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運命歪曲

 サタナキアの手から強力な魔力が放出され、バキバキと魔力の壁が音をたてて崩れる。しかしここで止まるわけにはいかない……


ボクは渾身の力で魔導刃を繰り出した。その刃が黒い胸板に深々と突き刺さる。


勝利を確信したその瞬間…… 右の脇腹に激しい痛みを感じた。骨が砕け内蔵があり得ないほどに圧迫されている。腹の底から一気に込み上げてきた血を一息に吐き出す。


「ぐっ…… はっ……!!」


カウンター!? まだ動けるのかよ……


痛がるのは後だ、今は忘れろ、勝つことだけに意識をまわせ。火力が足りなかったのならさらに魔力を込めるだけだ!!ここで退いたら負ける、絶対に退くわけにはいかない。


痛みに耐えながらさらに一歩を踏み込む、胸板に刺さったままの魔導刃をめがけてボクは右の拳を振り抜いた。


「……っ、……あぁ!!」


言葉にならない声をあげてさらなる魔力を叩き込む。


魔力の刃が破裂するとともに激しい光を放つと、サタナキアの身体をバラバラに砕いた。




 「ふぅ、はぁ……ハァ……」


さすがにもう動かないだろう。


上半身は爆散し、残った下半身も少し遅れて沈むように倒れた。


ボクもその場に倒れ込むようにしりもちをつき、肩で息をしながらゆっくりと呼吸を整える。


全身が痛い……特に最後のボディは効いた。


骨が砕ける音が確かに聞こえて思い返すと気分が悪くなる。


でも……


「どうだ、一度も死なずに勝ったぞ」


ボクは唯一の観戦者であるザリチェに向かい自慢げに笑ってみせた。


「クックック、たいしたものだな、お前の勝利への執念は見事だった。勝つためならあの高価だった武器を失うことすら厭わない、立派な勇者だよお前は」


出血によるめまい、痛み、吐き気、魔力の使用による疲労感。全てが限界の状態でボクは無惨に砕けた魔導刃を見る。魔力を込めすぎれば壊れるとは聞いていた、でも戦いの最中にそんな調整をする余裕なんてあるはずない……


最後に精神的なダメージを受けたボクの意識は、プツリと刈り取られるように失われていった……





 意識を取り戻すと見知らぬ部屋のベッドの上。体に巻かれた包帯をみるに誰かに助けられたのだろう。部屋を見回しザリチェの姿を見付け、すぐに状況を確認する。


「ここはクルアンの大聖堂の一室だ、剣聖がここまでお前を運んだ。お前が寝ていたのは二日くらいだな」


剣聖って、レオンか……


あいつが動いたってことはルクローチェの指示だよな、少し位は期待されてたのか……


「マリーは?」


「そのうち来るだろう、お前の手当てをしたのがあの聖女だからな。安心しろ、神器は使われない、そして残念がれ、お前はまだまだ死ねないぞ」


相変わらず嫌な一言が多いな、少しは怪我人を労ってくれてもいいだろうに……


でもよかった、ボクは誰かの役にたてたんだ。二度とやりたくないけど……




 ガチャガチャとお尻を使って扉を押し開ける女が室内に入ってきた、両手で持ったトレーには水の入ったグラス等が乗っている。


仕方がないとは思うが少し不躾なやつだ、一言物申さないと気がすまない。


「部屋に入ってくるときはノックくらいしろよ、バカ聖女」


ボクの言葉に驚いたマリーは目に涙をうかべながら、怒ったような喜んだような、よくわからない感情を顔で表現して、結局…… 最後にはすごい剣幕で怒りだした。

本作を読んでいただきありがとうございます。


久しぶりのあとがきです。


今週は三回の更新でした、このエピソードでひとまず二章の終わりということで、一回多くなっております。文字数的にも少ないですので…… 


これからもだいたい週に二回くらい、火曜日と金曜日ですね。同じペースで更新していきますのでお時間に無理がない程度にお付き合いいただけますと幸いです。


ではまた次のお話で、あなたにお会いできることを楽しみにしております。  みやこ

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