第116話 どうせ、私は町の汚い中華屋にしか連れてってもらえない女ですよ!
田中くんと、玉木くんの家に宿題のプリントやら、連絡のプリントなどを配り終えて。
いまは、藤さんの家に向かっている途中だ・・・
玉木君の家のお母さんからは、お手伝いして偉いわね~っと。
こんな、お菓子を貰ってしまって、なんか逆に申し訳ない気持ちだいると。
「デート残念だったね?」
「やっぱり、無理だよね?」
「そりゃ~ 学級閉鎖中だもの。 さすがにね~ まっ、そもそも生徒とデートなんて言うのがそもそもなんだけど・・・」
そう言って、バツの悪そうな顔をする遥ちゃん。
「それにしては、お手伝いになんで俺を誘ったの? 他の子でもよかったじゃん」
「だって、佐久間君が一番お願いしやすいんだもん」
あっそう・・・ただ声かけやすかったってだけか。
なんか、その手のこと過去に何度も女の子に言われた記憶があるよ。
佐久間君って、なんか優しいからお願いごとしやすいんだ~ってね。
その言葉に、騙されて何度勘違いしたことか。
彼氏おるヤツに、普通に恋愛相談してくるヤツ・・・
女の、お願いしやすい ≠ 男に興味有る
そう気づくまで、数年かかったよ。
そんな、イヤな過去を思い出しているうちに・・・
玉木くんの家から、藤さんの家はすぐで、あっというまに家の前に着く。
後部座席の、紙袋を持って先生の後ついて、藤さんの家に行くと・・・
藤さんの家は、片親で母親が働いているから、直接藤さんが玄関まで出て来て。
「あれ? 先生? どうしたんですか?」
「うん、学級閉鎖になっちゃったから、そのお知らせと。 休み中の宿題届けにね」
遥ちゃんの後ろに隠れていたのに。
速攻、見つかってしまい・・・
「で? なんでアキラがいるの? ゴホッ、ゴホッ、ゴホッ」
「あ~ これだよこれ。 荷物持ち・・・」
「ふ~ん・・・」
なんとなく納得してない雰囲気の藤さんの目線がイヤで、遥ちゃんの陰に隠れると・・・
「じゃあ、こっちのお知らせのプリントは、必ずお母さんに見せてね」
「はい・・・ えっ? じゃあ、明日も休み?」
「うん、来週の月曜日からかな~ だから、それまでに風邪直して元気になってね」
「まあ・・・はい・・・ ゴホッ、ゴホッ、ゴホッ」
「ごめんね、具合悪いのに長話しちゃって。 じゃあ、先生達は失礼するわね。 お大事にね」
「ハイ・・・」
そう言って、扉を閉める藤さんだったけど・・・
なにやら、最後まで、俺を見る目が何か言いたそうな、ジト目で見られ続けてしまった。
イヤ、この後アッコちゃんの家に行くし・・・
そんな目で見られてもな~
それからも、ハジメ君の家、木下の家、小沼の家と、アホほど重い手提げを持って、階段を上り下りしてたわけだけど。
残り、アッコちゃんの家になる頃には、手提げもかなり軽くなっていた・・・
『ピンポ~ン』
『は~い!!』
アッコちゃんのお母さんの声・・・
『ガチャガチャ』
「はい! あれ? 先生、どうしたんですか?」
「えっとですね~ 今日から学級閉鎖になってしまって、そのお知らせで伺ったんです」
「あら、学級閉鎖・・・そうですか」
「それで、お知らせのプリントと、休み中の宿題のプリントを今皆の家を回って配ってたんです」
ずっと、遥ちゃんの陰で隠れてたのに、アッコちゃんのお母さんと目があってしまう・・・
「あら? アキラくん?」
「あ~ この子に、荷物のを運ぶの手伝って貰ってたんですよ~」
「へ~ 偉いわね~」
アッコちゃん・・・
「あの・・・お母さん?」
「なに?」
「これ! 今日の給食で出たゼリーなんだけど・・・アッコちゃんコレが好きだから、その・・・」
「あら、わざわざ持って来てくれたの? ありがとう、あの子喜ぶわよ~」
そんな会話を玄関口でしていると・・・
部屋の奥の方からアッコちゃんがノコノコやって来て。
「アキラくん?」
「あっ、アッコちゃん・・・ 風邪だいじょうぶ?」
「来てくれたの!? 嬉しい!!」
そう言って、玄関まで出てくると、俺に抱きついて来てしまった・・・
「こら! アコ! アキラくんに風邪移っちゃうでしょ! せっかく、あんたの好きなゼリー届けてくれたのに!」
「えっ? ゼリー? あっ!? 給食の~!? これ楽しみにしてたんだ~ アキラくんが持って来てくれたの!?」
「そうよ、佐久間君が、じゃんけん争奪戦で獲得した彼女への献上品よ。 まったく、この子達の仲の良さには、さすがに先生でもヤキモチ焼いちゃうわよ」
「ふふふっ、そうですね~ うちの夫も、アキラくんに常にヤキモチ焼いているから・・・ふふふっ」
えっ? お父さん・・・ヤキモチって。
でも、久しぶりにアッコちゃんに会えた~
めっちゃ、嬉しくって、もう泣きそう・・・
「ん? また、そうやってすぐ泣く~」
そういって、アッコちゃんに慰められる俺・・・
「佐久間君ってそんなにしょっちゅう泣くの?」
「うん、私の前だとしょっちゅうだよ! 寂しいとか言って、すぐ泣いちゃうの」
「ふ~ん・・・」
「へ~・・・」
なんか・・・遥ちゃんと、アッコちゃんママの生暖かいニヤニヤした目が、超恥ずい・・・
もう、アッコちゃん、そんなことばらさないで良いから。
「アッコちゃん・・・早く元気になってね」
「うん、治ったらまたすぐ遊びに行くね。 だから、それまで一人だけど、泣かないで待っててね」
そう言って、アッコちゃんに頭をなでなでされる俺・・・
それを、また大人二人がニヤニヤしながら、見てるのだけど。
「さっ、アコ。 もう寝ないと、また熱でるし。 アキラ君にうつっちゃうでしょ?」
「え~ ・・・わかった。 じゃあね・・・アキラくん」
「私達も、もう失礼しますから。 じゃあ、岩崎さん、月曜日元気な姿で登校してくれる待ってるからね」
「は~い」
そう言って、アッコちゃんママが家の扉を閉めて、最後扉がしまる直前までアッコちゃんが手を振ってくれたので。
お返しに、アッコちゃんが見えなくなるまで、手を振った。
アッコちゃんのアパートの階段を降りながら・・・
「さてと、ごくろうさま。 はぁ~ あんな荷物持って、階段上り降り何てしてたら死んでたわね~」
「荷物は全部、僕が持ってましたけどね・・・」
おかげで、もう手がプルプルしてるんだけど・・・
「まっ、いいじゃない。 岩崎さんとも会えたでしょ?」
「まあ、そうだけど・・・」
まさか、その為に一緒に連れて来たの?
「じゃあ、ご褒美に良いところ連れてってあげる」
「良いところ?」
ご褒美? なんだいきなり?
「といっても、どっか良いところ知らない?」
「はぁ? なんだよそれ?」
イヤ・・・どっか良いところって。
聞くか? 普通小学生相手に・・・
「だって、私札幌全然詳しくないんだもん・・・」
「じゃあ・・・デートの時に連れていってあげようと思ってた所行く?」
「えっ!? デートの時に行く予定だったところ?」
そう言って、遥ちゃんの車に乗り込むと。
連絡と、荷物配りが終わった解放感からか、なんかウキウキした様子で運転する遥ちゃんを横目にお店への案内を始める俺・・・
「あ~ あそこの協会の交差点を右折して」
「教会を右折っと・・・」
「後はしばらく道なりに進んで」
「道なりに・・・」
初めて走るのか? ココ?
円山に住んでるんじゃないの?
「道路標識を旭ヶ丘側に行って」
「右にいったら良いの?」
「うん、そうだよ」
「ここって、円山?」
あんまり、一人でドライブとかしないのかな?
「そうだよ、円山の裏の方。 ここの左側は、もう円山動物園だよ」
「えっ? ここ? へ~」
なんとなく、不安そうに運転する遥ちゃん・・・
「えっと・・・まだ?」
「もうすぐ病院が右手にみえてくるから、その交差点を過ぎたら、右斜めに曲がる道があるから、そこに入って」
「えっ? 右斜め・・・右斜め・・・右斜め・・・」
そう言って、ブツブツつぶやきながら、車を走らせる遥ちゃん・・・
「えっと、ここ?」
「うん、右に曲がって、そのまま坂登って一番上まで行っちゃって良いよ」
「一番上まで?」
どんどん急になる斜面に、ちょっと不安な顔をする遥ちゃん。
なんども、こっちを見ては「あってる?」っと聞いてくる。
まあ、知らないと不安になるよね~
「えっと、そこの突き当り左に曲がったら、右側にコンクリートの建物が見えてくるから、そこが目的地だよ」
「えっ? 左・・・えっと、コンクリートってアレ?」
「うん、店の前が駐車場だから、そこに止めてよ」
そういって、まだ不安そうにしている遥ちゃん。
車と駐車場に止めると、車を降りて。
遥ちゃんの手を引いて、案内すると・・・
「えっ? 宮越屋珈琲? えっ? ここカフェなの?」
「そうだよ、ちょうど開店時間だし、行こうよ」
「うん・・・」
そういって、不安そうにする遥ちゃんを連れて、お店の階段をかけが上がり、お店の入口に入って行くと。
『いらっしゃいませ~ 2名さまですか?』
『はい』
まだ、開店間際でほとんどお客がいない店内を、店員に案内されて。
そのまま、窓際の席まで通されると・・・
「えっ!? なにここ!?」
まっ、だいたい、初見の女の子は、皆そういうリアクションをするよね~
俺が、大学生時代に良く使っていたお店なのだ。
何人の女の子をココに連れてきたことか・・・
どうだい? 遥ちゃん? 気に入ったかい?
得意げな顔で、遥ちゃんを見ていると。
「えっ? デートでココに連れて来てくれようとしてたの?」
「そうだよ、本当はもう少し遅い時間帯で、夜景が綺麗な時にくるつもりだったけど」
「え~ なにここ~ 素敵~ 札幌の街が一望じゃな~い♪」
「やっぱり、デートなら、こういう所が良いでしょ?」
そう言うと、口びるをとがらせて・・・
「どうせ、私は町の汚い中華屋にしか連れてってもらえない女ですよ~だ! フン!」
イヤ、そんな自虐は良いからさ・・・
「そんなことないよ、遥ちゃんは良い女だよ」
「なによ・・・生意気ね・・・」
そう言って、まんざらでもない顔で、席に座る彼女。
そして、ケーキセットを二つ注文すると・・・
「あなたって本当に不思議な子よね」
「なんで?」
「だって、なんか妙に大人びてる時、子供っぽい時とで極端っていうか~ 大人っぽい時は、普通に同じ目線で話できちゃうっていうか・・・なんなの?」
「ん~ 年上のいとことよく遊んで、色々連れてってもらってるからかな~ その時に、恋愛の話とか色々来たりとかするからかな?」
まあ、中身は遥ちゃんとそうたいして歳は変わらないんだよね・・・
どっちかと言ったら、俺の方が年上だしね。
「ふ~ん、それにしたってだよ・・・」
「月曜日とか全然元気無くってボ~っとしてたから。 それにあんな、話を聞いたら、あまりに可哀そうで・・・遥ちゃんに元気になって貰いたいなって思ったの」
「だから、デートに誘ってくれたの?」
「まあ・・・遥ちゃんの、あんな悩んだ顔みたくないじゃん。 笑ってる遥ちゃんが一番可愛いから」
「・・・もう・・・だから・・・なんであなたはそういう事を・・・」
顔赤らめちゃって、可愛いな~
こういうこと、言われ慣れてないのかな?
「あ~あ・・・チケット無駄になっちゃったな~」
「なんのチケットよ?」
「kitaraのアフタヌーンコンサートのチケット。 遥ちゃん、音楽の先生だから、喜ぶと思って・・・」
「えっ!? どういうこと!? チケット買ってくれたの!?」
まあ、一人3500円で安かったし・・・
「そうだよ・・・だって、デートだもん。 女の子に喜んで貰いたいじゃん」
「もう・・・なんで、佐久間くん・・・君って・・・小学生なのよ~」
「ん? どういうこと?」
「もう、わたしそんなことされたら、速攻落ちちゃう自信あるよ・・・ 同い年なら、絶対好きになっちゃう!!」
イヤ・・・落ちちゃうって・・・
生徒に言う言葉かな~
「それは、林先生の仕打ちがあまりにもひどかったからでしょ? 今先生優しさに飢えてるだけだって・・・」
「そんなことないもん・・・ 過去にだって、そんな事してくれた人いなかったもん」
「旭川でも?」
「いないよ・・・ 前の彼だって、いっつもラーメン屋だったし・・・」
「アハハハ・・・旭川ラーメン美味しいもんね~」
「そういう問題じゃないわよ~!!」
ラーメンに、町中華・・・
遥ちゃんの周りの男ってなんでそうなんだろう?
でも、前の彼しか~
「遥ちゃん、彼氏いたんだね?」
「いたけど、ずっと前に別れた。 だから、札幌で募集をみつけて、こっちに来たのよ」
「忘れるために?」
「違うわよ~ もうイヤになってフッたのに、その後もしょっちゅう私の所に来られて困ってたの! それがイヤで札幌に逃げて来たのよ!」
アハハ・・・えっと・・・前彼もクソだったのか。
札幌まで逃げてくるって相当だな~
まあでも、遥ちゃんだもんな~
フラれても、男もすぐには諦められないよな。
「ねえ? 佐久間くん?」
「なに?」
「こっそり、日曜日デートしない?」
「えっ? こっそりは、マズいんじゃないの?」
遥ちゃん?
「だって~ チケットあるんでしょ? 勿体ないじゃない・・・」
「でも、アフタヌーンコンサートだよ。 めっちゃ安いチケットだし・・・」
「それでもよ~ 私の為に買ってくれたんでしょ? 私そんなの、人の優しさを無駄にしたくない!」
えっと~ そんな、俺の手をギュってしちゃって~
イヤ~ 良いのかな~ 学級閉鎖中なんだけどな・・・
「ちょっと、お買い物に行ってくるって言って家、出て来てよ~ 向かえに行くから~」
えっ? ヤバイ・・・なにこの人、本当に可愛いんだが?
ちょっと、ドキドキしちゃうじゃないか。
「でも、バレると先生もマズイよ?」
「大丈夫よ、変装グッズを持って行くわ!」
「変装グッズ!?」
なんか、イヤ予感しかしないけど・・・
鼻眼鏡とか、ドンキで売ってそうなのはヤメてくれよ先生。
「アフタヌーンコンサートって何時から?」
「えっ? 14時開場の15時開演だよ」
「じゃあ、お昼に向かえに行くから、どこで待ち合わせする?」
ハハハ、もう後に引けないな・・・
「えっと~ さすがに、うちの近くは危ないと思うけどな~ 誰に見られるかわかったもんじゃないからさ~」
「う~ん・・・どうしよう・・・」
もう、しょうがないな・・・
「じゃあ、俺が円山まで来るよ」
「本当!? 良いの?」
「うん、遥ちゃんに元気になってもううために買ったチケットだしね」
「やった~ 絶対ね! 約束~♪」
さて、日曜日か・・・
どうやって、家から出ようかな~?
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