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第158話 幸ちゃん? 大丈夫? 息してる?

 『ガチャ』


「・・・・・・どう?」


 ん? 唖然としてる。

 まあ、そうなるよな~


「えっ? アキラ? これって空き巣でも入ったのか?」


 でた、現実逃避。


「これがデフォですけど何か?」

「ハハっ・・・ハハハ。 まあ・・・美姫ちゃんらしいっていうか・・・かっ可愛い部屋だよね?」


 あ~ 可哀そうに・・・

 顔が引き攣ってるよ~


 ん? 幸ちゃん?


「あっ、あんまり下手に部屋に入らない方が良いよ」

「なんで?」


「だって、雑誌の下に食べかけのパンやら、カップ麺の食い残しとかたまにあるから」

「えっ? 食べかけ? てか・・・これ・・・本当にいつもこうなのか?」

「だから、そうだって言ってるじゃん」


 まあ、信じたくないのはわかるけどさ~


「イヤ、あれだろ? アキラが家出して、ストレスで暴れてこうなったとかじゃないのか? 美姫ちゃんって、怒るとモノ投げるクセがあるだろ?」

「イヤ、俺が家に居る時から毎日こうだよ。 あのさ~ 幸ちゃん、信じたく無いのはわかるけど、これが現実だからさ~ 受け入れてよ。 これがデフォなの!」

「これが現実・・・デフォ? ・・・デフォ・・・デフォ・・・デフォ・・・」


 あ~ 思考ストップしちゃった?


「ねえ? アキラくん? 家出ってどういうこと?」


 えっと、それ? こっちはこっちで、説明が色々ややこしいな~

 どうしよう、アッコちゃんに何から説明したら?


「えっと~ ちょっと美姫と喧嘩?」

「美姫ちゃんと喧嘩? なんで?」

「えっと・・・これ・・・」


 美姫に噛まれてまだ残っている痣をアッコちゃんに見せると。


「はぁ? これなに? 歯型?」

「美樹のね」

「はっ!? えっ? なに? ちょっと兄弟喧嘩激しくない? いっつもこうなの?」

「イヤ・・・いっつもではないんだけど」


 まあ、喧嘩して思いっきり歯形つけるほど噛むなんて。

 一人っ子のアッコちゃんには想像つかないよね?


 俺の記憶が正しければ、美姫に噛まれるのはこれで2回目。

 前は美姫の見てるテレビのチャンネルを勝手に変えた時、腕をガブっと・・・


「それで家出? 家出ったって。 どこに?」

「えっと・・・もう一人のお姉ちゃんの家?」

「なに? さっきから言ってる、そのもう一人のお姉ちゃんって?」

「えっと、さっき話したゆかりちゃんの家」


 あ~ ややこしい~


「もう一人のお姉ちゃん? なにもう一人って?」


 まあそうだよね。

 意味不明だよね?


「なんて説明したら良いのかな~ 美樹の幼馴染のゆかりちゃんって人がいるんだけど。 なんていうか、俺その人の事小学に入る前まで本当のお姉ちゃんだと思ってたっていうか~」

「はぁ~? なにそれ? どういうこと?」


 だよね~ そんな反応になるよね~?

 イヤ・・・なんていうか、あれは・・・


 洗脳? まあ思い込んでたんだから、洗脳みたいなモンだよな~


「嘘みたいな話だけど。 毎日一緒に暮らしてたのよ。 だから、俺的には本当にお姉ちゃんみたいな感覚っていうか、美姫と一緒っていうか~」

「毎日一緒に暮らしてた? はっ?」

「うん、マジで毎日一緒で。 だから、普通に同じ家族なのかとずっと思いこんでたっていうか~」

「はぁ~? アキラくんってバカなの?」


 ひどい! バカって・・・


「イヤ! だって! 物心ついた頃には毎日家に居て、朝起きたら美姫と一緒に朝ごはん食べて、夕ご飯も一緒で普通に家族って思っちゃてたの!」

「朝から晩まで毎日? はっ? どういうこと?」


 理解出来ないのはわかるよ。

 普通のお家じゃ、そんな状況考えられないもんね。


 でも、少なくとも俺が2~3歳の頃の記憶にはすでにゆかりちゃんが存在してるし。

 お祭りで獅子舞に頭ガブってされて泣き叫んだ時も、ゆかりちゃんに抱っこされてた記憶があるし。

 その時の写真もあって、写真に印字されてた年代から、あれが2歳の頃だっていうのはまぎれもない事実だし・・・


 小学入る直前までずっと毎日一緒だったんだから、少なくとも3~4年間は一緒だったんだろ?


「俺が2歳頃で物心ついた時には目の前に居て、毎日一緒に遊んだり、食卓囲んだり、3人でお風呂入ったりしてたら自分のお姉ちゃんって思いこんじゃうって」

「・・・・・・なにそれ。 刷り込みっていうヤツ?」


 イヤ、鳥かよ!? でも・・・


「えっと、あながち間違ってないかも。 マインドコントロールというか~ 洗脳っていうか~ 思い込みって怖い的な?」

「・・・・・・ごめん。 ちょっと、あまりに非現実な状況で理解出来ないけど。 同じ境遇なら、私もそうなったのかな?」

「絶対、アッコちゃんだってそうなったよ」

「たしかに、そんな赤ちゃんの頃から一緒なら・・・確かに・・・う~ん・・・」


 ん? 少し理解し始めた感じ?


「で? その人の所に家出してるの?」

「そう」

「いつまで?」

「う~ん。 俺が出した条件を美姫が飲んで謝罪するまで?」


「条件って?」

「えっと~ アッコちゃんと二人でいる時邪魔しないっていうのと。 嫉妬やイライラで、俺に八つ当たりしないとか~ 俺にとにかく変な事しないって約束してもらわないと」

「なに? 私といる時に邪魔って?」


「邪魔するじゃんアイツ~ 二人で遊んでるのに、ずかずか部屋に入って来てさ~」

「う~ん・・・まあ、確かに、何か美姫ちゃんがいると、すっごい監視されている気持ちにはなるけど。最初の頃は顔も怖かったけど・・・」

「でしょ? アイツ、俺が他の女の子と仲良くすると嫉妬が凄いんだよ。 だから、俺が生きやすくなるように美姫には色々約束守って貰わないと」

「はぁ~ なんか、その歯形と良い。 大変そうなのはわかったような気がするけど・・・・・・であの人は何?」


 ん? あの人?

 あれ? なに? どうした? 止まってる? ショックで壊れたか?


「幸ちゃん? 大丈夫? 息してる?」

「・・・えっ!? ああ・・・うん・・・」


 ちょっと刺激強すぎたかな~?


「ベッドの上にしか座れないって言った意味わかったでしょ?」

「えっ? ああ・・・うん。 なあアキラ・・・女の子ってみんなこうなのか?」

「そんなわけないでしょ? ゆかりちゃんの部屋は綺麗じゃん」

「そっか・・・そうだよな・・・」


 まあ気持ちはわかるけど。 

 理想と、目の前の事実とのギャップ。


 わかるけど、女の子への幻想は無い方が色々これからの為になるから。

 頑張れ幸ちゃん。


「これでもまだ美姫のこと好き? 儚い初恋だったね?」

「はっ!? べっ別に・・部屋が少しくらい汚くらいで、そんな気持ちが変わるワケ・・・ 美姫ちゃんは美姫ちゃんだろ・・・天使・・・」


 天使ね~ 顔が引き攣ってるけど。

 う~ん、ちょっと可哀そうになってきたかも。


「まあ幸ちゃん無理しなくて良いよ。 なんか申し訳ないから、えっとその辺ちょっと漁ってみたら?」

「その辺って?」


「すぐそこの雑誌とカバンがある下当たり?」

「えっ? ここ? !?って!! オイ!! コレ!!」


 ふふふっ、そこは美姫の抜け殻置き場だから。


「それ持って帰る?」

「バカ! アキラ! こんなのダメに決まってるだろ! お前! ハメやがったな!」


 もう、そんな美姫の下着で動揺しちゃって~

 そんな何日前に履いてたか分からないような、キチャない下着でさ~


「ハメたなんて。 幸ちゃんが喜ぶかなって思っただけなのにって! イテテテ!」

「コラ! アキラくん! また! そうやって美姫ちゃんの下着で遊んで!」


 アッコちゃん?


「もう! 美姫ちゃんが可哀そうでしょ!」

「イヤ、アイツ下着が少し無くなっても気づかないって~ こんな脱ぎ散らかしてるんだから~」

「もう、だからってダメだよ。 この間も清水くんに勝手にあげようとしてたし。 アキラくんって美姫ちゃんの扱い雑だよね?」


 えっ? 俺が?

 美姫の扱いが雑って。


 美姫が俺の扱い雑ならわかるけど。

 なんか、解釈不一致だな~


「雑って。 美姫のワガママとか、超聞いてあげたりしてるのに?」

「そうかもしれないけど・・・ だからって下着で遊んだら可哀そうだよ~」


「アキラ」


 ん?


「どうしたの幸ちゃん? 無理して真面目な顔しちゃって?」

「うるさい! てか、この部屋で勉強は無理だよな?」

「ん? そうだね」


 なに、当たり前のことを?


「じゃあ、やっぱりウチに来てもらうしか無いってことかな?」

「ん? まあ、双方同意ならそれでも」


 ああ~ そっちへ持ってく?


「そっか・・・わかった」

「ん? あれ? 帰るの? 美姫の部屋堪能しなくて良いの? 飲みかけのペットボトルとか持って帰る?」


「バカ!!」

「アキラくん!!」


 えっ!? なんで??


「なに二人して・・・」

「アキラ・・・お前、ゆかりと美樹ちゃんとで、全然だな?」

「もう! 美姫ちゃんが可哀そうでしょ?」


 なに言ってんの二人とも?


「それに。 俺は、そんな変態じゃないぞ、バカモン!」


 欲しそうな顔して、めちゃくちゃ葛藤してたクセに、良く言うよ。

 童貞特有の、純潔アピールですか?

 わからないでもないけどさ~


 そういうムッツリがダメなんだけどな~

 はぁ~ かつての自分を見てるようだよ。


「あっ、ねえねえ幸ちゃん?」

「なに?」


「帰るなら、このランドセル一緒に持って行ってくれない?」

「はぁ~ お前・・・本当に昔から・・・」


 ん? なに?


「良いよ。 よこせ。 ゆかりの部屋に置いておけば良いのか?」

「うん♪ おねが~い♪」

「まったく、とんだ弟だよ・・・」


「アキラくん、これからその人の家に行くの?」

「えっと・・・まあ、美姫が全面降伏を受け入れるまでは」

「えっ? でも、その人って従妹とかじゃないんだよね?」


 ん? また?


「違うよ」

「血は繋がってないんだよね?」

「そうだね」

「はぁ~ ダメ・・・さっきの説明聞いてもやっぱいまだスンナリ理解できないよ~」


 スンナリ理解出来なくても大丈夫。

 意味不明すぎるからな~ ゆかりちゃんとウチの家族の関係。


「まあ近所の幼馴染のお姉さんで、ずっと家族ぐるみのお付き合いだった家って言えば理解しやすい感じ?」

「あ~ う~ん。 なんか、色々難しいけど、そうい人がいるんだね?」


 まあ、今のこの状況もかなり謎だよな~

 前世じゃこんなこと無かったわけだし。


 ゆかりちゃんが、高校生になってからは、月に2~3回しか会わなくなってたような気がするし。

 幸ちゃんとこんな話すことなんてほとんど無かったもんな~


 街で男と歩いているゆかりちゃんの姿は何回か見たけど・・・

 あれって、今思うと木下の兄貴だったんだろうか?


 なんだろうな~

 他の男と歩いているゆかりちゃん見て、何か嫉妬っていうか。

 すっごい居たたまれない気持ちになったのは覚えてるんだよな~


 そのせいなのか、たまにゆかりちゃんに会うと、冷たい態度とっちゃったような気がするし。

 それなのに、俺の事ギュッとか抱きしめてからかってくるもんだから、めっちゃ意識しちゃて。

 年々、綺麗になってくゆかりちゃん見て、何かどっか憧れてたっていうか。


 勝手に遠い存在に思ってたんだよな~

 はぅ~ 今思えば、あの時ギュッとしてもらってた時に好きって言えば、ゆかりちゃんと?

 そういうことなのかな~


 あぁぁぁ・・・思春期のバカ。

 童貞ムッツリの塩対応・・・

 ムッツリしないで、欲望に純粋に生きていれば。

 あの時、ゆかりちゃんに好きって言えてれば・・・キスだけじゃ無くって。


 俺の色々の初めては全部、ゆかりちゃんだったのかな?

 嫁もあいつじゃ無くって、ゆかりちゃんだったのかも・・・


「アキラくん?」

「ん?」

「どうしたのなんかボーっとしちゃって?」

「えっ、イヤ。 ちょっと昔の事思い出してて」

「ふ~ん・・・」


 アッコちゃんと話をしていると。

 冷静さを取り戻したのか、幸ちゃんがランドセルを持ったまま、俺の部屋を見て・・・


「てか、アキラの部屋めっちゃ綺麗じゃん?」

「ん? まあね~」

「美姫ちゃんとの勉強、ここでも良いじゃん」

「はぁ!? なんで俺の部屋で? イヤだよ!」


 勘弁してよ。

 なんで、美姫の勉強のために俺の部屋を・・・

 アッコちゃんとの時間も残り少ないっていうのに。


「お前さ~ 美姫ちゃんに優しいのか、その子の言う通り雑に扱ってるのか分からない時あるよな?」

「なんでよ?」

「美姫ちゃんが落ち込んでたら優しく慰めたりしてたろ子供の頃。 なのに、次見たら取っ組みあいで喧嘩して、一方的にやられて泣いて美姫ちゃんにモノ投げつけてたし・・・」


 そんな、子供の頃の話を・・・


「てか、女兄弟との仲なんてそんなもんでしょ? 幸ちゃんだって、ゆかりちゃんとそうでしょ?」

「まあ、言われてみればそうか。 とりあえず、今日はもう帰るよ・・・なんかちょっと疲れた・・・」


 そう言って、1階の玄関まで降りて行くと、そのまま幸ちゃんにランドセルを預けて、なんとなく丸まった背中を見送ると。


「で、結局あの人は誰だったの?」

「ん? だから~ さっき言っていたもう一人のお姉ちゃんの兄貴。 美姫の下僕?」

「下僕? 美姫ちゃんって・・・なに? 不良かなんかだったの?」


 美姫が不良? なんで?


「なんでそうなるの?」

「だって、下僕って・・・」

「ん? イヤ、違くて。 幸ちゃんは、昔っから美姫の事が大好きで。 その~ 美姫の言う事には逆らえなかたっていうの? だから下僕的な?」

「そういうことか。 美姫ちゃんのことが好きなんだ。 だから・・・パンツ見てあんな顔・・・大人なのに・・・」


 アッコちゃん? 何言ってんの?


「ん? 幸ちゃん帰っちゃったの?」

「えっ? うん、なんか疲れたって」

「あら~ 家庭教師は? やって来れるって?」


「ん? う~ん、本人はやってくれる気でいるみたいだけど。 どこで勉強するか悩んでたよ」

「まあ、そうなるわよね~ 困ったわね~ 掃除しなさいって言っても、言う事聞かないしね~」


 そう言って、ブツブツ言いながらリビングに戻っていく母親の後をアッコちゃんと一緒にリビングに戻り、さっきまで座っていたソファーに戻ると。

 時間がたって、少し乾いたケーキを二人で頬張り。


 アッコちゃんは、なにやら色々考え事をしているのか、いつもより言葉が少なめで、くぴくぴとストローでジュースを飲んでポヤーっとしている。

 リビングのソファーに座りながら、アッコちゃんとイチャイチャしたいな~っと思いながら時計が進んで行くのを眺めていると。


「ねえ?」

「なに?」


「私も、そのもう一人のお姉ちゃんに会いたいな」

「ん? ゆかりちゃんと?」

「うん」

「まあ、良いけど。 明日なら、ゆかりちゃんも帰って来るの早いだろうし」


 アッコちゃんと二人で話をしていると。

 買い物へ行く恰好をした母親が来て。


「二人共、そろそろ帰らなくて良いの?」


 そう言われて、時計を見るともう17時になり掛けだった。


「ありゃ・・・そろそろ帰るか・・・」

「ハハハ、なんか変なの。アキラくん家にいるのに、そろそろ帰るかって~」

「だって、美姫が帰ってくる前に家出ないと、捕まったら拉致られて強制的に家出終了しちゃうもん」

「拉致って・・・」


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