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第132話 ゆかりちゃんスゲ~よ。ここまでウチに入り込んでくるとは。


「え~ ゆかりちゃん!? なんで、今日石狩鍋にしようってわかったの!? もう、本当にうちの娘になれば良いのに~ ねえ? アキラ?」


札樽道の高速道路事故が、意外と早く復旧したらしく、母親達が思ったよりも早く家に帰って来た。

ごめんね~ 今すぐご飯作るから~ っと母親が走りながら家の中に入って来た時には、もうすでにゆかりちゃんがお鍋を完成させていて。

さらに、サラダやら、親父のお酒のおつまみなんかも作り終わっていて、両親が帰って来ると同時に、お腹が空いたらと皆でお鍋を食べ始めたんだけど。


約1名、まだ帰って来てないことに皆気づいてるんだろうか?

座る位置も、僕とゆかりちゃんが隣あって、両親が対面で隣あって座ってるんだけど・・・


これ、美姫が帰って来たらアレなんじゃ~

っと、僕だけが心配して、ゆかりちゃんも両親も、美姫がいない事を何も気にしない風で普通にご飯を食べている・・・


「え~ もう、アキラのお嫁にさんになれだなんて~ イヤダ~ おばさん♪」

「イヤ、ゆかりちゃんがお嫁さんに来てくれるなら、俺も毎日、こんな美味しい酒のつまみ食べれるなら嬉しいな~」


「ヤダ~ もう、おじさんったら~ え~ じゃあ、こんどパパの所に行って、アキラの許嫁にしてもらえるようにお願いしに言ってよ~」

「オ~ イイぞ! ヒロちゃんの所なら、なんぼでもお願いしに行くよ~」

「え~ いつ~? 来週来ちゃう? ふふふっ」


なんか、さらっと恐ろしい会話初めてるんだけど・・・


「それにしても、ゆかりちゃん、よくシャケさばけたわね~? いくらも作ってくれようとしてたの?」

「うん、だって、前におばさんに教わったでしょ? いくらの味付けもおばさんのレシピ通りよ。 ふふっ」


それにしても、あんな新巻鮭を出刃包丁でゴリゴリさばけるとか。

マジ、ゆかりちゃん有能じゃん。


さすがに、魚をさばいてる最中は、危ないから足にスリスリするのをヤメロと言われ。

少し離れて見てたけど、いくらの取り出しと良い、あれは相当やってないと出来ない動きだったけど・・・


「えぇ~ お父さん、来週結納でも持って、お邪魔する?」

「そうだな~ 行っちゃうか~?」

「ヤダ~ 二人とも~ 本当に~? じゃあ、パパとママに言っておくね?」


イヤ、イヤ・・・軽ッ! 俺の同意は!?

それに、許嫁の約束に行くのに、結納ってなんだよ!?


「ゆかりちゃんなら、いつだってお嫁さんとして歓迎よ~ アキラのことも大事にしてくるし~」

「だって・・・アキラのこと愛してるもん・・・」


ゆかりちゃん? えっ!? 愛してるって・・・

イヤ、なんかやっぱり、先週俺が寝ぼけて夜這いしてから、ゆかりちゃんの様子がおかしいよ。

あんなに、ゆっくり距離を~なんて言ってたのに、なんか、急激に距離を縮めて来てるっていうか。

今だって、両親使って、外堀から埋めに来てないかコレ?


『―――ただいま~ あぁ~ 疲れた~』


ゲッ、帰って来た・・・

マズイ、この席順みられたら。


ダイニングから声が聞こえたのだろう。

いつもなら、すぐ二階に上がって、カバンやらコートを置いてから来るのに。

今日は玄関からダイレクトにリビングに美姫が「疲れた~」っとアピールしながら入って来きて・・・


「―――ハァ~!? ひっど~い! もうご飯食べてる! てか、ゆかり!? なんでそんな所に座ってるのよ!?」


「ん~ ヤッホー美姫~ お帰り~ 手洗って来たら~」

「そうよ、早く手洗って来なさい、早くしないとお鍋無くなっちゃうわよ」


グギッっという美姫の歯を食いしばる音が聞こえたんじゃ無いかと思わせるくらい、悔しい表情を浮かべた美樹が、そのままドスドスドスとリビングに歩いていき、ソファーに鞄とコートをドスドスっとぶん投げると、そのまま僕らの傍をドスドスドスっと洗面所まで歩いて消えて行き。

洗面所から出てくると、ドスドスドスっと明らかに怒ってる時の足音を立てながらダイニングまで戻って来てきて―――


「私の席は!?」

「美姫はそこ」


明らかに、ワザと美姫を挑発するように、ゆかりちゃんが、すまし顔で箸でお誕生日席を指して、そこに座れてと美姫に言うのだが。

そんなこと言われて、大人しく座る美姫ではないわけで・・・


「なんで、私がココなのよ!? ちょっと、二人、そっちの詰めなさいよ! アキラの隣に座るから~」

「ちょ! 美姫! 押さないでよ! 危ないでしょ?」


う~ん・・・やっぱり実力行使で来たよ~

まぁ、三人横並びでも座れないことはないけどさ・・・


「ゆかりちゃん、美姫が座りたいって言ってるから、ちょっとだけ詰めようか?」

「もう! アキラは美姫に甘すぎなのよ~!」


「ふ~んだ、アキラはいっつも私の味方なんです~! お前と過ごした年数が違うのよ、ふんっだ」

「はぁ~ 年数なんてほぼ一緒でしょ!?」


「イ~ヤ! 2年の差は大きいです~ ね~ アキラ~ あれ~ 美味しそうなモノ食べてるわね~ お姉ちゃんにもあ~んして~?」


はぁ~ 始まったよ・・・薄々こうなるんだろうな~とは思ってたけど・・・


美姫がニコニコであ~んとしている口に、適当に豆腐をぶちこむと、嬉しそうに、ハフハフしながら、食べてるし・・・


「はぁ~ アキラに食べさせてもらえると、なんでこんなに美味しいのかしら~」

「ふん! そのお鍋作ったの私なんだけど?」

「はっ!? なに? アキラとラブラブなんだから邪魔しないでよ、ゆかり」


う~ん、親父・・・母さん・・・なんとかして!

対面に座る二人向かってジーっとアイコンタクトを送っていると、面倒くさそうに親父が口を開いた―――


「イヤ~ でも、ゆかりちゃん、本当に母さんと同じ味だな~」

「うん・・・だって、アキラにいつだって、おばさんの味を食べさせてあげたいから。 それに結婚した後も、おばさんの味が食べられたら、アキラも嬉しいでしょ?」


ゆかりちゃん・・・美姫の前でそのネタ繰り出しちゃう?

てか、徹底的に外堀埋めに来てるけど・・・

なんか、佐久間家で、今日がゆかりちゃんの冬の陣とか語り継がれるきっかけの日になるんじゃ・・・


「あら? よかったわね~ アキラ。 でも、ゆかりちゃんなら、本当に安心よね~」

「イヤ~ 本当にそうだよな~ ゆかりちゃんとなら二世帯同居でも全然良いよな~ 母さん?」


イヤ、俺が嫌だよそんなの!


「アキラ~ 魚の骨に気を付けるのよ~ お姉ちゃんが取ってあげようか?」

「えっ・・・うん・・・ありがとう」

「本当に、ゆかりちゃんとアキラは昔から仲が良いよな~」


皆して、美姫の存在をかき消すような会話・・・

怖い・・・めちゃくちゃ怖いんだけど。

俺怖くて、左を向けない・・・


「イヤ~ それにしても、最近、ゆかりちゃんが来なかったから、何かしっくりこなかったけど。 なんか、これで家族が揃ったみたいに感じるな~」


親父、ゆかりちゃんに、ビール注いて貰ってるからって、ペース早すぎじゃね!?

なに、もうそんなに酔っぱらってんだよ!?

お前、美姫のこと諦めただろ!? なあ!? オイ! 親父!!

だって・・・もう、ずっと美姫の方見てないもん。


「もう、お父さん! ゆかりちゃんに、注いで貰ったからって、今日は飲みすぎよ?」


だめだ、ウチの男は皆、ゆかりちゃんに行動を掌握されている。

完全に、ゆかりちゃんの手の平で転がされてるというか、扱いを熟知されすぎとる・・・

知らん間に親父まで、陥落させられてたのかよ。


「ねぇ~ おじさ~ん、アキラの部屋のベッドね、美姫が邪魔するから、三人で寝るには狭いの?」


えっ? ゆかりちゃん?


「そっか~ 三人で寝るには狭すぎるよな~ そうだな~ じゃあ、いまお父さん達が使ってるベッドをお下がりにやるか~?」


イヤ、そこなんで三人で寝る前提なんだよ!?

親父! お前も大概だぞ・・・

自分に言うのもあれだけど、人様の嫁入り前の娘を、俺みたいな性欲溢る男と一緒のベッドで寝かせるなんて!


「そうね~ もうそろそろ、クイーンサイズのベッドも良いかもしれないわね~ じゃあ、お父さん明日お休みとったんでしょ? ベッド買いに行きましょうよ~」


嘘・・・だろ・・・? 母さんまで・・・

ゆかりちゃん、恐ろしすぎる。


ん? イヤ、ちょっと!?

待て、待て、待て!


俺の部屋に、今二人が使ってるダブルベッドが来るってこと!?

ただでさえ、5畳で狭いのに!?


「ちょっと! なんで、三人で寝るの前提なのよ! コイツがウチに泊まりに来なければ良いだけじゃん!」


オッ!? 遂に、美姫の砲台が火を吹いた!


「美姫・・・そんな寂しい事言うなよ~ ゆかりちゃんが、高校入ってから、しばらく遊びに来てくれなくって、お父さんすっごい寂しかったんだぞ・・・」


「も~う、おじさんったら~ そんな、寂しかったなら、言ってよ~ もう、子供じゃないからお邪魔かなって思って遠慮してたんだから~」


「もう、バカね。 ゆかりちゃんは、うちの娘みたいなモノでしょ? 急に来なくなったら、寂しいじゃ無いの~」

 

「えへへ、ごめんなさい。 じゃあ、また前みたいにしょっちゅうお泊りに来ても良い?」

「そんなの、良いに決まってるでしょ? 毎日だって良いわよ~」


「本当に? そんなこと言われたら、毎日来ちゃうよ?」

「そうだよ、ゆかりちゃんに注いで貰うビールは美味いからな~」


はははっ・・・ゆかりちゃん、スゲ~よ。

ここまで、ウチに入り込んでくるとは。


でもさ・・・もうそろそろ、ヤバいって!


あ~あ・・・美姫の顔がもう。

ヤバイって~! これ・・・爆発寸前だもの。


どうしよう・・・なんか、ないか!?


なんか―――ん? あっ!?


「お姉ちゃん!?」

「なによ!?」


機嫌悪ッ! そんな、目を三角にして怒らなくても・・・


「これ、お母さん達が買って来た小樽のお土産だって~ ハイ、あ~ん」

「ん? お土産? あ~ん・・・」


普通に食べたし・・・怒ってても、こういう所は素直なんだよ。


「ん!? なにこれ!? 美味しい!」

「なるとの、半身揚げだって~」


「え~ めっちゃジューシーですっごい美味しいじゃん!」

「姉ちゃん、こういうの好きでしょ?」


はぁ~ やっぱり、美姫はチョロい、チョロすぎる。

でも、これだからヤッテいけるっていうのもあるんだが。


それに比べて、ゆかりちゃんには隙が無い。

優しいし、可愛いし、すっごい好きだけど。


なんだろう、今日感じたとてつもない恐怖感。

隙が無いうえに、なんかこう計画的というか・・・

練りに練った策略のようなものを感じてしまうというか、用意周到さみたいな何かを感じてしまうんだけど・・・


「ん? どうしたの? ゆかりちゃん?」

「私も・・・あ~ん、して?」


イヤ・・・それやるとな~ まっ、イイか。


「ハイ、あ~ん」

「う~ん・・・美味しい~ アキラに食べさせてもらったら、いつも以上に美味しく感じちゃう」

「ちょっと! ゆかり! アキラのア~ンは、お姉さんの私だけの特権よ!」


ホラ・・・美姫がまた怒るから・・・


「なによ! 私だってちゃんとアキラのお姉さんでしょ!? 昔っから、オムツも全部変えてあげてたんだから~ 一緒にいた期間なんて、美姫と一緒じゃない!」

「はぁ~ 私の方が、絶対一緒にいた時間は多いです~ そうだ! ゆかり~? 最近、あんたアキラと何回お風呂入った!?」


ウワ~ うぜ~ そのドヤ顔・・・


「うるさいわね・・・そんなの、アキラのこと騙して、無理やりお風呂に入るよう強制してたあんたの策略でしょ!? 可哀そうにアキラ」


ゆかりちゃんがお返しとばかりに、美姫に挑発するように、俺のことをゆかりちゃんの胸元に抱き寄せて、よしよしポーズするのだが・・・


「騙してなんかいないもん! ふん!」


あ~ 明らかに動揺してる・・・アッコちゃんのネタで俺を揺すった後ろめたい気持ちが透けるな~


まぁ、最近は俺はもうどうでもよくなっているというか。

むしろ、積極的に一緒に入ってるというか・・・なんていうか、まあ・・・うん、ごめん美姫、ガンバレ。


「なによ嘘ばっかり! 彼女の好み教えてヤル代わりに、お風呂一緒に入れって強制したって言ってたじゃん? アイツまんまと騙されて一緒に入ってくるんだから~ 超チョロいよね~ってバカにしてたじゃん!」


はぁ・・・こいつ、学校でそんなこと言ってたのかよ。

てか、美姫のヤツ、俺とのこと、どこまで学校の友達しゃべってんだよ?

てか、この間、千歳にいたあの人達・・・皆、俺と美樹が何してるのかって知ってて、俺のこと可愛い~とかキャッキャッ、キャッキャッって騒いでたのか?


「もう! うるさいわよゆかり! 学校での会話をバラスんじゃないわよ! それに、別にアキラだって嫌がってなんかないもん! この子は、本当にわたしが大好きなの!」


あ~ もう、美姫・・・マジ弱すぎる。

口喧嘩でゆかりちゃんに勝ってる所、見たこと無いからな・・・


「ていうか、なんで、あなた達が三人揃うといつも、最後は喧嘩になるのよ? いい加減、アキラの取り合い止めなさいよ。 仲良くシェアしたら良いじゃない」


はぁ? 母さん? シェアってなんだ、シェアって・・・

俺は、半分個なんて無理だぞ!


「だって、美姫がアキラのことイジメるから!」

「イジメてません~ べろべろバ~!」


美姫・・・見苦しいから止めて・・・


ん? なんだ、親父? 俺に変な合図送ってくんなよ!

なんだ、そのバレバレの合図は?


えっ? なに? 冷蔵庫に行け? なんで俺が?

はぁ? お前が出して、美姫に? えっ? 食わせろ?


なんだよそれ・・・いっつも、いっつも、わけのわからないアイコンタクトで命令してきてさ。


「ん? アキラ? どこ行くの?」


急に席を立っていなくなる僕を、ゆかりちゃんが心配した顔で見てくるけど、とりあえず無視無視。

えっと・・・冷蔵庫・・・冷蔵庫・・・

親父が冷蔵庫に何かあるって指示する時は必ず・・・あった!!


なるほど・・・小樽だもんな。

今日は、ルタオのケーキか!


「ねえ! 美姫姉? ゆかりちゃん? ケーキあるよ!?」

「えっ? どこの?」


まあ、いっつも真っ先に美姫が食い付いて・・・


「ルタオだって~ 二人共、これ好きでしょ? ご飯食べ終わったら一緒に食べようね?」


『うん♪ 食べる~♪』


やっぱり、このひと達って、幼馴染で親友というか・・・まるで姉妹みたいなんだけど・・・

リアクションがいつも揃って一緒・・・


ていうか、これを見越して、毎回ケーキを買ってくる親父も中々だよな。


そして、毎回俺に、あれれ~ ケーキがある~ っとリアクションさせて、仲直りさせるのも定番といか・・・

まあ、とりあえず、食卓の平穏はしばらくこれで取り戻せそうだ。


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