第149話 幸ちゃんとだけはイヤよ・・・
「ゆかり」
「ん? なによ?」
くぅ~ なによじゃないわよ!
この泥棒女が!
「てか、美姫! あんた、アキラの部屋をめちゃくちゃにしたらしいじゃない?」
「めちゃくちゃ? はぁ? どういうことよ?」
「アキラがさっき部屋に帰ったら、めっちゃ荒らされてて掃除大変だって言ってたわよ!」
はぁ? さっき?
えっ!? アキラ、今家に帰ってるってこと!?
なによそれ!
アキラが帰って来るの分かってたら学校なんて休んだのに!
うぅぅ・・・しくった!
そうよ、私がいないと思って帰って来た所を捕まえれば良かったのに。
なんで、私が学校に・・・
「ん? ねえ!? なんで、アキラが家に帰ってること知ってるのよ!?」
「はぁ? さっき、アキラからメールが来てたからよ」
「アキラメール? なんで? 私アキラからメール貰った事なんてないのに! ちょっと、アキラのメアド教えなさいよ!」
「なんで教えないといけないのよ! アキラがあんたにメアド教えて無いってことは、そういう事でしょ!」
「そういう事って何よ!?」
「だから~ 私とはメールで四六時中繋がっていたいけど。 美姫とは別にってことなんじゃないの?」
「なによそれ!? アキラは私の弟よ! ずっと私と一緒に居たいって思ってるに決まってるでしょ!」
「ふん、アキラのこと虐待しておいて。 さらにアキラの部屋を荒らしまくって嫌がらせばっかりするやつが何言ってんのよ! そんなんだから、メアドも教えてくれないんじゃないの?」
くぅ~ うぬぬぬぬ・・・
なんで、ここ数週間でこんなにもコイツに優位に立たれてしまったの?
アキラのヤツも妙にコイツに懐いているし・・・
なによ、ちょっと噛んだくらいで怒ちゃってさ。
それに、エッチしようとしたことだって、何でそこまで攻めるよの。
アキラだって、私とエッチしたいって言ってたじゃ無い・・・
もう! アキラのバカ!
こんな外見ばっかり天使みたいな顔した腹黒女に騙されて!
しかも、日曜日も夜部屋で変んなことしてたっぽいし。
くっそ・・・コイツ。
アキラの前でメス出しやがって!
何が、アン、アン、っよ・・・
もう! なにしてたのよ!
アキラのバカ!!
「もう! 良いからアキラのこと返して!!」
「うるさいな~ だから、アキラが出した条件を全て飲むなら、すぐに返すって言ったでしょ? てか、私まだお弁当食べてる最中なんだけど。 じゃまよ美姫」
くぅ~ 優雅に弁当なんて食いやがって・・・
「なに? ゆかり? アキラってこの間の可愛い弟君?」
外野が会話に入って来るじゃないわよ、ヒナ!
今、それどころじゃ無いんだから!
「そうよ。 私の許嫁なの~♪」
「許嫁!?」
はぁ!? 許嫁だ~!?
なによ、それ!?
「もうアキラの両親がね、アキラのお嫁さんになっても良いって言ってくれたんだ~」
イヤ・・・言ってたけども・・・
別にあんたじゃなくて、アッコちゃんでも良いって言ってたじゃん。
「え~ なにそれ~ あの子まだ子供だったよね?」
「うるさいな~ いまは小学生だけで、もう数年したらあっという間に素敵な大人になるんだから」
「えっ? ゆかりと、あの子っていくつ違うの?」
6歳よ!
「ん? 5歳?」
「オイ!」
「なによ美姫?」
「6歳だろ! サバ読むな!」
「サバなんで読んでないわよ! 私は誕生日が3月末だから、5歳しか違ない時期があるんだから」
「あ~ ハイハイ、でもゆかりさ~ 5歳でも、6歳でも、大人になるの待ってるのはちょっときつくない?」
「きつくないもん。 今から大事に育てて、私好みの男の子にしちゃうんだから。 それに、アキラは普通の小学生じゃないの。 もう今でも十分良い男なのよ」
「なに? ゆかり、まさかあんた・・・マジであの子に本当に恋してるの? てか、アイツと別れたばっかりじゃなかったっけ? てか、そもそも、許嫁がいたんだったら、なんで付き合ってたの?」
ハハハ! ヒナ! ナイス!
そうだ! 木下とやましい事した、汚れた女の癖して!
「だって・・・2年前にアキラともう今まで通りの関係は無理みたいに言われて。 なんか避けられてるっておもっちゃったんだもん。 アキラを失って、寂しかったっていうか・・・」
ふん! アキラが思春期に入って、お前のスキンシップとかを恥ずかしがってイヤイヤって言われて勝手に傷ついてただけだろバカが!
しかも、アキラと私が居ない所でなんかコソコソして。
アイツにカマかけて脅すような事言ったら、アキラが悩み初めてアンタを遠ざけただけでしょ。
そもそも、アキラを悩ませるような、エッチなこと隠れてしてたあんたが悪いのよ。
ふん、アキラにフラれたからって、木下と付き合うとか終わってんだろ。
木下だぞ・・・無いわ~ あんな変態性欲バカ。
あ~ もうマジ中学時代の事また思い出しちゃったわよ。
あのクソ変態・・・
「でも、ちょっと前に、アキラとばったり公園で再会して。 すっごい優しくしてくれて・・・いまでも好きだよって言ってくれたんだもん。 それで、私・・・一気に胸がキュンってしちゃってさ」
「ふ~ん、それで気持ちが再燃しちゃってるんだ?」
「2年前とは別人っていうか・・・なんか、スッゴイ大人びた男の子になってたの。 普通にかっこよかったんだモン」
「でも、小学生でしょ?」
「あの子は普通の小学生じゃないの! もう、中身は大人なのよ。 普通に私と同じ目線でおしゃべり出来るし、私のこと思ってくれてるもん」
「中身が大人ね~ ん? ねえ? ゆかり・・・まさか、もうエッチしちゃったとかないよね?」
「はぁ? そんな・・・エッチはまだしてないわよ」
「・・・まだって? もう何かしたのかよ? てか、エッチしちゃう可能性あるってこと?」
「ねえ! なんで私が尋問ウケなきゃいけないの!?」
そりゃ、小学生誑かしてエッチ~事してんだから尋問されるだろ!
「そんなこと言ったら、血のつながった弟に寝ぼけて本当にエッチしようとしたコイツはどうなるのよ!?」
!? ゆかり!
それはバラしたらダメなヤツ!
「美姫・・・アンタまで何やってんのよ? 二人揃って、アキラ君になにしてんの? お前ら盛りがついた猿かよ!?」
「はぁ!? 美姫と一緒にしないでくれる!? こいつなんて、しかもアキラが私と仲良くしてたの気に食わないって言って、アキラの肩口に噛みついて、歯型痣まで作ってマーキングよとか言ったらしいのよ!?」
「美姫・・・お前なにやっての? てか・・・お前ら二人、彼氏と別れたばっかりで、心の隙間を近場の弟で埋めようとすんなよ。 たしかに、久しぶりにみたけど、めっちゃ可愛らしいなって思ったよ。 でも、相手は小学生だぞ、自重しろよお前ら。 アキラくんがトラウマ作って、女の子恐怖症になったらどうするんだお前ら!?」
ううう・・・完全にゆかりを尋問する展開だったのに~
だって、ゆかりの言う通りで、ここ数カ月のアキラが素敵すぎるって言うか。
急に昔みたいに甘えて来て、可愛らしくなって・・・
私が誘ったら、あんなに懐いて来てさ。
お姉ちゃん、大好きとか言って。
しかも、あんなに情熱的に愛されたら、私だって簡単に落ちちゃうわよ。
だって、はじめてだったんだもん・・・
あんな情熱的なキスされたのだって初めてだったし。
アキラのあんなイヤらしいキス・・・
もう、ダメよ、どうしたって変な気持ちになってきちゃうもの。
私に、アソコまでのことしておきながらさ。
アッコちゃんだの、ゆかりだの、急にあの子の周りが女の子だらけになるし・・・
ゆかりが来てから、なんか妙に私に冷たいし。
嫉妬だってするわよ!
ふん、噛まれたのだってアキラが悪いんだから。
あの裏切り者・・・
「美姫の預けてたら、アキラに何されるかわからないから。 だから私が今保護してるのよ」
「保護って? 良いの? 美姫と一緒でも危ないけど。 アンタと一緒でも同じじゃないの? あの子の事、性の対象としてみちゃってるじゃん二人とも・・・」
「違うわよ! 私から別に襲ったりしてないもん!」
「アキラくんから、求められたら?」
「うっ・・・それは・・・」
「しちゃうんだよ・・・てか、お前ら小学生相手は犯罪だぞ! マジモンの犯罪だぞ!」
「分かってるわよ! だから、エッチはまだダメよってちゃんと言って聞かせてるもん」
「でも・・・求められたら断れないんでしょ?」
「えっと・・・それは、どうかな~ その時になって見ないと~」
何がアキラの保護で家出だ。
お前が単純にアキラを独占したいだけだろ!
「もう、どうでもよいから、ゆかり! お前と一緒に居てもアキラが危ないなら、アキラを早く返せ!」
「ダメよ! アキラが帰りたくないって言ってるんだから!」
「そうなんだ? 美姫? あんた弟に嫌われたの?」
「うぐぐぐ・・・それは・・・違うわよ! コイツが、姑息な手段でアキラを誘惑したからよ!」
「姑息ってなんのことよ?」
「京都奈良のお土産とか、アキラの好きそうなモノばっかり買って帰って。 まんまとアキラの心を掴んじゃってさ! 汚いのよ!」
「てか、美姫も弟の好きそうなモノ買って帰れば良かったじゃん?」
「それは・・・買ったつもりだったもん・・・」
「アキラ君へのお土産って・・・美姫? あの意味不明な新選組の提灯に、東大寺のダサい鹿のキーホルダーマジでお土産で買って帰ったの?」
「なによ! 男の子は、新選組が好きって言ったのヒナでしょ! それに、キーホルダーだってヒナも可愛いって言ってたじゃん!」
「イヤ、まあ・・・あれは、お前が可愛いって言うから合わせたというか・・・それでも、提灯って・・・」
「でしょ? こいつのお土産センスの無さは絶望的だからさ。 アキラも苦笑いだったもの」
「うるさい!! うるさい!! もう! とにかく、アキラを返せ!」
「もう、しつこいな! アキラの出した条件を全部飲めば、すぐ帰るってアキラだって言ってるんだから、あんたが分かりましたすいませんって言えば済むことでしょ?」
「ううう・・・なんで、私が・・・」
「なによ?」
「なんで私が、また幸ちゃんに会わないとダメなのよ!? 家庭教師ってなによ、要らないよそんなの!」
もう絶対イヤ!!
「そこなの?」
「それ以外なら全然飲むわよ!」
「え~ でも、アキラがな~ 幸兄に憐み感じちゃってるからな~ その条件は取り下げないと思うよ~ イイじゃん、タダで家庭教師してくれるって幸兄も言ってたよ」
「なになに? 幸ちゃんって? あの?」
「ん? そうよ私のお兄ちゃん。 美姫が高校受験の時に、勉強教えてもらったり、さんざん利用するだけして利用価値が無くなったらポイ捨てされた可愛そうな人」
「美姫・・・あんたさ~?」
「なによ? 別に・・・幸ちゃんが教えてくれるって言って来たから。 幸ちゃん頭良いし、じゃあって教えて貰ってただけだし。 別に私から頼んで無いもん、なのにさ~ 恩着せがましくしてデートしろなんて言ってくるから・・・」
「幸兄が美姫のこと好きなの知ってて利用してたからねコイツ」
「美姫~ あんたさ~ それは一回くらいデートしないとダメなんじゃない?」
「ハァ~!? なんで、ヒナまでそんなこと言うの!? もう! ヒナは幸ちゃんがどんなけキモ男か知らないからそんなこと言うんだよ!!」
「えっ? ゆかりのお兄ちゃんなのに? そう言えば、私見たことないかも」
「えっと・・・私とは全然似て無いかな・・・」
「そうなんだ・・・」
そうよ、あんなゆかりのパパと同じ顔の人とデートなんて出来るワケないじゃない!
しかも・・・あのジーンズすっごい臭いし・・・
デートなんて無理だよ~
もう・・・アキラ・・・なんで、そんなに怒ってるのよ?
幸ちゃんと私を同じ空間に閉じ込めるなんて拷問よ・・・
そんな辛いことを、大好きなお姉ちゃんにさせても平気だって言うの?
エッチのこと僕怒ってるってちゃんと言ってたけど。
そんなに、イヤだったの?
なんでよ・・・私とエッチする夢みたって言ってたじゃない。
お姉ちゃん、好きって言ってたクセしてさ。
ううう、あの日は本当に寝ぼけてたんだよ~
夢だから良いよね~ なんて軽い気持ちだったんだって~
アキラ・・・許してよ~
幸ちゃんとだけはイヤよ・・・
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