第166話 靴が無いの・・・
朝っぱらから秀樹の相手をしたせいで、学校着く前にスッゴイ疲労感。
とりあえず、思考の矛先をるなっちへ向けさせられたしな~
明日、来週のデートでるなっちとの関係が進めば、しばらくゆかりちゃん騒ぎもしないだろうし。
まったく、ちょっとボディタッチがあったくらいで、ゆかりちゃん騒ぎ初めやがって。
そんな惚れっぽいヤツだとは思わなかったよ・・・
ん? イヤ・・・アイツがチョロいヤツだって忘れてた。
そうだよ、るなっちを好きになったのも関節キスしたからだった!
はぁ~ ゆかりちゃんに帰ったら言おう。
もう二度と、秀樹にヘッドロック禁止だって・・・
「アキラ?」
「なんだよ? まだ何かあるのかよ?」
「違うって、アレ」
「アレ?」
ちょうど二人で校門を通り過ぎた後、秀樹が何かを見つけたみたいで。
秀樹が指さす方を見ると・・・
はぁ?
「何か、アレ・・・泣いてね?」
「うん・・・泣いてる」
下駄箱の前で立ち尽くして、下を向いて泣いている美少女の姿が・・・
そのまま二人で学校の正面玄関の階段を上って。
泣いているアッコちゃんの方へ行こうとしたとき。
「アハハハ・・・何か、朝から大変そうだけど、アキラ、頑張れ。 バイバ~イ」
「えっ? ああ・・・」
そう言って、自分のクラスの下駄箱の列に消えていく秀樹を見送り。
下駄箱前で、どう見たって泣いてる風のアッコちゃんへ声を掛ける。
「アッコちゃんおはよう」
「ん? ・・・ぐすっ」
ありゃ? 本当に泣いてるもんな~
彼女の足元を見るとまだ、上履きを履いて無い。
チラっと、アッコちゃん下駄箱を見ても上履きが無い。
「ひょっとして~」
「・・・グスっ。 靴が無いの・・・」
やっぱり。
「今、希美が一緒に探してくれてるんだけど」
はぁ~ もうなんでアッコちゃんばっかり。
「アキラ~ 大丈夫か~?」
自分の靴に履き替えた秀樹が、玄関とは反対の廊下側から声を掛けてくる。
「ん? イヤ~ 何か、靴隠されたっぽい」
「はぁ? 靴隠された~?」
そう言うと眉をひそめてこちらに歩いてくる。
「てか、アッコちゃんの靴隠すって、怖いモノ知らずだな」
そして、飽きれた風にボソっとそんな事を言う。
「なんで?」
「だって、ブチギレたお前に報復されるかもしれないじゃん」
はっ? なんだ、俺がキレキャラみたいな言い方。
めっちゃ、心外なんだが。
「報復ってなんだよ~ そんなアニメの悪キャラみたいに」
「イヤっ、お前。 ブチギレた時の自分の姿見てないから、アレはヤバイかったぞマジで」
あれはさ~
命掛かってたっていうか。
しょうがないだろ、必死だったんだから。
同じ状況なら、誰でもああなるって。
しかも、相手がずっとしつこくイジメてたアイツ等なんだから・・・
「お前だって、同じ状況ならああなるよ」
「まあ、そうかもだけどさ~ とりあえず一緒に探すよ」
「えっ? やさしいじゃん?」
「はっ? 俺はいつだって、やさしいだろ」
なんだろうな~
今コイツのやさしさを受けると、後でゆかりちゃんのモノを何かよこせとか言われそうとか。
とっても、浅ましいことを考えてしまって、善意がスッと入ってこない。
そんな事を考えながら、微妙な顔をしていると。
「はぁ~ アキラさ~」
「なに?」
「お前さ~」
「なに?」
めっちゃ呆れ顔で、俺を見下ろしてくるじゃん。
なんだよ?
「いくらノンデリって言われててもだな~ 俺だってそこまで人手無しじゃないからな」
まるで、考えていたことを見透かされたような秀樹の物言い。
「まったく、人をなんだと思ってるんだ・・・」
そう言って、一人ブツブツ文句を言いながら、アッコちゃんの靴を探してウロウロ始める秀樹。
俺、今そんなに顔に出てたのかな?
でもさっきのアレの後だし。
う~ん、でも何かゴメン。
そう心の中で秀樹に謝っていると・・・
「ん? てか、あれじゃね?」
秀樹が指さす方を見ると、見覚えのあるラベンダー色でパステルカラーの踵の部分がひょこっと見えている。
秀樹と二人で、近くに寄って行くと、玄関の角にある変な竪管とロッカーの間の隙間に、無理くりねじ込まれたように隠された靴を見つける。
秀樹が、靴を持ってグリグリしながら、隙間から片方の靴を取り出すと、そのままホレっと言って俺に頬り投げる。
それを慌てて受け取ると、もう片方の靴もグリグリと秀樹が取り出してくれていた。
「ハイ、良かったなすぐ見つかって」
「ああ・・・ありがとう・・・」
靴が見つかってアッコちゃんの方を見ると。
口を真一文字に結んで、不安そうにこっちを見つめるアッコちゃんへ。
「アッコちゃ~ん、靴あったよ~」
「えっ? 本当?」
見つけた靴を持って、アッコちゃんに見えるように掲げて叫ぶと。
それまで泣きそうだった顔が、ぱぁ~っと明るさを取り戻していく。
そのまま、アッコちゃんの元へ靴を持って戻ると。
「あ~ 本当だ~ ありがとう二人共!!」
「まあ最初に見つけたの秀樹だけどね~」
「秀樹くん、ありがとう!!」
あっ! アッコちゃん!
そんな無駄に天使の様な微笑みをこんなヤツに・・・
「イヤっ、別にすぐ見つかったし~ アッコちゃんをイジメるヤツは俺も許せないし・・・うんマジで」
コイツ、何照れてんだよ。
この笑顔見て、また可愛いとか思ってんだろ?
「アキラくん、ちょっと私、希美探してくるね♪」
「えっ? うん・・・」
そう言って、外に木下を探しに走って行くアッコちゃんを見ながら。
「オイ」
「何だよ?」
「アッコちゃんに変な気持ち持つなよ」
「うっ、うるさいな~ 何も思ってね~し!」
「本当かな~?」
「イヤッ・・・なんて言うか・・・今の笑顔はその、グッと来たっていうか~」
「お前っ!」
今グッと来たって言った?
人の彼女捕まえて~ グッと来ただと~?
ゆかりちゃんをエロイ目で見て汚しておいて、さらにアッコちゃんまで。
コイツは、人のモノばっかり欲しがりやがって~
許せん。
「そっ、それよりどうするんだよ?」
「何が?」
何話題変えようとしてんだよ?
真顔でキリっとしても、誤魔化せないんだよ。
「犯人捜し。するの?」
「犯人捜し~? う~ん・・・」
あんな見つかりやすい所に隠すようなヤツだし。
なんか、衝動的にやったような気もしないでも無いし~
どっかの連中に比べると悪質性に掛けると言うか。
まあ、靴を隠す時点で悪質ではあるけども・・・
「まあ、これからも続くようなら考えるかな~」
「ふ~ん。まっ、犯人捜しするなら付き合うよ」
「・・・」
怪しいな~
「なんだよ? いい加減、その目で俺を見るのヤメロ」
「優しいじゃん?」
「俺はいっつも優しいだろ!」
「そんな媚び売っても、ゆかりちゃんのブラジャーはやらないからな」
「はっ!? そっ、そんなこと言ってないだろ! バカなのお前!」
「だって、見返りも無いのに優しいのが怪しいじゃん! しかも、さっきまでゆかりちゃん騒ぎしてたし」
「そりゃ~ 俺もゆかりちゃん装備一式欲しいけどさ~」
やっぱり。
「・・・変態」
「なっ! お前だろそれ!」
「俺は本人から貰ったんだから変態じゃね~し! とにかく、ゆかりちゃんの下着はダ・メ・ダ!!」
「なんでだよ! 美姫さんのならホイってくれる癖して~」
「美樹のは良いんだよ」
「何だよそれ? 逆に美姫さんが可哀そうだろ?」
はぁ? 美姫が可哀そう?
イヤイヤ、可哀そうなのは、いっつも美姫にイジメられる俺の方だろ。
「ゆかりちゃんは、何て言うか特別なんだよ」
「はぁ~ 何だよ、最近全然会ってないとか言ってた癖して。急にまた会いだしたと思ったら、俺にも内緒で二人だけでコショコショしてたとかさズルいんだよ」
ズルい、ズルい、うるさいな~
そもそも、ゆかりちゃんと俺は家族みたいな関係性なんだから、いちいちお前に報告する必要ないだろうが。
「まっ、アッコちゃんには黙っておいてヤルけどな~」
「何をだよ?」
「お前が昔、ゆかりちゃんのおっぱい吸ったり、揉んだりしてた事だよ」
コイツ、ある事ない事を~
「ふん、ぺちゃぱいのゆかりちゃん相手だろうが。 お前が赤ちゃん役で、ゆかりちゃんに甘えてバブバブしてたのは事実だからな!」
「お前っ! 何年前の話だよ! 幼稚園くらいだろそれ!!」
「はぁ~!? 違います~ 小学3年生の頃もやってました~」
幼稚園の・・・記憶じゃない?
てか、小学3年生の時もやってただ?
「3年生って? 嘘だ!」
「お前マジで記憶ないの? マジどうしたの頭でもぶつけて記憶無くしたのか?」
「イヤ・・・そんなことは無いけど・・・」
「少なくとも小学1~2年生までは、お前はゆかりちゃんのおっぱいを毎日モミモミしてました!!」
「毎日なんて!」
「毎日してました!! それに、3年生の頃は二人でマジでコソコソしてただろ? 美姫さんと二人で戻ったらいっつもカーテン閉めた部屋に二人で籠ってたし。絶対ゆかりちゃんとエロイことしてただろ!?」
カーテン閉めた部屋で二人で?
さっき頭によぎった映像って・・・
「何の話~?」
えっ!?
「何? ゆかりちゃんがどうかしたの?」
アッコちゃん!? いま・・・聞いてた?
木下と一緒に、不思議そうな顔をして、こっちを見て立っているアコちゃんがそこに・・・
「イヤ、えっ?」
てか、今の会話どこまで聞かれてた?
木下も一緒に聞いてたのか?
「ゆかりちゃんって、昨日話してたもう一人のお姉さんの事? 秀樹君も知ってるんだ?」
「えっ? ああ・・・まあね。 俺も小さい頃ほぼ毎日一緒に遊んでたから~ なっ? アキラ?」
ふん、何が『なっ』だよ。
ていうか、お前余計なこと言うなよ!
そう思って、秀樹にアイコンタクトを送る。
「ふ~ん。で、ゆかりさんがどうかしたの?」
「えっと、何かしばらく会ってないから、俺も久しぶりに会いたいな~って話を~ なっ? アキラ?」
そう言うと、秀樹がそこは任せろと言わんばかりに、軽く体をドンっとぶつけてくる。
「えっ? ああ、まあ」
「ゆかりさんか~ 私も会いたいな~」
話しを逸らさないと・・・
「てか、木下なんかごめんな。外まで探しに行ってくれたんだって?」
「えっ? うん。 てか、どこにあったの靴?」
ナイス木下!
「えっ? あそこの玄関の角のパイプの所」
「はぁ~? あんな所に?」
「じゃあ、アキラまたな!」
「えっ!? ああ・・・」
いつのまにか、俺の隣からいなくなり。
廊下の方からひょこっと顔だけ出して秀樹のヤツがそう言うと。
さ~っと、階段の方へ走って消えて行った。
アイツ・・・逃げやがった。
クソっ、俺がゆかりちゃんのおっぱいを毎日モミモミしてたとか適当な事ばっかり。
しかも、小学3年生の頃までって?
「アキラくん?」
「えっ?」
「私達も教室に行こう?」
「うっ、うん・・・」
ダメだ、アイツが余計な事言ったから。
もう頭の中、ゆかりちゃんのおっぱいだらけになっちゃったじゃん。
イヤっ、なんかうっすらママゴトで、そんな赤ちゃん役で、ゆかりちゃんに抱っこされてたのは覚えてるけど。 おっぱいあげましゅね~っとかいうのも記憶はあるけど。
アイツが言うみたいにチューチューなんて吸った事・・・
えっ? したのか? 俺?
でも、もしそれが本当なら、なんでそんな嬉しい記憶がごっそり抜けてるんだよ?
てか、一昨日の夜にゆかりちゃんにも、覚えて無いのとか言われたような~
なんだ? 俺だけ覚えて無いのか?
う~ん、なんだろな~ 思い出せない。
ゆかりちゃんに聞くしかないのかな?
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