第139話 家出? あら・・・久しぶりね?
「ねえ・・・?」
「なに?」
「・・・・・・この風呂敷って必要?」
「風呂敷背負うシバ犬みたいに可愛いし~♪ 可哀そう感が出るじゃない♪」
てか・・・思い出したよ・・・
よく、この恰好で家出させられてた気がする。
可哀そう感が出るって・・・前にも言われた気がするな~
こうした方が、ゆかりちゃんママの同情を引くからと、毎回これ・・・背負わされてたっけ。
はぁ~ ゆかりちゃんの家に行くのなんか~
めっちゃ久しぶり過ぎて、マジで緊張する。
俺、絶対に人見知りしちゃうよ~
それに、ゆかりちゃんパパってちょっと強面で少し苦手なんだよな~
こんな大きくなって、ゆかりちゃんと一緒に寝るなんて言ったらどんな顔されるんだ?
ワンチャン、めっちゃ怒られるかもしれないよな。
ううう・・・苦手だな~ あの人・・・
てか、美姫に噛まれたって話が相当引っかかってたみたいだな~
ゆかりちゃんが、こんなに怒るとは・・・
それに、美姫のサンドイッチの食べ方がどうしても気にくわなかったみたいだし。
まあ・・・俺も一瞬久しぶりでオイって思ったけど。
あれが美姫だもんな~
一口くれと言って、一番おいしそうな部分を食べるなんていっつもだし。
親父と美姫とラーメン食べに行って、一口くれと言われて、チャーシューを真っ先に食べてからラーメンを啜るなんてざらだし。 チビチャーハン食べてる時も、一番大きくって美味しそうなエビを真っ先に食べるし。
『残してるから嫌いなのかと思った~』とか言って、悪びれた素振りなんて見せたこと無いしね。
俺が好きな物を一番最後に残すクセがあるって知ってるはずなんだけどさ。
たぶん、あいつは意地悪とかじゃ無くって、あれが素なんだよな・・・
まあ、せっかく俺のために作ったサンドイッチを、美姫に目の前で食べられて。
俺がちょっと、アッって顔したから、導線に火がついちゃったのかな?
「アキラが、ウチに来るなんて2年ぶりよね~♪」
「そう・・・だっけ?」
そっか、あれ小学3年の記憶か?
俺がコツコツ貯めてた100円貯金が、がっつり無くなった時に、ちょうどゆかりちゃんが家に居て。
俺の代わりにすっごい怒ってたっけ。
それに、俺が遠足で食べずに残して机に隠してたお菓子が、その時全部無くなってるのに気づいて。
美姫に文句いったら、『私だって証拠あるの?』なんて言ってどつかれて~
それ見てたゆかりちゃんの怒りが爆発しちゃったんだよな~
ゆかりちゃんと家出なんて、あの時以来か。
ううう、歩いて10分。
あっという間だ・・・
はぁ~ 来てしまった
ゆかりちゃんの家。
「ほら、入って♪」
「うん・・・」
昔は良く来てたな~ 懐かしい・・・
一回大人になって、タイムリープで戻って。
えっと・・・何年ぶりだ、ここ来るの?
人見知り発動するには、十分すぎるほどの年月だよ。
「ただいま~♪」
「ん~? どうしたの? 今日も美姫ちゃん家に泊ってくるんじゃなかったの?」
えっ? 今日もうちの泊まる予定だったの?
「う~ん・・・そうなんだけど・・・」
「なによ? モジモジして・・・ ん!? ちょっと!? ゆかり!? あんた・・・ついに・・・?」
「はぁ? なによ、ついにって~?」
「アキラちゃんの事、誘拐してきたの!?」
はっ・・・? 誘拐?
「もう! ママ! 誘拐なんてしてきてないから!」
「だって、ここ最近ずっと、幸太郎とアキラちゃんを交換したいってずっと言ってたから」
「もう! 違うもん! 家出よ! 家出!! ほら! 美姫のお母さんから、お土産だって貰ってきたんだから!」
ああ・・・ちょうど家にあったルタオのチーズケーキか。
もう一個ある~って喜んでたな~ 美姫のヤツ・・・
無くなってるの気づいたら、めっちゃ怒るんだろうな~
帰ったら帰ったで・・・また地獄やな・・・
「家出? あら・・・久しぶりね?」
って・・・おばさんまで。
なんで、家出ってキーワードで、そんなにすぐすんなりと受け入れられるんだよ。
「も~う、アキラちゃんも可哀そうに・・・また美姫ちゃんにイジメられたの?」
「えっと・・・何か、急に押しかけてしまい大変申し訳ありません。 また、数日お世話になってもよろしいでしょうか?」
「あら~!? なに~ しばらく見ないうちに大人になっちゃって~ どうしたのよ~ そんな難しい挨拶しちゃって~♪ 昔みたいに、おばさんお菓子~って言うかと思ったのに~♪」
小学3年生の俺・・・
そんな無邪気だったのか?
もっと、常識ある人間だと思てたけど。
えっ? 俺も・・・中々やな・・・
「幸太郎! アキラちゃんが来たわよ~!」
えっ? 幸ちゃんいるんだ?
学校って休みなのかな?
おばさんに呼ばれて、2階から階段を降りて来ると音がすると・・・
「ん? おお! アキラ~ 久しぶりだな~? 美姫ちゃん元気?」
「えっ? 美姫? まあ・・・いま現在はまだ元気だと思うけど・・・夕方以降はどうかわからない」
「ハハハ、アキラがココに来たって事はそうだね。 美姫ちゃん可哀そうに・・・」
「なによ! 美姫が悪いのよ!」
「美姫ちゃんが悪くても、美姫ちゃんからアキラを奪って落ち込ませるのはどうなのかな?」
「うるさいな! 兄貴はいっつも美姫の味方しすぎなのよ! なんなら、アキラの代わりに、兄貴が美姫の家に行きなさいよ~ 今日からしばらく一対一のトレードよ!」
「イヤ・・・そんな事出来るわけないだろ。 言ったところで、美姫ちゃんが俺と会話なんてしてくれないだろ?」
そうなのかな? 告白してフラれたとは聞いた事あるけど。
でも、それまでは、勉強教えてもらったり、それなりに仲良かったような?
「知らないわよ! 兄貴が美姫に高校合格したら俺と付き合ってくれとかキモイ事言うから嫌われたんでしょ?」
「・・・・・・・・・アキラ・・・まあ・・・ゆっくりしてけ・・・じゃあまた」
なるほど・・・そういう事だったのか。
なんか、美姫が中学3年生くらいまでは、家に来てゆかりちゃんと一緒に勉強教えて貰ってたような気がするもんな?
美姫にそんなこと言ったのか~
でも、告白したくらいでそんなに嫌われるかな?
美姫だって、別に幸ちゃんの事嫌ってはいなかったと思うんだけどな~
「別に、告白くらいキモくはないんじゃ?」
「はぁ? アイツ・・・勉強教える代わりに美姫にデート一緒に行こうなんて何回も誘って。あげく最後に高校合格したら、お祝いに俺の彼女になってくれなんて言うから・・・」
お祝いに俺の彼女に?
う~ん・・・まあなんか変な言い回しだけど・・・
高校生になったら、俺と付き合ってくれってことでしょ?
別に、そこまキモクは・・・
テンパって、言い回し間違っただけなんじゃ?
「アキラちゃん?」
「はい」
「荷物、ゆかりの部屋に置いて来なさい。 後で、布団運ぶの手伝ってね?」
「えっ・・・あっ、ハイ・・・」
えっ? ゆかりちゃんの部屋で寝てイイの?
「ふふふっ、じゃあ行こう? 私の部屋?」
「うっ・・・うん・・・」
そう言われて、ゆかりちゃんの後をついて2階のゆかりちゃんの部屋に向かうのだが・・・
やばい、めっちゃドキドキしてきた。
前回来たのは小学3年生だけど。
俺的には、一回32歳になって、こっち戻って約2か月・・・
前の人生の小学3年生ぶりで、約24年ぶりのゆかりちゃんの部屋。
「はい、どうぞ~ ちょっと散らかってて恥ずかしいんだけど・・・」
「おじゃまします・・・」
はぁ~ ゆかりちゃんの香りがする~
ス~ハ~ マイナスイオンや~ 体と心が浄化されるようだ・・・
なんて心が落ち着く香りなんだろう?
部屋も・・・どこが散らかってるんだ?
はぅ~ 久しぶりの、ゆかりちゃんの部屋。
やっぱり、美姫の部屋とは大違いだ~
女の子部屋ってやっぱりこうじゃないとな~
「ちょっと? 何泣いてるの?」
「えっ? 僕・・・泣いてる?」
えっ? なんで? あまりの懐かしさに涙が?
まあ・・・あれだけ憧れてた女の子部屋にまた来れるなんて。
しかも、高校生になったゆかりちゃんの部屋になんて。
でも、記憶にあるゆかりちゃんの部屋とまったく同じだ。
ん? でも、机が新しくなってる・・・
ちょっとおしゃれな机に変わってる。
でも、ここはまぎれもなくゆかりちゃんのお部屋だ・・・
俺・・・今日からここでしばらく生活するの?
昨日とイイ・・・ゆかりちゃんが最近グイグイくるワケで・・・
こんな、お部屋丸ごとゆかりちゃんを意識しちゃう所で、もし昨晩みたいにゆかりちゃんに色々されちゃったら?
俺・・・マジで、理性を正常に保っている自信ないかも・・・
はぁ、どうするの俺? てか、どうなっちゃうの俺?
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