第113話 山小の11月の奇跡
『キンコンカンコ~ン キンコンカンコ~ン♪』
『は~い、じゃあ皆~ 午後から風が強くなっているから、帰りは気を付けて帰ってね~』
『ハ~イ♪』
『は~い、じゃあ日直さん』
『起立・・・礼・・・』
『先生さようなら、皆さんさようなら』
『はい、さようなら。皆~気を付けて帰ってね~』
「佐久間く~ん!」
ん? なんだ?
「なに? 先生?」
「これ、岩崎さんに届けてくれる?」
「えっ? まあいいっすけど」
「先生! アコの家なら私が届けるよ~」
「木下! お前は別に呼ばれてないだろ! さっさと帰れ!」
「はぁ~ アコの家なら、私の方が近いんだから、届けものがあるなら私が行くわよ!」
「イ~ヤ! アッコちゃんへの届け物は全部俺が持って行く!!」
「イヤダ!! 私が持って行くの!!」
ぐぬぬぬぬ・・・ 木下~
「もう・・・わかった、わかった・・・ じゃあ、二人でじゃんけんして」
「え~ ジャンケン? 俺が先だったのに~!!」
「うるさいな! 佐久間!! 勝負よ!!」
もう、なんだコイツ・・・
「ハイ、最初はグー。 ジャンケンポン!」
うぐっ・・・うそだろ・・・
「ヤッタ~!! へへへ~ 佐久間ザマ~!! ヒ~残念でした~♪」
コイツ・・・マジウゼ~
「ハハハ・・・じゃあ、木下さんお願い出来る?」
「は~い♪ まかせてくださ~い。 ん? 藤澤く~ん!」
「なに?」
「いまから、アコの家に、これ届けるんだけど、一緒に行かない?」
「えっ、うん、良いけど・・・」
なんで、コイツラがアコちゃんの家に・・・
くっそ・・・
「佐久間くん・・・そんな落ち込まなくても・・・ほら元気だして」
「遥ちゃんのバカ・・・」
「まあ! 先生に向かって~!」
イヤ・・・またそうやってプンプンポーズを・・・
こんな至近距離で、そんなことしてさ~
可愛すぎて、キスしちゃうぞ。
「ほら、立って・・・ もう、そんな四つん這いになるほどショック受ける?」
「だって・・・今日1日アッコちゃんに会え無かったのに。 お家にも行けないなんて・・・」
「別に届け物に行ったって、会え無いんじゃない? 風邪移ったら困るからって、家に入れないと思うけど・・・」
ん? まあ・・・そういえば、そうか。
アッコちゃんママに会ってもな~
って、違う・・・そうじゃない。
アッコちゃんの家に行ったんだよって事実が、アッコちゃんへ伝わることが大事だったのに。
あ~あ・・・これで、あの二人が行って。
俺が行かなかったってなったら・・・
アキラくんは、私のこと心配してくれなかったの!? プンプンって・・・
なんか、またアッコちゃんが可愛く怒ってる姿が想像つくんだけど。
「アキラ~!! 何やってんの?」
「あっ、ちょうど良い所に。 石川君、この子面倒見てくれる? ちょっとショックでダメみたい・・・」
「えっ!? なにショックって? てか、アキラ! 早く! サッカー行くぞ! 今日は紅白戦なんだから!」
「えっ? 石川君? 今日って試合やるの?」
「そうだよ! 先生も見に来る?」
「えっ? 私もって?」
「小沼と、3組の小菅さんも見に来るらしいんだ~♪」
「へ~ そうなんだ・・・じゃあ、後でちょっと見に行って見ようかな~」
えっ? 遥ちゃん・・・マジ!?
イヤ・・・遥ちゃん。
今日はマズくないか?
風に対して、一番無防備そうなフレアスカートなんて履いちゃって。
そんな、ひざ丈の白いフレアスカートが舞い上がる姿なんて・・・
先生・・・あの伝説のスカートめくれ!! マリリンモンローになっちゃうよ!?
でも、こうやって見ると・・・
ちょっとヒールのある靴、白のフレアスカートに白のニット・・・
豊満なお胸に、スラっと伸びる綺麗な足。
カワイらしい小顔の、そのフェース・・・
マジで、マリリンモンローの有名なポスターのようになってしまうのでは。
イヤ、待て待て。
紅白戦の最中、こんな最強モンロー様が降臨したら・・・
小沼と、るなっちなんてめっちゃ霞んでしまうぞ!
あんな品祖な小学生のパンチラなんかより、伝説級モンロー様のパンチラ姿がもし同時に起こったら。
「アキラ! なにぼ~っとしてんだよ! 早く行くぞ!! 先生、じゃあ絶対見に来てね~ 多分、グランドでの練習今日が今年最後になるかもしれないから~」
「うん、わかったわ~ 頑張ってね~」
二人のそんな会話を聞いていると。
無理やり、剛に腕を掴まれて、そのまま連れてかれてしまう・・・
そして、サッカーの準備をしてグランドに行くと、なにやらワザとらしくいつもよりも張り切った声でウォーミングアップをしている連中が・・・
『遅いぞ!! 石川! 佐久間!!』
なんだ山崎のヤツ・・・キャプテン面しやがって、えらそう~に。
てか、何張り切ってんだコイツ? 気持ち悪いな・・・
『じゃあ、グランドランニング!!』
「秀樹? なにあいつ?」
「えっ? たぶん、あれ・・・」
ん? 秀樹が指さした方を見ると。
暖かそうなコートを纏った、女の子の集団が寒そうに立ってる姿が・・・
あ~ なるほど・・・って・・・ ん?
集団だと? 小菅と、小沼はわかるけど・・・
誰だあのこら?
「秀樹、あの子達なに?」
「えっ? うちのクラスの女の子」
「へ~ るなっちが誘ったのかな?」
「ん? イヤ、るなっちが教室出ようとしてたら、クラスの女がどこ行くのって聞いて。 サッカー少年団の練習見に行くっていったら、なんか皆がゾロゾロついて来たんだよね」
はぁ・・・それで、ヤツ無駄に張り切ってるのか。
マジ、キッモ!
ふふふっ、じゃあ紅白戦で、お前には大いに恥をかいてもらおうじゃないの。
秀樹とそんな会話をしながら、いつものウォーミングアップをしていると。
監督とコーチがやって来て、いよいよ紅白戦がはじまることになった。
『お前ら、明日から雪が降り始めるってことで、おそらく今シーズンのグランドでの練習は今日が最後になると思う。今年1年の集大成だしっかりやれよ!』
『ハイ!!』
北海道あるあるなのか知らんけど・・・
冬は雪が降るから、グランドでの練習は基本出来なくなってしまう。
どっかの有名なコンサドーレとか言う、クラブチームの練習場は、専用の融雪用ヒータがグランドに敷設された専用の人工芝練習場があるから。 完全な真冬以外は、グランドでも練習できるのだが。
市内のサッカー少年団は、基本冬の間はグランドでの練習が出来ないのだ。
これからの、季節はもっぱら、体育館を借りてパスの練習だったり、フットサルっぽいミニサッカー位しか出来なくなるのだ。
さて、さて・・・山崎のバカとは別チームか。
ふふふっ、この間の試合でのダメダメっぷりから、最近じゃいっつもセカンドチーム側に入れられるようになっていたのだが。
キャプテンのクセに、レギュラー組で参加できないって、プププっ、山崎超~ダッセ~
ヤル気のあるキャプテン君をいっちょ煽ってみるかね~
『よ~し!! お前ら~!! 今シーズン最後の紅白戦だ~!! レギューラー組の意地を見せつけてヤレ!! 補欠組になんかやられるなよ!! わかったか!!』
『オ~!! やってヤルよ!!』
『そうだ!! キャプテンチームなんかに負けるかよ!!』
よしよし、これで女子軍団には、山崎たちが補欠だって聞こえただろ~
ん? くっくっくっ、山崎のヤツ、めっちゃ悔しがってんじゃん。
良いね~ その顔~ お前ら今日はチンチンにして、もっと惨めな姿を、女子達に見せつけてヤルから覚えてろよ~
っと、意気込んで始めたのだが・・・
「剛!! ボ~っとしてんなって!!」
「えっ? あっ? ごめん・・・」
アイツ・・・小沼の方見すぎヤロ!
あからさまに集中力キレてる・・・
うううっ、イカン! このままでは、遥ちゃんの悪夢再び。
補欠組にがっつり負けてしまう・・・
「オイ! 剛!」
「えっ? な~に~?」
「お前、なに腑抜けたプレイしてんだよ。 そんなんじゃ、カッコ悪い所ばっかりで、小沼の気を引くなんて出来ないぞ! カッコ良い所見せたいんだろ?」
「えっ? あっ・・・そうか! そうだね!」
・・・もう、コイツって本当にバカなん?
「剛、イイか、徹底的にバックの裏の空いたスペースに走り込め。 トップの秀樹としっかり連動しろよ」
「うん! OK! 任せろ!!」
ようやく剛の動きが戻ってきたな~
『ズミヒー♪』
ん? 女子軍団の子達?
ふ~ん、秀樹って3組の中だと人気あるのかな?
あんな女子皆から声援ウケるなんて。
さすが、甘いマスクを持つ男。
『ズミヒ~ ちゃんと走れ~♪』
『よそ見するなよ~ ズミヒ!! キャハハハ!』
ん? 人気あるんだよな? いじられてる?
「秀樹?」
「あいつら・・・」
「人気者だな?」
「うるさい! あれは、バカにしてんだよ!!」
あっ・・・そっちか。
「ねえ、秀樹。 剛が裏に取りに行く動きするから。 俺、少し引いてボールウケたら、すぐお前に送るからよろね」
「ん? ああ、わかった。 この間、一緒にビデオ見たヤツね」
「そう、あれで点を量産しようぜ」
「OK!!」
しっかし、風が強いな~
めっちゃボール流されるじゃん。
これは、高いボール全然使えないな・・・
『アキラ~!!』
ん? オイ、オイ、オイ・・・
高いボールを出すなって!
めっちゃ流されるって~
でも、これ良い感じに剛との中間地点にボールが落ちそうだな。
ディフェンスは、剛の動き警戒して出足遅いし。
よし! これマイボールに出来るぞ!
頭上を越えて、数メートル前に落ちてバウンドするボールを一生懸命追いかけて、なんとか足元にボールを落ち着かせると。
剛が絶妙のタイミングで、ディフェンスの裏に斜めに走り出したのを視界の隅っこで捉える・・・
「剛!!」
剛の走り込む先、数メートル先にパスを繰り出すと、ディフェンス2人が慌てて剛の方目掛けて走って行くのが見える。 よし! 良いぞ!
そのまま、自分も剛を追いかけて行くと、ディフェンスの間から、剛が見える位置に走り込んだ瞬間、剛から絶妙のタイミングでリターンパスが出て来る・・・
「アキラ! 頼む!」
まっかせろ~! センターバックがそれを見て、俺を目掛けて詰めて来るのがバッチリ見えていた。
ウハ!! こんな、綺麗に決まっちゃうコレ?
この間見た、プロの試合と同じ形になったじゃん!
剛からのボールに追いつくと、ディフェンスが詰める前に、そのボールをダイレクでゴール前にいるドフリーの秀樹にパスを出す。 ディフェンスを巻くように、風で流されるのも計算をして胸ぐらいの高さでボールを蹴りだすと・・・
ちょうど、ゴール前に走り込んでいた、秀樹のところへ・・・
利き足じゃないけど、イケる?
そう思った瞬間、綺麗に腰の高さに落ちて来たボールを、ボレーで撃ち抜く秀樹・・・
蹴ったボールは、キーパーの手をすり抜けて、そのままゴールネットに『パッシュ!!』っと良い音を鳴らして突き刺さる!
『キュア~!!!!』
『ナイスシュー! ズミヒー!!』
オッ!? やっぱり、秀樹人気あるね~
小沼のヤツも、めっちゃピョンピョン跳ねて喜んでるじゃん。
あれ? アイツ・・・ひょっとして、秀樹のこと?
『佐久間く~ん!! カッコイイ~!!!!』
えっ? 俺!? イヤ~ 俺にもそんな声援くれるの?
『佐久間く~ん!! ナイスパース!!』
イヤ~ めっちゃわかってんじゃん。
って・・・遥ちゃんじゃん、いつの間に見に来てたんだろう?
声援をくれたお返しに、遥ちゃんに向かって手を振っていると・・・
うっ!? 突風が・・・!!
『キャ~!!!!』
えっ? ワホ!? そんなめっちゃ綺麗に・・・
グランドを駆け抜けた突風が、そのまま遥ちゃんと、女子軍団を襲い。
遥ちゃん、小菅、小沼、それ以外にスカートをはいていた数人のスカートを綺麗に舞い上がらせていた・・・
『イヤッ!!』
『キャッ!!』
一生懸命スカートが舞い上がるのを抑えている女子達に・・・サッカー少年団全員が釘付けになっていたわけで・・・
その中でも、やっぱり遥ちゃんのスカートが一番綺麗に舞い上がって、綺麗なスラっとした足に、純白のパンティー はぁ~ やっぱり、遥ちゃん・・・最強の札幌のモンローさまやったんか~っと目を奪われてしまう。
その後も、断続的に吹いてくる風に翻弄される彼女達・・・
小菅のパンティーに、小沼のパンティー、よりどり緑や~!!
スカートがめくれる度に、サッカー少年団の皆から『ウォ~!!』っと歓喜の声があがり。
この後、この日をサッカー少年団の皆が、声を揃えて山小の11月の奇跡と呼ぶようになったのだ。
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