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ひととあやかし  作者: 西園晴彦
7/8

7.

「フハハハハ!覚悟だと?それは此方の台詞だ!貴様こそ覚悟は出来ているんだろうな?逃げるなら今のうちだぞ!」

二尾の狐が高笑いしながら煽る。すると冴累は一瞬の内に距離を縮め、

「若いものはよく喋る……煩いぞ」

パチン!とデコピンをした。それは確かにデコピンだったが、二尾の狐は十数メートルは吹き飛んだ。

「っぐあぁぁ!……なっ……てめぇ……!」

「だから言っただろう、覚悟は出来ているのかと」

「てめぇ!許さねーぞ!」

冷静な冴累に対して怒りに身を任せている二尾の狐。

「それは此方の台詞だ」

冴累はそう言うと二尾の狐の方に歩いていく。

「うおおおおっ!」

二尾の狐が叫びながら冴累に向かって行くが、攻撃の全てを軽々と避けられてしまう。

そしてまたデコピン。今度は数十メートル吹っ飛ぶ二尾の狐。

「容赦はせんぞ、狐よ」

ギロリと二尾の狐を睨む冴累。その声音は重く、それでいてどす黒く感じる。

「ヒッ……」

その目に怯えた顔をする二尾の狐。

「きっ……今日のところはこれくらいにしておいてやる!クソッ!」

そう言い残して二尾の狐は走り去る。

冴累はクルッと後方を見返し、ニコリと笑うと

「結、然紋、無事で何よりだ」

先程とは別人の様な優しい声音で二人に語りかける。

「冴累、私達がここに居るってどうしてわかったんですか?」

結が尋ねる。

「ああ、それは……ほれ」

冴累がそう言うと、着物の袖口からぴょこっと出て来た生き物。

視得(みえる)と言ってな、とても鼻が効くんだ」

そう自慢気に話す。

それは体長が15センチ程の、目のくりっとした可愛らしい白色のトカゲで、えらく冴累に懐いているようだった。

「キュイ!キュー!」

甲高い声で鳴き、冴累の袖口に戻る視得。

冴累が不意に空を見上げ、結に向かって微笑みながら言った。

「もう遅い、送っていくから帰りなさい」

結にとっては、長い長い一日であった。

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