第3話 ◆・・・ 段ボールで工作 ・・・◆
このお話は、おねだりに失敗したティータ・アルバートの奮闘記・・・・だぶん。
※参考までに本編5章0~1話に当たる期間のお話です。
神聖暦2090年 4月末
私は数日前から、なんだけどねぇ。
ヒッキーなカミーユお兄ちゃんのケチケチで、仕方ないから段ボールで工作中なのです。
―――――― 数日前の放課後 ――――――
「お兄ちゃん。ティータにアレ作って♪」
その日はねぇ。
大図書館の中に在るテレビで、アニメの聖剣伝説物語を見ていたんだけど。
主人公とか仲間とかがね。
トォッってジャンプして空中をクルクル回りながら変身して。
それで着地した時には神聖武具とかっていう神様から選ばれた人間しか使えない鎧とか武器を付けているんだけど。
その鎧とか武器を装備するとね。
いきなりギュギューンッて強くなるの♪
で、悪い奴等をバッコーンって蹴散らすんだよね♪
だからティータも、ああいうの欲しいなぁって。
なのに、お兄ちゃん。
「あっそ。んなもん。てめぇで作れば良いだろうが」
うん
全然、興味ないって。
そんな顔だったね。
だからティータはね。
お兄ちゃんの所でゴミになっている空の段ボールでね。
今日も授業が終わってから来ると、それでティータだけの神聖武具を作っているんだよ。
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学年でも一番可愛いのティータに、なのに、その可愛いティータのお願いを興味ないって。
けちんぼなヒッキーお兄ちゃんは、だけど段ボールなら好きに使って良いってさ。
でもね。
ヒッキーなケチケチお兄ちゃんと違って。
クルツお兄ちゃんはバイトの無い時には手伝ってくれるんだよ♪
「どやティータ。武器の方はこれでえぇんとちゃうか」
「おぉ・・・クルツお兄ちゃんって器用さんだねぇ。段ボールで作ったバズーカには見えない出来だよ♪」
「せやろ。まぁ、こんくらいはな。で、そっちのは・・・あれか。なんちゅうか、そう。こてこてな段ボール鎧って所か」
手先が器用なクルツお兄ちゃんの作ったバズーカは、それは本当に上手に作ったって。
けど、ティータが自分で着る鎧の方はねぇ。
底を抜いた箱に首と腕を通す穴を開けて。
それからアニメで見た鎧に見える様にやっているんだけど・・・・・・・
「なぁ、ティータの作りたい鎧っちゅうのは。それは厚紙でパーツごとに作ったもんを最後に合わせる方が。それの方が見た目も良いんとちゃうか」
「厚紙でパーツごと?」
「せやな。街のおもちゃ屋で売っている飛行船や戦車なんかの。あれの組立て模型や。部品から組み立てて、それが最後は鎧になるっちゅう流れやな」
「おぉ・・・なるほど。それならティータも分かるよ♪ さすがクルツお兄ちゃん、頭良い♪」
「ただ、そうやな。鎧の細かい所まで、そこは厚紙でパーツごとに作るとして。問題は、それやと強度的には弱いやろうから。せやな。強度面は段ボールで補強すれば。あと、厚紙やったら色なんかも塗りやすいやろ」
クルツお兄ちゃんの説明は、ティータにもイメージしやすかった。
その日はクルツお兄ちゃんとで、ティータは鎧の方の図面を書いて、終わった時には暗くなっていたね。
そういう訳で
必要な厚紙と糊はね。
明日、購買で買う事にしました。
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購買では厚紙は売っていませんでした。
と言うか、工作に向いたクラフト紙はね。
学院では買う人もいないから売っていないって。
じゃあ、何処なら売っているの・・・って。
前にお爺ちゃんから教えて貰った上目遣いのおねだりで、そうしたら売店のおじさん。
街の中にある安くて良い物が揃っているお店を教えてくれました♪
買い物は、それはクルツお兄ちゃんも一緒に来てくれました。
お兄ちゃんは、荷物が多くなると小さいティータでは運ぶのも大変だろうって。
クルツお兄ちゃんってさ。
本当は優しいし面倒も見てくれるし、凄く良い人なんだけど。
そんな良い人なクルツお兄ちゃんは、でも、上の学年とか中等科とかだね。
そっちの女子からはスケベクルツって嫌われているんだよ。
クルツお兄ちゃん・・・難儀な人だね。
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材料が揃いました。
場所は大図書館の喫茶スペースです。
まぁ、ヒッキーなケチケチお兄ちゃんが大図書館に住み着いてからだけど。
喫茶スペースはね。
別に無くても良いんじゃないってくらい・・・・ガラガラです。
でもねぇ。
プリムラお姉ちゃんとかカチュアお姉ちゃんなんかが居た時はね。
お姉ちゃん達は四月になってから居なくなったけど。
居た時には此処でね。
お昼とか凄く楽しかったんだよね♪
お姉ちゃん達のことは、一年で帰って来る・・・・早く帰って来て欲しいなぁ。
あ・・・アイシャおばさんだけは帰って来なくて良いです。
「ティータの鎧だけどなぁ。必要やと思って、わいの方でパーツごとの図面も引いたしな。一先ずこれで作ってみるか」
「うん。だけどクルツお兄ちゃんって。こういう細かい図面を描くことも出来たんだねぇ。本当凄いよ」
「いや。別に大したことはあらへんで。っちゅうか、このくらいは出来て当たり前や」
「う・・・ティータは未だ図面、描けないよ」
「そか。もし図面なんかを引きたいんならな。その時は選択科目で工科系を取ったら勉強も出来るで」
「そうなんだ」
「わいは、そんでカミーユの作った魔法使いの杖。あれでなぁ・・・わいも魔導器に興味が出たんや。んで魔導と工科系の授業を多く選択したっちゅう所やな」
ティータの周りでもね。
女の子達はクルツお兄ちゃんの事を、スケベ変態とか馬鹿にしているけど。
でも、そんな馬鹿にされるクルツお兄ちゃんはね。
本当はとっても頑張り屋で凄いんだって・・・ティータもクルツお兄ちゃんと同じ魔導と工科系を取りたいって思ったもん。
クルツお兄ちゃんが描いた図面を見ながら。
ティータとクルツお兄ちゃんは、それで図面を厚紙に転写する所から始めて、次に線に合わせて定規を当ててカッターナイフで切り抜いて・・・・・・・
放課後から始めた作業は、暗くなる頃には切り抜いた部品を糊でくっ付ける所まで来たよ。
「なんちゅうか。やっぱし厚紙だけだと強度が足りひんな。ティータ、わいは段ボールで補強材を作るさかいに。そんでお前は残りのパーツを糊で付ける方を進めてくれ」
「うん。任せて」
ティータとクルツお兄ちゃんの作業はね。
それでいつからかは分からないけど。
ヒッキーなケチケチお兄ちゃんが、じいっと見ていたよ。
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厚紙と段ボールで補強もした鎧が完成しました♪
初めて作ったティータも、でも、こんなに見た目も凄く良い鎧はね。
それは間違いなく、クルツお兄ちゃんの描いた図面が凄かったからだね♪
「ちょっとぶかぶかするけど。うん、良い感じだね♪」
「あれやな。ぶかぶかする所には、綿でも当てれば良いんとちゃうか」
「ナイスアイディア♪」
流石クルツお兄ちゃんって、グッジョブなティータはね。
大きな鏡を前にして、映った姿には大満足♪
「あとはクルツお兄ちゃんが作ったバズーカを持って、ポーズはこんな感じ」
「そうやなぁ、たぶん白い厚紙やからやけどな。んでも色さえ塗れば。もっと様になると思うで」
「うん。何色を塗ろうかなぁ」
ティータが何色を塗ろうかって、それは明日になるんだろうけど。
クルツお兄ちゃんと何色が良いかを話していたら。
じいっと見ていたヒッキーなカミーユお兄ちゃんが近付いて来た。
「まぁ、アニメの方も多少は見ていたが。それで作業も途中からは何度か目にもした。二人が作っていたのは帝国軍の特殊作戦群。そこで数年前には試作兵器として獅子旗杯にも参加した。あの装備だった訳か」
カミーユお兄ちゃんはね。
言っている事は、それはチンプンカンプンだったけど。
「ふむ・・・帝国のアレは、だが、あれ以来は情報も入っていなかったな。人型の鎧フレームは、それで重量の問題も在った筈だ。獅子旗杯に出たやつは稼働時間も短かった。それでも、数年経った今なら完成もしただろうか」
カミーユお兄ちゃん。
ティータとクルツお兄ちゃんを無視して・・・というか見えていない感じだね。
もうずっとチンプンカンプンな独り言をブツブツだもん。
「そうだな・・・やってみるか」
ん?
お兄ちゃん、今・・・何をやってみる気になったの?
「おい、ティータにクルツ。二人が作ったその・・・ペーパークラフトだ。実戦仕様の装備として作って見る事にした。試作が出来上がったら飛翔実験と同様にテストをするから・・・身体を鍛えて楽しみに待っていろ」
なんかね。
良く分からないけどね。
でも、カミーユお兄ちゃんが実戦仕様で作るって。
試作が出来上がったら、その時はティータとクルツお兄ちゃんとでテストもするって。
だけど
今のカミーユお兄ちゃん。
ティータには、凄い怖い怖いな魔王様の顔で笑っていたんだよ。
ティータ、明日いきなりテストをやるって言われたら嫌だなぁ・・・・・・・・