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第131話 私があのブラコンのバケモンからアキラを守ってあげるから


「アキラ~ おばさん達、帰って来るの8時過ぎるって。 小樽からの高速で事故があって、渋滞に巻き込まれてるみたい」

「えっ? そうなんだ、そりゃ帰ってこれないね。 復旧次第だと10時過ぎちゃうかもだね。 どうしよう、ごはん、先に何か食べちゃう?」


「なに、やけにドライな反応ね? 心配じゃないの?」

「えっ? まあ、でも大丈夫なんでしょ?」

「まぁ、そうだけどさ・・・」


ゆかりちゃんの携帯に母さんから電話が来てたみたいで、どうやら事故渋滞に巻きまれたらしい。

まあ、未来から来たからそんな事故にあうイベントは無かったから大丈夫だと思うけど。

それに、大学に車で通ってたから、慣れっていうか、またかって感じちゃうんだよな。


それよりも、俺はゆかりちゃんの方がずっと心配というか。

さっきの、あれは何だったんだろう。

昨日、千歳に迎えに行った時は、普通だったのに・・・

美姫と違って、ゆかりちゃんが、あんな感じになるの初めて見たんだけど。


ってなると、遥ちゃんのこと隠したから?

俺が、浮気したって思われてるってこと?


この間のお泊りの時、寝言でゆかりちゃんと会話してらしくて・・・

お前は俺のモノだ宣言しちゃったらしいし。

美姫の時と一緒で、エッチした夢見てて、色々寝ぼけてやらかした見たいで・・・


あの後、ゆかりちゃんに、全部何を言われて、何をされたって、事細かに説明されて。

愛してるって連呼して、お嫁さんになってって懇願してたらしいし。

それで、俺のモノになれ発言に、アイツと別れろだの、何か色んなこと言ってたらしくて。


寝ぼけてあんなことするなんてダメよって、わたし本気にしちゃうわよって、ゆかりちゃんは笑いながら、冗談ぽく言ってたけど・・・


でも、最初は、エッチなことされて、お嫁に行けないって顔真っ赤にしてて。

話しが終わった後も、アキラのお嫁さんになってあげるからねって、ハニカミながら言ってたし・・・

あれ、結構本気だったんじゃ・・・


あれが本気なら、今日のは浮気って・・・ゆかりちゃん的に、確実にアウトじゃね?

アウトだよな・・・だったら、あの反応も何て言うか納得というか。


でもな・・・じゃあ、ゆかりちゃんのカラダを洗わされたアレはなんだったの?

俺、ゆかりちゃんに、アイツにされたこと疑ってるなんて一言も言って無いし。

ゆかりちゃんが処女で、綺麗なカラダだって言ったこと、疑ったりするようなこと何も言って無いのに。

この間、美姫と三人でお風呂入った時は、僕に触れられて気持ちが楽になったって言ってたのに。

なんで、いきなり・・・あんなゆかりちゃんの、とりみだすような姿初めて―――


イヤ、とりみだしてたのかも・・・前の人生で、ゆかりちゃんと付き合って時・・・

ゆかりちゃんは、何があったのか教えてくれなかったから、深く考えた事なかったけど。

アキラとキスしたら気持ちがスッとしたとか、アキラの声聞いてたら落ち着いたとか言って、すぐ機嫌がなおっていつも通りのゆかりちゃんだったから、特段気にした事がなかったというか・・・


逆に、ゆかりちゃんに甘えて貰った事が嬉しくて、あの時は、ゆかりちゃんに必要とされてるとか、ゆかりちゃんが俺といると元気になったとか、全部俺目線だけで満足しちゃってただけだから・・・


子供のころから、ゆかりちゃんはいつも冷静だったし、何を言われても動じない気が強いところがあって。

美姫のヒステリーに対して、いつも理路整然とクールに対応していたイメージで感情的になるところってあんまり見た事がなくって・・・


それに、普段、身にまとっている空気はいつも柔らかくて、いつも笑顔で周りを幸せにするような存在で、美姫と喧嘩している時以外で怒ってる所なんて見た事なくて。

僕にはただただ、優しくて甘々なお姉ちゃんって感じに見えてたから。


前の人生で、付き合い始めてからも、ずっと彼女をそんなイメージに固定したまま見てたし。

落ち込んだり、元気なさそうだなって感じても、僕と一緒にいると、すぐに元気出たと言ってくれる彼女の言葉を鵜呑みにしてたし・・・


俺が、子供の頃と変わらずガキっぽく甘えてたから、ゆかりちゃんもお姉ちゃんであろうとしてただけで、実は、めちゃくちゃ傷つきやすくて、メンタル弱々さんなんじゃ・・・


そこまで考えて、ふっと頭の中に、さっきお風呂場で言われえたことばが浮かんで来て。


―――私にだけは秘密事はしないで、お願い。 少しでも不信に思ったら、私ダメなの、とことん不安になってくから。 だから、私にだけは秘密事しないで


あぁぁぁ・・・うん、ハイ。

う~ん・・・そうか。


いつもは、優しくてほんわかした雰囲気で少し天然系を感じさせる時もあるけど、基本はしっかりものの綺麗なゆかりちゃんを頑張って演じてるだけで。


胸の内は、些細なことに動揺して、悩んでグルグル色んな事を考えて、どんどん沼にハマって行くタイプの典型的なメンヘラさんってことなんじゃ・・・


だとすると、俺がしたことって、一発アウト・・・だよな。

それを、お姉ちゃんだからって、余裕見せて、頑張ってイエローカードでって言ってたけど。

本心じゃ・・・アレ、レッドカードだったんじゃ・・・


ブルブルブルブルブル・・・ヤバい、想像しただけで、震えが。


「―――ふふふっ、強がっちゃって。 やっぱり、おばさん達のこと心配なのね? そんな、ブルブル震えちゃって。 もう大丈夫よ。 私が一緒にいてあげるから」


えっ? イヤ・・・それで震えたわけじゃないんだけど。

僕の部屋のベッドに座って、考え事に耽っていた僕のことを安心させようと、ギュッと抱きしめてくれるゆかりちゃんに、違うんだけどっと思いつつ。


こういう所なんだろうなっと思うわけで。

俺の前では、一生懸命お姉ちゃんであろうとしてくれてるというか。

頑張ってるって言うか・・・


そう思えて来たら、前の人生で俺って、本当にゆかりちゃんの為になれていたんだろうかって心配になってくるわけで・・・


ただただ、ゆかりちゃんっていう、最高に可愛い彼女が出来て舞い上がったまま、全然降りてこない、ただただ浮かれてただけの人だったんじゃ・・・


あまりに俺がはるか上空をウキウキルンルンでぷかぷかと浮いてたから、だからゆかりちゃんは、俺に別れ話なんてしないでもいっか、しばらく浮いてるだろうと思って放っておかれた説!?


「―――そんな、深刻な顔しないで。 だいじょうぶよ、電話はちゃんと繋がってるし。 おばさん達が事故にあったわけじゃないんだから。 大丈夫よ、怖くな、怖くない、お姉ちゃんが一緒だからね」


えっ? イヤ、深刻な顔って、驚愕な事実に気づいて、動揺してただけなんだけど。

でも、今とまったく一緒だったのかも・・・


俺、あの頃、ゆかりちゃんと同じ目線で話を出来ていなかったのかもしれない・・・


「―――元気だしてアキラ。 すぐおばさん達帰って来るから」

「えっ? うん・・・だいじょうぶ」


「ふふっ、後で渡そうと思ってたけど、これでも食べて元気だして。 ほら、あ~ん」

「えっ? あ~ん・・・」


ん? なんだこれ? ごつごつしてて甘い・・・サイダー味?


「ふふふっ、アキラに教えて貰った京都のお土産よ」

「あっ! 緑寿庵清水の金平糖・・・」


「美味しい?」

「うん!」


京都のお土産か・・・そう言えば美姫は何買って来たんだっけ?

なんか、昨日は荷物整理しないとだからって、ずっと部屋に籠ってなんかしてて、結局貰って無いんだよ。

イヤ、まぁ・・・どうせ、提灯とキーホルダーだろ・・・

そこは、タイムリープごときで、結果は変わらんだろうし。


てか、そうだ! 修学旅行で思い出した―――


「ゆかりちゃん!?」

「なに?」


急に、膝の上からぴょんと、飛び降りた僕をキョトンと見つめるゆかりちゃんをベッドに残して。

僕は、クローゼットを開けて、奥の方に隠していた綺麗に畳んだ服を取り出すと、それを持ってゆかりちゃんの元へと戻り。


「あの、ゆかりちゃんこれ・・・服―――返すよ」

「えっ? あぁ、もう良いの?」


もれって言われても、すでに一週間以上、僕の手元にあるわけで。

こんな危険物、手元に置いておくだけで、どんな火種になるのか分かったもんじゃないし。

まあ、もう洗濯しちゃったら、これを見てムラムラって・・・

イヤ、ゆかりちゃんの下着ってだけで、綺麗に洗っていてもムラムラはするんだけど。


「イヤ、もう一週間以上経つし・・・」

「新しいのが欲しいの?」


「ちっ、違うよ! だから、これはゆかりちゃんに返しますってことで。 別に、ゆかりちゃんが本人がいてくれたら、こんな服とかなくても・・・」


「ふふふっ、照れちゃって可愛いな。 でも、これを返して貰ったら、また代わりが欲しいでしょ? 会えない日とかはどうするの? 寂しくない?」


「寂しいけど、でも・・・こんなのが家にあったら、それだけでソワソワするし。 それに、嫌じゃないの? 僕が、その・・・何かしてるんじゃないかって心配にならないの?」

「ふふふっ、何したの? 教えて欲しいな?」


教えられるか! そんなの!

って、ツッコミ入れたい・・・思いっきり、胸をバシって、手の平の裏でツッコミを入れたい。

言えない、言えるわけが無いだろ・・・


「匂いとか嗅いじゃった?」

「ハヒィ!? イヤ、えっ!?」


ゆかりちゃん!? なっ、なんて?


「男の子って、こういうの見たら、匂い嗅いだり、スリスリするもんなんじゃないの?」

「イヤ、えっ―――と。 それは・・・」

「ん~ どうなの~? しちゃったのかな~? その目は怪しいな~?」


ヤメテ、ヤメテ・・・

そんな、ニマニマしながら、僕のほっぺに人差し指を突きつけて、ウリウリしながら追及するのはヤメてください!


「えっ!? ひょっとして、パンツとかブラジャーとかも匂い嗅いじゃったの!? スリスリしちゃった?」

「えっ、うっ・・・だから、その・・・えっと・・・」

「しちゃったの!?」


イヤ、だから・・・したっす。

しまくったッす。 なんなら、ゆかりちゃんが想像してる向こう側までしてるっす。


「その・・・どうだった? 変な匂いは無かったと思うだけど・・・」

「イヤ、なんていうか・・・そのюэsНiК∀tt∀というか、∽нФρpαかったというか・・・」


「えっ? なんて? 声が小さく手聞こえないよ」

「だから・・・お姉ちゃんのは、その・・・・・・だったっていうか」

「えっ!? 嘘!? えっ!? アキラ・・・ひょっとして、舐めたの?」


えっ!? えっ? イヤ、アレ!? 違くて!


「だって、あの日は、午前中から買い物してて、そのまま来たから。 ヤダ! しょっぱかったとか、恥ずかしすぎるよ~!」

「イヤ! そんな、アレです! アレ! ほんのりです! ほんのり感じたというか・・・イヤ、アノ、違うんです。 だから、ごめんなさい!!」


「も~う・・・アキラのバカ~ エッチ。 行動が予想外過ぎるよ~」

「だって、こんなの置いていったゆかりちゃんが悪いよ~」


「そうなんだけどさ~ も~う、行動が斜め上すぎる!」

「ごめんなさい。 ごめんなさい!」

「も~う、恥ずかしすぎる~ お嫁に行けないよ~」

「ごめん、ごめんなさい・・・」


めっちゃ、ドン引きされた!

イヤ、でも・・・ドン引きされてもアレだけど・・・

でもさ~ でもさ~ お洋服を置いていったのは、ゆかりちゃんなワケで・・・


「でも・・・その、おいしかったって、ほんとに?」

「えっと・・・まあ、うん・・・」


えっ? なんで、そんな急にハニカミながらの可愛い上目使いするの?


「臭く無かった?」

「とっても良い匂いしかしなくて、その・・・ゆかりちゃんを抱きしめてるみたいで、その、めちゃくちゃ興奮したっていうか、その・・・」

「それで、それで!?」


えっ? なんか、急に興味深々?

さっきまで、顔を両手で隠して、顔を真っ赤にさせてたのに。

そんな、グイッと身を乗り出すよな感じ聞いてきちゃう?


「イヤ、そのストッキングの感触を確かめて・・・」

「うん、うん、それで!? どうしちゃったの!?」

「いっつも、僕が寝てる長い枕に、その、えっと・・・ゆかりちゃんの、服を着せて・・・ゆかりちゃんを想像して抱きしめて・・・」

「はぅぅぅ~!? ウソ!? 私を想像して、抱き締めちゃったの!?」


あれ? なんか、喜んでる?

表情からルンルンって感じが駄々洩れなんだけど・・・僕の勘違いですか?


「それで!? どうしちゃったの!?」

「えっと、その、あのクッションに、ストッキングはかせて、枕とドッキングさせて、パンティーを・・・その・・・」

「嘘でしょ嘘でしょ!? そんな・・・ヤダ・・・じゃあ、なに? アキラ・・・もう、バカ・・・エッチ~」


イヤ、聞きだしたのゆかりちゃんなんだけど。

そもそも、お洋服置いて行ったのゆかりちゃんなんだけどなぁ~!


「アキラってさ~ ストッキング履いた足好きよね?」

「えっ・・・なんで、そんな・・・」


「だって、この間制服でここに来た時も、ずっと私の足見てたでしょ? それに、抱っこしてる時も、気づいてないと思ってたんだろうけど、ずっと私の足をサワサワしてきて。 先週の金曜日も、わざとらしく抱っこされるときに、スカートずり上げて、私の足・・・触ってたから・・・」


「うっ・・・それは」

「な~に? バレてないと思ってたの?」


「えっと・・・だから、それは・・・はい。 ごめんなさい! だって、だって、だって・・・」

「ふふふっ、悪い子なんだから。 もう、アキラのエッチ」


もう、勘弁して。

だって、ストッキングの感触が気持ち良いんだもん。

昔、子供の頃、寝る時に持たされて好きだった、タオルのツルツルしたところと同じ感触なんだもん。


「そんなに好きなら・・・これもう一度履いてあげようか? それで、サワサワしちゃう?」


えっ!? そんなこと・・・

いい~んですか♪ いいんですか?


「えっ? 良いの?」

「あら~ 急に素直ね~? 開き直りか?」

「イエ・・・そんなわけでは・・・」


洗濯してるから、ちょうど良いとか言って。

僕から、お洋服を受け取ると、お風呂上りでパジャマを着ていたのに、急に、僕の目の前で着替えを始めてしまい・・・


見てて良いのか迷ったんだけど、そんなの・・・見ないでいられるはずも無く。


「もう、エッチ! なに、ジーっと見てるの? ダメ!」

「あっ、イヤ・・・ごめんなさい・・・」


不条理・・・圧倒的な不条理・・・

目の前でお着替えを始めたのは、ゆかりちゃんなのに~

そんなの、見るなって言われても、見たくなっちゃうじゃんか~!

見ないで、その場でお預けなんて言われても、そんなの無理だよ・・・


でも「エッチ! ダメ!」っと言われてから、ずっと俯いて待っていると。


「はい! お待たせ♪」


そう言われて、顔を上げてゆかりちゃんを見ると。

また、先週のあの可愛いフェアリーゆかりが完成していて。


はぁ~ かわゆい・・・かわゆすぎる・・・

ゆかりちゃん抱き枕なんかより、やっぱり本物のゆかりちゃんしか勝たんわけで・・・


「ほら、おいで!」


お着替えを終わって、ベッドの上に腰を降ろしたゆかりちゃんが、僕に向かって両腕を広げて、おいでおいでと手招きをするので、僕はそんなゆかりちゃんに誘われて、フラフラ~っと近寄って行き。

そのまま、ゆかりちゃんの太ももの上に、吸い寄せられるようにのっかると。

ゆかりちゃんは、僕のことを拒否することもなく、普通に抱きしめてくれたので。


ハァ~ あんなにドン引きされていたのに、まだ辛うじて嫌われていないんだと、安堵していると・・・


「ふふっ、もうお前はなんでそんなに可愛いだよ~ 手名付けたペットみたい」


ああ、ゆかりちゃんのペットか・・・

それも悪く無いかもです~


「ねえ、でも下着はちゃんと洗濯してくれたんだね? 今履いてるストッキングもだけど、どうして?」


意味が分からないといった顔で、そんな事を聞いてくるゆかりちゃんに・・・


「えっ? だって、大事な下着かもしれないし。 一応、見に付けてた下着だし、洗った方が良いかと思って」


はぁ? 理解不能といった表情で、その後、不思議そうな顔で僕を見て来るゆかりちゃんが・・・


「いつ洗ったの?」

「えっと。 服を見つけた日に、一晩抱きしめて色々しちゃった次の日には・・・」

「えっ? じゃあ、土曜日の1日しか私のこと思って、エッチなことしてくれなかったって事?」


えっ? 1日しかって・・・ゆかりちゃん、何を期待してたの?


「そんな、数日も下着放置して良いのかわからなかったし。 美姫と違って、ゆかりちゃん綺麗好きだし」

「もう、バカだな~ 1週間そのまま堪能してればよいのに」


イヤ、1週間って・・・だって、下着はなまモノだし。

って・・・ん? 1週間堪能してれば?

どういうこと? 僕に服に悪戯されるのは、許容していたってこと?


「もう、そんなの、私のこと思ってしてくれた期間少なすぎよ。 じゃあ、さっき脱いだ服を、この服の代わりに、明日おいて行ってあげるね。 また、来週金曜日にお泊りにくるから、その時返して?」


はぁ? また代わりの服って・・・だから、それは危険だってさっき説明したのに。


「えっ? 来週金曜日にまた来てくれるの?」

「うん、でね? 来週の土曜日~ 私と一緒にデートしましょ!?」


デート? ゆかりちゃんとデート!?

嘘!? ゆかりちゃんとデートって・・・いつ振りだよ。


「へへっ、23日は美姫の誕生日でしょ? だから、一緒にプレゼント買いに―――」


えっ? 嬉しい・・・あっ、ヤバイ・・・泣いちゃうそう。

あっ、ダメ・・・泣く、泣いちゃう。


「ちょっ!? アキラ、どうしたの!? えっ、えっ!? なんで? どうして、泣いちゃうの!?」

「・・・うぅぅぅ、ゆかりちゃん。 グスっ、うぅぅぅ、嬉しいよ~」


「えっ? 嬉しいって・・・なんで泣いちゃうの?」

「だって・・・ゆかりちゃんとデートなんて、あの日以来なんだもん・・・グスッ、ウェ、ウェウェ」


「あの日? えっと、えっと・・・あの日? アキラ・・・ごめん。 わたし、えっ? そんな思い出深いデートなんてしたっけ? あれ? ごめん、アキラ、忘れたとかじゃないんだけど。 その、えっと。 ごめんね、そんなにお姉ちゃんとのデートを大事にしてくれたのね?」


イヤ・・・ゆかりちゃん、覚えてるはずなんて無いから・・・

アレは未来に起こるはずの出来事だし。


こんな出会い方をしてしまった今となってはもう、起こらない未来かも知れないから・・・


ごめん、前の人生の記憶に引っ張られるのはヤメにしようと決めたはずなのに。

それでも、あのゆかりちゃんとまたデートが出来るなんて思うと、心の底から嬉しくて、もうこんなの感涙するしかなくって。


あぁぁ、ダメだ、ゆかりちゃんを前にするとどうしてこうも情緒がグチャグチャになっちゃうんだろう。

うぅぅ、ゆかりちゃん、抱きしめて、キスをしたい。

あの日の続きをしたい・・・


「あぁぁぁ、アキラ~ どうしよう。 えっと、金平糖食べる? それともおっぱい吸いたい? ごめんね、忘れてたわけじゃないのよ」


ふふふっ、ゆかりちゃん・・・


「おっぱいって言っても良いの? グスっ・・・スン、スン」

「うん、うんうん。 待ってて、今ね・・・上げるから」


そう言うと、いきなりブラージャーを外し始めて、ニットと脱ごうとするゆかりちゃんを見て、僕は慌てて・・・


「あわわわ! 冗談、冗談だよ、ゆかりちゃん。 グスっ、スン・・・言って見たかっただけ。 スン、スン・・・」

「えっ? えっ、あぁぁ、冗談? あぁぁ、でも・・・欲しいんじゃないの、おっぱい? 良いよ、昔から好きだったでしょ?」

「グスっ、うぅぅ・・・好きだったけど。 グスっ、でも、大丈夫。 スン、スン・・・ありがとう、ゆかりちゃん」

「えっ? 良いの? いらないの? 本当に? 遠慮しなくて良いのよ?」


やっぱりゆかりちゃんは優しいな、だから・・・好き。

そして、やっぱり、思った通りだ・・・ゆかりちゃんは、ちょっぴり天然だ。


「覚えて無くて当然だよ。 子供相手に遊びに行った日なんて、ゆかりちゃん達がいちいち覚えてるはずないもん。 スン,スン・・・」

「でも・・・アキラにとっては、そんな泣いちゃうくらい大事な思い出だったんでしょ?」


「うん・・・でも、良いの。 ゆかりちゃんと、また、新しい思いで沢山作れば良いだけだから。 ゆかりちゃん・・・大好き」


「アキラ・・・うん、そうだね、新しい思いで沢山作ろうね。 これから、いっぱい二人でデートして、思い出いっぱい作ろう。 ふふっ、私もアキラが大好きよ」


ゆかりちゃん・・・好き・・・

はぅ~ 二人きりで、こうして抱き合ってるだけで、もう僕にとったら素敵な思い出だから。


『―――グゥ~~~~キュルルルル・・・』


えっ? ん? ゆかりちゃん?

壮大なお腹の音が部屋に鳴り響き。

僕は抱き合って、今のいままで愛を確かめ合っていたパートナーの顔を見ようと、ぴったりくっついたカラダを起こそうとした。


ん? アレ?

ちょっ・・・ゆかりちゃん?


ゆかりちゃんのお胸に抱きついていたのを、腕をつかって離れようとするが、ゆかりちゃんからギュッと抱きしめられたまま離れることが出来ず。


何度、チャレンジしても、その度に、ゆかりちゃんが抵抗してきて・・・


「ゆかりちゃん?」

「ヤダ・・・見ないで!」


イヤ、見ないでって言われても、お胸にギュッと抱きしめられてて、全然お顔が見えないワケで・・・

ちょっ、あの・・・力を・・・


「ゆかりちゃん、ちょっ・・・苦しい・・・」

「ダメ・・・今は、私の顔、見ないで!」


そんなに、お腹が鳴った音を聞かれたのが恥ずかしかったのだろうか?

グー――だけじゃなくて、その後の、キュルルルルが相当恥ずかしかったんだろうか?


「ゆかりちゃん、お腹空いたの?」

「もう、ゆるして・・・お願い。 聞かないで!」


イヤ~ 聞かないでは、だって・・・あれだけ部屋に響いたら・・・


「もう、アキラのバカ! 好きな男の子に、あんな音、聞かれた女の子の気持ちをもうちょっと考えて!」

「えっ・・・あぁぁぁ、えっと。 ああ! おっ、お腹空いたな~ あれれ~ 僕、めちゃくちゃお腹が鳴っちゃった~!」


すると、それまで苦しいくらい、ギュッとお胸に押し付けられるように抱きしめられていた腕の力が少し弱まり。


それで、ようやく体を少し起こすと、そのままゆかりちゃんの表情を見ようと、彼女を見上げると・・・

まぁ、見事に顔は真っ赤で、胸元から首筋まで真っ赤にしてる姿を見て、そうとう恥ずかしかったのかっと思って黙って彼女を見ていると。


「あ~ね、アキラお腹すいたのね~ そうよね~ もうこんな時間だし・・・ごめんね、お姉ちゃん気づかなくて、アハハハ」


「あぁ~ うん、ごめんね・・・もっと早く言えばよかったよね。 アハハハ、さっき中途半端に金平糖食べたからかな~ お腹すいちゃった~ ゆかりちゃん、ごはん作りに下に行こうよ~」


「そっ、そうね~ 冷蔵庫の中も確認しないだものね~ あ~ 大変、未来のアキラのお嫁さんとして、おばさんが帰って来る前にご飯の準備しないとだから。 ごめんねアキラ、ちょっと降りてくれる?」


痛々しいゆかりちゃんが見てられなくて、僕は速攻彼女の膝の上から降りると。

目をグルグルさせて動揺しまくるゆかりちゃんに、さっき彼女が脱ぎすてたニットを着てもらうと。

彼女の手を引いて、そのまま部屋を出ると、一緒に階段を降り。

彼女をキッチンへと連れて行くと、ゆかりちゃんと一緒に冷蔵庫の中身を確認しようと扉を開いた。


冷蔵庫の中を一通り確認したゆかりちゃんは、手早く材料を出し始めて、キッチンに並べ始めた。

勝手知ったる自分の家のように、お米を用意して炊飯器にセットすると、土鍋を取り出してコンロにセットすると、手慣れた手つきで、お野菜やら材料を切りはじめた。


手持無沙汰になってしまった僕は、怒られるかなと思いながらも。

お野菜を切っているゆかりちゃんの足に抱き着いて、スリスリしていると。


「もう、包丁使ってる所でそんなことしてたら危ないわよ」


あぁ~ よかった、だいぶ自分を取り戻したらしい。

いつも通りのゆかりちゃんに戻ったのを確認して、安心してゆかりちゃんの足にスリスリしていると。


「も~う、本当に私の足が大好きなのね? 美姫にもそうやって甘えてるんでしょ? 聞いたわよ?」

「だって・・・こうしてると気持ち良いんだもん」

「はぁ~ そんなにあのタオルが恋しいの?」


「だって・・・もうボロボロでアレはもう無残な姿になってるから・・・」

「でも、あんたの部屋でアレ見つけたわよ? 捨てたと思ったのに、大事に取ってるなんて、そうとうあれが好きなのね?」


「だから、もう、僕にはここしかないだよ。 もう、コショコショして気持ち良い箇所はボロボロで無くなっちゃったんだもん」


「じゃあ、今度伝線したストッキングとか取っておいて全部上げるね」

「イヤ、それじゃあんまり意味がないんだよな~」

「どういうこと?」

「だから~ 人が履いてるに触るのが好きなんだもん」


「もう、昔から拘りが激しいな~ でも美姫に聞いたわよ、匂いを嗅ぐのも好きみたいって?」

「それは・・・その、なんていうか。 良い匂いを嗅ぎながらスリスリしているとその・・・」

「わかった、わかった。 じゃあ、美姫にしてるみたにして良いよ」


「ほんとう?」

「ふふふっ、皆が帰って来るまでね。 特に美姫にみつかったら、またギャーギャーうるさいんだから。 美姫が帰って来たら辞めるのよ、わかった?」


「え~ そんなの、生殺しだよ~ こんな魅力的な足があって、触って良いって許されてるのに・・・」

「だから、美姫が帰って来るまでって言ってるでしょ?」


「はぁ~ 来週まで、ゆかりちゃんのこの足ともお別れなんて・・・悲しすぎる・・・」

「もう、だから~ 今履いてるのを置いていってあげるって言ってるでしょ? でも・・・アキラ? 匂いなんて嗅いで、臭いとか思わないの?」


「美姫はたまに臭いよ」

「ぶぅはぁ!! アハハハ、なにそれ! 美姫・・・足臭いんだ!?」


美姫の足が臭いといった瞬間。

それまで、ゆかりちゃんが噴き出し笑うなんてなかったのに。

そうとう、ツボに入ったらしく、それからしばらくクスクス、笑いが止まらず。


「うん、ブーツ履いて帰って来た日とか。 雨の日? とかなんか臭い日が多いかな?」

「アハハハ、臭いって言われて、あの子なんて言うの? クスクス・・・」

「臭い日はだって、美姫から離れるようにしてるから・・・」

「アハハハ! ひどい! えっ? アキラ・・・あんたって、意外と残酷な所あるわよね?」


「え~ なにそれ? 別に臭いなんてお姉ちゃんには言って無いよ。 ただ、甘えたくても匂いがダメで、近寄れないだけだし・・・」


「ふふっ、アキラ、鼻が良いからね。 匂いのきついのモノは昔からダメだもんね? えっ、でも・・・私は大丈夫だったの? この間のストッキング、けっこう一日中履いてた奴よ?」


「ん? 全然気にならなかったけどな。 ゆかりちゃんの香りってこうなんだって思って、胸いっぱいで堪能してたです」

「なんだろう、臭くないって言われたのは嬉しいけど。 なのに、めちゃくちゃ恥ずかしいのはなんでなの?」

「気にしないでよ~ ゆかりちゃんは、良い香りしかしないから・・・」

「えっと・・・うん、なんか、アレrだけど、ありがとう」


ん? なんだろう、またなんか顔が赤くなってる・・・

それにしても、凄いな~ なんか、手つきがお母さんみたい。


「ゆかりちゃん、凄いね? 手つきがまるでお母さんと一緒だよ。 料理上手なんだね?」

「そりゃそうでしょ? どこかの汚物女と一緒にしないでよ。 私は、ずっとアキラのお嫁さんになるために、小さい頃からおばさんの元で花嫁修業してましたらね~ アキラの好物の作り方から、味付けまでバッチリ教わってるんだから~」


えっ? なに? 花嫁修業って、初めて聞いたんだけど。

あぁ、でも、母さんに色々教わってるのをよく見たっけな~

美姫は、何にも手伝いなんてして――――――


えっと、いま、美姫のこと・・・


「いま、ゆかりちゃん・・・美姫のこと汚物女って言った?」

「ん? アキラが言ったんじゃん」

「イヤ、俺が命名したのは、汚部屋姫ね! 汚物じゃないよ。 汚部屋ね! 汚部屋!」


「う~ん・・・まっ、どっちも大して変わらないから良いわよ。 大丈夫よアキラ、私があのブラコンのバケモンの誘惑から、ちゃんとアキラを守ってあげるから」

「美姫から守るってなにを?」


「えっ? あんた、美姫にすっかり懐柔されてるらしいじゃないのよ? 今あんたしてる、足にスリスリするのもそうだし。 なんか、いっぱい美姫とイチャイチャしてるんですって!? でも、もう美姫の好きにはさせないから・・・私が来たからには、もう大丈夫よ。 アキラのこと、ちゃ~んと、あのバケモンから救ってあげるから」


「えっ? えっと・・・ハイ、それは。 お願いします・・・」


なに? いま、ものすごい、怖い顔で僕見られたけど。

美姫とゆかりちゃんの間に何かあったの?


なに!? また喧嘩? 美姫のヤツ、またゆかりちゃんに何かしたのか?

もう、ヤメテよ・・・また中学校の時みたいな大喧嘩はもう勘弁なのに。


「アキラ~?」

「なに?」


「ちなみに言っとくけど。 私の目の前で、私にしているようなこと、美姫としたら、私・・・普通じゃ居られないと思うから、私に甘えるならそれなりに覚悟しておいてね?」

「えっ? あっ、えっと・・・はい」


なにそれ! 怖い! いまの絶対本気だった!

なに、なに、なに・・・なんか、ゆかりちゃんが変だよ。

前はもっと美姫に対する対抗心も温和だったし、美姫と僕が仲良くしてても、暖かく見守ってるような感じだったし。


美姫が居なくなってから、僕の部屋につれてかれて二人っきりなって、美姫にしてたのと同じことをゆかりちゃんとして、いつもゆかりちゃんだけ、ちょっとこう・・・美姫より余計にイチャイチャというか、甘えながら、二人でコソコソしてたらそれで喜んでくれたのに。


なんだろう・・・あの頃よりも、一段と美樹に対する対抗心が強くなってるような気がするのは気のせいなの?


この数年の間で、美姫とゆかりちゃんの間に何があったんだよ。

えっ? 俺マジで、二人とのお付き合いのしかた慎重にしないと、マジでゆかりちゃんに殺されちゃうんじゃないの!?


はれ!? ゆかりちゃんってこんなにも独占欲っていうか、自我を主張してくる人だったっけ。

怖い・・・ゆかりちゃんが怖い・・・


なんか、今日はゆかりちゃんの新しい一面を色々知り過ぎたというか・・・

俺が前の人生で、いかにゆかりちゃんの表面上の姿しか見て無かったのかを思い知らされたような思いなんだけど。


ブルブルブルブルブル・・・ヤバイ、考えだけで、何か震えが・・・


「どうしたのアキラ? 大丈夫よ、アキラのことは絶対傷つけたりしないから」


はぅ~ 怖いよ~ ゆかりちゃん・・・


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