第164話 アキラ・・・すぐ出ちゃうし・・・
不満を持ちつつも、大人しくゆかりちゃんの後をついて行ってしまう自分。
ゆかりちゃんに甘えたいがプリセットされてて、来いと言われると本能的について行ってしまうワケで。
そんなどうしようも自分の意思を棚に上げて。
しょうがないじゃん、自分家じゃ無いし。
今はゆかりちゃんの部屋しか、居場所が無いわけだし~
などと言い訳を頭に思い浮かべつつも、いつものように、優しくギュッと甘やかしてくれるのをどっかで期待してしまう。
ゆかりちゃんの後をついて部屋に入ると、すぐにゆかりちゃんがベッドに腰を下ろす。
「アキラ?」
「なに?」
一歩引いて警戒すると。
ゆかりちゃんが、口を尖らせて、ちょっと不満顔でまた。
「んっ?」
もう、なんなの今日のその『んっ』って言って両手でこっち来いってポーズ。
もう怒ったり、泣いたり、それでまたおいでってされたって・・・
されたって・・・
「んっ!?」
ふん! 悲しいかな素直にその両手に吸い込まれちゃいますけどね!
「甘えん坊」
「甘えん坊だもん」
しょうがないじゃん。
そうなるように躾けたの、ゆかりちゃんじゃん。
なんか、こうしてると昔の事を色々と思い出しちゃったかも。
美姫と喧嘩していじける度に、いっつも俺に向かって『んっ!』って。
こうやって、いっつも抱っこ強要してきてたっけ。
なんか、ちょっと懐かしいかも。
「浮気者」
・・・?
・・・・・・?
ん?
「なによ? そのなんの事って顔してポカーンって?」
「だって、なんの事かさっぱりわかんないんだもん」
浮気者? 何いきなり?
「浮気してないの?」
「浮気って言ったら、どっちかと言うと今の方が僕的には浮気しているっていうか~」
年甲斐も無くお姉ちゃんに甘えてるだけと言えば浮気じゃないけど。
ゆかりちゃんとは、もうすでにその枠を超えてしまったというか~
「なによ、またアッコちゃん?」
「まあ・・・」
「はぁ~ もう良いや。 アキラに自覚がないなら浮気じゃないってこと?」
なんだ? 浮気の自覚ってなに?
まったくわからん。
「でも、あの遥とか言う女とはあんまり仲良くしないで欲しい」
「遥ちゃん? はぁ? 仲良くって、だって担任の先生だよ? 仲良くするなって言われてもな~」
なんでいきなり遥ちゃんが出て来るんだ?
遥ちゃんに会ってから急激に機嫌が悪くなったような気がするけど・・・
「休みの日に二人で会ってたでしょ?」
「えっ? 休みの日?」
休みの日? 遥ちゃんと会ったのなんて先週のあれだけだし。
えっ? なんで?
二人でいたところなんて、ゆかりちゃんに見られるワケないし。
まったく意味がわからんが?
ん? 雄太か!?
先生と二人の時にばったり会ったと言えばアイツくらい。
でも、雄太とゆかりちゃんってそんな連絡取り合う仲なんだっけ?
「同じ香りがした!」
「えっ? 香り?」
香り? ・・・香り?
「日曜日よ! アンタ帰り遅かった日! パンツ濡らして帰って来た日よ!」
「えっ!? だから、アレは秀樹の家で~」
そう言うと、ゆかりちゃんが残念そうに瞳を閉じて首を横に振り。
なにやら、諭すような口調で・・・
「ねえ、アキラ」
えっと・・・何でしょう?
なんか、すっごい圧なんだけど。
「・・・ハイ」
ゴクリ。 なに?
「美姫は騙せても私は無理よ」
はっ? また・・・それ?
「えっ? だから・・・その・・・日曜日は秀樹の家で・・・」
「さっきあのバカの香り嗅いで、その後あの淫乱女の香り嗅いでわかっちゃったのよ」
えっ? 香り? 淫乱女って?
!? そう言えば、遥ちゃんの香り嗅いでた!!
えっ!? 嘘!? 香りバレ? えっ? そんな染み込む?
確かに、半日以上ずっと一緒に居て、車にもそれなりの時間乗ってはいたけど。
そんな残り香するほど、遥ちゃんの香りするもんなのか?
「えっ? 香り? イヤ、そんな」
「秀樹の香りじゃなかった! 完全にあの女と同じ香りがしてたモン!」
これは・・・あわぁうぅぅぅ。
「何か言い訳ある?」
言い訳?
・・・って、なに?
「イヤ・・・あの・・・」
「一緒にいたのよね?」
こんな怖いゆかりちゃん初めてなんだけど。
ダメ・・・圧に負けちゃう。
そう思った瞬間。
ゆかりちゃんの顔が怒った顔から、一瞬寂し気な顔に変わって。
「一緒だったんでしょ?」
・・・うぐっ。
「・・・・・・はい」
「はぁ~ やっぱり」
やっぱりって?
えっ? ゆかりちゃん怖い。
ヤバイ、美姫のチョロさに慣れすぎなのか俺?
これがTHE女子の勘ってヤツなの?
「イヤでも、その色々あってというか・・・」
「なによ色々って?」
「赴任したばっかりで、何か悩んでる感じだったからちょっと身の上話を聞いてあげたら。 色々不憫過ぎて、元気になってくれたらって思って、クラシックのコンサートに一緒に誘っただけだし」
「アキラが誘ったの?」
「うん。 だって、あの人。 あまりに不幸続きで、可哀そうすぎたから」
「もう、そうやって誰にでも優しくして」
誰にでもではないんだけどな~
まあ、次なにか会った時用の男子共の買収ネタに、写真とかネタをゲットとか色々下心があったりなかったりだったけど・・・
それでも、先生とそんな風になるために誘ったワケじゃないし。
なんか、本当に可哀そうって思ったのは嘘じゃないし。
「でも、じゃあ何でパンツなんて濡らしてきたのよ?」
「うっ・・・それは・・・」
それは何と言うか~
想定外とかしか言いようが無いんですが・・・
自分でもあんな事になるなんて想像もつかなかったし~
何て言うか・・・不可抗力?
初恋の人にエッチだけされて付き合えなかったのにさ。
なのに良い思い出だとか、思い出抱きしめちゃって。
あの時の遥ちゃんの顔見てたら、何か涙が止まらなくなったっていうか。
相手の男に対する怒り的な感情と、遥ちゃんが可哀そうっていう感情とでぐっちゃになって・・・
とわいえ、まさかあんな風に逆に慰められちゃうとかは、完全に想定外だったし。
別にそういう関係狙ったワケじゃないし。
って、こんなのゆかりちゃんに話せないし。
ううう、こんな浮気追及されるとか修羅場経験した事ないから・・・
どうしたら良いの・・・俺!?
「なによ?」
「ちょっと、先生の服装が僕の好み過ぎて、悶々しちゃったらなんか出ちゃったっていうか~」
「なんか出ちゃった?」
うぅぅ、これ以上は言えない。
車でギュッってされて、遥ちゃんのふわふわボディに悩殺されて思ずだったなんて。
「・・・ハイ。 なんか、キュッてしちゃって」
「変な事はしてないの?」
・・・えっと・・・ちょっとした・・・かも。
「してないよ。てか、変なことって何?」
「私がしてあげたみたいなこと?」
えっと、されたっちゃ~ されたけど~
言えない。 絶対無理。
「イヤっ、さすがにあそこまではしてないよ~」
「はっ!? あそこまでは?」
ヤバっ。
「なによ!? やっぱり、何かしたんでしょ?」
「イヤっ! その~ なんていうか~」
あそこまではしてないけど。
一線超えたと言えば超えたというか~
「なによ! 言いなさいよ? なにしたの!?」
そんな、両肩グワングワンしないで。
思考が・・・発散する・・・
「イヤ、先生の過去の話とか色々聞いてたらあまりに不幸すぎて、聞いてたら感情移入しちゃって」
「それで?」
「その~ それ聞いてたら、なんかスッゴイ悲しくなって来て、それで泣いちゃって」
「はぁ? アキラが泣いちゃったの?」
「まあ・・・ハイ。 それで、先生がよしよしってギュッとしてくれたら。 思わずちょっと・・・」
「なによ? 思わずちょっとって?」
だから、思わずその・・・
「その・・・出ちゃったって言うか・・・」
「はっ!?」
やっぱり、怒るね~
でもでも・・・
「だから、先生に慰められて、ママにギュ~ってされるみたいにされたら、何かでちゃったの!」
「ギュ~で出ちゃった?」
嘘・・・では無い。
「うん・・・ギュってされたら出ちゃった・・・」
「ギュ~で・・・う~ん・・・」
・・・なに?
なに考えこんでるの?
「アキラなら・・・う~ん・・・まあ・・・たしかに・・・」
なんだろう? また何かブツブツと。
「う~ん、まあ確かに。 アキラ・・・すぐ出ちゃうし・・・」
はっ!? すぐ出ちゃう?
イヤ、なんかそれで納得されても・・・
えっ!? はっ?
すぐ出ちゃうしって?
何それ? ゆかりちゃんに言われると、すっごい微妙な気持ちになっちゃうんだけど。
えっ? 昨日とかもすぐ出すじゃんこの子って思われてたの?
イヤイヤ! でも、それはまだ体が小学生で、色々感度が高いからで。
そもそも、先生に激しめにギュッてされて、耳もスリスリされたからそうなっちゃっただけで。
大人になれば、もう少しは・・・
「アキラ?」
「えっ? なに?」
また、両肩をグッと掴まれると。
「あの先生とそんなに仲良いの?」
「えっ? う~ん、なんか札幌に全然友達がいないらしくって、悩みとかお話聞いてくれる人が居ないっていうから。 友達としてお話くらい聞くよって」
「アキラが言ったの?」
「まあ、僕から誘った」
「だからって、異性の生徒と二人っきりでお出かけってダメだと思うんだけど」
まあ、ゆかりちゃんの言うことは正しいけど。
でも、なんか放っておけなかったし。
「う~ん」
「アキラはあの人と一緒に居たいの?」
「いまは、放っておけないっていうか~」
「はぁ~ 私のせいなのかな?」
ん? なにが?
「ん?」
「アキラがこんな年上好きになっちゃったの?」
イヤ、別に年上好きってわけでは。
「まあ良いわ。要するに、あの人に友達が出来て、アキラが心配しないで済むようになれば良いってことよね?」
「はぁ? まあ・・・」
なんだろう? なんか思いついたような顔してるけど。
「ん? 大丈夫よ、そんな不安そうな顔しなくても」
「なにが?」
「アキラの秘密は私が守ってあげるから。 二人のことは誰にも言わないし」
「それはども・・・」
なんだろう? ゆかりちゃんに底知れない怖さを感じるんだけど。
「ごめんね・・・なんか、八つ当たりみたいにして」
「イヤ。 何か僕の方こそ、なんかごめんなさい」
「本当にごめんね。なんか、アキラの事スッゴイ汚されたような気持ちになちゃって」
「汚されるって僕が?」
「うん、だからアイツに触れらた所はどうしても綺麗にしたくって・・・」
ああ、だから遥ちゃんに拭いてもらった所ゴシゴシって。
ん? ひょっとして、デリケートゾーンもゴシゴシしたのって?
「あの・・・僕のその、おデリケートな所をゴシゴシしたのも?」
「だってさ、日曜日にあの人に悪戯されたんじゃって思ったら、何か許せなくって」
やっぱり。
「ごめんねアキラ・・・痛かったよね?」
「えっ? えっと、なに?」
「ごめんねココ痛くして」
ここだけじゃ無くって、全身ですけどね。
なるほど、遥ちゃんへのすさまじい嫉妬心で、ああなってたのか。
そう言えば、美姫以外への嫉妬でゆかりちゃんが怒ったの初めてかも。
てか、今までの美姫に対する嫉妬で怒った時の比じゃなかったくね?
ゆかりちゃんって、いつも優しくって甘えさせてくれる、ふんわりやんわりの性格のお姉さんって認識だったのに。
いったんスイッチが入ったら、こうなっちゃうの?
なんか、知らないゆかりちゃんの一面を見たような気がするんだが。
「もう、怒ってないから大丈夫よ。ごめんね」
なんだろう、今日のこの強烈なツンデレは。
「ごめんね、ギュってしてあげるから許して」
「本当に、もう怒って無い?」
「うん、ごめん。 だから、おいで。 んっ?」
また、そうやって『ん』って両手開いておいでポーズするしさ。
それされちゃうと、自然と吸い寄せられちゃうじゃんかよ!
「ふふふっ、甘えん坊さん」
「・・・そう育てた癖に」
「好きよ・・・アキラ」
はぁ~
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