第163話 アンタもチェリーでしょ?
「イタイ! イタイ!」
えっ!? なに?
『もう・・・あんな女に・・・』
えっ? なにブツブツ言って。
てか、体洗う力強くない?
どうしたのゆかりちゃん?
ちょっと、めっちゃ体痛いっす!!
スポンジゴシゴシしすぎ~!!
「ゆかりちゃん! イタイ!!」
『もう・・・不潔よ・・・なんなの先生の癖して・・・私のアキラに・・・』
だめだ、全然聞いてない。
しかも、なんかずっと小声でブツブツ言ってるし。
ゆかりちゃん、怖すぎる・・・
!!?? えっ!? ゆかりちゃん!?
「ダメ! ダメ! ダメ! ココはさすがに自分で洗うから!!」
「うるさい!! 全部綺麗にするの!!」
ひ~!!! ちょっ! あっ! って!
「イタイ!!」
「うるさい! 黙ってろ! この浮気者!!」
なに? なに言ってんの? 浮気者!?
ハァ~ 浮気者って? どういうこと?
だからって、そんな乱暴に洗わないでよ~
デリケートゾーンまで、そんなスポンジでゴシゴシしなくったって。
なにコレ? どういうこと?
「ほら! 目つむって!」
「ハイ・・・」
次は頭かよ・・・てか、痛いよ~
『何よあのブス・・・私のアキラに慣れ慣れしく触って来て。イヤらしい・・・』
えっ? ブス? ブスって言った?
もうさっきからぶつぶつ何言ってるんだ?
ちょっと怖いって~
びっくりドンキー出てからずっと機嫌悪いし。
家かえってすぐお風呂場に連行されて、頭から乱暴にお湯を掛けられたと思ったら。
胡坐をかいたゆかりちゃんの上に座らされて、身動きできない状態で体を思いっきりゴシゴシされ初めて。
そして、何かに憑りつかれたように、ず~っと聞こえるか聞こえないかくらいの声でブツブツと何か言ってるし。
ダメ・・・怖いし、抵抗も出来ないし。
もう、黙って全身洗い終わるの待つしかない。
って! ブハァ! また、お風呂からお湯を掬って乱暴に掛けられた・・・
「あの~ 終わった?」
「ん!」
えっ? なに?
「ん!!」
なに、スポンジ?
俺に受け取れってこと?
「洗って!!」
・・・ああ、ハイ。
ゆかりちゃんを洗えって事ね。
風呂イスに座り直したゆかりちゃんの体を恐る恐る洗い初めると。
「イ・タ・イ!! 優しく洗って!!」
もう・・・自分はゴシゴシしたクセに・・・
なんなの?
今日のゆかりちゃん、めっちゃ美樹っぽいんだが?
まあ、よく考えたら幼馴染だもんな~
美姫とこんなに長く友達やってるってことは、類友説が有効だとしたら。
ゆかりちゃんにも、美姫っぽい何かがあっても不思議じゃないもんね。
でも、こんな機嫌の悪いゆかりちゃん、何気に初めてなんだけど。
それに、全然理由がわからん。
少なくとも、遥ちゃんと会ってから何か変なオーラ出してたけど。
俺が最後水こぼして、遥ちゃんがハンカチで拭いてくれた時から、さらに機嫌悪くなったような~
なんか、いまめっちゃゴシゴシされた場所って。
さっき、遥ちゃんがハンカチで拭いてくれた所だったような気がするけど。
遥ちゃんになんか怒ってるのか?
でも、なんで?
ちらっと、ゆかりちゃんの顔を見ると。
はっ!? なんで?
「ゆかりちゃん?」
「なによ~!」
えっ? なんで、そんな泣いてるの?
「どうしたの?」
「うるさい! バカ!」
なんか、今日はもうトコトンダメみたい。
体をだいたい洗い終わって、シャワーで泡を落としてあげると。
すっと立ち上がって、湯船にそのまま入ったと思ったら。
目にいっぱい涙をためて、こっちを見ながら。
「ん!」
なんか、両手開いて”ん”とか言ってるし。
おいでってことっすよね?
素直に、湯船に浸かって、ゆかりちゃんの傍にスリスリと寄って行くと。
そのまま、後ろからギュッと抱きしめられ。
イヤ~ この間からずっと一緒にお風呂入ってるもんだから。
多少は慣れては来ていたけど。
こう・・・ギュ~っとされるとですね~
生々しい感触と、ゆかりちゃんの温もりを直接感じちゃうと。
僕のおちょんちょんが、どうしたって元気になっちゃうワケで~
「グスッ」
なんか・・・泣いているし。
怒ってたと思ったら、今度は急に泣き出すし。
「ゆかりちゃん?」
「うるさい・・・バカ」
これだもん。
なんだろな~?
原因が分からないモンはどうしようもないし。
はぁ~ どうしたもんかな~
その後も、何も言わずに静かに泣いている彼女にギュッとされながら。
困ったクマさん状態で、ボーっとしているしかなく。
なんか、ギュッとされてるのに、ゆかりちゃんが遠くに感じる。
どうしよう、すっごい寂しい・・・
「アキラ?」
「なに?」
「髪洗うから先に上がってて良いよ」
「えっ? うん・・・」
元気無さげにそう言う、ゆかりちゃんをお風呂場に残して先に上がる。
お風呂の半透明の窓から見えるゆかりちゃんの姿を見てると、何か胸の辺りがキュッとしちゃう。
すっごい、ゆかりちゃんが遠い。
はぅっ・・・何だコレ?
なんか、めっちゃ寂しい。
やばい、泣いちゃうかも。
そのまま、そこに居てゆかりちゃんの髪を洗ってる姿を見てるだけで泣いちゃいそうで・・・
急いで、体を拭いてそのままパジャマに着替えてリビングに行くことに。
すると、なにやらソファーに座ってボケ~っとしているヤツが・・・
「ん? 上がったのか~?」
「まだゆかりちゃんが髪洗ってる~」
「はぁ? 遅っせ~な~ まあ良いけどさ。 てか、アキラ~ 遥先生って彼氏とかいるのかな?」
・・・はぁ~
幸ちゃんは能天気で良いよな~
こっちは、ゆかりちゃんの謎の機嫌の悪さに絶賛悩み中だっていうのに。
「彼氏どころか、札幌に出て来たばっかりで友達も全然いないよ」
てか、さっき遥ちゃんがそう言ってだろ?
この人、全然会話覚えて無いのか?
「そうなんだ~ そっか、旭川からこっちに出て来たばっかりなんだ~ ん? ばっかりって? いま11月だぞ?」
「だから~ 先月、前の担任が色々問題起こして、急遽赴任して来たのが遥ちゃんなの」
さっき、その話してたよね?
えっ? なにこの人? 全然話し聞いてなかったのか?
「そっか~ こっち出来てたばっかりなんだ~ そりゃ大変だよな~」
腑抜けた顔してんな~
完全に遥ちゃんにやられてんじゃん・・・
「幸ちゃん? 遥ちゃんに一目惚れでもした?」
「はぁ!? なっ! なに言ってんだよお前!!」
わかりやすっ。
「俺は良いと思うけどな~ 美姫とは限りなく可能性0、一切脈ないじゃん? それに比べたら、遥ちゃんならワンチャンあるかもしれないし」
「オイ! 美姫ちゃんに脈無しってなんだよ! それにワンチャン? なんだ、それ?」
ワンチャン・・・伝わらないのか・・・そっか。
「美樹はもう無理ゲーだけど。 遥ちゃんなら、ワンチャンス可能性があるかもねって言ってんの」
「無理ゲーってなんかひどくないか? てか俺無理なの? 美姫ちゃん? ・・・ん? チャンスって、遥先生と可能性があるってこと? でも、ワンチャンス? 1回だけ? ん?」
イヤ、遥ちゃんヤゾ!
1回チャンスあると思うだけで、めちゃ確立高いだろ!
あの童顔キュートフェイスにナイスバディの遥ちゃんヤゾ!
ワンチャンあるだけマシだろ?
何を不満顔してんだこの人。
「あのさ~ 落ち込むのか、喜ぶのかどっちかにしてくんない? めんどくさいから」
「うるさいぞお前は! お前みたいに彼女も居て、他の女にもモテるリア充には、俺の気持ちなんて分からないんだよ」
めんどくせ~な~
こっちは、ゆかりちゃんとの事でちょっとイライラしてるっていうのに~
「とりあえず、美樹とは家庭教師でじっくり1年半時間かけて頑張って。 同時に、遥ちゃんとも、よろしくしてたら良いじゃん。メアド交換したんでしょ?」
「よろしくって・・・なんだよ?」
はぁ~ 野暮だね~ それ言わす?
「よろしくはよろしくだよ。 女の子とよろしくするなんて、あれしかないんじゃん」
「あれって・・・なんだよ?」
「はぁ~ 分かってる癖に。 これだから純ぶった童貞ムッツリはめんどくさいんだよ。 本性は、今すぐエッチしたいAV大好きエロエロマンのくせに」
「お前っ! 小学生のクセに!!」
「ふん、その小学生以下の反応している人に言われたくありませ~ん。 ベロベロバ~ !? イタイ!? えっ!?」
はぁっ!?
「もう! 何やってんのよバカ! アンタもチェリーでしょ?」
「何って・・・てか、気配殺して後ろから、タオルで攻撃とか止めてよ~ てか・・・チェリーって、ゆかりちゃん?」
「別に気配なんて消してないし。 幸兄とバカな会話してるからでしょ! もう男同士になったら、すぐバカな会話始めるんだから」
「おっ!? 上がったか! 俺も風呂入ってこよ~っと。 フンフンフン♪」
わかりやすく浮かれちゃってさ~
「あんただって、今すぐエッチしたいエロエロ小学生でしょ?」
「僕はそれを隠してませんが?」
「じゃあ・・・・・・する? 今日?」
「えっ!? 今日?」
えっ!? なに? いきなり、ゆかりちゃん?
「冗談よ。 何ドキっとしてるのよ。 バ~カ」
はっ・・・? はぁ~?
ム~ さっきからバカバカって。
さっきまで泣いてたクセして。
「もう、そんなにムクれなくたって良いでしょ?」
もう、なんだこの人?
怒ってると思ったら、急に泣きだすし。
いっつも一緒にお風呂あがって、体も拭いてくれて仲良いのに。
先に行けって、今日は突き放した癖してさ!
なのに、いきなり現れて冗談言って、また普段のゆかりちゃんに戻ってるし。
なんだ、この情緒不安定な感じは? まるで美樹なんだが?
やっぱり、この二人って似た者同士なのか?
あれ~ なんか、ゆかりちゃんの印象って、あれ~
こんな人だったんだっけ?
「何難しい顔しているのよ? お部屋行くわよ」
「ハイ・・・」
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