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第150話 これはまさしくwin-win-winですよ


 ♪~ ♪~   ♪~ ♪~♪♪♪♪♪ ♪~

  ♪♪  ♪♪  ♪♪   ♪ ♪ ♪♪

  ♪♪  ♪♪  ♪♪   ♪ ♪ ♪♪


「はぁ~・・・」


 ♪ ♪~  ♪♪♪ ♪~  ♪~♪ ♪ ♪ ♪ ♪ ♪♪~

   ♪♪♪ ♪♪♪ ♪♪♪ ♪♪♪ ♪♪♪ ♪♪♪


「ふぅ~」


 ・・・・・・


「えっと・・・なに? さっきから?」

「イヤ~ 我が息子ながら素敵な演奏するな~って。 私、知らない間に神童を産んでたなんて・・・」


 はぁ?


 お母さん・・・何言っての?


「ショパン・・・素敵ね~」

「ん? そう?」

「さっきの、バラード1番でしょ? で、いまのノクターンよね?」

「えっ? まあ・・・」


 なんだ? いつも、俺のピアノに興味なんて示さないのに。

 どちらかというと、長時間弾いてたらウルさいから弾くの止めろって言うクセに。


「ねえ? あなた、やっぱり9月に皆で定山渓に行った時に、温泉で転んで頭打った時から何か変わった?」

「はぁ? 温泉で転んだ? 俺が?」

「えっ!? 記憶に無いの!? ヤダ! 記憶喪失!?」


 記憶喪失? 温泉で転んだ?


 ・・・・・・?


「本当に覚えてないの?」

「・・・・・・? あっ!」


 そういえば、たあちゃんとか親戚皆で定山渓に行って、大浴場の滑り台が楽しくって調子乗ってたらこけて頭強打して大泣きした記憶あるかも!


 あれって・・・そうか。


「思い出したかも・・・そう言えば、たあちゃん達と行ったっけ?」

「そうよ~ あの次の週から何か急にピアノの音が変わったのよね~ 頭打ったせいで覚醒でもしちゃったのかと」


 あまた打って覚醒って・・・

 するわけないだろ。


「てか、温泉行ったのって何日だっけ?」

「9月23日と24日で泊りで行ったでしょ?」


 なるほど、俺が目を覚ましたのって25日の朝だっけ?

 ピアノの音って・・・


 母さん俺のピアノそれなりに、ちゃんと聴いてたんだな?


「なるほど・・・」

「ヤダ、やめてよ~ 本当に記憶喪失かなにか? やっぱり、もう一度病院で精密検査受けた方が良いのかしら?」

「イヤ、お医者さんも、MRIとか問題無いって言ってたじゃん」

「そうだけど、そんな曖昧な感じを出されると不安になるじゃない」


 まあ・・・そうだけど。

 でも、しょうがないじゃん。

 約20年ぶりにココに戻って来たのがその日なんだから。


「でも、なんで急にそんな弾けるようになるの? なんか、ちょっと怖いくらいなんだけど?」

「えっ? えっと・・・なんか、ソナタ一通り終わって、試しに弾いて見たら意外と弾けちゃったって感じ?」

「ふ~ん、弾けちゃった。 ・・・・・・ねえ? アキラはピアノ本気でやろうと思わないの?」


 はぁ? 何言ってんだ?


「なに? 急に?」

「だって、先生とこの間会った時に、熱心に今後の事とか色々お話してくれたもんだから」


 先生とあった?


「イヤ・・・ピアノの世界なんてそんな簡単じゃ無いって」

「なんか、先生もアキラがその気にならないから、お母さんからも説得してくれって言われたのよね?」

「説得って・・・」


 イヤ、大人になっても趣味でレッスン続けて、それでコノ時代に戻ったから。

 その上澄みで、ちょっとチートっぽくなってるだけだし。


 あと、3年もたったらただの普通の子だから。


「お母さんも、アキラのピアノの音色を聴いてると、なんかそんな世界もあるのかしらって思っちゃうのよね?」

「・・・イヤ・・・止めてよ。 それに、めっちゃお金かかるよ? 音大とか、留学とか・・・」

「その時はその時よ。 お父さんに頑張ってもらうから」


 お父さんに頑張ってもらうからって。

 軽く言うな~


「まあ、ピアノは嫌いじゃないけど・・・」

「来年コンクール出て見ないかって言われたんだけど?」

「はぁ!? コンクール!? 俺が!?」

「来年夏のコンクールに出るなら今から色々準備した方が良いって言うのよ」


 おばあちゃん先生・・・張り切り過ぎだし。

 てか、あの人俺が6年生の時に歳だからって、ピアノ教室辞めなかったか?


「なんか、指導者人生の最後にアキラと出会って、夢見たくなっちゃったって言うのよ」


 イヤ・・・なんて勝手な。

 夢みたいってなんだよ?


「ほら、あのおばあちゃん市内の大学に講師で教えに行ったりして、それなりに有名な先生でしょ? そんな人に夢みたいなんて言われたら・・・」


 夢みられてもな~

 別に才能で今こうなってるわけじゃないんだけど。

 なんか、がっかりさせちゃうだけだと思うんだけどな~


 まあ、前世でも一応、一瞬だけど音大とか夢みた時期も無いわけじゃないけどさ~

 プロのピアニストとあんなにレベルの差があるなんて当時は思わなかったもんな。


 美姫に子供頃、プロのピアニストがあんなに良い音出すのは、数千万~億するコンサートグランドピアノを弾いているから、私達と音が違くて当然なのよって嘘を吹き込まれて間に受けてたからな~


 就職して東京出て、有名ピアニストのコンサートとか聴きに行くようになって、生のピアノの演奏聴いて、自分の音との違いに驚愕したというか・・・


 それから、桐朋卒の先生に習い始めて、美姫の言ったことが全部ウソだって知ったんだよな。

 確かに、多少ピアノのお値段の差はあっても、それ以上に鍵盤タッチや奏法に関するテクが未熟すぎたんだって気づいちゃったんだよな~


 てか、あのおばあちゃん先生って有名って言うけどさ~


 俺が大人になって、東京で習った桐朋卒のお姉さん先生の方が全然指導がまともだったような気がするんだけど。


 鍵盤タッチとか奏法とか色々、目から鱗の事ばっかりだったんだから。

 あの、おばあちゃん、俺にそんなの教えてくれた事無かったよな?

 そんな人に一緒に夢みたいとか言われてもな・・・


 真面目にやるんだったら、それこそ先生変えた方が良いのでは?

 おばあちゃん先生には悪いけどさ。


「おかあさんも、最近のアキラのピアノは本当に聴いてて素敵だなって思うんだ~ 音がキラキラして透明感のある音で、たまに本当に鳥肌立っちゃう時あるから」

「はあ・・・そうですか・・・」

「そうよ~ お姉ちゃんと比べたって、アキラの音が断然素敵なんだから」


「はあ・・・それ美姫には言わないでね」

「ん? まあ・・・それは、そうね。 気を付けるわ」


 美姫に今の話聞かれたら、また面倒くさいことになるじゃん。

 無駄に負けず嫌いだからな・・・


 俺が、アイツよりランク上の高校行った時も、小樽商大に現役で合格した時も、嫉妬が凄かったんだから。


 ううう・・・思い出すの辞めよう。

 もう、あれは前世の記憶だ。


 てか、俺がいきなりコンクールとか出だしたら絶対美姫のヤツ嫉妬するのでは?

 私なんて、コンクール受けさせてもらえなかったのに~とか言って、絶対嫉妬して八つ当たりしてくるヤツじゃん。


 てか、いまから、美姫の俺への嫉妬対策もどうにかしないといけないのかも。

 こんな話から、美姫から受けた嫉妬の闇を思い出すなんて・・・


 ん? そうだよ!


 幸ちゃんに、美姫の家庭教師になって貰って。

 アイツの希望通り、小樽商大に合格してもらえば、前世みたいに俺に嫉妬して八つ当たりしてくるとか無くなるのでは?


 俺はなんでこんな簡単な事に来たづかなかったんだろ?

 別にデートじゃ無くても良いんだよ!

 幸ちゃんにまた家庭教師してもらえば良いんだ!

 

「ねえ? お母さん!?」

「なに?」


「美姫の家庭教師に、幸ちゃんに来てもらえば良いかも!?」

「はぁ? なんで、いきなり美姫の家庭教師の話になるの?」


「ん? イヤ、この先美姫のヤツが、俺に色々嫉妬するのを防ぐには、アイツにもそれなりに幸せになって貰わないとだから」

「はぁ? どういうこと? 嫉妬?」

「とにかく、幸ちゃんに美姫の家庭教師やらせて。 美姫を小樽商大に現役合格させちゃえば、俺の人生が楽になるの!」

「なんで、美姫が大学に行ったら、あんたの人生が楽になるのよ?」


 母さん、分からなくたって良いのさ。


「それに幸ちゃんなら、美姫相手に家庭教師ってなったら、無料でやってくれるかもよ?」

「無料って・・・いくら幸ちゃんでも・・・」


「美姫も合格して嬉しい! 幸ちゃんは美姫と一緒に居られて嬉しい! 俺は、美姫から変なやっかみを受けずに済んで嬉しい! 母さん達は、学費が安くすんで嬉しい!」


「まあ、学費が安いのは助かるけど・・・」

「これはまさしくwin-win-winですよ!!」


 うふふふ、俺ってめっちゃ天才やん!

 そうとなれば、家出辞める条件をデートから幸ちゃんの家庭教師を受け入れるにすれば。

 そうしたら、美姫にも利益があるわけだし。


 くくく、美姫・・・もうイヤとは言わせないぜ。

 これで幸ちゃんも美姫と一緒にしばらく過ごせば、美姫への思いが幻想だったって気づくだろうし。

 俺は、前世に受けた美姫からの変なやっかみを受けずに済むワケだし。

 どうせ人生やり直すなら、皆に幸せになって貰わないとな~


 ふふふん♪ 俺って、なんて良い弟なんだろう~

 ゆかりちゃん家に帰って、さっそく幸ちゃんと交渉しないと!



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