第154話 美穂ちゃんって誰?
「いってらっしゃい♪」
「いってきます・・・」
なんか、変な感じだな~
ゆかりちゃんママに行ってらっしゃいって。
めっちゃ変な気分。
それにしても・・・ゆかりちゃん。
はぁ~ 思い出すだけでまた。
俺もう、ゆかりちゃん無しじゃ生活できないんじゃないのか?
このままゆかりちゃんに育てられて、そのまま旦那さんになっちゃうのかも。
まるでサッカーの下部組織のごとく、ゆかりちゃんにエリート教育受けてける気分・・・
てか・・・ゆかりちゃん・・・日に日に大胆になってない?
ここ数日、ゆかりちゃんに性欲のコントロールを完全管理されちゃってるし。
毎日あんな事されたら、眠れないよ。
何が賢者タイムだよ。
あんな、極上な女の子が毎日隣に無防備に寝てたら、あっという間にしたくなっちゃうし。
しかも、僕がしたくなっちゃったらすぐ気付いてしてくれるし。
家出が終わったらどうしよう・・・
ゆかりちゃん無しじゃ、きっと寂しくて眠れないし。
もう、ゆかりちゃん無しの生活なんて考えられないかも。
でも、ゆかりちゃんと一緒にいると、色々誘惑が凄いしな。
前世の憧れの彼女が優しくしてくれるんだモン。
甘えたくなっちゃうよ。
はぁ~ ゆかりちゃん。
だめだ、俺完全にゆかりちゃんの手の平状態だよ。
それにしても、なんだろう?
昨日から、昔はもっとしてくれたでしょっとか、覚えて無いのとか。
ゆかりちゃんは何を思い出させたいんだろ?
俺子供の頃、ゆかりちゃんとなんか約束したっけ?
結婚するとは約束したけど。
それ以外になんかあったっけ?
俺、ゆかりちゃんに毎日何してたっけ?
う~ん・・・24年前の記憶・・・
小学2年生くらいからって言ってたか?
ゆかりちゃんが中学生2年生くらい?
毎日一緒におままごとしてたのは覚えてるけど。
ゆかりちゃんと二人っきりで何してたっけ?
いっつも、ゆかりちゃんと美姫でどっちがお母さん役をやるかで喧嘩してたのは覚えてるけど。
それで、俺が赤ちゃん設定で色々二人に世話されて~
いっつも、最後は美姫に俺のお菓子を取られて泣かされて。
美姫が逃げた後は、ゆかりちゃんにだっこされて慰められるってことしか覚えて無い・・・
ゆかりちゃんに抱っこされて、美姫が居ないからいっつも二人っきりにはなってたけど。
ゆかりちゃんと二人っきりで何してたっけ?
抱っこされてよしよしされて・・・
う~ん、思い出せないな~
ゆかりちゃんとの事を思い出そうとトボトボ歩いているうちにあっという間に学校についてしまった。
「あっ! おはよう!!」
ん? この声は?
やっぱり!
「ん? どうしたの? 朝からなんかボーっとしちゃって」
「えっ? イヤ・・・だっていきなりだったから」
「なに!? 会いたく無かったの!?」
「イヤ! 違う!! そうじゃなくって・・・」
そうだよ、アッコちゃんとこんな玄関で会うなんて。
てか、なんで玄関で?
びっくりしてアッコちゃんを見て固まっていると。
ほっぺをぷくっとさせて怒り顔のアッコちゃん。
「もう・・・てか、アキラくん。 今日すっごい早いね?」
「えっ?」
ん? そうか。
いっつも自分の家出る時間と同じ時間に出たから。
ゆかりちゃんの家から学校が凄い近いの忘れてたよ。
「えっと・・・その、アッコちゃんに早く会いたくて?」
「ふ~ん、そのわりに、私の事見てもボーっとしてたみたいだけど?」
「そんな、玄関でばったり会うなんて思ってなかったから、びっくりしてただけだよ」
「ふ~ん、まあ良いけど。ほら、早く行こう?」
「えっ、うん・・・」
そのまま、あっこちゃんに手を引っ張られて教室へ向かう。
教室の扉を開けて中に入ると、まだ登校している人は半分くらいか。
「あっ、おはよう♪」
「ん? アコ~ おはよう~♪ ・・・ん? 二人で来たの?」
「ん? ああ、玄関でばったり会ったんだ~♪」
なんだろう・・・すっごい久々な光景。
アッコちゃんが居て、あゆみちゃんが居て。
なんだ、この落ち着く光景は。
この数日の怒涛の日々が嘘のような、平和な光景。
「佐久間くん? なにボ~っとしてるの?」
「えっ?」
「もう、いつまでボ~っとしてるの?」
「イヤ・・・なんていうか、今日皆に会えると思ったら、昨日あんまり眠れなくって」
正確には、ゆかりちゃんの誘惑が凄くて眠れなかったっていうか。
ヤバイ! またゆかりちゃんの事を思い出してしまった。
まっずい・・・大きくなっちゃう。
こんな所でマズイ。
「もう! アキラ!?」
「ん? えっ?」
怒ったアッコちゃんが顔を近づけて来る。
えっ? アッコちゃん?
こんな皆いるところで?
ギュッと目を瞑ると。
耳元でこそっと。
「もう・・・ぼ~っとしてるとキスしちゃうぞ」
「えっ?」
ギュッと閉じた目を開けると、悪戯顔でニパっと笑う彼女が目の前に・・・
「ふふふっ、ちゃんと起きて。 授業中寝たらダメだぞ」
「うん・・・」
なにその天使の様な笑顔。
もう・・・アッコちゃんまで。
女の子ってなんでこうも、男の子心を弄ぶんだろ?
てか、あっこちゃんにキス・・・されたい。
って・・・ダメだ!
ゆかりちゃんとのアレを思い出して。
あっこちゃんとの甘いキスなんて思い出したら。
やっばい・・・もうバレちゃう。
あっこちゃんと、あゆみちゃんが楽しそうに話しているのを横目にそっと自分の席に向かうと・・・
「アキラ~!」
朝からテンション高いな~
てか・・・お前の声聞いたら一瞬で萎えたんだが。
「なに? 朝からウザいな~」
「ひどい!」
はぁ~ こいつも登校早い組だっけ。
なんでこうも朝からテンション高いかな~
「アキラ~ ねえねえ聞いてよ~」
「なんだよ? 朝からテンション高いな~?」
「美穂ちゃんとさ~ サッカの試合観に行っちゃったんだ~♪」
美穂ちゃん? 誰だっけ?
「美穂ちゃん?」
「イヤ、美穂ちゃんだよ! 3組の!!」
ん? ああ・・・あれか、サッカーの紅白戦の時に見に来て、剛に話しかけてた子か。
そういえば、週末厚別にコンサドーレの試合観に行くとか言ってたっけ。
なんだよ、学級閉鎖で行けないかもとか言って。
結局、試合観にいってんじゃん。
「ああ・・・で?」
「お前、本当にコンサドーレに興味ないだな?」
この週末はそれどころじゃなかったんだよ!
遥ちゃんとはデートしちゃって、なんか先生と生徒の一線ちょっぴり超えちゃった気がするし。
ゆかりちゃんが修学旅行から帰って来てからすっごいグイグイこられて。
3日~4日一緒にいただけなのに、数週間一緒にいるような濃厚さだったし。
そんなコンサドーレどころか、サッカーなんて考える暇もなかったし・・・
ましてや、お前が美穂ちゃんとどうなったなんて気にもしてなかったよ。
「てか・・・コンサドーレってJ2じゃん。それなら日ハムの試合ドームに観に行った方がマシ」
「バカ! 美穂ちゃんのコンサドーレだぞ!! てか・・・日ハムって何? ドーム? 東京ドームってこと?」
ん? あれ?
日ハムってそっか。
2000年ってまだ札幌に本拠地移転する前だっけ?
ヤベっ・・・イイヤごまかせ。
「で・・・美穂ちゃんとは仲良くなれたのかよ?」
「え~ 来週の試合一緒に家でテレビで観ようって誘われちゃったんだ~♪」
へ~ 意外と仲良くなってる・・・
「お家デート? よかったじゃん」
「お家デート・・・やっぱりそれってデートなのかな?」
「まあ・・・一応そうだろ? てか、どっちの家に行くの?」
「えっ? 俺が美穂ちゃんの家に行く」
ウェ~ いきなり彼女の家に行くのかよ~
週末なんて、親もいるしめっちゃ気まずいじゃん。
「ふ~ん、お前ちゃんとお土産忘れずに持っていけよ。 相手の両親の印象は大事だからな」
「えっ!? お土産!? ・・・そうか・・・お土産・・・さすが先輩」
先輩?
「なんで、俺が先輩なんだよ?」
「イヤ、やっぱり、なんていうかその、女の子との恋愛については、アキラの方が先輩っていうか?」
はぁ~ 良く言うよ。
この間まで、嫉妬の怨念で呪いそうなまなざしを送って来てたくせに。
「せんぱ~い、お土産は何を買って行けば良いんでしょうか?」
「キモイから、先輩言うな!」
「だって、頼れるのは先輩くらいしか~」
「知らないし、ケーキでも買って行けば良いだろ?」
「ケーキ? ケーキってお店の?」
「お店以外のケーキがどこにあるんだよ?」
何言ってんだコイツは?
お土産と言えば無難にケーキだろ。
特に相手のお母さんは絶対に味方にしないといけないんだから。
スイーツ一択だろ。
「えっ? めっちゃ高いじゃん!?」
えっ? そこ?
「ふ~ん、剛は好きな女に尽くすのに、そんなケーキごときの金額をケチっちゃうんだ~ ふ~ん」
「だって、ケーキって! いくらするんだよ!? 俺のお小遣い何か月分だよ!」
しらんがな、そんなの。
貯金切り崩せよバカが。
「貯金切り崩すか、親に言ってお小遣い貰えば良いだろ?」
「貯金なんて、ミニ四駆とゲームとジャンプに消えたし! それに、先週厚別行くって言って、もうお小遣い貰っちゃったし・・・」
それこそしらんがなって感じなんだけど。
ジャンプとか毎週買うからだろ?
普段から無駄遣いするからこうなるだよ。
「じゃあ、バイトしろバイト」
「バイト? 小学生でバイトなんて無理じゃん!」
「家で親の仕事の手伝いしてバイト代貰えば良いだろ!」
「えっ!? アキラ・・・そんな事してるの?」
「う~ん、数回したかな?」
宝くじをいつでも充てられるって気づいてモチベ下がってあんまやってないけどね。
「何するの?」
「え? 買い物行ったら50円で、トイレ、お風呂掃除で100円とか?」
「お風呂掃除で100円・・・・・・安くない?」
くっ・・・このガキ・・・
労働舐めるなよ。
「剛、1円稼ぐのにどんなけ苦労しないといけないのかお前は身をもって経験した方が良いぞ。そしたら普段の無駄遣いも減るぞきっと」
「え~ お風呂掃除で100円って・・・そんなんじゃケーキなんて買えないじゃん!」
「しらんがな! 毎日30日やれば、3000円だろ? それにトイレ掃除に買い物も毎日行って見ろ? 月8000円くらいは稼げるぞ」
「月8000円・・・8000円!? マジ!?」
まあ・・・やったこと無いけど。
てか、遥ちゃんに、ゆかりちゃんとの怒涛の日々で、ロトのこと完全に忘れてた。
今ってキャリーオーバー出てるのかな?
もうそろそろ宝くじ当てないと、俺も資金が・・・
もう、アッコちゃんの誕生日会とプレゼントで貯金がもうあんまり残って無いんだよな~
「朝から何金の話してんだよ?」
ん? 藤さん?
「藤さん、オハ」
「藤さんおはよ~♪」
「ああ、おはよう。 でなんで金の話?」
「ん? こいつが美穂って言う3組の子とお付き合いするのに契約金が必要なんだって」
「契約金!?」
「違うよ! 美穂ちゃんはそんな子じゃないし!」
「てか、美穂って誰?」
ん? そうか、藤さん風邪で休んでたから先週の火曜日からの事知らないのか。
「えっと、サッカーの紅白戦で3組の女子が観に来てくれて、そこで剛の献身的なプレーに魅了された、サッカーオタクの女だよ」
「オタクってなんだよ! お前、美穂ちゃんの事悪く言い過ぎだぞ!」
「うるさいな~ っで、人生で初めてモテて、この通り舞い上がってる最中って感じ?」
「へ~ 剛をね~ 物好きな女もいるんだな?」
「藤さん!? ひどくない?」
はぁ~ うるさい・・・でも、何かこの教室のうるささ。
なんか落ち着く・・・落ち着いたら眠くなって来た~
ちょっと、寝ようかな・・・
もし気に入っていただけたり、少しでもおもしろいなと思ったら
ブックマークや目次下の☆☆☆☆☆を★★★★★へ評価していただけると励みになります。




