プロローグ 『毒属性』への、謂われなき差別。
「――以上のことから、レギオ・アークラスを更迭とする」
「な、なんだって!?」
その日、俺は王国軍からの更迭を言い渡された。
あまりにも突然で、一方的な宣告。宰相のカレオスは、呆然とする俺を見て鼻で笑った。そしてまるで事実であるかのように、根拠のない話をする。
「世界唯一の『毒属性』魔法、という話だったが――それはすなわち、魔族による助力があったということではないか? いわゆる間諜、ということだ!」
「でっちあげだ、そんな話! 俺はこの国のために――」
「ええい、黙れ! 貴様のような田舎者、この王都には必要ない!」
間諜――スパイだなんて、完全な濡れ衣だった。
それなのに、周囲を見れば大半の人間が俺から目を逸らす。その反応を見て分かった。この場所にはもう、俺の味方はいないのだと。
だとすれば、もうここにはいられない。
「…………!」
踵を返して、俺は部屋を出た。
背中にカレオスの高笑いを聞きながら。
胸の奥底からは、信じてきたことへの怒りが満ちていた。
◆
「だけどせっかくの職を失って、これからどうすればいいんだ」
王都――ガリアの街を歩きながら、俺は大きくため息をついた。
行き交う人々の中で立ち尽くして、夕日に染まった空を見上げる。田舎から出てきて三年、寝る間も惜しんでこの国のために働いてきた。
それなのに、こんな終わり方ってないだろう。
「路銀はあるから、このまま田舎に帰ってもいいのだけれど……」
幸いなことに、蓄えはある。
辺境にある故郷のアルカまでの片道分、といったところだ。
しかし、これを使ってしまえば裏切り者の誹りを受け入れるような気がしてしまう。胸の奥底にある苛立ちは、間違いなく俺を蝕んでいた。
「もし、そこの方」
「え……?」
その時だ。
目深にフードを被った者が、俺に声をかけてきたのは。
「王国軍のレギオ殿とお見受けしますが、よろしいでしょうか」
「そうだけど、どうして俺の名前を?」
こちらの疑問に、フードの人物は小さく笑った。
そして、手招きをして俺を路地裏に導く。
「貴方に良い話を持って参りました」
かしずく相手を見て俺は首を傾げた。
良い話――とは、いったいなんのことだろうか。
そう考えていると相手はフードを静かに、ゆっくりと取った。
「な、魔族……!?」
すると、そこから現れたのは端正な顔立ちに赤い瞳の男の顔。
銀の髪をした彼は、薄い笑みを浮かべながらおもむろに頭を垂れた。
「左様にございます、レギオ殿。私たち魔王軍はいま、危機に瀕しております」
「危機に瀕している、だって……?」
そして、こう口にする。
「どうか貴方の有する、そのお力を貸していただきたい――」
真剣な、嘘偽りない声色で。
「世界に真なる秩序をもたらすために」――と。
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