第133話 俺!! お姉ちゃんと寝ない!!
「へ~ やっぱり、ゆかりちゃんのお土産はセンスが良いわね~」
「なによ! 私と大して変わらないでしょ!」
イヤ、明らかに、ゆかりちゃんの方が、俺ら家族の好みを熟知して買ってきているのが明白だぞ。
美姫の、自分が食べたいモノ中心のお土産という名の、自分へのご褒美グッズとはレベチだ。
「ほら~ アキラはサイダー好きでしょ? ハイ、あ~ん♪」
「あ~ん・・・」
サイダー味の金平糖旨~♪
「ふふふっ、アキラはやっぱり、サイダー味が大好きよね? それに、メロンに蜜柑も~」
「ちょっと! アキラ!? あんたこの間、イチゴ美味しいって食べてたじゃん!」
「え~ あの中ならって言っただけだよ・・・」
バニラの金平糖に比べたら、サイダー味最高~♪
「もう! 美姫さ~ アキラは昔っから、コーラにサイダーの飴が好きなの! シャーベット食べる時も、メロン味に蜜柑味ばっかり食べるんだから! そんなことも知らないの!? それでも、アキラのお姉さんなのかしらね~?」
「なによ! てか、なんでアキラ八つ橋食べてくれないのよ!?」
え~ だって・・・シナモンの香り凄いじゃん。
食べられ無いよ・・・シナモンダメぽよ。
お鼻が麻痺しちゃうんだから。
「もう! アキラがシナモン嫌いなの知らないの!?」
「なんで、私が買う時にそれ教えてくれないのよ!? ゆかり! あんた、ワザと言わなかったでしょ!?」
「アキラの本当のお姉ちゃんなら、そんなこと知ってて当然よ~ ね~ アキラ~♪」
もう無理よ・・・美姫、お前はゆかりちゃんには勝てないって。
ゆかりちゃんの、周りの人を気遣う性格と、自己中のお前じゃ勝負にならんって。
「アキラはい、あ~ん!」
「ん? 美味しい♪ 何? 大福?」
「ふふふっ、アキラはこういう素朴なお饅頭が好きだもんね♪」
「ちょっと! そんなただ餡子が入った大福じゃない! なんで、私の八つ橋は食べないのよ!!」
「だから~ アキラは、シナモンとか春菊とか、三つ葉とか香りの強いものは食べられ無いのよ!! アキラに嫌いなモノ食べさせないでよ! 可哀そうに・・・」
ゆかりちゃん? そこまで僕のこと?
僕の嫌いなモノ全部知っててくれるなんて。
はぁ~ ゆかりちゃん・・・そんなに僕のこと?
「もう、私が来ない間、アキラがどんなけ虐待受けてたのか想像付くわよ! ごめんね、アキラ・・・私が悪いの。 アキラにお風呂一緒に入るの恥ずかしいって言われてショック受けて、それでもうココに来たらダメなのかなって思ったのよ。 ごめんねアキラ・・・」
「あら? ゆかりちゃん、そんなこと気にしてずっと来なかったの?」
「そうだよ! アキラが前みたいに私に抱っこされるの嫌がったり、恥ずかしがったりするから! なんか、ずっと避けられてると思ってショックだったんだもん・・・ もう、嫌われちゃったのかなって思って」
「バカね~ 逆よ、逆! この子、ゆかりちゃんが来なくなってから、ずっと元気なかったんだから。 美姫がゆかりちゃんに、来るなって言ったんだろうってずっと喧嘩してたわよね~?」
「ふん! 言い掛かりも良い所よ。 まったく、勝手に来なくなった癖して、これでようやくアキラを独占出来るって思ってたのに、またノコノコ現れやがって!」
え~ 俺、ゆかりちゃんのこと避けたりしたっけ?
ん? イヤ・・・してたかも。
そうだ・・・何となく女の子を意識するようになってきて~
ゆかりちゃんのことも、妙に気にしちゃって、なんか恥ずかしくなったんだよな。
それで、裸みられるのも恥ずかしくなって、一緒にお風呂入りたくないとか言ったかも。
本当はずっと一緒にいたかったのに。
はぁ~ 思春期の俺・・・なんてバカなことを・・・
なに、無駄にゆかりちゃんの事、傷つけてんだよ。
あれ? じゃあ、前世でもひょっとしたら、ゆかりちゃんって、ずっと俺の事?
だから、高校生の時にばったり会った時、あんな嬉しそうにしてくれたの?
「そうなの?」
「え? なにが?」
「あっ・・・イヤ・・・なんでも無い」
「嫌われたと思ったってところ?」
「えっ・・・イヤ・・・」
「ふふふっ、でも今は大丈夫。 アキラが私の事大事に思ってくれてるのがすっごい伝わったから。 だから、もう私アキラのこと一人になんかしないからね。 もう、大丈夫よ」
「ちょっと! いい加減、アキラのこと放しなさいよ! アキラ! こっちに来なさい!」
「ヤダ・・・美姫のとこには行かない!」
美姫の所なんて行かないよ。
朝のこと忘れたと思うなよ。
「ふふふっ、ドヤ! 美姫! もう、アキラがギュ~ッてして離れてくれな~い。 アキラは私と一緒に居たいって♪」
「もう・・・この子は、急に子供になったわね?」
「おばさん、そういうこと子供に言っちゃダメなんだよ」
「どうして?」
「抱きしめて欲しいって仕草をしたら、いくつになっても抱きしめてあげないと。 ちゃんと愛してるよって伝えてあげないと、心が傷ついちゃうだって」
「母親の私には一切甘えてこないのに・・・そんな抱き着いてるのなんて、ゆかりちゃんと美樹だけよね? あと、アッコちゃんか?」
「ねえ? おばさん? そんなに、そのアッコちゃんていう、アキラの彼女って可愛いの?」
「あれ~ なによ~ ヤキモチ? アンタも、美姫と一緒になって、アッコちゃんに変な小姑みたいなことするのヤメなさいよ! あんな良い子はめったにいないんだから~♪」
「もう! おばさん!? その子とわたし、どっちがアキラのお嫁さんに来て欲しいのよ!?」
なんか・・・この会話・・・決まずいぞ。
「う~ん、そうね・・・アキラのこと大事にしてくれるなら、どっちでも良いかな~ 二人共、可愛いし、同じくらい優しいしね~ でも、意外とアキラの事甘やかさないって所では、アッコちゃんの方が良いお嫁さんになるかもね~ この子、甘やかすとす~ぐ調子のってアレなんだから。 ねえ? ゆかりちゃん?」
アッコちゃんも、甘やかしてくれるけどな?
そんな、なんかダメとか言われてたっけ?
「そんな・・・イイんだもん。 私は、アキラの事甘やかすんだもん。 この子に、甘えられなくなったら私寂しくって、変な男に騙されちゃうもん・・・」
えっと・・・それって・・・木下の兄貴のこと言ってるの?
てか、俺この会話、どこまで本音として聞いたら良いんだろ。
ゆかりちゃんのいま話してることって、全部本音なの?
「ゆかり! 今日はあんた私の部屋で寝なさいよ!」
「なんでよ!?」
「はぁ~ この間はあんたが独占したでしょ!?」
「もう、なに言ってるの? 美姫なんて、昨夜、アキラと一緒に寝たでしょ? 平日はこれからだって、毎日一緒なんだから、今日くらい私に譲ってくても良いでしょ?」
「俺・・・今日は美姫姉ちゃんと寝ないよ」
「はぁ?」
「ホラ~ アキラは美姫と寝たく無いって」
「えっ!? ちょっと、アキラ!? なんでよ!?」
「はぁ? 姉ちゃん、今日の朝のこと忘れたとは言わさないからね。 今もめちゃくちゃ痛いんだからな!」
「朝? あっ・・・イヤ、だって、あれは違うじゃない」
違うってなんだよ?
あんな酷い事して、噛みつくなんてあんまりだよ。
寝る前はあんなに優しかったのに。
美姫のバカ・・・キライ・・・
「ヤダ、今日は美姫姉ちゃんとは寝ない! ゆかりちゃんと一緒に寝るの!」
「うふふふ~ 美姫~ フラれたみたいね~ お前、アキラに何したんだよ~?」
「アキラ~・・・」
ふん、そんな甘えた声だしたってダメだよ。
絶対、許してあげないんだから。
「美姫姉ちゃんとはしばらく一緒に寝たくない!
「もう! なんで、そんなこと言うのよ! アキラ!?」
ふん! まだ僕だって、お姉ちゃんとそんな・・・エッチなんて。
心の準備っていうか、覚悟も決まってないのに、無理やりエッチしようとするし・・・
噛みつくし!
もう、今日は絶対にゆかりちゃんと寝るんだもん。
ゆかりちゃんは噛んだりしないもん。
「お前・・・アキラに相当酷い事したな?」
「あ~ そういえば・・・朝あんた達喧嘩してたでしょ? もう・・・美姫・・・アキラに何したの? こんなに嫌われるの久しぶりね?」
「ううう・・・だって・・・」
なにが、だってだよ。
「美姫! お前は自分の部屋にお帰り!」
「うぐぐぐ・・・ゆかり~ これで勝ったと思うなよ」
ゆかりちゃんに八つ当たりしないで、ちゃんと僕に謝ってよ・・・
ごめんねって、抱きしめてくれて、ヨシヨシって優しくしてくれたら、許さなくもないのに。
帰ってくるなり、ゆかりちゃん、ゆかりちゃんって・・・
僕のことなんて、ほったらかしで喧嘩ばっかり。
ふん! 美姫のバカ・・・
「ん? てか、ゆかり? あんたお風呂に入らないの?」
「えっ? お風呂なら入ったわよ」
「だって、お前、その服・・・」
「あ~これ? アキラが、着て欲しいっていうから~ お風呂入った後にまた着ちゃったんだ~」
「はぁ? あんた、いつお風呂入ったのよ?」
「それは、美姫たちが帰ってくる前よ」
「あんた、何時に家に来たのよ?」
「えっ? 17時くらいだったかな? おばさんに電話貰ってすぐ来たから」
あれ? ゆかりちゃん、来た時間微妙に嘘ついた?
なんでだろう・・・
「ゆかり・・・あんたまさか、アキラと一緒にお風呂なんて入って無いわよね?」
うっ・・・美姫・・・鋭い。
「そんな、一緒に入るわけないじゃない!」
「あら? 入らなかったの?」
はぁ? ・・・母さん?
「えっ? おばさん?」
「アキラのことお風呂に入れてって言ったつもりだったから。 てっきり一緒に入ったのか思ったのに」
えっ・・・まさか、本当に俺と一緒に入れって意味で、お風呂に入れろって言ってたとは・・・
「えっ? アキラと一緒にお風呂入って良いの?」
「えっ? だって、この間、美姫と三人で入ってたじゃない?」
「ふ~ん・・・じゃあ、今度からアキラと一緒に入るね」
「うん、またお願いすることがあったら、お願いね?」
「ちょっと! ゆかりとアキラが二人でお風呂はさすがにマズいでしょ!?」
「なんでよ? あんただって毎日一緒に入ってるじゃない?」
えっ?これってなに?
これは、ゆかりちゃんと僕はもう親公認ってこと?
ゆかりちゃんと二人でお風呂入りたい放題ってことなん?
最高かよ!
「ふふっ、じゃあ、アキラ? もうそろそろ部屋に行こうか?」
「うん♪」
そう言って、ゆかりちゃんと手を繋いで、リビングを出て部屋に行こうとすると・・・
「ちょっと! アキラ!」
「ん? 美姫。 お前は、自分の部屋にお帰り! アキラに嫌われてるんだから~ じゃね~♪」
「ぐっ・・・ゆかり・・・これで勝ったと思うなよ!」
また・・・最後までゆかりちゃん、ゆかりちゃんって。
ふん!っだ・・・帰って来てから、いちども僕のこと心配するような仕草もしなかったクセにさ。
なんだよ・・・ごめんね、私が悪かったから許してって。
ギュって抱きしめてくれて、チュッチュしてくれたら、僕だって、少しは許せる気持ちになったかもしれないのに・・・
ずっと、僕のことなんて無視して、ゆかりちゃんと喧嘩してばっかり。
もう、美姫の事なんて知らない・・・
優しくしてくれないお姉ちゃんなんて、キライだもん・・・
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