブランケット・・・水筒だって。

 他にもなんか色々持って来てそうだし。

 あのリュック何入ってるんだろう?

 凄いな、あの年であそこまで他人の事気遣えるなんて。

 

 俺なんて、大学生になるまで、女の子に告白なんて。

 美姫と付き合えたのだって奇跡みたいなもんだし。


 財布を無くして困ってた美姫に声をかけたのが最初だった・・・

 あれだって、店に他の客がいたら、俺・・・たぶん無視してた。


 美姫が困ってて、あのカフェにいたのは俺1人だけ。

 もう、俺に美姫を助けろって言ってるとしか思えない状況だった。


 見ず知らずの女子高生を助けちゃって、美姫を初めてちゃんと見た時あまりに可愛くて・・・

 もう変なテンションの中で、大人ぶって美姫を家まで送ってあげたんだよな。


 付き合い始めてしばらくして、美姫に聞いたら。

 あの日、車に乗せられた瞬間はすっごい怖かったらしい。

 ああ、どっか連れてかれて、きっと変なことされちゃうんだって思ったって。


 良い意味でも、悪い意味でも、俺はヘタレだ・・・

 そんなこと出来るわけも無く、彼女からお礼がしたいからと、連絡先を聞かれてしまう始末・・・


 それから美姫から初めて連絡もらって会って以降、ちょくちょく誘われるようになった。

 一緒に学校帰りに美姫とカフェでおしゃべりしたり、ファミレスでご飯食べたり、映画を見に行ったり。

 奇跡のような出会いの春から、ずっとそんな関係を続けてた。


 でも、俺的にはそれだけで十分楽しかった。

 美姫みたいな可愛い女の子と、学校帰りにデートなんて人生で初めての経験だったから。

 なんか、制服きた美姫と一緒にいると、高校時代に出来なかった青春を取り戻しているような気持ちになったんだ・・・


 彼女の誕生日に生まれて初めて、女の子へプレゼントなんて買って、レストラン予約して。

 そこで初めて告白したんだ・・・


 美姫はすっごい喜んでくれて、まだ帰りたく無いって言うから、円山の夜景が見えるカフェでその日は遅くまでおしゃべりをした。

 その日の帰り・・・ 車で送って上げようとして、お店から出て車に戻った時・・・

 美姫が体を乗り出して僕の方へ顔を近づけて来てくれて・・・ 彼女に誘われるがままファーストキスしたんだ。


 めちゃくちゃ嬉しくて、自然と涙が出て来ちゃって・・・

 本当に自分にこんな可愛い彼女が出来たんだって実感したんだよな。

 まあ・・・泣いちゃったせいで、美姫が俺を抱き寄せてギュってしてくれたんだっけ・・・

 4つも年下の女の子に、頭をよしよし撫でられて・・・ 赤ん坊をあやすみたいに・・・

 ずっと俺は美姫にリードされっぱなし・・・


 それに比べて、アキラ君は、あの年で好きな女の子に告白して、彼女作っちゃうんだモン。

 それに、ファーストキスまでしちゃって。

 すごいな、アッコちゃんもアキラ君が大好きなんだろうな~

 あのベンチで彼を見る彼女の顔をみたらすぐわかっちゃうよ。


 美姫・・・ 俺は、いまだに不安になんだ。

 美姫から愛されてるんだろうかって。

 もっと、好きって言われたい・・・もっと甘えて欲しいって、俺が必要なんだって実感させて欲しいって。

 だから・・・今日なんて、美姫がアキラ君のことばっかり考えて、何か一緒にいるのに1人みたいで・・・ 自信無くなるよ・・・


 ごめんね・・・美姫・・・俺めちゃくちゃ子供だ・・・

 俺は美姫と二人っきりが良い。


 彼氏の俺がこんなにも隣にいるのに・・・

 アキラ、アキラって~ まあ6歳年が離れて、小さい頃から可愛がってたんだろうけど。

 それにしたってさ~ もう少し俺の存在意識して欲しいよ・・・


「ねえ~ 美姫~」

「なに?」

「彼氏の俺がここに居るのに、弟ばっかり・・・」

「えっ? あっ・・・ごめん。 つい・・・」

「寂しいよ・・・」

「もう・・・そうやってすぐイジケル~」


「だって、美姫と二人っきりでいたいのにさ。 アキラ、アキラって・・・」

「アキラにヤキモチ焼いてるの?」

「だって・・・あいつにはアッコちゃんが居るのに、俺の美姫は・・・心がココに居ないんだモン」


「モンって、雄太って本当に子どもっぽいよね?」

「だって・・・美姫にもっと甘えて欲しいし・・・俺の事だけ見ていて欲しいし」

「ごめんって~ そんなにイジケなくたって良いじゃん」


「なあ美姫・・・」

「なに?」

「なんで、俺と付き合ってくれたの?」

「なに? いきなり?」

「イヤ・・・どうしてかなって・・・」


「なんで、そんなこと聞くの?」

「だって・・・俺なんかに、美姫みたいな可愛い子がさ・・・」


「もう! なに言ってるの? 付き合った理由なんて・・・困ってるのを助けてくれて、雄太が優しかったからだよ。 それに・・・」

「それに?」


「怒らない?」

「うん」


「アキラにちょっと似てたから」

「似てるかな~?」


「う~ん。子供の頃の甘えん坊さんのアキラに、ちょっぴり似てるって感じたから」

「甘えん坊さんのアキラ君?」

「なんか、しっかりしてそうなのに、どっか弱弱しくって、守ってあげたくなる感じとか。 私にちょっと甘えてくれるのが嬉しかったの・・・ だから、なんか可愛くって・・・」

「可愛い・・・ 俺の方が4つ年上なんだけどな~」


 なんか、付き合った理由が弱弱しくって守ってあげたいとか、甘えてくれるからって・・・

 ちょっと男としては自信無くしちゃうな。

 でも・・・本当にそれだ。

 自分に自信が無くて、卑屈で・・・俺は弱い・・・


「4つ年上とか付き合っちゃったら、関係無いよ」

「そう?」


「でも、ごめん。 そうだよね、寂しい思いさせちゃったよね。 最初せっかく二人でって誘ってくれたのに、弟の事ばっかりで・・・ごめん」

「うん、でも良いよ。 少しでも、俺の事見てくれてるって思わせてくれれば・・・ 一緒にいるのに、こっちを見てくれない事が一番辛いから」

「も~う、ごめんって、雄太。 不安にさせちゃったね・・・ごめん。 ほら手・・・つなごう」

「うん」


 やっと・・・いつもの美姫に戻ってくれた。

 優しい目でちゃんとこっちを見てくれる。


「本当、そういうすぐ不安そうにする所とか、すぐイジケちゃうところとか、昔のアキラそっくり」

「なさけないな俺・・・」


「ふふっ、そんな雄太だから、ほっとけないし、守ってあげたくなっちゃうんだよ~」

「なんだか、アベコベだよそれ。俺が美姫を守らないといけないのに」

「私が本当にピンチの時に助けてくれたじゃない・・・」


「あれは・・・偶然だよ・・・」

「でもその偶然が無かったら、私達出会えて無かったのよ」

「本当あれは奇跡だよ。俺に美姫みたいな可愛い彼女が出来たのも奇跡だし」

「それを言うなら、私だってこんなに雄太のこと好きになるなんて思わなかったし。 アキラがあんまり構ってくれなくなって、ずっと寂しかった所に、雄太が現れて毎日楽しくなったし」


「アキラ君がかまってくれなくなったって、いつの話?」

「えっ? 私が高校に入学してすぐよ。 何か、クラスの女子に私と一緒に居るところ見られてバカにされたんだって。それからよ、なんか私を避け始めたの・・・ 呼び方だって、あっちゃんって呼ぶなとか・・ 私、そのアキラをからかった女・・・絶対に許さない・・・」

「ハハハ・・・ちょっと怖いよ美姫。 ていうか、なるほど、同級生の女子にからかわれてか・・・」


「それからよ、一緒にお風呂に入るのもイヤっていったり。 一緒にお買い物に付き合ってくれなくなったり。 唯一、アキラの部屋で一緒にゲームしたりする時だけよ、遊んでくれたりしたの・・・」

「・・・・本当に最近なんだね。 アキラ君とその・・・」


「なに? ダメ? でも・・・2週間前からよ。 お部屋でも、全然遊んでくれなくなって、邪魔者を見るような目で私を見てさ・・・」

「それで、ずっと元気なかったの? 先週の土曜日も寂しい寂しいって・・・」

「だって・・・アッコちゃんと付き合い始めてのからのアイツ・・・なんか別人なんだもん」

「そうなんだ・・・」


「そうよ、もっと普段は大人しくて、あんまり自己主張しない子で、友達と遊ばない日は、いっつも部屋で大人しく1人で何かしてるか、ピアノ弾いてるような子て、私が一緒に居てあげないとダメな子だったのに~」

「急に変わったの?」


「そうよ、本当にこの2週間、アッコちゃんに告白して付き合い始めた頃から急に変わったのよ」

「じゃあ、アッコちゃんと付き合うために、すっごい努力したっていうか、無理してああしてるってこと?」

「わからないわよ・・・ だからなおさら心配なのよ。 アッコちゃんが悪い女だったらどうしようとか、ずっと心配だったけど。 あの子本当に良い子で・・・」

「少なくとも、アッコちゃんは悪い女ではないでしょ?」


「分からないじゃん!」

「さっきのベンチに居る二人見てもまだそんなこと言うの? あんなに、アキラ君の事優しい目で見てたじゃんあの子」

「ううう・・・そうなよ。 いっつも、ああやって、うっとりした目で優しくアキラを見守ってる感じなのよあの子~」

「どう考えたって、100%アキラ君を信用しきって、愛おしい気持ちでいっぱい見たいん感じにしか見えないけど。 俺も美姫にあんな表情で見守られたいよ」


「ねえ・・・美姫?」

「なに?」

「俺も・・・ちょっとベンチで休憩したいかも~」

「はあ? 今はダメ!」

「なんで?」

「あの子達見つけないと」


 まだ、探すの諦めてないのかよ~

 俺だって・・・美姫とイチャイチャしたいのに・・・

 なんか、寂しいな今日・・・


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