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第157話 久しぶりにアッコちゃんと二人っきりだと思ったのに・・・


「ねえ? どうしたの?」

「だって~ 久しぶりに一緒に居られるんだモン。 時間は大事にしないとでしょ?」

「でも、こんな急がなくても~ どうしたの?」


 イヤ、帰りに秀樹に捕まるかもしれないし。


「イヤ、秀樹に捕まると面倒くさいっていうか・・・」

「清水くん?」

「うん」


 あっ! そう言えば、明日も迎えに来なくて良いって言うの忘れてた・・・


「てか、大丈夫だと思うよ」

「なんで?」

「だって、今日はルナと一緒にバレエの練習しに行くとか言ってたよ」


 バレエの練習? 秀樹が?

 てか、るなっちと一緒に練習?


 へ~ 何気に良い感じなんじゃないのか? あの二人。


「そうなんだ? はぁ~ よかった」

「もうどうしたの? さっきも清水君から逃げたみたいだけど、喧嘩でもしたの?」

「イヤ、喧嘩っていうわけじゃないんだけど・・・ちょっとね・・・」

「ふ~ん」


 アッコちゃんを連れて家に帰って、家の扉を開けて中に入るとすぐ母さんが出て来て・・・


「あら~ アッコちゃん。 風邪はもう治ったの?」

「あっ、ハイ。 えっと、お邪魔します」

「ふふふっ、こっちに帰ってきたのね?」


 俺の方を見て、ニヤニヤして意味深な発言を残してリビングに消えて行く母さん・・・


「こっちに帰って来たってどういうこと?」


 くっ、母さん余計な事を・・・


「イヤ、なんでもないよ。 ホラ、早く部屋に行こう?」

「うん・・・」


 そう言って、アッコちゃんを連れて自分の部屋に行くと。


「寒っ!!」


 あれ? なんで?

 ボイラー切れてる?


 そう思い、部屋のボイラーのメモリを見ると0に・・・


 えっ? 何の意地悪コレ?

 そう思っていると・・・


「ああ、ゴメン。 忘れてたわ」


 母さんが、お菓子とジュースを持って扉の前に立って。

 こっちを見ながら、てへぺろ的な感じで呑気なことを言いやがる。


 北海道の家はエアコンで各部屋ごとに暖めるなんてないワケで・・・

 もちろん、本州の人みたいに部屋の中でダウンベストを着て、こたつだけで過ごすなんて絶対にしない。

 家の中が寒いなんてあり得ないっていうのが北海道人の感覚だから。


 北海道の家はセントラルヒーティングが主流なのだ。

 ボイラーで温めた不凍液を、それぞれの部屋に設置したパネルを循環して部屋を暖める仕組みだ。

 だから、基本家じゅうポカポカなのだ。


 それぞれの部屋に設置した、放熱パネルの脇にあるメモリを大きくすると暖かくなって。

 0にしちゃうと、暖かい液が廻らなくなり一気に寒くなる仕組みなのだ・・・


「も~う、0にしなくたって~ せめて1とか2くらいにしといてよ~」

「だって~ 勿体ないじゃない。 部屋温まるまで、リビングで遊んだら?」


 部屋が暖まる頃には、もう17時になっちゃうよ。

 はぁ~ リビングじゃアッコちゃんとイチャイチャ出来ないじゃないかよ~


「アキラくん? 風邪引いちゃうから、お母さんの言う通りリビング行こう?」

「うん、そうだね」

「うふふふっ、お母さんって~ イヤン、アッコちゃん~♪」


 この人は何を浮かれてんだろ?


 はぁ~ しょうがないな~

 今日はリビングで我慢するか。


 そう思い、ゲーム機を持って、アッコちゃんとリビングへ向かうと。


「ん? ピアノ?」

「うん」


 なんだろ? いまさら。


「へ~ すっご~い、家にグランドピアノなんてあるんだ~」


 なんか目をキラキラさせてピアノに食いつくアッコちゃん。


「いっつも学校で見てるじゃん」

「え~ そうだけど、家にピアノって良いな~ 私もピアノ習いたかったな~」


 そっか、アッコちゃん転勤多いから。


「習えばよかったのに?」

「だって、うち社宅だし・・・」


 社宅? でも小沼も一緒じゃん。


「えっ? でも小沼も同じ社宅じゃん?」

「さおりん? う~ん、でもさおりんの家のピアノ、こんな形じゃ無いよ?」


 ん? 形?


「あ~ 小沼の家ってアップライトピアノなんだ」

「なにそれ?」

「えっ? う~ん、多目的教室の端にあった縦長の箱みたいなピアノ?」

「あ~ あれ、アップライトって言うんだ。 でもな・・・どうせウチ転勤ばっかりだし」


 まあ、転勤多いとピアノなんて持ち運べないよな。


「ほら、二人ともこっち来ておやつ食べたら?」

「うわ~♪ ルタオのケーキだ~♪」


 ん? ルタオのチーズケーキ?

 これって・・・週末買って来たヤツ。


「母さん? えっと・・・美姫のは?」

「ああ、無いわよ。これで最後♪」


 うわ~ 美姫のいない間に家に帰って来て。

 ケーキ全部食ってまたゆかりちゃんの家に逃げたってわかったら。

 美姫のヤツ、絶対怒るんだろうな~


「もう、昨日まで美樹1人で食べてたんだから、平気よ」


 そうかな~ 絶対グチグチ言われると思うんだけど。


 『ピンポ~ン ピンポ~ン』


「ん? 誰かしら?」


 母さんとインターフォンのモニターを見ると・・・


「あら? 幸ちゃん?」


 ああ・・・忘れてた。


「忘れてた、幸ちゃんと約束してたんだった」


 でも、来るの早くないか?

 16時って言ったのに。


「何よあんたが呼んだの?」

「えっ? うん、美姫の家庭教師引き受けてもらうのに、美姫の部屋がどういうモノか見て貰おうかと思って」

「あんたも酷い事するわね。 あんなの見たら家庭教師やらないって言われるわよ」


 う~ん、でもとりあえず美姫を美化しすぎてる幸ちゃんの感覚もバグり過ぎてるから。


「ん? 誰?」

「アッコちゃん? えっと・・・なんていうか~」

「ふふふっ、アキラのもう一人のお姉ちゃんのお兄ちゃんよ」


 母さん! ワザとややこしくなる言い方すな!


「もう一人のお姉ちゃんのお兄ちゃん? どういうこと?」

「えっと・・・ちょっと話がややこしいから後でね」


 って・・・母さん?


「あら~ 幸ちゃん♪ 久しぶりね~ 元気だった~?」

「あっ、おばさんお久しぶりです。 アキラは?」

「ふふふっ、ちょっと待ってね~ 今来るから~ にしても、幸ちゃん? 気を確かにね」

「はぁ? どういうことですか?」

「ううん。 世の中には、幸ちゃんが知らない世界が沢山あるってこと」


 またワザとややこしくなる言い方を。

 この人、ワザとやってるだろ?


「幸ちゃん、いらっしゃい」

「おお、アキラ? ん? そっちの子は?」

「ん? ああ、この子は僕の彼女のアッコちゃん」

「その子が噂の可愛い彼女かよ。 まったく、お前ってヤツはなんて羨ましい・・・」


「アキラくん? 誰?」

「ん? えっと、この人は美姫の幼馴染のゆかりちゃんって子のお兄ちゃんで、昔からよく遊んでもらってた人で、今度美姫の家庭教師頼む予定なんだけど」

「ふ~ん。 ん? ゆかりちゃん? どっかで・・・」


 ん? そっか、そうだった。

 ゆかりちゃんと木下の家でばったり会った時、アッコちゃん達もいたから。


 なんだろう? 色々状況がとっ散らかってるな~


「幸ちゃん心の準備は?」

「俺は何を見たって美姫ちゃんへの気持ちは変わらないよ」


 あっそう・・・みんな最初はそういうんだよ。


「じゃあ、幸ちゃんコッチ来てよ」


 そう言って、幸ちゃんを連れて二階の美姫の部屋の前まで行くと。


「アキラくん? 何する気?」

「えっと・・・幸ちゃんは昔から美姫の事が大好きで。 美姫の事をちょっと美化しすぎて色々拗らせ中だから、部屋でも見せれば少しは目が覚めるかなって」

「う~ん、良く状況が分からないけど。 美姫ちゃんの部屋を見せるの? 一応女の子部屋だよ? 勝手に人入れて良いの?」

「女の子の部屋って~ 超絶ハイパーな汚部屋だよ、女の子の部屋って無理があるでしょ?」


 苦笑いのアッコちゃんを横目に、幸ちゃんを見ると少し緊張している感じだけど。

 どことなく、ワクワク感が込み上げてるのが分かる。


 まあ、失神しなきゃ良いけど・・・


「幸ちゃん? マジで心を強く持ってね?」

「なんだよおばさんと良い。お前と良い。大丈夫だよ」


 きっと可愛らし、綺麗な部屋を想像してるんだろうな~

 憐れ・・・幸ちゃん・・・


 ごめんね幸ちゃん。

 さよなら・・・幸ちゃんの初恋・・・


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