第160話 なんで俺ゆかりちゃんに、こんなに嫌われてるんだ?
『えっ? うん。 そう、アキラのお母さんがご飯食べてったらって』
怒られるのが嫌なら、待ち伏せなんてしなきゃ良いのに。
『えっ? だから~ ちょっと帰りに借りてた漫画返しにアキラの家によったの!』
苦しい嘘を・・・
『えっ? 嘘じゃないって~』
にしても、なんでこんなに疑われてんだコイツ?
普段なに悪い事してんだよ。
必死に電話で説明している秀樹をぼ~っと見ていると。
急に、俺の方を向いたと思ったら、電話を押し付けて来て。
ん? なに?
「ちょっと変わって」
はぁ? 軽く拒否すると。
電話をさらにグッと押し付けてくるもんだから。
はぁ~ しょうがないな。
「なんでそんなに信頼0なんだよお前?」
「イイから、嘘じゃないって言って!」
イヤ、嘘だからね?
「えっと、もしもし」
「アキラくん?」
「えっと、ども」
「なんか、ゴメンね」
「急に来るのはいつもの事なんで。 てかウチ、今日焼きそばとたこ焼きだったんで、母さんが秀樹君も食べていったらって呼び止めたから」
「そう・・・焼きそばとたこ焼き。 帰って来ないワケか・・・」
どういうこと?
「もう、お母さんに迷惑かけてすいませんって言っといてね」
「まあ、いつもの事だし平気ですよ。 秀樹君に変わりますか?」
「うん、お願い・・・」
電話を耳から離して、そのまま秀樹に手渡して
「ん!」
「えっ、ああ・・・」
『もしもし・・・うん。 だから嘘じゃないって言ったじゃん。 えっ? あんまりガツガツ、恥ずかしいことするな? なんだよそれ?』
『うん、うん・・・わかったって。 大丈夫だから! 迎えに? 来なくて良いって! 1人でちゃんと帰れるから! じゃあね。バイバイ』
「あっ、ゆかりちゃん。 お電話ありがとうございます」
「まったく人騒がせなガキ・・・」
「本当それ・・・てか、お前どんなけ信用ないんだよ?」
「えっ? イヤ・・・この間、兄貴と一緒にちょっとね~ ハハハ・・・」
「ハイハイ! 電話終わったんだったら座りなさい、焼きそばもう出来るわよ!」
『は~い』
「ふふふっ、でも久しぶりね~ アキラちゃんと、秀樹くんと4人でご飯食べるのなんて」
おばさんは、相変わらずマイペースだな~
この不思議な状況をスンナリ受け入れるんだから。
「そうね。 あんたウチに来るのなんて、何年ぶりよ?」
「えっ? えっと・・・3年生の時以来だから、2年くらい? ゆかりちゃんと美姫さんが塾行くからって遊んでくれなくなって、俺らも3年生になって、サッカー少年団に入ってから忙しくなったから。 なっ?」
「えっ? あっ、うん・・・そうだっけ」
てか、コイツ。
久しぶりに来たって言うのに、なんでこんな普通なんだろ?
人見知りとか、お前の辞書にはないのか?
「ふん! 何が忙しくなったよ小学生のクセに。 ていうか~ お前なんで美姫だけさん付けなんだよ?」
ゆかりちゃん、秀樹に当たり強いな~
貧乳扱いされたこと、相当根に持ってたんだな。
「えっ? だって美姫さんは~ なんか、年上の綺麗なお姉さん的な?」
「はっ!? 私だって、年上の綺麗なお姉さんだろ!」
コイツ、マジでゆかりちゃんの事怒らせたら天才的だな。
それに、ゆかりちゃんも何ムキになってんだろ?
「イヤっ! 確かに、今日久しぶりに会って、確かに今はそうかもなんけど~ あの時は・・・」
バカだな~ それ言ったら当時はってなるだろ?
「・・・あの時は?」
ほら・・・また顔怖くなった。
てか、ゆかりちゃんも大人げないな~
ジト目でメッチャ秀樹の事睨んでるし。
「えっと・・・ゆかりちゃん、なんかすっごい見違えましたよね~? 大人っぽくなったっていうか~ それに、なんかスッゴイそのなんて言うか~」
今更、ご機嫌取りしたってな~
「スッゴイ・・・なによ?」
おっぱいが大きくなったって言いたいんだろ?
「えっと、何か色々大きくなったような~ そう! スタイルがめっちゃ良くなった! モデルさんみたい!」
「モデルさんみたい? わたしが?」
秀樹にしては、言葉選びが慎重だな~
知ってる単語、フル動員って感じだな。
「うん! 綺麗になったっていうか~ その、女性らしい雰囲気が増したっていうか~」
「悪かったわね。 当時は女性らしさが無くて」
素直におっぱい大きくなりましたねって言えば良いのに。
「イヤ・・・そのなんていうか。 とにかくスタイルが・・・出るところは出てその・・・」
さっきから、ゆかりちゃんの胸チラチラ見ちゃってさ~
まったく、お前はおっぱいがあれば誰でも良いのかよ?
「ん? 出るとこ出て? ふん! そうよ、もうあの頃の私じゃないんだから」
「ハイ、それはもう。 めっちゃ可愛くなって」
「ふふふふん♪ そうよね~ そうよね~ あの頃とは違うもんね~ お前もようやく私を認めたか~ そうか~ そうか~♪」
「うん。めっちゃ可愛いっす」
たく、秀樹のヤツ。
調子良いな~ ゆかりちゃんがおっぱい大きくなったからって。
「ふん! でも、お前は許さん。 幸兄と二人で一生美姫の奴隷してろバカが」
「はぁ? 奴隷って・・・」
秀樹が俺の方に体を近づけて来て。
俺の肩口に向かって小声で話かけてくる、
『なんで俺ゆかりちゃんに、こんなに嫌われてるんだ?』
『背中と前の区別がつかないとか、ノンデリなこと言ったからだろ?』
『それもう3年くらい前の話じゃん・・・』
「なに、コソコソ話してんのよ?」
「えっ? あっ、その・・・なんていうか、あれってほらもう3年くらい前の事だし。 僕も子どもだったっていうか~ その・・・なんていうか・・・デリカシー無い事言ってごめんなさい」
「はぁ? 今更遅いのよ、傷ついた乙女の心はそんなすぐには癒えないのよ」
3年間忘れずに根に持ってたみたいだからな~
秀樹の名前だしただけで機嫌悪くなるくらいだったからな~
「えっと・・・なんか、色々ごめんなさい」
「じゃあ、あんた今なら美姫と私とどっちに付くのよ?」
オッ!? 究極の質問。
「もう、小さい子相手に何大人げない、何があったか知らないけど許してあげなさいよ」
「だって、コイツ酷いのよ! 私に向かって背中と前とどっちか区別つかないとか言ったんだから!」
「背中と前? ・・・・・・ ぷっ! アハハハ!」
「笑いごとじゃないから!」
おばさん、笑ったらダメだって!
「アハハハハ、そうね。 そういえば、この子達が遊びに来てた頃って、あんたまだ・・・ そうだった、そうだった~ 忘れてたわ~ アハハハ」
「もう! ママ!?」
「そうね、あんた美姫ちゃんに比べて成長がちょっと遅かったものね~」
まあ、美姫は小学生の頃から身長もおっぱいの成長も早かったから。
いっつも、ゆかりちゃんにマウント取ってたし・・・
「ふん! てか、どうなのよ? 今日久しぶりに会って、美姫と私とならどっちなのよ?」
「え~? う~ん・・・」
てか、ゆかりちゃん。
そんなお胸張って、おっぱい強調しなくたって、ゆかりちゃん一択だよ。
可愛いし、優しいし、おっぱいも大きくなってスタイルも申し分ないんだから。
それになんか、高校生になったゆかりちゃん・・・ちょっぴりエッチだし。
こんな一緒にいるだけでドキドキしちゃう人、中々いないもの。
「どっちなのよ?」
「え~ う~ん」
秀樹? なんでそんなに悩むんだ?
「イヤ、ゆかりちゃんはどっちかいうと~ その綺麗っていうか美人さんっていうか。 僕その~ どっちかとういうと~ 可愛い系が好きって言うか~」
可愛い系?
まあ、確かにゆかりちゃんは、綺麗って言葉似合うよな~
美人だけど、可愛いだろ?
「なによ? はっきり言いなさいよ!」
「だから、その・・・美姫ちゃんの方が、幼さが残ってて可愛いっていうか~」
はぁ!? 美姫なのかよ?
「アハハ、フラれたわね~」
「もう! ママうるさい! ふん! 結局、こいつは巨乳顔の媚びる系の女子が好きなのよ!」
確かに、黙って目をウルウルさせてれば、媚びる系女子に見えなくもないか・・・
さすが、幼馴染。
美姫の表現適格すぎるわ。
「それに、美姫ちゃんの方が、圧倒的に・・・」
ん? 秀樹? コイツ、また余計な事言い出してね?
「圧倒的になによ?」
「イヤ、ゆかりちゃんもその~ スタイルが良くなったな~って思うけど~ その~ 美姫ちゃんはもっとこう・・・」
「もっとこう、なによ?」
「えっと・・・ふんわり柔らか仕上げって言うか~」
・・・ふんわり柔らか仕上げって。
「あっそう! どうせ美樹よりは小さいわよ! ふん! 別にいいわよ、あんたに好かれなくたって、私にはアキラがいるんだから」
「てか、相変わらずっすね~ コイツの何がそんなに良いの?」
「はぁ!? こんな天使みたいに可愛い子他にいないじゃない!」
「天使・・・・・・アキラが? えっ?」
うるせ~ぞ秀樹。 そんな目で俺を見るんじゃね~
ゆかりちゃんには、そう映ってるんだから良いだろ。
「美姫さんとイイ、ゆかりちゃんとイイ。 なんでそんなに、アキラのこと好きなんだよ~ 良いよな~ 俺も、お姉ちゃんが欲しかったよ」
隣の庭はってヤツだっちゅ~の。
「なんか、家出とか言って。めっちゃ楽しそうだし」
美姫と一緒に暮らす大変さを経験してから言えよ。
良い事ばっかりじゃないんだから・・・
自己中で我儘だし、寝起き最悪だし、機嫌悪いとモノ投げてくるし。
「お前みたいなデリカシーの無いガキは弟でも可愛がってやんないわよ!」
「え~ そんな~」
「ふん、お前は一生、美姫美姫言ってろバカ」
「もうゆかり! 口が悪いわよ! そう言えば、美姫ちゃんはまだ折れないの?」
「ん? あ~ あれは、もうそろそろね~」
もうそろそろ?
「授業中もボーっとしちゃって、もう今日は全然覇気無かったな~ もうそろそろ限界って感じだったわね」
なるほど、じゃあ明日、明後日あたりって感じか。
金曜日のピアノレッスンの時には捕まりそうだな~
「じゃあ、早ければ明日にはあれかな?」
「う~ん、どうだろね? ママ~ 美姫が謝ってきたら、そのまま私アキラの家にお泊りに行って良い?」
「明日? まだ木曜日なのに?」
「う~ん、金曜日も土曜日もそのままお泊りしちゃおうかな~」
「あっそう、じゃあまた週末は幸太郎と3人ね」
そっか、先週もゆかりちゃん、ずっとウチに居たんだっけ。
「ん? なにそれ? また3人でお寿司とか食べに言っちゃうじゃないでしょうね?」
「別に良いじゃない。 アンタはアキラちゃんと一緒に楽しくやるんでしょ?」
「まあ、そうだけど・・・いっつも、3人でずるいのよ。 てか、ママ~ 焼きそば足りなくない?」
ん? あれ? もう2袋目も焼いてるのか?
てか、秀樹のヤツ全然遠慮しね~な~
バクバク食ってんじゃんコイツ。
2年ぶりに来た家で良くもまあ遠慮無しにガツガツ飯食えるよな~
「秀樹~ お前食いすぎじゃね?」
「えっ? だって~ 夜に焼きそばってめっちゃ嬉しいじゃん!」
「なんで? 秀樹の家じゃ、焼きそばとか出てこないの?」
「いっつも親父が居るから、アキラの所みたいに焼きそばとかお好み焼きとか、スパゲティなんて全然作ってくれない・・・」
そっか、だからおばさんに今日焼きそばだからって言った時、あんなリアクションだったのか。
「てか、これじゃ幸兄の分ないね?」
「ん? そうね~ まあ、あの子には1000円渡して、どっかで食べて来いって言うわよ」
・・・・・・この家の人って幸ちゃんの扱い雑じゃね?
「秀樹くんの事送って行ってもらって、その帰りに食べて来たらって言うわよ」
「幸兄、今日外食か~ それもなんかズルいな~ 絶対、幸兄ドンキー行くよ~」
幸ちゃん、びっくりドンキー大好きだからな~
週末とか、西野のドンキーから1人で出て来るのよく見かけるもんな~
ん? 車の音?
幸ちゃん帰って来たのかな?
「噂をしたらだね? 幸兄帰って来たみたい」
幸ちゃん・・・可哀そう。
美姫の部屋を見てただでさえショックで疲弊してたっぽいのに。
焼きそば残って無いとか見たら・・・
『ガチャ! ただいま~ ん? 誰か来てるの?』
普段より、靴が多いからなのか、そんな事をブツブツ言いながら幸ちゃんが玄関からリビングに入って来る。
「誰か来てるの?」
「おかえり~」
「あっ、おじゃましてます」
「ん? 秀樹じゃん。 久しぶりだな」
「あっ、ども・・・」
「幸太郎~ 秀樹くんのこと、この後送っていってくれない?」
「え~!? なんで俺が~?」
「いいじゃない。 それに、あんたの晩御飯無くなっちゃったし。 外で食べて来て?」
「はぁ!? 今日って焼きそばだったんじゃないの?」
「あ~ 幸兄ごめ~ん・・・もう残りコレだけ。 食べる?」
「これだけって・・・えっ? あれ? 俺、今日3食入り、2袋買って来たよね?」
「えっと~ だから~ もうこれだけ」
ごめん・・・幸ちゃん・・・
「あのさ~ この家の息子は俺なんだけど?」
「もう、うるさいわね~ 大学生なんだから、もっと毎日外で遊んできなさいよ~ 毎日しっかり帰って来ちゃって。 ハイ1000円あげるから」
おばさんも、幸ちゃんに冷たいな~
「1000円って・・・」
「幸兄、どこ行くの?」
「えっ? う~ん、1000円か~」
「ハンバーグディッシュ食べるには十分よね~」
「なんだよゆかり?」
「良いな~ 幸兄だけズル~イ!」
「お前っ! 俺は晩飯が無いから」
「ズル~イ!!」
ゆかりちゃん、ほっぺぷくっとさせて。
露骨なアピール。
でも・・・ちょっと可愛い~
「イヤっ・・・」
「ズルイ!!」
有無言わさずだな・・・
「バカか!? お前1000円しかないのに!」
「ケチ!! もう美姫の事で味方してあげないんだから!」
「えっ? ゆかり? えっ?」
・・・・・・幸ちゃん、負けたな。
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