第117話 名付けて、光源氏作戦よ
「ねえ、なんで、ウチの学校ってさ~ こんな毎日、キャリア学習とか体験学習とか満載なワケ? 他の高校の子達、1日自由行動とか普通みたいなんだけど~」
「それは、うちのはスタディーツアーって言うくらいだから、学習がメインなんじゃないの?」
「もう! 折角の修学旅行なのに!!」
もう毎日毎日、なんでコイツは飽きもせず、同じ愚痴を繰り返せるんだろう?
初日からそればっかり・・・
「だから、スタディーツアーだって言ってるでしょ? もういい加減に諦めなよ、美姫・・・」
「もう・・・こんなんだって知ってたら、月高に行ったのに・・・」
何を、いまさら意味不明なことを言ってるんだろう。
アキラに制服でどっちが良いか決めさせたって・・・
最初、その話を聞いた時、信じられなかったんだけど。
こうも、無計画で高校進学してくるヤツも珍しいぞ。
昔っから、バカだと思ってたけど・・・
こいつは、本物だよな~
はぁ~ アキラ・・・
こんな、姉を持って、本当に可哀そう。
でも、安心して。
私が、こんなバカからアキラを守ってあげるからね。
「ゆかり! もう残り時間少ないんだから、急いでお土産買うし、あそこにも行くわよ!」
「えっ? うん・・・」
アソコって、アキラに教えて貰ったっていう神社か。
ふふふっ、縁結びか~
って、その前に。
金平糖のお店って言ってた?
それも、アキラに聞いたって言ってたけど・・・
なんで、あの子、そんなに京都の事詳しいのかしら。
「ゆかり! ここだ~ ここ~!」
「えっと・・・緑寿庵清水・・・」
へ~ なんか老舗っぽいな~
創業1847年なんだ・・・
すごっ・・・
もう、一人で店に入って行っちゃうし。
こいつは集団行動って知らないのか。
「ゆかり~ 可愛い~♪」
ん? ウワッ♪
「本当だ~ 可愛い~♪」
凄い! 金平糖って、こんな色んな味があるの?
アキラ・・・本当にすごいな~
ふふふっ、どれ買って行こうかな~
アキラの好きなのは~
蜜柑に、メロンでしょ~
!? キャハ! サイダーだって~
これもアキラ大好きそうだな~
「ねえ? アキラはやっぱり、バニラかな~?」
えっ? 美姫・・・なんで?
アキラって、別にバニラなんて好きじゃないじゃない。
ソフトクリームだって、いっつもチョコとバニラのミックスを好んで食べてるし。
それに、アイスクリームも、バニラなんてほとんど食べないし。
あ~ でもマックシェイクだけは、バニラを好んで飲んでたな~
それにしても、こいつは、自分の弟の好みも知らないのか?
って・・・違うな・・・
バニラは、お前が好きな味だろ?
結局は、自分かよ・・・
さっきも、アキラ、八つ橋好きかな~なんて言ってたけどさ。
あの子がシナモン嫌いなの、知らないのかしら?
アップルパイのシナモンの香りは平気なクセに。
それ以外で、シナモンの香りがすると一切受け付けないのよあの子。
なんで、実の姉のお前より、私の方がアキラの好き嫌いを知ってるのよ。
お前の、弟愛はどうなってるんだ?
まっ、放っておくか・・・
アキラ~ 私がちゃんとアキラの大好きなモノ買って行ってあげるからね~
はぁ~ 明日ようやく帰れる~
アキラに早く会いたいな~
明日帰って、その日に美姫の家にお泊りは・・・
う~ん・・・さすがに、ママもパパもダメって言いそうだな~
ダメ元でお願いしてみようかな~
だってさ、わたし・・・もうアキラ欠乏症で、胸が苦しいんだもん・・・
毎晩、毎晩、アキラと一緒に寝た夢を見ちゃって。
お胸クリってされた夢を何度も見てしまって、そのたびに、あの感覚が蘇っちゃって、ダメなんだよ。
早く帰って、あの子のことギュッってしないと、この胸の苦しみは解消されないよ。
でも・・・
さすがに、1週間ぶりだもんな。
美姫のヤツとアキラの取り合いになっちゃいそうだよな。
アキラは、絶対私と一緒にいたいって言うのに・・・
コイツがな~
「美姫~ もう私買うの決まったよ~」
「えっ、嘘!? う~ん・・・よし! これに決めた!」
やっぱり、バニラ買うんだ・・・
しかも、3っつ?
あとは? レモンにイチゴ・・・
はぁ~ やっぱりダメだコイツ。
全部、自分が大好きな味じゃん。
もう、うちのお兄ちゃんとアキラを交換したい。
こんな酷い姉に、あの子を独占されると思うと異常に腹が立って来たわよ。
てか、コイツ、昨日皆の前で、アキラとのことべらべらと・・・
最近は、ずっと毎日お風呂一緒だったとか自慢しやがって。
何よ、ずっと大人になるまで、一緒に入る約束したって。
バカなのか、コイツは・・・
それに、アキラが私の足が大好きでいっつもスリスリしてくるの~とか言って。
本当に、困っちゃうよね~とか言いながらデレデレしちゃって。
しかも、毎晩一緒に寝てたとか・・・
アキラが私と、エッチした夢みたんだって~とか。
寝てたら、いっつもね、私のおっぱい吸ってくるのよあの子・・・とか。
寝ぼけたアキラに色々されて、私生まれて初めて、イッチャッタ、じゃないわよ~
も~う、アイツ等全員それ聞いてドン引きしてただろ。
私の大事なアキラが、皆に変態だと思われちゃじゃない!
でも・・・昨日の皆のドン引きっぷいったら。
あのドン引き見てたら、美姫と同じような事しちゃったわたしも・・・
はぁ、絶対に皆の前では言えない。
アキラとのあんな事したなんて絶対に言えない。
アキラにされて、初めてイッタとか絶対に言えないよ~
ましてや、愛の為に、服を一式おいてきたなんて絶対に、絶対に言えない。
「ゆかり! 急ぐわよ!!」
「もう・・・そんなに、急がなくても大丈夫だって~」
◇◇◇
美姫のヤツ・・・そんな、走らなくたても良いのに。
はぁ、はぁ、はぁ・・・
それにしても、やっぱり京都の神社って凄いな。
こんな長い参道があるなんて・・・
ようやく、鳥居が見えて来たよ。
北海道神宮より、全然敷地が広いんじゃない?
「ゆかり~ アキラがね~ ここは縁結びのパワースポットで有名だって教えてくれたんだよ~」
「あ~ ハイハイ・・・」
もう、それ聞いたの、今ので5回目なんだけど・・・
下鴨神社か・・・
「あの子、北海道神宮の恋みくじが良く当たるとか、色々パワースポットとか、ご利益系がめっちゃ詳しいみたいなのよね~」
「へ~」
北海道神宮の恋みくじって、良く当たるんだ?
それは、初めて聞いたけど・・・
イイな~ なんか、色々物知りで、優しい弟か~
もう、絶対、あの子が欲しい!
あんな、可愛くって、優しくって、博識で、しかも、ピアノもめっちゃ上手いし。
ふふふっ、それに、ちょっとエッチだしね・・・
もう、絶対他の女の子に取られたくないよ。
あのまま、私を好きにならせて、大事に大人になるまで私が育てるわ!
名付けて、光源氏作戦よ!
もう、かなり私好みに育ってくれてるけど。
もっともっと、私好みにしてあげるんだから。
「ん? どうしたの?」
「お前・・・またアキラの事考えてただろ!?」
「・・・なんで?」
「お前が、最近、ニヤニヤしている時は、だいたいアキラの事を考えてる時だからよ!」
別に良いジャン・・・
アキラは、美姫のモノじゃないんだから~
「オイ・・・」
「なによ!」
「アキラと縁結びを願うんじゃないだろうな~!?」
「なに!? ダメなの!?」
「その願いは絶対、叶わないわよ!」
「なんで、そんなこと言うの!?」
「だって・・・親が許したって、絶対私が許さないからよ!」
はぁ~!? 何それ、この小姑ババ~がよ~
「本当、アキラが可哀そう・・・こんな性格の悪い小姑ババ~が近くにいるなんて・・・」
「誰が小姑よ!」
「うるさい! アキラは、もう私のこと好きなんだから! アキラと一緒になるなんて、私とアキラの勝手でしょ?」
「ハァ~ じゃあ、もしそうなったら。 お前は私の妹になるんだぞ・・・い・も・う・と・だぞ!?」
なによそれ・・・
「はぁ? なによそれ・・・だから、なんだって言うのよ?」
「妹は、お姉さんの言う事を聞かないと行けないんだからな!」
「はぁ!? バッカじゃないの! ふん、こんな意地悪な小姑がいても怖くないもん。 アキラが私の事を守ってくれるもん!」
「なにが、『もん!』っだ。 カマトトぶるんじゃないわよ、まったく・・・」
なんだコイツは・・・
彼氏と別れたばっかりだから、八つ当たりしちゃって!
もう、さっさとお参りして、お守り買いに行っちゃおっと。
アキラに、ペアの縁結びのお守りを買って、渡さないとなんだから!
キャハ! お守り渡したら、アキラどんな顔するかな~
もう、あの子とのこと、絶対成功させてみせるわ!
私の、可愛い光の君、待っててね。
明日には、帰るからね。
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