表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
儚世の黙示録  作者: 嵯島スイ
【親友の絆 編】第一章
9/15

閑話「静謐だったはずの楽園」

六話が短かったのでおまけです。

今回も意味の分からない話となってoります(苦笑)

 ここは、心を病んだ天使(てんじん)たちが集う、雲と花の咲く空中庭園(スカイガーデン)

 今まで一度も行ったことのなかった、その空中庭園にあるテーブルセットの一つで、私とルーナは黙って紅茶を飲んでいた。


「ねえ、ルーナ。私たちの言葉は、ちゃんとヒヨノに届いたかしら……」


 ティーカップをソーサーに置き、目の前に座る親友に問いかけてみる。

 彼女は手に持っていたクッキーを一口齧って飲み込むと、何とも言えない表情でこう答えた。


「それは分からないよ、ソレイユ。本来、こちらの世界とあちらの世界とで連絡を取り合うことは出来ないようになっているからね」


「……分かってるわ。でも、お母様が作ったこの世界のシステムの一部が無効化していたら……なんて、どうしても期待してしまうの……」


 地につくほど長く美しい銀髪を靡かせ、よく城のベランダで子守歌を歌ってくれたお母様。

 彼女は、戦争によって滅びかけていたこの世界を、向こうの世界からやってきた勇者―――お父様と共に救った、かつてはこの世界を統べていた初代の女神でもある。


 それが今は、堕天して人間界で悪事を働いているなんて…………時が経った今でも信じられない。


 大切な人間界を壊そうとする母を憎めばいいのか、それでも愛し続けなければいけないのか……私は未だ分からずにいる。

 故にこうして、この世界で一番信用できる人に相談しようと思ったのだけれど―――……



「っ!?」



 ずん、と地面が沈むように揺れる。

 驚いて立ち上がると、突如、重苦しい鐘の音が庭園に響き渡った。



『只今、島の周辺に邪気とみられる靄を観測しました。天力(てんりょく)階級が八以下の天人は、速やかに地下のシェルターに避難してください。繰り返します―――』



 ああ、ついに、恐れていたことが起きてしまった。

 悠長にティータイムを楽しんでいる場合ではなさそうだ。


「また邪気かよ!今年に入ってもう何回目だ!?」


「これじゃ、いつ魔獣が現れてもおかしくないよ……」


「ママー、おやつはー?」


「いいから、逃げるわよ!」


 近くの席に座っていた天使たちが、翼をはためかせてみな一目散に逃げていく。

 広がる花畑の向こうを見やると、薄紫の空の向こうに、黒い靄が僅かに見えた。


「……ルーナ。今、この街に大天使は何人残っているかしら?」


「視察に出ている者が多いから、おそらく二人だけだよ。どうしてこんな大事な時に……」


「そう……運が悪かったわね。今回の邪気は色がかなり濃いから、下手をすれば人間界にも影響が及ぶでしょう。私が行くわ」


「そんな!君はまだ……」


 慌てて私のドレスの袖を掴む、大好きな彼女の手をそっとほどいて握る。


「いいの。これは、私たち女神が―――……私がやらなくてはいけないことだから」


「ソレイユ……」


 ルーナの泣き出しそうな顔を見ると、決まって心が苦しくなる。

 お互いに女神としての仕事も何もかも放り出して、ずっと二人だけでいたいとさえ思う。

 それはきっと、彼女の方も同じ。


 でも、ごめんなさい。今の私は、あなたの気持ちには応えられない。

 こんな身勝手な私を、どうか許して。


 傷だらけの右手に宝具(ほうぐ)()び出すと、私はルーナを置いて西へと飛び立った。


 必ず、偽りの救済を終わらせると決めたから。

 だから、もう少しだけ待っていてね。






―――……ヒヨノ。

最後まで読んでいただきありがとうございます。

今回は話の舞台が異世界だったので、ファンタジー要素いっpaいに書けて楽しかったです。

「陽代乃」と「ヒヨノ」の違い、みなさんはもう分かりましたか?

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ