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2.心の傷。









 健康状態を整えるため、定期検診も欠かせない。

 俺は正式な医者ではないが、知識がゼロというわけでもない。そのため、他にも魔族の体内構造に詳しい者と一緒に、回診を始めた。

 基本的にこちらは人間の体調を看ることになる。



 そんな中での出来事だった。



「はい、それじゃ次の方~」



 俺がそう声をかけると、一人の女性が入ってくる。

 黒の髪はぼさぼさで、赤の瞳にもどこか生気がなかった。身に着けているのも布切れみたいなそれで、ところどころが解れている。

 不思議に思いながらもメモを見ながら、彼女の名前を確認した。



「えっと、リーナさん、ね。人と魔族のハーフ、か」

「………………はい」



 こちらの声に、短く頷くリーナ。

 その様子に首を傾げながら、俺はひとまず脈を測った。そうなると肌に触れることになるのだが、彼女はその瞬間に――。



「――――――!!」



 これ、このように。

 ひどく怯えた仕草を見せるのだ。



「どうしたの?」

「あ、あ……」



 あまりにも挙動がおかしいので、俺は一度診察を止めて問いかける。

 するとリーナは、視線を宙を舞わせながら縮こまった。



 ……ふむ。



「大丈夫だよ、俺は味方だから」



 そこまでの流れで、俺はなんとなくだが事情を察した。

 そして、そう優しく声をかける。



「…………ほん、と?」



 こちらの言葉に、リーナはまだ怯えた風に答えた。

 力強く頷いて見せるが、それでも肩の震えは収まらない。



「なるほど、ね。今日は本当に簡単な検査だけにしておこう?」



 彼女の様子を観察して、俺はそう伝えた。

 そして、本当に簡単な問診のみで済ませたのである。







「なぁ、ニコ? リーナ、って女の子知ってるか」

「リーナさん、ですか?」

「あぁ、そうだ」



 今日の検診を終えて俺は、手伝いのニコに訊ねた。

 それというのも、今日の検診で人一倍に怯えていたリーナについて。名前を口にすると、やはり心当たりがあるのか、ニコは腕を組んで悩み始めた。

 そして、こう語る。



「リーナさんは、ハーフだってことを理由に迫害を受けてきたのです。最初は人間の村で生活してたですけど、その――」




 ――目の前で、両親を殺されたです。




 ニコは悲し気に目を伏せて、そう口にした。



「……だから、か」



 俺はそれ以上はあえて聞かず、納得する。

 つまりリーナの場合は肉体の問題ではなく、心的外傷後ストレス障害――ザックリ言うところの心の傷が問題ということだった。

 傷というものは、決して身体のみにできるとは限らない。



 むしろ、治療法が明確なそれより心の方が厄介だった。

 そのことはニコも分かっているのだろう。



「あの、レギオ様……」



 不安げに、こちらを見つめてきた。

 俺はそんな彼女の頭を撫でて、こう口にする。



「少しずつ、やっていこう」




 それしかない。

 だから、俺は長期戦を覚悟した。




 だが、思いもしなかったのだ。

 この検診の直後に、あのような事態が起こるなんて。



 


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