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第162話 もうアキラの下の世話までしちゃってるんですからね!

 にしても・・・

 ゆかりちゃんと幸ちゃんと3人で来たドンキーで~


 たまたま学校帰りに1人でご飯を食べに来ていた遥ちゃんと鉢合わせなんて。

 しかも同席って、嫌な予感しかしないんだけど。


「じゃあ、先生ちょっと奥に詰めて」

「えっ? うっ、うん・・・」


 先生が詰めてくれた横に滑り込むように座ると同時に、ゆかりちゃんがすっと隣に来きたと思ったら。

 お尻の圧で僕をさらに奥へ追いやり、無理やり横に座って来る。


「えっ!? えっと・・・狭くない?」

「なによ? 3人掛けだから良いじゃない。 それとも先生と二人で座りたいワケ?」

「イヤっ、別にそう言うワケじゃ~」


 なに? ゆかりちゃん、なんか雰囲気変わった?

 さっきまで、秀樹と俺にぷりぷり怒ってた時とまた違うオーラが?


 これって、あれだよな?

 美姫と俺の事で争っている時のいつもの感じ・・・


 でもなんで?


「あはは、なんかウチの妹がすいません。 俺はこっちで~」

「えっ? イエ・・・」


 なんか気まずそうに謝りながら、反対側の席に座る幸ちゃんに、苦笑いで返す遥ちゃん。

 二人も、ゆかりちゃんから出る怪しげなオーラを感じ取ってるんだろうか?


「てか、本当にアキラの担任なの?」

「えっ? うん、なんで?」


 なに幸ちゃん? めっちゃ遥ちゃんのこと見てるヤン。


「へ~ こんな若くて可愛い人が~ 担任か~」

「えっ!? 可愛いって・・・そんな・・・」


 あにゃにゃにゃにゃ?

 なに幸ちゃん?


 可愛いって?

 しかも、顔! 明らかにデレデレしとる!


 それに、普段オッサンとガキばかりに囲まれてたせいか。

 遥ちゃんも、可愛いって言われてなんかまんざらでもない感じだし・・・


「えっえっと、佐久間くん?」

「なに?」


 何幸ちゃんに可愛いって言われて動揺してるのさ。

 遥ちゃん・・・声が裏返ってますけど?


「お兄さんもいたの、4人兄弟だっけ? えっと、お姉さんと二人って~?」

「えっと~ 何からどう説明したら良いのかな~」


 さっきあっこちゃんに説明して、今日この説明2回目なんですけど。


「なに? さっきから、その微妙な物言いは?」

「あの~ 兄弟みたいなもんではあるんだけど、何て言うかその小さい頃からお世話になっている家の二人っていうか」


 ゆかりちゃんとの関係特殊すぎなのよ。


「ふ~ん、でご飯食べに来たの? 何? 今日、ご両親とか留守なの?」


 まあ、そうだよね?

 当然、そんなこと聞くよね?


「えっと~ 何て言うか~ 家出中っていうか~ その美樹から避難中っていうか~」

「家出!? ハァ~!? 何やってんのよあなた!?」


 まあ先生だし~

 当然そんなリアクションするよね~

 う~ん・・・なんて説明したら?


 歯切れの悪い俺を見かねたのか、ゆかりちゃんが代わりに説明を初めてくれて。


「あの~ 先生。 この子が悪いわけじゃないんです。 美姫・・・えっと、この子のお姉ちゃんに虐待を受けてたから、いま一時的にウチで保護してるんです」

「虐待!? 保護!? どういうこと!?」

「これです! 見てください!!」


 グエッ! ちょっ・・・ゆかりちゃん?

 急に頭抑えて、首元ひっぱらないで。


「あら~ 見事な歯形ね。 えっ? これって・・・お姉さんが?」


「そうなんですよ!! どう思います!! 虐待ですよ!!」

「アハハハ・・・弟妹喧嘩・・・激しいのね~? 虐待・・・まあ・・・はぁ~」


 ゆかりちゃんが虐待とか言うから、遥ちゃんもリアクション困ってるじゃん。


「えっと。虐待って言っても、兄弟喧嘩がエスカレートしたって感じなんで。 まあ・・・噛まれたのは数年ぶりだけど~」

「はぁ~ てか、前にも噛まれた事あるんだ? あんな優しそうなお姉さんなのに・・・人は見かけによらないのね?」


 まあ、美姫のヤツ。

 見てくれだけはフォワワワンっと柔らかい感じの守ってやりたい系女子だから・・・


「で~ 家出? で~ この方たちとのご関係は?」

「えっと、まず。 こっちにいるのが、姫野ゆかりさん。 うちの姉貴の幼馴染みで近所に住んでて、僕が生まれた時からずっと面倒見てくれてる人っす。 だから、俺からしたら姉貴同然の人っていうか~」

「あ~ なるほど・・・そういう関係・・・」


 えっ? 理解早くね?


「で、そっちに座ってるのがゆかりちゃんのお兄ちゃんで、幸太郎さん」

「あっ、どうも初めまして。姫野幸太郎です」

「あっ、えっと。 どうも佐久間くんの担任の、小泉遥です」


 何だその挨拶? お見合いみたい。


 ん? えっ? なに?


「ちょっと、アキラゴメン」


 そう言って、ゆかりちゃんがいきなり僕をひょいっと持ち上げたと思ったら。

 そのまま、ゆかりちゃんが横にスライドして来て、膝の上に座らされてしまう。


「あら~ 佐久間く~ん。 赤ちゃんみたいね~?」


 それを見た、遥ちゃんが何やらニヤニヤとしながら冷やかして、生暖かい目でコッチを見て来る。


 くぅ~ 美姫とイイ・・・ゆかりちゃんとイイ。

 なんで、ぬいぐるみ抱くように人前で普通にだっこしちゃうかな~


 しかも、この席って?

 美姫と雄太と別れ話した時と同じ席じゃね?

 座ってる位置は反対だけど。


 って、ウワッ! えっ? なに?


 急に、ゆかりちゃんが動くから体勢が崩れて・・・


「えっと・・・先生、ごめんなさい。 ちょっと」


 えっ!? ゆかりちゃん? 何やってんの?


「ゆかり!? お前なにやって? 失礼だろ?」

「・・・・・・えっと。 私、なんか臭かったですか?」


 僕を膝の上に乗せたまま、先生の方へ体を傾けて何やら匂いをクンクン嗅ぐゆかりちゃん。

 突然の奇行に、3人とも唖然としていると。


「えっ? イエ・・・その~ ちょっと気になった事があって。 ごめんなさい」


 そう言って、匂いを嗅ぐのを止め、もとの体勢に戻ったゆかりちゃんだったのだが。

 なんか、俺を抱きかかえる腕が、さっきよりもさらにギュッときつくなったような気がするのは気のせいなのか?

 

「先生、なんかうちの妹がすいません」

「イエ・・・1日仕事した格好だったから、ちょっと匂うのかと焦っちゃいました~ ハハハハ・・・」


 まあ、遥ちゃんはいつも通り、甘い良い香りするけど・・・

 ゆかりちゃんの行動が謎すぎる。


 ゆかりちゃんの表情が気になって振りむきたいのだが。

 座席に座って抱っこされた状態だとまったく身動きが取れない。


 どうしたんだろうと少し不安に思っていると。

 何やら、楽し気な幸ちゃんが遥ちゃんに話しかけ初めて。


「先生って、毎日こんなに帰るのが遅いんですか?」

「う~ん、今日はちょっと事務仕事が溜まってたんで~ 気づいたらこんな時間だったみたいな?」

「小学生の先生って大変なんですね~」

「イエ~ 好きでやってることですから~」


 なんなんだ? さっきからの、このお見合い見たいなフワフワした感じ。


「えっと、幸太郎さんはそのお仕事は何を?」


 あ~ 遥ちゃん。

 幸ちゃんが老けてるからって~


「・・・えっと。 あの~ 一応、まだ大学生で・・・教育大に通ってます」


 遠回しに老けてるって言われて、普通に落ち込んだな~


「えっ!? あっ!? ごめんなさい。 なんか、その~ 大人びてるからてっきり。 学生さんだったんですね~」

「教育大だから、遥ちゃんの後輩だよね?」


 大人びてるか・・・

 遥ちゃん、大人の表現でごまかそうとしてるけど。

 もう、サクッと傷ついてます・・・あの人。


「えっ? 先生って、教育大卒なんですか?」


 オッ! でもめげない。

 どうした幸ちゃん?


「ん~ でも幸太郎さんは、札幌校でしょ? 私は、旭川校だから、その~ 微妙に別っていうか~」


 また、遥ちゃん、そうやって甘い感じの物腰でしゃべってさ~

 しかも、そうやって斜め上見ながら、人差し指を唇に当てちゃう仕草とか。


 そんな、あざと女子の攻撃受けたら~

 ・・・って、やっぱり。


 幸ちゃん・・・完全に先生にやられてるじゃん。


「イヤ~ でも同じ教育大じゃないですか~ そうですか~ 先輩だったんですね~♪」

「アハハハ・・・ まあ、一応はそうなるのかな~」


 幸ちゃん・・・デレデレやん。

 美姫への一途な思いはどこに?


 しかし、幸ちゃんから女の人にこんな積極的に話かけるなんて初めてみたぞ。

 この間の、大学の先輩達と話すときと全然雰囲気違うんだけど。


 絶対、遥ちゃんのこと気に入ってるだろコレ。

 しかも、教育大繋がりで勝手に変な運命感じてそ~

 

 ん? なるほどね、そういことか。


 幸ちゃんさ~ 巨乳で少し可愛かったら誰でも良いわけ?


 まあ、遥ちゃんはちょっとどころか、滅茶苦茶可愛いけどさ~

 美姫より全然可愛いから、気持ちはわかるけどさ~


「それにしても、学校の先生だなんて♪ 全然、まだ学生さんに見えますよね~?♪」

「え~ なんですか~ そんなこと言っても何も出ませんよ~♪」


 なんだこの会話・・・

 若いって言われて、普通に遥ちゃんもデレってしてるし。


「ねえ! 注文しようよ!!」

「えっ? あっ、そうね・・・忘れてた・・・」


 ゆかりちゃん?


 やっぱり、何か機嫌が悪いよね?

 幸ちゃんが遥ちゃんにデレデレしてるから?


「遥ちゃんは何頼むの?」

「えっ? う~ん、チーズバーグディッシュに豚汁つけようかしら」

「あっ!♪ 良いですね~ それ~♪ 俺も先生と同じ、チーズバーグディッシュに豚汁にしようかな~♪」


 幸ちゃん、わかりやすっ!

 いちいち、言葉の語尾に嬉しいが溢れてるのよ・・・


 童顔で巨乳なら誰でも良いのか~?


 まあ、美姫に対する叶わぬ恋を貫くより。

 まだ遥ちゃんの方が可能性はあるかもだけど~


 まあ、遥ちゃんは札幌に友達いないって言ってたし。

 幸ちゃんと仲良くなるのも悪くないのかな~


「ゆかりちゃんは?」

「う~ん、アキラ~ 私達もハンバーグ食べたくない?」

「ハンバーグ? う~ん、食べたいは食べたいけど」


 結構、焼きそばでお腹いっぱいなんだけどな~


「幸兄良い?」

「もう良いよ~♪ 好きなの頼めよ~♪」


 幸ちゃん・・・遥ちゃんのことしか目に入って無い。


「わぁ~い♪ じゃあ、二人でハンバーグ食べよう? 何が良い?」

「えっ? じゃあ、カレーバーグディッシュにする?」

「良いね~ 後は? う~ん、じゃあメリーゴーランド?」

「良いね~ じゃあ、メリーゴーランド二つ~♪」


 よかった、さっきまで怒ってるかと思ったけど。

 なんか、いっつもゆかりちゃんに戻ったみたい。


「先生、ボタン押して」


 『ピンポーン』


 先生がボタンを押して、店員さんがいそいそとやって来くると。

 ゆかりちゃんが、みんなの注文をまとめてスラスラ伝える。

 そのまま、店員さんがメニューを回収してテーブルの上にシルバーが準備されると・・・


「てか、先生とアキラって、何か妙に仲良さげですけど。 なんか特別な関係だったりしないですよね?」


 えっ? いきなり、何言ってんの。

 ゆかりちゃん?


「はぁ!? なっ、なんですか? 特別な関係って?」

「なんていうか~ こう生徒と先生の関係を超えた何か?」


 ゆかりちゃん? なに言ってんの?


「まさか~ あるワケないじゃないですか~ ねえ? 佐久間くん?」

「えっ? うっ! うん! そうそう、先生は先生だよ。 何特別な関係て?」


 苦笑いする遥ちゃんに対して。

 さっきと同じで、僕を抱く力がいつもより強めで、ちょっと不穏な空気感んを醸し出すゆかりちゃん。


 何これ? 何なの?

 ゆかりちゃん? どうした?


 だっこされた状態だから、どんな表情しているのか全然読めない。

 あれ? さっき機嫌もとに戻ったと思ったのに。


 なに?


「ふ~ん、なら良いけど」

「えっと・・・そのゆかりさんと、佐久間くんとは仲が良いのね?」

「そうなんです~ アキラは私の許嫁なんで~♪」


 ゆかりちゃん?

 またその世間の皆様に通用しない説明を・・・


「はっ!? 許嫁!?」

「あ~ 先生。 こいつの妄言をいちいち本気にしないで良いですから。ちょっとウチの妹イタイんで」

「幸兄! イタイってなによ!?」


 幸ちゃん、ダメだよ。

 なんか良く分からないけど、いまゆかりちゃん、機嫌悪いっポイから!


「えっ? じゃあ、許嫁っていうのは?」

「アキラの両親から将来のお嫁さんって認められてるんです! もうず~っと昔から」


 それを聞いて、遥ちゃんがイケないんだ~といった顔付きで・・・


「あれ~? でも、佐久間くん? 岩崎さんとはどうなるの~?」

「えっと・・・ あの~ 色々となんていうのかな~ 僕が物心ついた頃には、ゆかりちゃんがもう家に居て・・・ その色々複雑で・・・」

「みたいね・・・」


 何かを悟ったかのような表情の遥ちゃん。

 でも、相変わらず僕を見る目は、どこか生暖かいというか。


「てか! アッコちゃんだって将来のお嫁さんにって母親も言ってるし。 僕の両親のお気に入りの子ですよ」

「はぁ~↓ そっちもお嫁さんなんだ? じゃあ、ゆかりさんは?」


 だから・・・なんていうか・・・

 う~ん、否定も出来無し。


 とりあえず、あっこちゃんとお付き合いする所まではトントン拍子で出来たけどさ~

 それで、少し舞い上がってたのはあるけど。


 実際の所、この先あっこちゃんとどうなるかも、まだわから無いし~

 まあ、それを言うならゆかりちゃんともだけど・・・


 てか、そもそもゆかりちゃんとこんな風に再会して。

 あっという間に昔のような関係に戻って、昔以上に親密な関係になるなんて想像もしてなかったし。


 あわよくば、前世の高校の時の続きが出来るかもとか思ったりもだし。

 う~ なんて返したら・・・

 

「えっと・・・ゆかりちゃんも、うちの両親的にはお嫁さんに良いよって。 てか、アッコちゃんとゆかりちゃんなら、来てくれるならどっちでもみたいな」

「もう! なに? アッコちゃん、アッコちゃんって。 私なんてアキラが赤ちゃんの頃から一緒なんだから! それに、もうアキラの下の世話までしちゃってるんですからね!」


 ゆかりちゃん!?

 下の世話って! 言い方!


「下の世話!?」


 はぁ~ 先生もバカなのかな~

 何、真に受けてるの?


「違うっす! オムツを変えてくれてたって事っす!」

「えっ!? ああ・・・ああ、なるほどね。 それで下の世話。 まあ、確かに・・・」


 確かにじゃないっすよ~

 もう、ゆかりちゃん? 勘弁してよ~


「ゆかりちゃん? 何? どうしたの?」

「ベッつに~ 私の前で他の女の話するからでしょ! ふん!」


 もー------もう、もう、もう、もう。

 ゆかりちゃ~ん。 どうしたの?


 先生と会ってから、ずっとピリピリしてるっていうか。

 なんか、ずっと機嫌悪いよね?


 どうしたんだ? 急に情緒不安定?

 俺と先生との関係も疑うような事言ってたし。


 なんで? 女の勘ってヤツ?


 でも、そんな疑われるような事。

 俺ゆかりちゃんの前でしてないしな~


 メールやり取りしている時だって、家で一人の時だったし。

 遥ちゃんとの関係匂わすことなんて一切してないのに。


 なんで? ううう・・・まったくわからない。


 ん? そうか!

 あれだ、幸ちゃんが遥ちゃんにデレデレしているせいで、俺まで遥ちゃんにとか思ってるんじゃ~

 それに、秀樹のせいで元々機嫌悪かったから。


 もう絶対にそれ。

 だから、諸々の状況で、ゆかりちゃんが勝手に杞憂民と化しているだけだよ。

 そうだよ、そうそう。


 そもそも、遥ちゃんとの関係がバレるワケないんだから。

 うんうん、絶対にそう。


 大丈夫・・・落ち着けアキラ。

 家に帰って、一緒にお風呂に入ったらいつものゆかりちゃんに戻るはず。

 うんうん・・・きっとそう・・・



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