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星座考察

 エジソン、ニコラ・テスラ、人類に電気をもたらした偉大なる発明家はこの世界にはいない。


焚き火じゃ暗すぎるんだよな……


仕方なく、ボクは読んでいた本を閉じて芝生に寝転んだ。


クルアンという街まではもう少しかかる、一晩の野営は予定には入っていたが、運よく別の集団の野営地に間借りさせてもらえることになった。


聖女曰く、主のお導きらしい。


大小合わせて五つのテントを張り、この場所をキャンプにしていたのは商人らしき二人の男だった。


人の目が多ければ外敵に対しては効果があるだろう。


安心ではある…… しかし……


退屈だな、時間もわからないしやることもない、暗くなったら寝るしかない、不便な世界だ。


「星が綺麗だな……」


それでもこの世界の星空は綺麗だ、いろんな不満に耐えてでも見る価値があると思う。


「なんだヒロト、星が好きなのか?」


「別に…… ボクの世界では失われたものだからな、尊いもののような気がするだけだ」


「失われたものか…… 初めから無かったものなら気にもとめないだろうが……

失う前に手をうたなかったお前が悪いな」


クックックとボクを小バカにするように笑ってはいるが、いつもより少しだけ寂しげに見えるのは気のせいだろうか……


「ボクのせいじゃなく人類全体の責任だ。

そんなことより、この世界にも星座はあるのか? 星に名前が付いていたり」


「あまり詳しくはないが、あるにはあったな」


やっぱりそうか……


「おそらくだけどボクのいた世界とこの世界は同じ地球だ、星の見えかたや配置もかなり似ているらしい。

大陸の形は測量の方法……精度による誤差の範囲か。

一概にそうとも言えない部分ももちろんあるけどな」


地図を見た感じ元々の大陸の形は一緒だろう、そこから変に割れていたり欠けていたり、黒く塗りつぶされていたり……


でも地球の大陸の面影は確かにあるんだ。


「お前の世界を知らないからな、私にはわからん」


「それもそうだな、たぶん文明の違うパラレルワールドってところだろう。

わかったところでどうにもならないしな」


この不死の呪いがこの世界においてのみ作用するなら、異世界転移で別の世界に行くことで或いはと思ったけど……


今はこの星空を見れるから生きてていいかなとは思う……


「おいヒロト、星はなんのために存在していると思う?」


「なんだよ、科学的な話か?」


「こういうときはロマンチックな話だ、そんな思考だから聖女に泣かれるんだよ」


悪かったな、どうせボクには女心なんて理解できないさ。


さて、どう答えるべきなんだろうな……


「……お前が寂しくならないようにとかか?」


……一瞬の静寂、こいつが時々見せる表情だ。


驚いて、寂しそうにする。


「クックック、ヒロトの割りには頑張ったと言っておこう。

お前、輪廻回帰という言葉を知っているか? スピラエグリマティアスとも言われる」


りんね……って輪廻転生の輪廻か? かいきは回帰、前世に戻るって意味だろうか?


「聞いたことはないな」


「命は巡りまた産まれる、前世の記憶や経験を強く残したやつが極稀に存在する。

極端なやつは自分の前世の人間と対話することもできるらしい、それを輪廻回帰と呼んでいる……が、それはどうでもいい」


どうでもいいのか、凄い話だと思うけどな。


前世の記憶や経験を持ち越せるって、人生二週目みたいなものだろ、強くてニューゲームかよ……


「この世界は顕著だ、魔族のように罪人が生まれ変わった存在や、罪を償えば人間に転生できるとかな」


「人間を二回やりたくないやつだっているだろ、それがどうかしたのか?」


「別に、ただ……」


今日は随分と言葉を濁すな、どうもいつものザリチェらしくない。


「……あの赤ん坊はお前によくなついていると思った、それだけだ……」


それだけ……か、言いたいことは何となくわかった、でも何も言わないでおこうと思う。


期待するようなことでもないしな……


「ボクはもう寝る、お前もさっさと寝ろよ」


瞳を閉じる前にもう一度星を見上げた。


あれはベガだ、夏の大三角形の一角、こと座の一等星だ。


振り返ることは許されない、前に進むしかない、どんなに不安で恐ろしくても振り返ってはいけない。


なんとなく、そんな星座の話を思い出した……



おまけ  天体観測



 初めの一日とその次の日、私はたくさん泣いた。


状況が理解できなくて、どうしてこんなことにって、怖くて、悲しくて……


キリュウさんを困らせたと思う。


三日目は少し落ち着いた。


キリュウさんが見せてくれる魔術にワクワクして、楽しそうだと気持ちが前向きになってきた。


四日目に白い髪の男の子がやってきた。


まるで絵本のキャラクターみたいな現実離れした白、驚きの白さ!!


すごく綺麗だと思った……


歳も近そうだし、仲良くなりたいな…… なんて考えながら彼の部屋の扉を叩く。


「なにか用ですか? 三日先輩」


キミは心底迷惑そうにしてたね……


「庭に行こうよ、キリュウさんが出ても良いって!!」


迷惑そうな態度で、でも断ったりはしない、優しい人なのはわかってた。


だから心配だよ…… キミを傷付けてしまいそうで。



 「あれが夏の大三角形だね、こと座の話は有名だよ」


「知らないな、星に詳しいのか?」


「星は好きだよ、見てると寂しさを忘れられる気がする」


星から目を離さずに私の話を聞いているキミは、いつもより少し年相応な感じだった。


「凄いな、漢字は書けないのに」


めずらしく褒められた、でも半分だけ……


「星は道標だからね、迷ったら星を見ると良いんだよ。 何かで読んだ……」


呆れたように笑いながら一生懸命に星を見てる、私はその横顔を見てた。


研修の時も一生懸命で、その姿に勇気をもらった。



 そんな記憶を見ていた。


キミと見た星空の記憶はこの世界で手にした唯一の宝物だったよ。


これがソウマトウってやつならちょっと悪くないかも……


あぁ、でも、約束、守れないな。


ごめんね、私のことで悩まないでね。


キミは優しいから、きっと、ずっと忘れないでいてくれるんだろうね……


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