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第165話 ゆかりちゃんのおっぱいチューチュー吸ってたじゃん

「いってきま~す」

「おっ、アキラ~」


 なんだ?

 急いで階段降りて来て。


「何? 幸ちゃん?」

「あの~ ほら・・・その~ 先生によろしくって言っといてな?」


 昨日から先生、先生って。

 てか、その怖い顔で乙女みたいな仕草でモジモジすな!

 解釈不一致がすぎる・・・


「てか、そういうのはさ~ 自分でメールしたら良いじゃん。 メアド交換したんでしょ?」

「まあ・・・そうだけどさ~ まあなんていうか~」


 はぁ~ この人はまったく。


 昨日の夜のうちにメールすれば良かったんだよ。

 時間経てば経つほどメールする口実なんて無くなるっていうのにさ~

 そんなんだから、コミュ障陰キャのムッツリエロエロ魔人の沼にどんどんハマってくんだよ。


「昨日オーケストラの話で少し盛り上がってたんだから、練習とか見に来ませんかとか適当にメールすれば良いじゃん」

「練習って・・・平日だし、先生無理だろ?」


 知らね~し!!


 そんな口尖らせて子供みたいに。

 老けた強面の顔でヤメロ、可愛さ0だし・・・


 も~う、この人は昔っから他力本願というか~

 美姫と話すときも、何故かいつも俺経由、

 コイツマジでこのままじゃダメだよな。

 ここは心を鬼にして突き放さないと。


「だったら適当にコンサートいきませんかとか。 今度一緒にカフェにでも行きませんかとか、なんでもいいから誘えば良いじゃん!」

「ふっ・・・お前は良いよな~ 女の子誘いなれてるからさ」


 ウゼ~ この人マジでウゼ~


 てか、その何もかも諦めたような死んだ目をヤメロ。

 朝っぱらから闇全開放だなこの人。


 でも、昔っからそうやって同情を誘って、ゆかりちゃんや俺に助けてもらうとか、もうそろそろ卒業してもらわないと。


「あ~ 幸ちゃん、もう俺学校行かなきゃだから、自分の事は自分でね。 じゃ~ね~」

「えっ!? オイ! アキラ!」


 もう自分で何とかしろっつ~の!


 玄関を出て、そのまま小走りで門を抜ける。

 門を抜けてそのまま学校へ向かおうとしたのだが。

 何か視界の端で、門を出てすぐの所に人影を感じて振り向くと・・・


「オイッス~♪」


 !? はっ!? なんで?


「オッハ~♪」


 てか、なんでコイツ、朝からこんな陽キャなんだ?


「オッハ・・・てか、どうしたお前?」

「ゆかりちゃんは~♪?」

 

 はっ? ゆかりちゃんは~だ?


「居るワケないだろ。 ゆかりちゃんなんて、30分以上前に学校に行ったし」

「え~ なんだよ~ ゆかりちゃんに会えるかなって思って来たのに~」


 はぁ? 何・・・こいつ?

 急にゆかりちゃんとか言い出して。


「てか、なんだよ? いきなり、ゆかりちゃんに会えるかなとか? なんだお前?」

「えっ? だって・・・まあ何ていうかさ~ 忘れられないっていうかさ~」


 キモッ! モジモジ君パート2かよ。


 てか何? 忘れられないって何のことだよコイツ。

 それに、さっきからどこに焦点合ってるのか良くわからない遠いい目をしてポーっとしているし。


「イヤ~ 昨日ヘッドロックされた時さ~」

「ヘッドロックされた時?」

「イヤ~ そのなんて言うのかな~ 目が覚めたって言うか~」


 クネクネすな! キモイ!

 目が覚めたってなんだよ?


「何に?」

「イヤ~ 確かに美姫さんに比べたらあれなんだけどさ~ ヘッドロックされた時さ~ 俺~ 世界が変わっちゃったんだよね~」


 ヘッドロック? 世界が変わった?


 ん?


 はぁ~ なんとなくわかったような気がするけど。


 なんか、ゆかりちゃんを汚されたような気がして気分悪いんだけど。

 俺の大事なお姉ちゃんなんだが?


 ゆかりちゃん相手に、卑猥な事言い出したら許さないけど・・・


「おっぱい、やわけ~って!!」


 やっぱり!!


「イタッ!!!」


 次の瞬間、秀樹のお尻を思いっきり蹴とばしてしまっていた自分。


「何すんだよ!」

「うるさい!! ゆかりちゃんは、俺のお姉ちゃんだぞ!! イヤラシイ目で見て汚すなアホ!!」

「何だよ! 美姫さんの時には何も言わない癖して!!」

「美姫とゆかりちゃんは違うだろ!!」


 ゆかりちゃんは、天使と等しき尊い存在なのに。

 このヤロ~ 許せん・・・


「はぁ~ お前は本当に昔っからゆかりちゃんっ子だよな~ でもさ~ 今ならお前の気持ち、理解出来ちゃうんだよな~ ゆかりちゃん、やわかいし、良い匂いするし、可愛いし~」

「・・・・・・」


 コイツ~ 昔、美姫に抱っこされてデレデレしてた時とまったく同じ顔しやがって~


「ん? なに? そのゴミを見るような目?」


 当たり前だろ、いくら幼馴染のお前だからってな~

 こっちにだって譲れないモンがあんだよ。


「いまさら何言ってんだよ? 昨日は、さんざん美樹を褒めて、ゆかりちゃんの事バカにしてた癖して」

「だからさ~ ヘッドロックされるまで俺全然気づいてなかったんだって! この世にあんな素晴らしい世界があるなんて!」


 お前は美樹だろ~が!!

 昔っから、お前は美樹、俺はゆかりちゃんって、棲み分け出来てただろ!!


「ていうか、お前、数年前に美姫に捕まってギュってされた時に、おっぱいの感触感じてエロイ顔してたじゃん。 何が世界変わっただよ」

「それな~ でもさ~ 背中で感じるのと、ほっぺで感じる柔らかさって全然違うっていうか~ 何か気持ちゆかりちゃんの方が、弾力が気持ちよかって言うか~ 何よりも、暖かくて・・・」


 たしかに、ゆかりちゃんのおっぱいはフォワフォワだよ。

 美姫と比べたって程よい弾力があって形も綺麗で、理想的なおっぱいだよ。

 それに、美姫よりも色白でルネッサンスのビーナス様すら霞んでしまう美しさだけれども。


 お前のその感動は手に取るようにわかるけれども。


 だが・・・だがな・・・

 いくら幼馴染のお前だろう~が~


「ゆかりちゃんは、俺だけのお姉ちゃんなんだ!! エロイ目で見ることは、ぜ~ったいに許さ~ん!!」

「はぁ? エロイ目ってなんだよ!? お前だって昔、幸せそうにゆかりちゃんのおっぱいチューチュー吸ってたじゃん!」


 はぁ?


 チューチュー?


 吸って?


 俺が? ゆかりちゃんのおっぱいを?


 ・・・・・・はっ!?


 あまりに突拍子もない無い事を言われ、数秒間自分の中で時が止まる。


 そこから、ものすごく高速回転で記憶を呼び起こそうと、グルグルと脳内が周り始める。

 目の前の視界も意識から飛び、小学3年生頃の記憶からドンドンさかのぼって行く。


 でも、そんな記憶はどこを探しても出てこない。

 そもそも、ゆかりちゃんとすでにそんな事をしていた経験値があるなら、数週間前に再開してから、一緒にお風呂入って裸見たって、あんな興奮したりしないだろうし。

 一緒に寝ていてもあんなに悶々として、寝ているゆかりちゃんのお胸に恐る恐る手を乗っけるなんて初心な少年みたいな事しないし。


 なんだチューチューって!?


 そんな事今のゆかりちゃんにしたら・・・

 だめだ、色んな事を我慢出来る自信が無い!!


 落ち着け俺・・・

 そもそも、こいつの記憶が正しいなんて保証がないじゃないか!


「オッ! 俺がいつチューチュー吸ってたって? 無いだろそんな事、いい加減な事ばっかり言ってんなよ!?」

「イ~ヤ!! 忘れたなんて言わせね~し。 俺見たし!」


 はぁ? 何言ってんだコイツ?


 俺見たしって。

 何? その自信満々な感じ。


 えっ? じゃあ・・・マジ・・・なのか?

 俺がゆかりちゃんのおっぱいチューチュー吸ってた?


 イヤイヤ、そんな羨ましい記憶なら絶対忘れるワケないじゃん!

 記憶が全然思い出せずに、唖然としていると。


 悪戯顔をした秀樹が、たたみ込むようにさらなる情報をぶっこんでくる。


「お前いっつも赤ちゃん役で、ゆかりちゃんがおっぱい上げましょ~ね~って言ったら、嬉しそうに胸触って、チューチューしてたじゃん」

「はっ!? なんだ・・・それ?」


 なに・・・そのプレイ?


 あまりに突然の秀樹からのカミングアウト。

 まったく記憶に無いことを、いきなり秀樹に言われキョトンとしていると。


「ハッ? マジ? お前全然覚えて無いワケ?」


 全然・・・覚えて無い・・・


 なに? そのマジで羨ましい記憶?

 俺が? ・・・ゆかりちゃんと?


 イヤイヤ、待て待て。

 確かに、ゆかりちゃんとの事は、けっこう記憶が曖昧だったのは否めない。

 実際にゆかりちゃんと再会して、思い出話をしているうちに思い出したこともいっぱいあった。


 でも、おっぱい・・・チューチュー?

 俺がゆかりちゃんのおっぱいを?


 ・・・・・・イヤ! 騙されないぞ!


 コイツ絶対適当な事言ってる!

 疑いの目を秀樹に向けて、言い返そうとしたその時。


「お前ら二人でいっつもイチャイチャしてさ~ それに美姫さんがいっつも怒って解散だったじゃん?」


 えっと・・・まあ確かに。


 おママゴトの終りは決まって、ゆかりちゃんと美樹が言い争いして、怒った美姫がどっかいって終了っていいうのがパターンだったけど。


 喧嘩の原因は、ゆかりちゃんが俺を膝の上に乗せて抱っこしているのを、美姫が引き剥がそうとして~

 それに抵抗して、俺がゆかりちゃんにギュって抱き着いて離れないでいたら、美姫が怒ってどっか行くっていうのがパターンだったような~


「ゆかりちゃんの膝の上にいたのは覚えてるけど・・・」

「そうだよ膝の上にお前を乗っけてな! それで、毎回ゆかりちゃんが俺らと反対側向いて、お前におっぱいあげましゅね~って言って吸わせてたじゃん」

「・・・・・・はぁ?」


 だから、その記憶が全然・・・


「ま~あ、当時は全然羨ましくもなんともなかったけどさ~ 胸も無いのに何かやってる~って、美姫さんと一緒にバカにしてたけど」


 それは何か覚えてるかも。

 いっつも、ゆかりちゃんが泣きそうな顔になって可哀そうって思ってたのは覚えてるぞ。

 でも、それって幼稚園? 小学1年生頃では・・・?


「バカにしても、俺らの存在無視して、ゆかりちゃんとお前だけ二人の世界でイチャイチャしてるから、いっつも美樹さんが怒ってどっか行くってパターンだったろ?」


 !? ん?


 なんだ一瞬いま何か頭に映像が・・・


 ゆかりちゃんの腕の中から見た視点?

 優しく見つめてくれてるゆかりちゃんの顔?


 薄暗い部屋で、ゆかりちゃんと一緒?


「オイ! 何ボ~っとしてんだよ!!」

「えっ?」


「どうせ、ここ数日もゆかりちゃんと二人でイチャイチャしてたんだろ!! それも~ あんなに成長して綺麗になったゆかりちゃんと~! ズルいぞお前ばっかり!!」

「うるせ~!! ゆかりちゃんは俺のお姉ちゃんなんだから、お前は関係ないだろ!!」

「約束しただろ!! どっちかに彼女が出来たら協力しあうって!!」


 ・・・・・・???


 また数秒間自分の中で時が止まる。


 う~ん・・・なんだそれ?


 そんな約束いつしたんだ?

 そもそも、彼女が云々こいつとそんな会話したのなんて中学生になってからだよね?


 それに、彼女が出来たら協力する話しと、ゆかりちゃんとは関係ないだろ。

 そう思い、何言ってるんだと感じであきれか顔で見ていると。


「はぁ~ 忘れたのかよ!」

「したっけ? そんな約束?」

「お前本当に物覚え悪いな? マジバカなの?」


 一瞬ピキっとしてしまうが。


 イヤ、相手は小学生。

 くだらない言葉の応酬で、そんな腹立てたりなんて。


 しかも、こいつに比べて俺の方が圧倒的に、学力は上だしね。


 そもそもだな!

 お前にとったらまだ数年前の記憶かもだけど。

 こちとら、20年以上も前の記憶を一生懸命掘り返しながら生活してるんだからしょうがないだろ。


 ていうか、彼女が出来たら協力しろってなんだよ?

 るなっちの事じゃ協力してるだろ?

 

「てかさ」

「なんだよ? このニワトリヤロー」


 だれがニワトリだ!


「協力って意味じゃ、るなっちの事なら協力してるだろ!? 意味不明だぞお前!!」

「るなっちはるなっち!! ゆかりちゃんだけお前独り占めってズルいぞ!!」

「だから何だよ、ゆかりちゃんを独り占めって、俺のお姉ちゃんなんだから、他人のお前にとやかく言われる筋合いないだろ!!」

「美樹さんのパンツはくれるくせして!!」


 ・・・はぁ?


 なに言ってんだこいつ?


「ゆかりちゃんの独り占めと、美姫のパンツに何の関係があるんだよ?」

「美樹さんの事はちゃんとお裾分けしてくれるじゃん!」


 コイツ・・・マジバカなのか?


「美樹は美樹だろ? お前が美樹の事好きだって言うから」

「じゃあ、ゆかりちゃんだって同じだろ!?」

「バカかお前! ゆかりちゃんの事ずっとバカにして、美姫と一緒になってイジメてた癖して、な~にを今さら」


「だから~ 世界が変わったんだって~」


 なんて都合の良いヤツ。

 何が世界変わっただ、このバカチンが。


「・・・・・ゆかりちゃんには絶対指一本触れさせないぞ」

「アキラ~お願い! 昨日の夜から、俺おかしいんだよ~ 胸がこ~う、キュッとして、寝ててもゆかりちゃんの顔がさ~」

「あ~ダメったらダメ!! 何があっても、ゆかりちゃんだけは、ぜ~ったいにダメ!!」


 前世じゃ疎遠になって、高校生の時に辛い思いしたんだ。

 せっかく、この時代に戻ってきたんだから、ゆかりちゃんとの時間も取り戻すんだよ。

 お姉ちゃんとしてのゆかりちゃんとの時間も、憧れのお姉さんとしてのゆかりちゃんとの時間も両方。


 あんな前世で経験したような、街中で知らない男と一緒に歩いているゆかりちゃん見て、モヤモヤした気持ちになるとかもうイヤだし。

 知らない間に、誰かと結婚しちゃうゆかりちゃんだって見たく無いんだ!


「そもそも、ゆかりちゃんの何をお裾分けしろって言うだよ? この変態!」

「え~ う~ん・・・俺もゆかりちゃんと遊びたいし~ 写真とか・・・その・・・」

「その・・・なんだよ?」

「俺も服とか欲しいかな~って」


 そう言って、また空を見上げて完全妄想の世界に入ってる秀樹。

 

 生まれて初めて、女性の胸を背中以外で感じて、それが超絶美少女のゆかりちゃんだもんな。

 思春期のお前が完全にやられるのは無理もない話だけどさ~


 でもな秀樹。


 ゆかりちゃんだけは絶対にダメだぞ。


 ゆかりちゃんだけはダメだよ。

 昔も今も、ゆかりちゃんの膝の上は俺の場所なんだから。


「悪いけど、ゆかりちゃんだけは絶対にダメ!」

「え~!!! ケチ!!!」


「うるさいな~ この間、紳士ぶって美姫のパンツ持って帰るの断った癖して、何がゆかりちゃんの服が欲しいだ! この変態!!」

「イヤッ、ほら・・・なんていうか~ あの時は、るなっちの事で頭がいっぱいで、その~ 浮気心はイケないかな~って思って」


 はぁ?


 こいつ、何を意味不明な事をさらっと言ってやがる?


 じゃあ、今日のさっきからの態度は何なんだよ。

 完全にゆかりちゃんに恋しちゃいました!

 だから、ゆかりちゃんの身に着けてるものを、何かくれって言ってましたよね?


「じゃあ、今日は完全に浮気だな? 秀樹、アウト~!!」

「はぁ? それ言ったらお前だって浮気だろ! ゆかりちゃんの事、アッコちゃんには内緒の癖してさ!」


「ふん! ゆかりちゃんは、お姉ちゃんで仲が良い弟妹であって浮気じゃ無いし。 それにもうアッコちゃんには、俺らの関係は全部話したし」

「はぁ? マジ? それで、アッコちゃん何にも怒ったりしてないの?」


「今度、私にもそのお姉ちゃん紹介してって言われたし」

「アッコちゃんって・・・どんなけ懐が深いんだ? 女神か?」


 まあ・・・色々とお風呂の事とか、一緒に寝てるとかは諸々のお話はしてないですけど。

 だからって、別にまだゆかりちゃんとだって美姫とした以上の事はしてないっちゃ~してないし。


 普通の弟妹の関係そのままっていうか。

 まあ基準は美姫だから・・・・・・普通かどうかはまあ・・・それだけど。


 うううん、うちのはこれがスタンダード。

 だから、ゆかりちゃんとの行為も全部セーフ!!


 うん、美姫基準ならセーフだ!


 何か、ここ数日色々してもらったような気はするけど。

 でも、秀樹の言うような、おっぱいチューチューなんてしてないし。


 いたって健全な弟妹の日々だ。

 うんうん・・・


 まったく、おっぱいチューチューだなて・・・


 でも・・・


 ??? なんだろう。

 

 さっきチラっとよぎった映像?


 薄暗い部屋・・・あれって、ゆかりちゃんの部屋?


「ん? アキラ?」

「えっ?」


「どうしたのボーっとして?」

「イヤ、ちょっと昔のこと」

「ゆかりちゃんのおっぱい吸ってたの思い出したか?」


 何、目をキラキラさせて話してんだコイツは?

 昔は、ゆかりちゃんの事、ぺちゃぱいってバカにしてたのに。


「てか、当時からゆかりちゃん、ちゃんとおっぱい有ったし」


 成長前だったけど、少し膨らみがあったし。


「はぁ? そうかな~ 昔は、ヘッドロックされても何にもなかった記憶しかないんだけどな~」


 当時の記憶をたどっているのか。

 また、空を見上げながら歩いている秀樹の横で、ゆかりちゃんのおっぱいの事を考えてしまう。


 コイツがおっぱい、おっぱいうるさいからしょうがないと思いつつ。

 そりゃ~ 当時は、今よりも全然小ぶりなおっぱいだったし。

 今みたいに、あんなフォワンフォワン感はなかったけどさ~


 ん?


 って、あれ?


 俺なんでゆかりちゃんのおっぱいを鮮明にイメージ出来てるんだ?

 なんだ? この、小ぶりなおっぱいのイメージ?


「オイ! またボーっとすんなって! なんだお前! やっぱり、ゆかりちゃんと何かエッチな事してんだろ!」

「はっ!? しっ、してね~し!」


「怪しいんだよな~ あんな可愛いゆかりちゃんが傍に居て何にもしないワケないだろ?」

「まあ・・・一緒にお風呂入って、一緒に寝てはいるけど」


「はぁ!? 一緒にお風呂だ!!??」

「お前っ! バカ! 声がデカい!!」


 てかバカが、他の通学中の生徒にジロジロ見られてるし!

 こんな会話、クラスの女子に聞かれたら・・・


「お前ばっかりズルいぞ!!」

「うるさいな! ゆかりちゃんは俺の姉ちゃんだ!」


「姉ちゃんじゃないじゃん! 他人だろ! 他人!」

「うるさいな~ でも、ゆかりちゃんは美姫と一緒で、お姉ちゃんなんだ!」


 もう! 血は繋がって無くたって、物心つく前からず~っと何年も毎日一緒だったんだ!

 ゆかりちゃんがお姉ちゃんったら、お姉ちゃんなんだ!


「はぁ~ まあ良いや・・・てか、明日さ~ 遊びに行っても良い?」

「はぁ? なに期待しているのか知らないけど。たぶん、週末は俺もう実家に帰る予定だから」


 実家に帰ると告げた瞬間、それまで空を見上げてボーっと歩いていた秀樹が、この世の終りみたいな残念そうな顔を俺に向けて来る。

 そして、俺の両肩を掴んだと思ったら・・・


「なんで!?」


 今日のこいつ、過去一うざいんだが。

 掴まれた両肩を振りほどいて・・・


「なんか、もうそろそろ美樹が心折れて、和解に向かいそうだって、ゆかりちゃんが話してたから」

「え~ じゃあ、ゆかりちゃんとは次いつ会う予定なんだよ?」


「はぁ? 予定があってもお前になんて教えね~し」

「お前さ~ 本当にそういう所昔から変わんないよな! 全部独り占めしやがって!」

「うるさいな~ しょうがないだろ! ゆかりちゃんは、俺だけの姉ちゃんだ! お前は美樹で我慢してろ! バカがよ!」


「え~」


 コロッコロと感情の乱高下半端ないな~


 さっきまでデレデレした顔で空を見上げてわけわからん妄想してた癖して。

 今度は、この世の終わりのように肩落として、トボトボ歩き始めるとかさ~


「お前美姫が目の前に居ても、そんなリアクションするわけ?」

「えっ? 分からないよ。 でも、美姫さんに同じようにギュッとされたら・・・ギュッとされたら~」


 はぁ~ 落ち込んでると思ったら、またエロイ顔して視線定まらないとか忙しいヤツ。

 結局、お前はおっぱいが大きかったら誰でも良いんじゃないか。


 このおっぱい星人め・・・


 ん? そういうこと?


 だからか・・・


「秀樹?」

「なに?」


「この間、パンツ要らないって言った時。 ひょっとしてブラジャーが欲しかったの?」

「はぁ!? なんでそうなるだよ!?」

「だって、お前さっきからおっぱいの話しかしてないから。 そんなにお前がおっぱい好きだって知らなかったから、ごめん気づかなくって。そっか~ ブラジャーが欲しかったのか~」


 秀樹がそんなおっぱい好きだなんて知らなかったよ~


 ん? そう言えば。

 この間美姫と一緒にお風呂入った次の日に、おっぱいのこと話した時も強烈に食いついて来てたもんな~


 何だよ~ あの時言ってくれたら、パンツじゃ無くって、ブラジャーあげたのに~


「えっと・・・アキラ・・・くん?」

「えっ? ああ、今度ブラージャが溜まってたら貰ってくるね」


「えっ? 貰って来て・・・どうするの?」

「だって、秀樹。 美姫のブラジャーが欲しいんでしょ?」


「はっ!? イヤ、違うよ」

「なんで? おっぱいの感触を初めて感じて、それで頭いっぱいおっぱいなんでしょ?」

「えっ!? ・・・まあ・・・たしかに・・・そうだけど・・・」


「ゴメン秀樹。 ゆかりちゃんのだけは絶対に無理。 だからさ~ 美樹ので我慢してよ」

「イヤ・・・その、なに? 違うよ・・・アキラ?」


 そっかそっか~ パンツじゃなかったのか~

 ん? じゃあ、ひょっとして幸ちゃんも?


 あ~ そうだよな~ 二人共、美姫の事が好きなのっておっぱいが大きかったからだもんね~

 童顔のロリ巨乳が好みの二人だもんな~ そりゃ遥ちゃんにも食いつくよな~


 まあ、秀樹はちょっと麻薬を吸ったようなもんで~

 ゆかりちゃんのおっぱいの感触感じてしまって、一時的にトリップしてただけだよな。


 正気に戻って貰うために、美姫のブラジャーを上げれば全て解決じゃないか~

 ゆかりちゃんは俺だけのモノ。

 美姫は皆の大好きな美樹で、皆のモノだ!


 うん、これで世界平和じゃないか。


 あ~ でも、ブラジャー無くなっても気づかないとは思うけど。

 美樹ばっかり皆にご奉仕させても申し訳ないから。


 !? そうだ!


 美姫の部屋にあった下着全部、何気に結構クッタクタだったよな~

 アイツ無駄に物持ち良いからな~


 それに、最近金欠金欠うるさいし。

 俺の百円貯金から、毎週バレない様に700円ずつくすねてたのも知ってるし~


 服は新しいモノ買っても、下着まで資金が回ってなかったんだな~

 来週の誕生日プレゼントは、可愛い下着を何着かプレゼントしちゃおうかな。

 そうすれば、クッタクタの下着が、数枚無くなっても文句はあるまい。


 それに、この間ブラが少しきつくなって来たって言ってたしな~

 ちょうど良いじゃん!


 逆に捨てる手間も省けて、新しい可愛い下着が手に入るんだから美姫も嬉しいはず。

 うんうん、これで皆嬉しい、win-winに収まりそうじゃん。

 

 はぁ~ 俺ってやっぱり、お姉ちゃん思いのなんて良い弟なんだろう~

 そうだよな~ あんなクッタクタの下着じゃ~ 男の子の前でなんて恥ずかしいもんね~


「アキラ?」

「ん? イヤ~ 秀樹のお陰で美姫の誕生日プレゼントが決まったよ~」


「誕生日?」

「うん、美姫。来週誕生日だからさ~」

「えっ!? いつ?」


 はっ? なんだよお前は・・・


「お前さ~ 好きな女の生年月日と、食べ物の好みくらいは覚えておけよ~」

「えっ・・・ああそうだね・・・ごめん。 でいつなの?」

「来週の23日」


「えっ? 誕生日パーティーとかするの?」

「ん? たぶんね」


「ゆかりちゃんも来るかな?」

「ん? まあ今年は来るんじゃない? 週末一緒に美姫のプレゼント買いに行こうって話してたし」

「ゆかりちゃんと買い物行くの? 二人で?」


 二人で? う~ん、あっこちゃんに紹介して欲しいって言われてたしな~


「う~ん、ひょっとしたら、アッコちゃんと三人で行くかも」

「アッコちゃんと・・・そっか・・・」


「なんだよ?」

「イヤ、そうなると、さすがに俺が居たら邪魔かなって」

「何言ってんだ? お前はいつだって邪魔だぞ」

「はぁ~!? 邪魔って、ひどくないか?」


「だって、お前いっつも余計な事言って、アッコちゃんを怒らせるし。ゆかりちゃんにもノンデリ発揮するし、邪魔者以外なにものでもないだろ?」

「ううう・・・心当たりがあるだけに、言い返せない・・・」


「ていうか、お前さ~ 学級閉鎖とかで、るなっちとパワースポット巡りするって約束してから、まだ行ってないだろ?」

「あっ!? 忘れてた・・・」


「今週末は二人でパワースポット巡りでもして来いよ」

「別に今週じゃ無くても」


「来週は、ホワイトイルミネーションが始まるんだから。今週のデート終りに、来週は一緒にイルミネーション見に行こうとか言ってまたデートに誘えば良いじゃん」

「イルミネーションって夜じゃん・・・お出かけなんて無理だよ~」

「大丈夫だって、16時には日の入で17時前でもう真っ暗なんだから~ 昼ご飯食べて~ 映画観にって~ 帰りにイルミネーションデート。最高じゃん? るなっち喜ぶだろうな~」

「なるほど・・・」


「パワースポットに行って、その気になってる女の子と次の週もデートで、二人っきりでイルミネーションなんか見たらイチコロですぜ~だんな~」

「そっ・・・そういうもんかな?」

「そうだよ、それで盛り上がった気持ちのまま学習発表会を二人で力合わせてやり遂げた後は、もう告白したって成功率100%に決まってるよ!!」

「マジか!?」


 ああ、そうだ。

 だから、お前はゆかりちゃんに気を取られてる場合じゃないって思い出せ。

 そして、俺たちの大切な時間をノンデリパワーで邪魔をするな。


 これでお前にも生まれて始めての彼女が出来れば、記憶に無い約束も果たされたようなモンだろ。

 うん、やっぱりwin-winでハッピーエンド。


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