第146話 えっ!? 痴漢!?
「ん? パパ、おはよ~♪」
「ああ、おはよう。 また、アキラのこと誘拐してきたって?」
「なによ! 誘拐って失礼ね!」
「もう・・・ここ2年、誘拐してこないから少しはまともになったと思てたのに・・・」
「なによママまで、まともになったって何?」
「アキラだって、本当は迷惑に思ってるかもしれないだろ? また嫌われても知らないぞ?」
「アキラは私と一緒にいて嬉しいって言ってるもん。 てか、パパ、アキラの事怖がらせないでよ?」
「怖がらせてないだろ。 いっつも、アイツが勝手に怖がってビクビクしてるだけだろう?」
「もう、パパの顔は無駄に怖いんだから」
―――ガチャ・・・
「おはようございます・・・すいません、昨日からお世話になっております」
またこの子は、大人みたいな畏まった挨拶を・・・
ここは将来のお嫁さんの実家なんだから、もっとリラックスして良いのに。
なに緊張してるのよ。
「ん? 久しぶりだな? アキラ?」
「ハイ! ご無沙汰しております。 おじさんもお元気そうで・・・」
「ハハハっ、お前いつから、そんな大人みたいな挨拶覚えたんだよ?」
「もう、パパ! アキラのことイジメないで!」
「だって、2年前に来た時なんて、お前の背中に隠れてビクビクしてただけだったろ? イヤ~ 大人になったな~?」
「その節は、どうもすいませんでした」
「オイ! アキラ! ゆかりのこと嫁に欲しいなら、ちゃんと国立大出て、それなりの所に就職しないと、ゆかりはやらんからな!?」
「もう! パパ! バカなの!」
「大丈夫ですよ。 小樽商大には行けると思いますから」
えっ? はっ? なに言ってるのこの子?
なにその自信?
小樽商大!?
てか、アキラ、小樽商大に行きたいの?
なにそれ? 美姫の影響?
あれ、でも・・・ピアノは?
音大に行くとか、美姫が言ってなかったっけ?
「オオ~ 言ったな~ よし、良いぞアキラ! 頑張れよ!」
「ハイ! ありがとうございます!」
てか、なんなの、このやり取り。
なんで、パパがそんなアキラに偉そうにするのよ?
ていうか、朝からなに?
アキラに向かって、ゆかりはやらんとか。
おじさんとおばさんに、もうお嫁にしてもらえる約束してきたのに!
何で、身内が邪魔するのよ!
もう、本当パパのバカ!
でも、アキラのこの感じ・・・
ひょっとして、この子頭良いのかしら?
勉強出来ちゃう子?
「てか、アキラって頭良いの?」
「ん? う~ん、美姫よりは出来ると思うけど」
「あっ・・・そう・・・」
美姫よりはって事は、高校の入試ランクAかB取れる自信があるってこと?
その自信は、いったいどこから出て来るのよ?
偏差値60越えってことよ?
そんな、頭良いとか聞いた事なかったけどな~
なんなの、ネガティブで自分に自信無いみたいな事言ってるクセに。
勉強に関して、この自信満々な感じはなんなの?
「ねえ、小樽商大って結構難しいと思うけど。 アキラ大丈夫なの?」
「ん? 大丈夫だよ、実績あるから」
「はぁ? 実績?」
何言ってるの?
実績ってなによ?
また意味不明なことを・・・
言ってからアッ!? みたいな顔してるし。
てか、この間からずっとファンタジーなこと言って無いこの子?
高校時代に私にフラれたとか。
私が結婚しちゃったとか。
この子って、実は妄想激しいタイプなのかしら?
夢と現実がぐっちゃになってる?
でも、普段は普通だしな~
「ほら! ゆかり! 早くしないと!」
「えっ? あっ!? マズイ!」
「アキラ! 絶対に、美姫に捕まらない様に17時前にウチに帰ってくるのよ!」
「うん。 ゆかりちゃんいってらっしゃい」
うう・・・学校行きたくない。
「アキラ、行ってくるね?」
「うん、行ってらっしゃい」
名残惜しい・・・
「ほら! ゆかり! 早く行きなさい!」
「・・・アキラ・・・行ってくるね?」
「うん、ゆかりちゃん。 気を付けてね」
はぁ~ アキラは、優しいな。
「アキラ? 行ってらっしゃいのキスは?」
「えっ!? えっと・・・」
「ゆかり!!」
もう! ママうるさい!
「アキラ~ キス~」
「じゃあ・・・行ってらっしゃい。 チュッ」
よし、じゃあ行くか・・・
あ~ 学校行くのがこんなにも辛い日は初めてかも。
強烈に後ろ髪を引かれながらも、やっとの思いで、玄関の扉を開けて外に出るのだが・・・
何!? 今日!?
バカみたいに寒いんだけど!!
そう言えば、さっき最高気温10度超えないとか言ってたっけ。
もう・・・本格的に冬じゃん。
せっかくアキラがウチに居るのに、学校行かないといけないなんて。
高校も学級閉鎖にならないかな~
はぁ~ もう辛い・・・
今日、バスで行っちゃおう。
そうだ、そうしよう。
琴似の駅で美姫とばったり会うのも面倒くさいし。
そう思い、山の手通りまで出ると、バス停までトボトボ歩いて行く。
ちょうど、バスが来るのがタイミングバッチリで、バス停に着くと同時にバスに乗り込んだ。
同じような思考の人が多いのか、心なしかバスも少し込んでいる。
でも、琴似まで、この寒い中を20分近く歩くよりはマシよね。
それにしても、何なのよパパ。
朝から、アキラにあんな意地悪な事・・・
ふふっ、でも小樽商大行くから大丈夫ですって。
あんなドヤ顔で、さらっと言い返すんだもん。
なによアキラ、私のこと嫁にやらんって言われてちょっとムキになっちゃったの?
だとしたら、可愛いな~アイツ。
はぁ~ 2日間もずっと一緒にいたせいで、アキラが居ないと寂しいよ。
もう、いつの間にか私のこと腕枕で抱きしめてちゃって。
寝ぼけながら、私の頭なでなでしながら、ずっとゆかり好きだよっとか。
私の顔にスリスリしながら、ゆかりちゃん、ゆかりちゃんって。
でもアキラってキス魔なのかな?
寝ぼけてもあんないっぱいキスしてきて。
もう、本当に可愛いんだから。
本人は私の体を触っちゃったって思ってるみたいだけど・・・
しばらく、あのまま泳がせておこうっと♪
ふふっ、おっぱいの谷間に顔をうずめてスリスリはしてたけど。
まぁ、あれくらいなら、全然可愛いけど。
私の顔にキスをいっぱいしだして。
耳周り責められて・・・
私の足の間にカラダネジネジしてきてさ。
あんな寝言で甘い言葉で攻めにされて、あんなれてたら。
本当にアキラとエッチしてるような感覚になってきて・・・
どんどん変な気持ちになって来て、気づいたら頭真っ白っていうか。
私も意味わからないで戸惑ってたら、アイツもなんか起きてパニックになってるし。
お姉ちゃんの余裕見せなきゃって思って冷製装ってたけど。
内心は、ドキドキでキュンキュンだったのよ、あのバカ・・・
パジャマ着て無かったら本当にエッチしてたかもしれないじゃない。
もう、私がちゃんと気をつけないとだよな・・・
でも、あの子、私の事好きすぎだろ?
ゆかりちゃん、ゆかりちゃんって・・・
はぁ~ もう、思い出しただけで、顔がニヤケちゃう。
あんなに、こっちが恥ずかしくなるぐらい寝言で褒めるか普通?
昨夜もスヤスヤ寝てたと思ったら、ゆかりちゃん、ゆかりちゃんって言い出して、スリスリ初めてさ。
私が大事だとか、憧れのお姉さんだったとか。
綺麗だの可愛いだの、次から次へと・・・
はぁ~ もう恥ずかしくて寝てられないわよ。
お勉強の成果を試してあげたら、スヤスヤ寝てくれたけど・・・
お陰でこっちは寝不足だよ・・・
でも、なんだろうこの気持ち?
とっても幸せなんだけど。
アキラにあんなに求められてるんだな私~
ふふふっ、今日は帰ったら制服でアキラのこと抱っこしてあげよっと。
また、脚にスリスリしてくるのかな~
あれ、何気にこしょばしくて、変な気持ちになっちゃうのよね。
もう・・・アキラのせいで、私まで何か急にエッチになっちゃった感じだよ―――
!? えっ!?
なに!?
えっ!? 痴漢!? 嘘!?
なに、後ろの人!?
なんで、こんなピッタリくっついくるの?
なに・・・本当に痴漢?
えっ! 何!? ちょっ、怖い!
てか、なに!?
この耳元で、ジーっと見て来る感じ?
めちゃくちゃ怖いんだけど・・・
「―――朝から何一人でニヤニヤしてんだ?」
・・・えっ? 女?
「えっ!?」
「アキラとの一晩がそんなに楽しかったのか?」
「えっ!? 美姫!? バス・・・乗ってたの? どこから?」
「はぁ? 私はふもと橋から乗るに決まってるでしょ?」
てか、なんでコイツがバスに乗ってるのよ?
「なんで、バスなのよ!?」
「それはこっちのセリフよ? この泥棒猫が!」
泥棒猫って・・・
「何よ!? 元をたどれば、あんたの自業自得でしょ? アキラだって許さないって言ってたじゃん! あんな噛みついたり、無理やりエッチしようとするなんて最低よ! どんな姉よ!」
「うるさい! 私のアキラを奪っておいて・・・」
はぁ~ もう。なんで選りにも選ってこいつと同じバスなのよ。
こんな事なら、地下鉄で行けばよかったよ・・・
ある意味、痴漢以上に鬱陶しいんだけど。
「ねえ!? アキラいつ返してくれるのよ!?」
「あんたが、全面的に条件飲んだらすぐに返してあげるわよ」
「・・・うぐぐぐ。 なんで、私ばっかりあんな条件飲まないとダメなのよ!?」
「当たり前でしょ? アキラにあんな酷い事したんだから! 自業自得よ!」
「幸ちゃんのことは関係ないじゃない!」
「あれは、アキラが言い出したことだし。 何か考えがあるんでしょ?」
「なによそれ!? あの子、私があんな男と二人っきりでも平気だって言うの?」
何言ってるんだコイツ、全部自業自得のクセに。
はぁ~ 覚悟はしてたけど。
コイツのこのしつこい絡み、今日一日ずっとこんな感じってことだよな。
考えただけで憂鬱だ。
はぁ~ まだ学校についてもないのに、もう帰りたい・・・
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